●ヤミの収奪! 人は様々な苦難を抱えながら長くて短い人生(せい)を歩いている。 移ろう時の足並みは時に思うよりもずっと早く、一年という短い区切りは時に認識の中に誰かを置き去りにする事もあるだろう。 時間(とき)の流れは余りに早い。気付けば四季は巡り、またこの季節がやって来る。心凍える死の口づけに震える、冷たき二月が。 「俺の場合……」 声は茫洋。色濃く絶望を孕み、色濃く疲労を孕んでいる。 「戻ってくるなんて、ないんだよ」 暗闇より現れ出でた『それ』にその男は語りかけた。 乾いた口調で、虚ろな瞳で。 「戻ってくるなんて、幻想だった。俺は、俺は……」 凡そ人為らざる恐るべきフォルムを見せた『それ』に男は無為な言葉を重ねた。 「俺は、とられる」 何故人は、歩くのだろう。 何故人は、『失う為に』歩み続けるのだろうか? 人生における哲学的難問に冷たきそれは応えない。 唯、輝く『正義の刃』で無明の男を導くのだ。 ――忘我、痛みの恍惚へ! ●討伐任務 「まぁ、そんな感じの仕事です」 モニターに映った『惨劇』に長い睫を伏せた『塔の魔女』アシュレイ・ヘーゼル・ブラックモア(nBNE001000)は痛ましい事件に溜息を吐くように――言葉を零した。 「エリューション、だよな。これは」 「はい。御覧の男性……ええと、シナリオライターの男性ですね。好きな食べ物はレバ刺し、趣味はカラオケ。嫁か彼女募集中(※邪悪ロリに限る)。このどうでもいい人物が近々、再起不能になります」 冬の短い日の落ちた頃、一人の男が現れ出でた神秘に出遭ってしまった……状況を簡潔に説明すればそういう事になるだろうか。曇りなく朱色を跳ね返す白銀の剣を備えた神秘は長い白髭の老人の姿を取り、神話の神々さえ思わせる素晴らしい威厳を湛えて見えた。 「はい。まぁ、有体に言いますと――これはエリューション・フォースですね。或いはエレメントと言えるのかも知れませんが。『概念』が実体を形成した存在です。本来意義的に人に害意に持った存在では無いのですが、何事もケースバイケース、人それぞれ。受け止め方次第という事でしょうか……」 「……?」 アシュレイの良く分からない説明にリベリスタは首を傾げた。 「ああ、すいません。分かり易く説明するとですね。 このお爺さん、所謂『税制』の化身なのです。男性は市役所帰り」 「……は?」 途端に雲行きの怪しくなってきた状況にリベリスタが間の抜けた声を上げる。 「皆さんも、源泉徴収表を見た時『あいたたたた……』と思った事は無いでしょうか。例えばレシートの消費税を見た時、『上がると嫌だなあ』と思った事は無いでしょうか。個人事業を展開した時、節税対策に頭を悩ませた事は無いでしょうか。まぁ、つまり、要するに『税制』は多くの人々が想いを寄せ、強敵と認識するに足るだけの幻想を秘めていたのです」 「はあ、さいですか」 「特に――二月と言えば、何が重要でしょう」 「言いたい事が分かってきたぞ。嫌だけど」 「そうです。『確定申告』です。これは手強い。そりゃまぁ。専門用語バリバリで面倒な上に義務の一つです。第一会社勤めをしていない人にとってはこれをしない事は有り得ません。全員が全員ではないですが、ものぐさな人にとっては一年総決算のラスボスと言えるでしょう!」 「……」 熱弁をぶつアシュレイにリベリスタは押し黙る。 確かにまぁ、それはそうなんですが。どうなんですかね? 「ましてや――」 アシュレイの金色の瞳が、ころころと感情を良く変える猫のような瞳が悲しみに染まっていた。憂いの美しい横顔で彼女は吐息めいた声を漏らした。 「『還付』では無く、『納付』する人間のテンションの上がらなさは異常……」 納税は国民の三大義務の一つである。