●二月十三日、職員室にて 『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000201)は高校教師である。 厳密に言えば非常勤講師。気づけばたまに教鞭を執っている程度の、そんな扱い。 それでも相応に知名度があるのは、包帯まみれのインパクトが冗談のように強いせいか。 「……バレンタイン、ですか?」 「そうですよ、月ヶ瀬先生。今年の流行りは『男チョコ』ですって!」 「はぁ。いえ、逆チョコの発展型ですかそれ? っていうかホワイトデーは」 「『チョコを受け取ってくれて有難う』の気持ちを贈るんですって! 素敵じゃない!?」 昼休み。唐突に話題を持ちだした国語教師に返した自分の声が頓狂なものなのは理解している。 商業主義、ここに極まれり。女尊男卑も甚だしい――と思うのは当然だろう。 「で、先生はどうなさるんで? 僕は……相手」 「居らっしゃらないんでしょう? いっそ買いに行きましょうよ、今日! 一緒に!」 あ、ちょっとこれはカチンときた。 居ないことを前提に話を進められるというのは不快極まりない。 いや、現時点で相手側でチョコを用意してくれるような殊勝なアテが無い、というのは条件付きで事実だが。 そんな言葉を残して去っていく国語教師――因みに男だ――を眺めつつ、思う。 「少し、騒々しいくらいでも構いやしませんよね」 ちょっとふつふつと沸いていた。 バレンタイン、精一杯騒々しくしてやろうか、などと。 ●バレンタイン騒奪戦線 翌日、早朝。三高平学園初等部、中等部、高等部及び大学キャンパスを巻き込んで、放送が鳴り響いた。 「あー、あー……マイクテストオーケー、ですね。 概ね皆さん初めまして。高等部の月ヶ瀬と申します。今日はバレンタインですね。憎いですね。僕もです。 そんなわけで、今回は一つ催しを企画しました。昨今は『男チョコ』が流行ってるとか、聞きました。 男女問わずチョコが欲しいってことですよね? そんな訳で、チョコを用意しました。 既に学園内にチョコを隠してあります。ただチョコを探せというのもあれなので、幾つか仕掛けもあります。 そんなわけで、取り敢えず頑張れ?」 無論、この放送の後で夜倉が姿を消してみたり、気づけば廊下にポスターが貼り出されていたりするのは、 決して偶然ではないだろう。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:風見鶏 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月21日(火)21:44 |
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●大体こいつから始まる 「ヒャッハー! 夜倉狩りだー!」 中等部で高らかに上がる鬨の声は、確実に三高平学園へと響き渡った。 夜倉の存在を知らない一般生徒や他学部の教師ですら思わず振り向いてしまうような声の主は、 誰あろう舞姫のもの。彼女ばかりではない。初等部で、高等部で、大学キャンパスで。 校内全域あらゆる場所で、【夜倉狩り】の気勢が高まりつつあった。 (やりすぎましたかねぇ……) 月ヶ瀬 夜倉はフォーチュナである。未来を予見し、回避することが出来る能力者だ。 だが、彼単体での予知力などオカルトに毛が生えた程度だ。 『何かある』のは知っている。そんなノイズが朝見えた。それでもアクセルを踏むのが、彼だ。 具体的な情報など、一切掴めないと言っていい。ので、彼は取り敢えず――仕事をすることにした。 ●午前・1―職員室の痕跡 「月ヶ瀬の、席は……」 「あらあら、貴女も宝捜しかしらァ? さっきも初等部の女の子が来たのよゥ。『月ヶ瀬先生に許可貰いました』って言うんだけど、教師の席ってあんまり調べさせちゃ不味いでしょォ? ロッカーも貴重品とかあると思うし……最低限探すのだけはいいけど、ってことで追い返しちゃったのよゥ」 職員室に現れた天乃を迎え入れたのは、なよなよしい動作を欠かさない国語教育(※男性)であった。