小中学生の社会の授業でもバッチリ習うそんなもんはやって当たり前なので、元より何時払うかの問題でしか無いのだが。給料から天引きされない職種の皆さんにとってそれは『大量の金が一度に出て行くイベント』に相違無い。 「まー、ライターさんも納付自体はちゃんとします。 しかし、えりゅーしょんにであっちゃったらたいへんです」 「要するにその兄ちゃんがやられる前にエリューションを撃破しろと」 疲れ果てたリベリスタは状況を要約した。 成る程、兄ちゃんの納税事情はさて置いて、動き出したエリューションとは『元の存在』が何であれ、逸脱してしまうものである。勤勉で正義、全く正しきお爺さんでも例外では無い。 「……一応、分かった」 「住民税が怖いんですよ!」 アシュレイよ、君は英国人でフィクサードでは無いのかい? 「住民税が! 国保が!! 自由業!!!」 「……………分かったから」 ……ホントに、怖いんだってばさ(´・ω・`) |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月21日(火)22:14 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●今日さ、道歩いてたら美少女とか出てきたの! 「きたこれ!」 禍福は糾える縄の如し。 その日、静岡県在住シナリオライターの男性(邪悪ロリ愛好)はまさに偉大な古人が残した言葉の妙技を知る事となっていた。 「魂で邪悪ロリするのじゃ。カオスゲージを黒く染めるのじゃー!」 シナリオライターの男性(只者ではない)の視線の先にはテンション高く「にゃははははは!」と笑い声を上げる美少女が居た。「さて、YAM……し、シナリオライターが大事なきよう、妾が黒い笑顔で助けてやるのじゃ」この『暗黒×幼女』瀬伊庭 玲(BNE000094)が果たして、邪悪ロリなのかどうかはさて置いて―― この日彼が出会ったのは不運であり、この上ない幸運でもあった。 常識の世界に生きる彼の出会う筈だった破滅の運命(エリューション)は、得難い希望の光(リベリスタ)を呼び寄せた。 市役所からしょぼくれて帰るシナリオライターの男性(イケメン)にとって戦う美少女等ボーナスステージそのものである。 「のうぜい……確か『払わなかったらめっちゃ怒られるし追いかけられるけど、払い過ぎてたらしらんぷりされて払い損になる』って聞いた事が。でも、まだ私小学生だからよく分かんないなー」 眉根を寄せる『おじさま好きな少女』アリステア・ショーゼット、 「確定申告。成る程、今年度の税金の金額を確定することか。 金額の申告が間違っていると追加で税金払えとか払った税金が戻ってこないとかそういう事なのか」 仕事の内容より専ら『確定申告とは何ぞ?』に重きを置くクリスティナ・スタッカート・ワイズマン(BNE003507)、 「よーするに……この男性が、税制は強敵と思えば思うほど強敵になる……と、そういう事でしょうか?」 顎の辺りに指を当てて思案顔をする美少女――『きまぐれキャット』譲葉 桜(BNE002312)、 「タクス・へイヴンですか。確か税を効率的に免れる商業地域を指していたような。 税金を逃れたいという気持ち。今の日本だとそう思う気持ちもわかりますがね……」 冷静に淡々と言ったクールビューティー――『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)、 「納税の意思があるなら良いひとでしょう。ちゃんと守ってあげないといけないのデス。 たとえかなり駄目な人な気がしても! 自分で自分のこと名のある人物とか言っちゃったとしても! ペンネームがアルファベットでYで始まる人だったとしても! 