話によれば、「キサ」と名乗る少女――――綺沙羅だろう――が職員室、夜倉の机やロッカーを探そうとしたらしいが、諸々の事情から追い返してしまった、との事だった。……尤も、何処を探したのか、拳大の菓子箱を持っていたそうだが。 「……それ、は」 「おはようございまーす☆ 夜倉さんの授業スケジュールを教えて貰ってもいいですかー?」 思わぬ出来事に言葉が詰まった彼女の後ろから職員室に乗り込んだのは、卒業間際の終だった。ぼちぼち自由登校期間に入る彼だが、その手にはやや大きめの紙袋を携えている。 「そうねェ、午前中は毎時限保健体育の授業で右往左往するからって、資料を山ほど抱えて出ていったけど……あら、いいの?」 「三年間お世話になったのでお礼チョコです!」 国語教育の返答を聞くのもそこそこに、終は既にチョコを差し出していた。どうやら、職員室に来た目的の大半はこれだったらしい。 「先生方にもチョコ持って来ましたー!」 派手に盛り上げようと声を上げる終が、天乃に目配せをする。目的は大体同じ、と言いたいのだろう。 静かに頷きを返した彼女は、さり気なく夜倉の席を捕捉、匂いを覚えてしずしずと職員室から去っていく。 『夜倉さん、午前中いっぱいは授業だってー☆』 即座にリークされる授業予定。教室移動間、割と全力で早歩きをしていた気もする……冗談ではない。 AFから伝わる情報を流し聞きしながら、ソラも夜倉狩りに乗り出していた。授業はどうしたのだろう。夜倉もだけど。 「それにしても……」 ぽつりと、ソラは思う。彼女も一応高校教師だ。ぐーたらとか言われてるけど、やるときゃやる女性である。 きっと難しいこととか色々覚えて教師になったのだろう。 「夜倉って教師だったのね。全然知らなかったわ」 まあ、非常勤でこっそりひっそり教師してるだけならそうなりますよね。 ●午前中2―下準備とかスニーキングミッションとか 「隠されているチョコを発見したら、付近にシールを貼っておいて下さい」 「……わかりました」 もう何人に渡したかわからない程度には、桜はシール台紙をばらまいていた。 無論、『魔眼で操り、チョコを探させている相手に』、であるが。ルール違反と言うなかれ、倫理的にちょっとアレだが、怪我させるわけでなし争奪戦に参加する一般生徒なわけでなし、これくらいは問題ないと思う。三高平だし。 さりげなくシールが黒猫なあたりに、彼女の純情を感じなくもないのだが、まあそれは自身の問題なのでそっとしておこう。しておきたいね。 「チョコは等分が容易ですからね。組んで動くのは当然なのですよ」 ふふん、と自信ありげな表情を浮かべるのはエナーシア。何でも屋を営む二人が此処ぞとばかりに本気を出すとどうなるか、といえばやっぱりこうなるのである。 授業中に情報戦を仕掛けて探るエナーシアと、動けない間に用務員を利用する桜。どっちもかなりギリッギリであるが、結果はご覧のとおりである。 「R社の生チョコとか、夜倉さんも奮発したものですね……」 高かったんですよ(夜倉談)。 サングラスにキャスケット帽で、玖子は学園内を歩き回っていた。先程会った用務員は、どこか遠い視線だった。要領を得ないやり取りになってしまったが、魔眼でもかけられているのだろうか、と。事実だが。どちらにしろ、マイペース。足音やら目撃談やらを頼りに、学園内を散策する。 そも、玖子にとって学び舎は思い出深い場所でもある。半世紀以上経って様変わりしたそこに興味を持つのも当たり前と言えば当たり前、なのだろう。 「……玖子君、それは変装なんですか?」 「そのつもりだけど、駄目だった?」 「……というか、女学生な服装が目立つと思いますよ。それと、今学園内は物騒で……すが」 資料を山と抱えた夜倉が、彼女を見つけたのは丁度そんな時であった。学生たちから器用に逃げまわっている(時間がないだけ)彼としては、驚くべき偶然ではある。注意喚起を、と思った夜倉に、玖子はチョコレートと包帯を差し出す。 「いつもお世話になってるお礼。いつもお疲れ様」 「お世話になってるのは僕の方ですけどね。玖子君、余裕ありすぎかと」 相手に応じるようにしゃがみ、チョコレートを受け取る夜倉の頭を玖子が柔らかく撫で付ける。 「元気が出る、おまじない」 「玖子君にはやられっぱなしですね、本当に……」 困ったように笑うのもそこそこに、駆けていく夜倉。即座に後を追う生徒が居たような、いないような……踵を返した玖子には知りえぬ話である。 所変わって、大学キャンパス。 高校生であるルアが此処に居るのは、常識的に考えればすこし不思議なことではある。 同年代と比べてすら相当に低いその身長は、否応なしに目立つとして……まあ、三高平には 彼女程度の身長の大人などごまんといることを考えれば、教師の視線を回避するのも容易かもしれず。 バレるバレないの緊張感の前では非常に不本意な話ではあろうが、そんなもんである。 「でも、スケキヨさんにチョコを渡す為!」 純情って美しいものですね。 真面目というか律儀というか、そんな感じなのだが……ふと、そんな首筋に違和感が奔る。 「……?」 確かに触れられたような気はするが、誰に触れられたのかがわからない。 思わず周囲に視線を向ければ、机に隠れているルアが否応なしに目についた。 「……ルアくん!?どうしてこんな所に!?」 「えへへ、バレちゃったの」 驚くスケキヨに対し、小さく笑うルアの姿が魅力的なことは言うまでもなく。 それがバレンタインのためだと言えば尚の事だろう。 「一緒にいて、いつも新しい発見があって……本当に楽しいよ。益々好きになっちゃうね」 「スケキヨさん、大好きなのっ!」 愛溢れまくりの大学キャンパス。これは某守護神も裸足で逃げ出すレベルである。 三高平学園は、その門戸を広く開いている。三高平市民でさえあれば、出入りに基本的な制限はない。 そも、年齢にそぐわない形の学徒など少なくはないわけで。かなりフリーダムだ。 「さーてチョコ探しやぁ~♪」 学園内をふらふらと探しまわる望からすれば、周囲で巻き起こる混乱は「賑やかなこと」程度の認識でしか無い。気まぐれに歩きまわる彼女だからこそ、好きに探しまわる気になれる。猫並みというか、まさに猫そのものの行動力で探しまわる彼女の前では、夜倉の隠し場所など児戯に等しく。 「お~。あっちこっちで争奪戦やなぁ♪」 ゆうゆうと手に入れて高みの見物、といったところ。 「……げーっ、カビだらけのパンが出てきた! いつのだよー!」 一方、初等部に舞台を移してモヨタ。 初等部の理科室へ向かおうとしていた彼であったが、その前に自分の机である。 灯台下暗し、とは言うが……何だろう、なんとも言えない結果がついてきたものである。合掌。 ●昼休み―図書館の静寂・食堂の優雅なひととき、など 那雪が「なんとなく」で図書館に来ると、普段よりやや人が多いようにも感じられた。 それも、誰もが気もそぞろな雰囲気で、何かを探しているような人間もいれば、 誰かを待っているような者も居る。総じて、本来の目的で来ているわけではなさそうである。 「……あぁ、今日は、バレンタインなの……ね。そういえば、朝、放送が流れていた、わね……」 そういえば、と思い出す。早朝の校内放送が流れた限りでは、学園のどこにあってもおかしくはない。 図書館も例外ではないらしいので、探す価値は有りそうではあった。 料理本のコーナーを回っていた那雪の前に現れたのは、同じくチョコ探しに来ていたレンの姿。 「あら……あなたも、チョコ探し? ……よければ、協力しない……?」 「そうだな、そっちのほうが良さそうだ」 一も二もなく、というほどでもないものの、唐突な那雪の問いかけに対し、レンは嫌がることもなく応じる。 元より確保は二の次三の次。探すことが主体なら、協力するべきに決まっている。 「……あら、アナタ達もですか?」 重い辞書の合間を探していたリサリサが合流し(大変そうなので手伝いました)、 「……思いつく限りに探していたんだ」 何故か科学関係の本棚の前で本をとっては入れを繰り返していた惟も加えて総勢四名。 あれやこれや、或いはそこだと探しまわっているうちに昼休みは徐々に過ぎていき。 