守りましょう。それが私の生きる理由(フェイト)!」 微妙な毒舌で正鵠を射抜いた『超守る空飛ぶ不沈艦』姫宮・心(BNE002595)然り。 即ちそれは希望である。何時か、何時の日か、道歩いてたら美少女が降ってくるんじゃねぇかとか微かな希望に縋った遠き青春の幻影。 「取り敢えず、オレは今は学生だから、大した納税はしてねえ。 消費税くらいだよな。だが大人になったら、ちゃんと納税するつもりだ。義務だもんな」 いい歳をしたシナリオライターの男性(昼寝したい)よりも余程しっかりとした『てるてる坊主』焦燥院 フツ(BNE001054)が言う。 「タクス・ヘイヴンにシナリオライターが攻撃されたら、追徴課税とかあるのかね。男性的にヤバイよな」 「来た。乗るしかない、このビッグウェーブに!」 尤もだが、逃避か、現実と幻想の境界を認識出来ていない故なのか、自身を唐突に取り巻いた露骨に異常な状況にもフツの冷静で的確な一言にもシナリオライターの男性(昨日の夕飯はてんぷら)は全く動じた様子は無い。我が身に降って沸いた望みに望んだ光景に異常なテンションで喝采を上げている。 「嫁か彼女(※邪悪ロリに限る)募集中のシナリオライター(♂)……か」 浮かれ有頂天な被保護者の有様についていけず、頬の辺りを若干引き攣らせた『自営業(893)』桐生 武臣(BNE002824)が少し遠い目をして呟いた。 「……何故だろうな。あいつを護らなければ世界そのものがなくなってしまう……! そんなデンジャラスなインスピレーションが俺の中をスパーキングするのはよ」 「ああ。このシナリオライターが再起不能になるのはヤバイ。理由は解らないが、世界の危機だと俺のゴーストが囁いている」 武臣は、『リベリスタ見習い』高橋 禅次郎(BNE003527)は、脳裏を過ぎる理不尽な予感を頭を振って追い出して、何処と無く所在無さげに佇む威厳ある老人のエリューションに向き直った。 「英国人の……エリスに……日本の……税制の……ことを……言われても……困る」 困り顔のエリス・トワイニング(BNE002382)が言う通り。エリューションは税制の化身であると云う。何が何だか分からんがそうらしい。 「かくていしんこくってな~に? つよいのかな~こわいのかな~? がいじんさん?」 所有する戦闘指揮LV2を疑いたくなる程度には『おかしけいさぽーとじょし!』テテロ ミーノ(BNE000011)は牧歌的である。 「ミーノよそうではたぶんこーんなかんじでつのがあって! がおーってかんじでいつもおこってるかんじなの~っ!」 ミーノの力説する所は折りしも世間を騒がせる『鬼』の方に近いのではなかろうか…… 「確定申告な。一応調べてはみたが、ややこしくて良く解らない…… 未成年なので所得が204万未満であれば所得税、住民税共に課税されないようで……少なくとも130万未満は大丈夫だとは思うが。 まぁ、その辺りは時村財閥で巧くやってくれているだろう、多分……」 一方、禅次郎の声は頭痛を堪えるが如くであった。 数字と事務処理が大好きで仕方ないという奇特な人種を除けば『それ』が対象者に与えるプレッシャーは並々ならぬ所である。 「個人でこんなのを毎年やる位なら、将来はサラリーマンが鉄板だ……」 「だが、彼はきちんと納税するのだろう。いや、もうしたのかも知れない。 そんな男にこれ以上、その刃を向けることは許さねぇぜ……タクス・へイヴン!」 仁義の赫を風に靡かせ、男の背中。 おおおおおおお……! 諸々封じ込め、銃を抜いた武臣が気を吐けば、荘厳なる敵は意気や良しとこれに応える。 俄かに増すシリアス。胸の高鳴り! ――でもなぁ。 「確定申告? あたしにも必要だったかしら? 今必要でも将来的には必要なくなるのです…… ……だってあたし、さおりんに扶養されるですし。恥ずかしい><。」 うっとり夢見がちな『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)とか、 「納税義務を誠実に果たそうというのは素晴らしい事です。 お陰で未成年のアタシ達も手厚い行政サービスに預かれる。今後もきちんとお願いします。 ……え? ああ。模範的高額納税者には、きっと素敵な伴侶も見つかりますよ」 「そうだぜ。仏様も保証してた」 「マジで!?」 思念体である敵の弱体化を狙ってシナリオライターの男性(低額納税者)を持ち上げる『ネメシスの熾火』高原 恵梨香(BNE000234)、フツとか、 「お兄様? お兄様は税金を払えぬ愚か者なのかや?」 「……ねぇ、おにぃさんひょっとして三十以上……?」 面白がって煽り続ける玲とか、何故だか小躍りする彼をじーっと見つめて問うアリステアだとか。 余りにもしょうもねぇ光景に『シュレディンガーの羊』ルカルカ・アンダーテイカー(BNE002495)の唇が歌うようなポエムを零す。 ――瞳の虚ろはなにうつす 絶望の切片、茫洋、嘘みたい 取捨選択の移ろいで、嘆く季節のまつりうた―― 「まあ、ルカ十四だし納税義務とかないんだけどね。所得とかなにそれGP」 「ロリ! 邪悪ロリのポエム来た!!! 意味わかんねー! だがそれがいい!」 「意味、分かれなのよ」 微妙な空気は、止まらない。 「……何だか、すまねぇな」 武臣は薄々こうなる事を知っていた。溜息を深く吐き出した。 「どう見てもアンタは不運だったと思う」 おおおおおお…… いとあはれ。 「税金はちゃんと納めましょうね」 カメラ目線で凛子が上手にウィンクした。 ……皆さん、こんなシナリオに態々ご足労願いまして誠に…… ●で、何か俺を守ってくれんの。時代来た? 「翼を与えます。何ならお金にも与えましょうか?」 「よし、皆。節税対策に各種控除(しゅごけっかい)は完備した。思い切り戦おうぜ!」 凛子の加護がリベリスタの背に翼を与え、フツの展開した特殊な力場が敵の脅威を僅かに減じる―― 「ターゲットを発見……ラーグリーズ4攻撃を開始する」 クリスティナの宣言を待つか待たぬか、タクス・へイヴンとの戦いは始まった。 一個体であるタクス・へイヴンに対し、リベリスタ側は十四人の戦力を揃えているが、それは逆を言えばそれだけの数的優位を要する相手という事でもある。ぶっちゃけた話、ことこの依頼においてはそんな複雑な理由は無いだろうとか言わないように。 戦いは数十秒と経たぬ内に激しいものになった。 ぶつかり合うスペクタクルに大喜びのシナリオライターの男性(十本やりたい)が異常事態を忌避しないのは職業病か。サブカル愛好の業なのか―― 「げんせんちょーしゅーだから誤魔化しも出来ませんのデス!」 猛々しく――凛と吠えるのは心。 住み着いた運送屋の給与はその辺しっかりしているらしい。 十三歳を雇用はどうかと思うがリベリスタの年齢は飾りである。 「というか私未成年ですから! 私が収める分が発生したのに収めてないとしたらそっちの手続きミスなのデス!! 分かりにくすぎるシステムを未成年に押し付けないでいただこおー!」 「現役小学生には効くわけがないだろう! 傭兵業務の処理は経理課や父に任せているからな!」 心もクリスティナも――壁役(こどもたち)の主張は単純明快。どの道魅了された所で大した攻撃能力は持ち合わせていない。 「妾のドレッドノートの錆にしてやろう!」 割り切って壁と化した少女達の背後より、寄せ手が動きを展開する。 幼い美貌に不敵な笑みを貼り付けて彼を喜ばせるのは玲である。 