「……思ったより、いっぱい……」 「これが見つけたから、これはこれの分だな」 「見つかったのはいいですが、誰に渡しましょうねえ……」 三者三様にチョコを手にする那雪、惟、リサリサと。 「俺は探すのが目的だったから。よかったら貰ってくれ」 物欲しそうな初等部の少女に渡しているレンの姿が見られたとか、なんとか。 「チョコ探しだ! チョコ探しと言う名の夜倉狩りだ!」 夜倉狩り切り込み隊長(推定)、竜一が昼の学園で吼える。 彼女とは別の予定があるから構わないと言わんばかりのこの状況。 包帯を巻いている者としてのシンパシー。 そんな感情が、彼を駆り立てていた。 あ、でもビデオカメラの運用方法に問題あるから没収な。 「電子戦担当が駆り出される事態になっているとはね……」 一方、アーク本部から「まあ、いいんじゃないですか」レベルの適当な言質を取った彩歌だったが、 だからといって警備室がほいほいと場を明け渡してくれるわけではなかった。 まあほら、仮にも一般の学び舎の警備システムをお遊びで使ったらルール違反じゃん? 『竜一と彩歌さんが探っている場所はクリアみたいだね。他にも結構探してるけどなかなか捕まらないね。巡回の隙を衝かれて隠れられないように注意しよう』 こんなとき、守護神はマジ守護神である。 「こちら新城、周辺に月ヶ瀬の気配なし。そちらはどうか」 『何っ、こちらの包囲を抜けていくだとぉ? しまった! フォーチュナを甘く見たか! いや、あれはニセモノ……? あ、いや飛んだァー!?』 壁面すらも縦横無尽に駆け抜け、ローラー作戦を展開する拓真だったが、彼の声に帰ってきた通信はツァインの驚愕に満ちた声であった。というか、ニセモノとはどういうことだろう……などと考えつつも、きっちり手にはチョコを確保していた拓真である。戻ったら皆で分けあうのか、恋人と分け合うのか、楽しみではある。 「こっちじゃ、こっち!」 「礼子君……!?」 遡って、数分前。 【夜倉狩り】の面々に追い回されていた夜倉は、壁際から現れた礼子に誘われるままに危機回避。 とんでもない偶然の下に、息を整える程度の余裕を与えられていた。 「今日は学校見学者が多いですね……で、礼子君。その格好は一体」 「ふふ、どうじゃ、わしもまだまだいけるじゃろう?」 玖子に続いて礼子までこれである。三高平の傘寿は元気いっぱいということか……とか、失礼極まりないことを考えているのをよそに、礼子は軽くターンしてみせている。「いけるじゃろう?」に何となく威圧感を感じてついつい頭を縦に振ってしまうくらいには、イケイケである。 「がんばるのじゃぞ☆」 「はぁ……なんか、申し訳ない」 逃走に協力してもらった上にチョコを渡されるという予測不可能な事態。僕は何かしただろうかプラスの意味で。 「さぁ、早く行くのじゃ、ここはわしに任せて!」 「え、僕? あ、はい、すみません、お世話になってばっかりで……!」 直後、唐突に包帯を巻き始める礼子。むしろ、声が既に自分のそれである。リベリスタって便利だなあ。 「月ヶ瀬夜倉だぞー! リア充爆発しろー!」 「……リア充、ですよねぇ僕……」 少なくとも、ここまで構われてるのだからリア充だろう、多分。 大体、時を同じくして。というか、ツァインの通信があった頃。 「まさか、包帯してるだけでココまで気付かれないとは思わなかったぜ……」 神夜が、防火扉の影で必死に呼吸を整えていた。どうやら、飛んだのは彼らしい。 っていうか、包帯ってだけで反応しすぎだろ、右も左も。 「アル、いつもの様にお茶淹れて頂戴」 「畏まりました、お嬢様」 そして、食堂。 ティアリアとアルバートはいつもの様に紅茶を供していた。 と言っても、学内の食堂である。行き交う学生からすれば、やや奇異にも取れる。 周囲が視線を注ぐとすれば、むしろアルバートの流麗な仕草にこそあったろうが……。 「それにしても賑やかね。一応『せんせいさん』でもあることだし、注意したほうがいいのかしら?」 「はい、月ヶ瀬様がチョコレートを隠したようで……『せんせいさん』ですか。