この子も中二病だし納税要らなさそうだなぁ…… 「緋月の前に、朽ちるがよいわ!」 白銀の剣を手に備え接近してくる老人の影を少女の繰る光の糸が絡め取らんと襲い掛かる。 剣の鮮やかな一閃で切り払われたそれに構わず、声を張るのはアリステアだ。 「おひげがちょっとかっこいいかも…… いやいや、お仕事なんだからそんな事言ってちゃダメって分かってるんだけどね? 世間様はラブラブカップルばっかりだから私だって相手欲しいもーん」 えーと。 「じゃなかった!」 そうそう。 「『税金なんて払いたくないもーん!』って思わせる風潮がダメなんだよっ! 『正しく使われているんだから喜んで』って言えるような使い道してくれないのが原因じゃないのー?」 幼女の事の外鋭い舌鋒(マジックアロー)にタクス・へイヴンの態勢が僅かに乱れた。 「住民税って? 国保って?」 フツの式符が白髭の老人に喰らいつく。 住民税はね、累進課税じゃないからキツイのよ。税率が高所得でも低所得でも変わらないから持ってかれる額は違えど比率は同じ。しかも所得税に比べて各種控除の枠が小さくて課税対象所得が大きいの。後、国保はね。会社が半分とか払ってくれる社保と違ってダイレクトアタックが来るから額面がね、大きいの。医療実費負担については今は社保、国保同じ三割でマシだけど。 ……所得……課税に加え固定費世帯費が高くて…… 「ほうほう。自由業だとなにが大変なんだい?」 給与所得控除が無くてね。経費きっちり計上出来ないとパート並の控除も無くて。代わりに家人労働者特例と領収書コレクターがあるんだけどね。前者はパートレベルだし、前述の社会保障費がしんどい。 ていうか、去年家壊れてさ。雑損控除受けられそうなんだけど結局修理費かかってるからマイナスだし! 「あ、じいさんの姿だといまいち盛り上がらないから、美少女先生の姿で一つ」 まったくだよ! 「学生である桜ちゃんには良くわかんない心境です! でも、学生の情報収集力馬鹿にしないで下さい!」 戦場を舞う可憐な乙女――桜がびしと指差して見栄を切った。 社会の荒波も、世の世知辛さも、見果てぬ戦いに身を置く彼女を怯ませるには到らない! 「てことで桜ちゃん、学校の図書館で調べて来ました! 貴方にこの哀れな男性は殺させません! 受けると良いです、必殺『ネットでかんたん確定申告』!」 別名、1$シュートが炸裂する。 「所要時間凡そ十分で確定申告完了! 電子証明書、税理士署名不要! 税務署まで出向く必要すら有りません! IT世代舐めんじゃないですよ!」 桜は一声を上げるタクス・へイヴンから一瞬だけ視線を切り、拳を握るシナリオライターの男性(疲れてきた)を振り返った。 「確かに自由業は税金戻ってこないです。 でも、貴方は、それで得ている物があるんじゃないですか?」 すがががーん! 「労働は義務ですけど、それを自由裁量出来る権利は安くないです。 時間の枷を外す代価、自由業の不都合はそれほど高い物ですか? それによって貴方は手足を伸ばせる空間と、時間を得た筈です。 兎戦を一年に軽く百試合テレビ観戦出来る暇人がそんなに居ますか? 貴方は――貴方は何時昼食を取っても良い自由を得た筈です」 !!! 「貴方は、決して奪われるだけじゃない。彼は。タクス・ヘイヴンは、敵なんかじゃないんですよ!」 何かいい話で纏めた少女の呼びかけにシナリオライターの男性(感動)がこくこくと頷いた。 ボールは友達、税金も友達。いらねぇけど、こんな友達。 「自由の権利を叫ぶなら、俺は義務から逃げたりしねぇ……!」 武臣のJINGIがJYOUTOUする。 「俺ぁ、逃げも隠れもしねぇ……! 真っ向からお前を迎え撃つ!」 怒号の如き鬼気の迸りはまさに彼の男気を示すものだった。 「これが所得税!」 無造作に敵に向けて間合いを詰めた男はその無骨な――無頼の拳を老人へと叩き付けた! 「住民税! ついでに保険ももっていけやぁ! 目から汗が出やがるぜ!」 タクス・へイヴンの無慈悲な刃が閃いた。血を流しながら地面に這い蹲る武臣。 だが、運命は彼を逃がさない……じゃなくて見放さない。彼の闘志は死んではいない。 「まだ……まだだ。オレは……あと三十年以上払い続けなきゃいけねぇんだ…… 未来にツケはまわさねぇえ! まわす気は――ねぇ!!!」 やだ、この人カッコいい…… 払い過ぎた分は吸血(かんぷ)で贖え。牙を剥き出した武臣の体を青白く運命の炎が包んでいた。 「税金手元に残らないとかハイタックス恐るべしですね」 傷付いた仲間を見逃す凛子ではない。 「赤十字での奉仕活動が殆どでしたから。税金もほぼ免除されていましたので……」 不労所得についても対策十分。記入済み、青色確定申告用紙は大幅控除の勝利の証。 理路整然とした彼女の圧倒的な几帳面さが、完璧な笑顔が――聖神の息吹よりも戦場全体を立て直す。 ミーノの指揮に恵梨香の火力、そあらやエリスの支援も効いている。戦況はパーティ優位で間違いない。 「おにぃさん、飴食べる?」 「ありがとう! 少女!」 「えへへ、どういたしまして」 アリステアが何故かはにかむ。 「罵倒され、喜ぶ業界人なのかや? 主のようなものは踏んでやるわ」 「少女! 少女!」 「何ともはや」 玲のも余禄。戦いは決着に向けて加速していく。 「何で『税制』の化身なのに名前がタックス・ヘイヴンなんだ?」 納税は楽しいなあって事だよ! 言わせないで! 突っ込みに、切ない答えはさて置いて。禅次郎の銃剣の先に蟠った暗黒が老人の周りを巻く。 火力は些か足りないがそれは彼自身も分かっている。攻撃は牽制で、好機を作る為のもの―― 「やれやれ、大人は大変だな」 しみじみと吐き出した彼は自分の――近い先を見つめていた。 「確定申告はお早めに」 痛みに吠えた老人に禅次郎が言葉を添える。 魔剣を振り上げた老人の最後の攻勢を迎え撃たんと前に出たのは――ルカルカ。 「パンが無ければお菓子を奪えばいいじゃない」 ――カクテイシンコクとかよくわからないのよ―― 決着を望む戦場で、茫と佇む羊はぷかぷかと浮かぶ白雲のような夢を見る―― 「いいこと? 領収書の整理は一ヶ月ごとにやっておけばいいの。 基本飲食費は(自分を)接待費で落とせるもの。 ぶっちゃけ自営業の人ってそう家から出ないし。 たまにいくカラオケも接待費でおとせばいいわ シナリオライターの男性(ヲタ)ならエロいゲームだって経費って言えば経費だわ。 気をつけるのは家賃ね。自宅を事務所にしている場合は割合で経費に落ちるのだけれども。 ぶっちゃけ調べようがないから家賃額も光熱費も経費って言い張ったもの勝ちね。 青の場合は帳票も提出しないと六十五万円の青色申告控除がなくなるのよね。 貸借対照表とか書くのめんどくさいし、簿記できないとキツイわ。 家族への給与を経費で認められるのと赤字の繰越は有効だけど…… まぁ、白のほうがさくっと簡単にできちゃうのがいいわよね。 調整したら意外と全額帰ってくるものよ。白でも」 ――バッカスの飛沫の如き光芒の炸裂(アル・シャンパーニュ)。 無数の刺突(せつぜい)が魅せられた税制そのものを撃ち抜いた。 「ルカは断然白派。パンツの色も白がいいわ。はいてないけど」 劇終! 完! パンツは履けよ! 風邪引くな! |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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