確かに、祭り事とは賑やかなものですから」 ティアリアが口にした『せんせいさん』という単語に、アルバートは僅かに眉を動かした。 話には聞いたことがある。賢者の石にまつわる一連の事件の事後処理的な依頼に於いて、ティアリアが先導に立ったということ。その殊勲(?)から、そのような呼ばれ方をしているということ、ぐらいは。 だが、さりげなくそんな話をすることができる彼女は、アルバートの知っているティアリアよりも随分柔らかくなったのだろう……と思っている。口にだすつもりは毛頭ないが。 「ま、いいわ。あれ手に入れてきて。お茶請けにしましょう」 「畏まりました。探してみましょう」 呆れつつも流れに乗った主人に慇懃に礼を返すと、アルバートは食堂を軽く巡回することにした。 浮ついた周囲の雰囲気にまじり、一人あちらへふらふら、こちらへふらふらとするエリスの姿を目にすることができただろう。手を差し伸べるべきだろうか、と考えた。二人のほうが効率がいいのでは、とも考えた。だが、少女相手に奪い合いになるのだけはどうしても避けたいものだ……とか。そんなことを考えている間に、エリスはいつの間にか、こころなしか気分を高揚させて何かを持っているようだった。恐らく、あれが件のチョコなのだろう。しまったと思う間もない、あっという間の出来事である。 「流石にこの机の下にあるとは思えないけれど……あら?」 そんなことが起こっているとはつゆ知らず、机の下を探ったティアリアがチョコを手に入れてしまったのはまた、余談であるが。 ところで。 「ふふ、血で血を洗うハイスピードバトル……始めましょう」 亘と、 「速いだけ?面白ェ事言ってくれるじゃねェか」 アッシュと、リンシード。 ≪-Brionac-≫の三名が、主にリンシードのチョコを賭けて争奪戦を繰り広げた……らしいのだが、実際のところ、彼らの速度が余りに早かったのか、周囲の空気が白熱しすぎていたのか。彼らの戦いの顛末を知るものも語るものも居なかった、らしい。 家庭科室でケーキを食べる三名の姿を見た、だとか。 「気の所為か。何か、凄く大人げねェ事をした気がする……!」 そんな事を言いながら悶えているアッシュを見たとか、そんな情報は出回っていたが。 ●午後―淡恋、もそもそ、包囲網 「……参りましたね」 初等部校舎、午後一発目。 授業を終えた夜倉は、本来ならアーク本部に出向く身分である。 だが、学園内は自分を狩ろうとする機運が高く、逃げ道はあるようで一切ない。 何しろ、元凶でもある自分が始末をつけずに早々と退場など、ベットしたチップを置き去りにして賭けを降りるが如き暴挙である。赤か黒かを確認するまで、恐らく自分は降りられないのだろう。 (。非。 ≡ 。非。) ほら、何しろ窓あたりにこちらを伺っている影があるし。 っていうかここは確か三階だ。相手は、まおだ。覆面と頭部のスカーフで何とか一般的ではあるが、何年か前の自分だったら間違いなく「窓に、窓に!」と騒いでいたレベルの状況である。 かつかつかつかつかつ、がらっ。 「快様、夜倉様、もとい夜倉先生を見つけました。場所は」 「……まお君、ちょっといいですか」 気付かれていない、と思っていたのだろうか。まおの反応は顕著だった。凄くびっくりしている。あ、ちょっと可愛いとか思ってしまった。嗜虐的な意味で。 「な、何でしょうか。まおは何もしていません」 「いえ、普通に壁つたってると思いますが、そうじゃなくて。先程、校庭の一角でヤモリを見かけたんですよね。まだ居るかは」 Σ(。非。 ≡ 。非。) ……行ってしまった。 予想以上の爆発的効果に、思わず苦笑いである。 時期を同じくして、中等部校舎。 初等部最高学年のフィネと、高等部最高学年の陽斗の二人が中等部に居るのは、普通に考えれば確かに奇異に映るかもしれない。だが、フィネの中等部見学に付き合うという名目であれば、容易に見過ごす状況であっただろう。まあ、この二人もチョコ探しに来ていたわけだが。 「バレンタインでこっそりの定番、机や下駄箱との噂、です」 フィネが、聞き及んだ噂を口にすると、陽斗はしかしと首をふる。 「月ヶ瀬さんは、ふざける時でも真面目さを欠かさない方とお見受けします。特定個人の机や下駄箱よりも、誰もが公平に手に出来るような場所にチョコを忍ばせているかもしれません」 そんな意見に感心したように彼を見上げるフィネは、再びの探索に視線を巡らせる。陽斗の言うとおり、普段探したり視線を向けないであろう箇所を重点的に調べ、チョコを見つけようとする姿は微笑ましいの一言だ。探している間も、しきりに教室内に視線を戻し、小さく笑みを浮かべる様といったら、陽斗にしてみれば眼福などというレベルではないだろう。 「フィネさんも来年はこの中等部が学び舎になるのですね。応援しています」 「あ、ありがとう、ござい、ます……あ、これ!」 照れながらもその祝辞を受け取るフィネは、その手にチョコを掴んで陽斗のもとへと駆けていく。 微笑ましい青春の一ページ、というところだろうか。 「包帯をはぎ取って消し炭にすれば良いのだろう。任せろ!」 だめだこのマグメイガスはやくなんとかしないと。なずなのテンションは最初からMAXだった。 虱潰しに探す、と考えはしたものの、そもそも三高平学園は小中高大一貫ともいえる規模だ。 どこから探して何処まで言ったか、仲間の状況と照らし合わせるのは屋上にいる面々ぐらいしかできないだろう。同じ場所は探してないな、と自分に言い聞かせて探しまわるなずなは、気付けばちゃっかりチョコレートを発見していたようだが、詳しくはまあ、省く。全部探すのに時間かかるだろうな。頑張れ。 ツァインは焦っていた。飛んだり逃げ切ったり上手く隠れたり、果ては替え玉である。 だが、それでも彼は冷静だった。走りまわる夜倉のことを加味すれば、必然的にその行動は読める。 包帯を替えるであろう場所。それらしい場所……保健室。 そして、ベッド。 「ここか月ヶ瀬さーんッ! ……ハッ!?」 暗転。 「やや、俺様ちゃんはみーかーたー。月ヶ瀬ちゃんを助けにきたんだって~俺様ちゃんの目をみて」 「……胡散臭い目だと思います」 開口一番、笑顔満面で近付いてきたのは葬識だった。口をついて毒が出た気がするが。 目を見ろ、と言われても。なんだかすげぇキラッキラしてるんじゃないかとは、思う。 「こんな澄んだ目の殺人鬼が嘘つくとおもってる?」 「殺人鬼ですからね。もうその自称からして嘘ではありませんがアレです」 酷い事を言うなあ、と思う。自分だが。疑い十でかかっている気はないのだが。 「校舎の上の方かな? 包囲網がいま薄くなってるってさ。みーんなグランドでさがしまわってんの」 「……参考にだけ、しておきましょう」 本当に、参考にするだけだが。何しろあれは愉しんでいる眼だ。信じてはいけない、とガイアっぽいものが告げている。数秒後には彼の口から居場所が割れているわけだが、気になどすまい。猛ダッシュだ。 むしろ、自分の身の安全など倍プッシュで捨ててしまえ。 絶対ルール、「授業中は争奪戦禁止」があるのだから……! そんなわけで。やっぱり最終局面は放課後です。 ●放課後1―どことなく激しい争奪戦(包帯の) 「数の暴力って言うんでしょうかね……!」 校内の先導(兼見張り役)を務めるユーキの号令の下、【夜倉狩り】の面々が度々夜倉を見つけては襲いかかり、ないし追いかけ、或いは情報をリークする。 (ヒートアップし過ぎて無茶をする人を止める係ですが) ですが、そのためにも統制がとれたほうが、そんな声が聞こえた気がして寒気しかしない。 「恋に花散る今季のダークホース桜田京子、いっきまーす!」 「ゲェーッ、京子さんだとォ!?」 思わず変な声が出てしまった。それくらいの脅威度である。マジで勘弁して欲しいぞこのチーター娘。ピンクい癖にチックショウ。 「人が少なそうな方に……つくの……」 「バレンタインを脅かす者は、この私が許しません」 ゆらりと、廊下の奥からシルエットが見える。斧だ。チョコの斧。何か何度か聞いた声だこれ。 バレンタインの字面が「狩猟祭」なアノ人だ。ゑる夢だ。それと、氷水入った袋を持った梨音。 なんだろう、決して混ぜてはいけない風の二人が混じってしまった感じがする。しかも自分のためとかチョー贅沢。何この狩猟祭(バレンタイン)。 「さあ夜倉さん、早く逃げて――!」 「細かく……邪魔するのよ……」 「な、何だか本当に申し訳ありま」 「屋上で売ってる夜倉先生本の売れ行きはどうかなー?」 「チックショウ壱也君は事実の有無に関わらず課題三十ページ追加だボケェ!」 あ、何かシャッター聞こえた。 「おや、起きたか。ホットチョコでも飲むか?」 「何か大事なものを見た気がするんだが……ダメだ、思い出せない……」 「やめとけやめとけ、頭打ったか知らないが、倒れこんで起きた直後に考え事は毒だぞ?」 所変わって、保健室。何か起きたツァインは、戻ってきた加味夜にベッドに移されていたらしい。 大事な事は思い出さなくてもいいのだ。SAN値下がるぞ。 「お邪魔します」 「おじゃましますッス」 そんな中、保健室に入ってきたのは凛子とリルの二人だった。こと凛子は保健室への出入りが多い。 その分、室内の配置にことさら敏感な部分もあるのだろう。薬棚を探し始める。 「けっこう定番な場所にありそうッスね」 凛子とはまた別に、保健室を探り始めるリル。だが、二人には決定的な前提が抜けていた。既に、ここは神夜のテリトリーだ。リルがESPを、凛子が元ある知識を総動員してあからさまな場所を探せば、神夜のチョコが出てきたりもする。神夜もまた、国語教師(※男)に振り回された身分である。そこそこに値が貼りそうなチョコ(然し苦い)を隠していたりするので、本当ならまんまと騙されることだろう。 「リルなら、紛れ込ませるなら全部ダミーにしてしまうッスねぇ……」 「流石の私でもそれはしねえな。凛子さんのそれ、私が隠したやつじゃないし」 「あら。そうなんですか?」 ダミーとダミーを入れ替える、なんてアレげな状況になることもなく、どうやら凛子は本物を手に入れていたらしい。隠し持っていたダミーも薬棚に隠す予定だったわけだが。 「ココアでも飲みましょうか」 「あ、ホットチョコならあるけど。飲む?」 「寧ろ、俺がココア欲しいです……」 凛子、リル、神夜、ツァインの四名はまったりと放課後の時間を楽しんでいた。何しろ、凛子が扉に中立の位置を明らかにする看板をかけたのだ。中にはアークの中堅から精鋭まで都合四人。そりゃ馬鹿やる気にはなれない。 「保健室は中立と聞いてッ!」 あ、張本人が中立地に釣られた。 「夜倉先生本、この間も売れ行きよかったんだよねー♪」 「チックショウまたですか壱也君はぁぁぁァ! 覚えておけよこの野郎ァ!」 呆気無く釣られて出ていった。何がしたかったんだ。 「ココアがチョコレートというのも悲しいでしょうからね」 「大事に取っておくッス。リルからは猫柄ハンカチを贈るッス」 「鼠からのプレゼントが猫ですか。これはこれ、ということで」 凛子はチョコを、リルはハンカチを。 互いに贈り、微笑を交わして去っていく。 「……青春だな」 「ですね……すいません、夜倉狩りに復帰しますッ!」 ツァイン、戦線復帰。間に合うのか。 「休み時間も思ってたが、放課後ともなると争奪戦の激しさはマジで凄いな……」 「争奪戦という意図は楽しそうだが、包帯野郎からの品に興味は無い」 周囲の奮戦に目を丸くする木蓮に対し、雰囲気は悪くないがな、と飽くまで冷静に返す龍治。 そも、学園に来たのも木蓮に押し切られた末のことだ。押しの強さに定評のある物理型射手と、押し込まれやすさに定評のある神秘必中型射手……と書くと、何か本当に性格を反映してて怖いなこの二人。 龍治の視線が、まじまじと木蓮に向けられる。 「……舞台が舞台だけに制服、か。何と言うか、見慣れないな」 「やっぱ制服ってそんなに珍しいか?」 木蓮が、自らの制服姿を見下ろしてみる。自分のことなので、さして意識はしなかったのだが。 しかしながら、龍治の評価は悪くはないようで、内心ほっとしたりもする。 残り一年の思い出作りで、学園で会える機会が多く設けられることに越したことはないだろうし。 龍治の言葉通り、二人の目的は飽くまでも学園内をそれとなく歩きまわることで、決して争奪戦は関係ない。とんでもなく鋭いリバーブローをみた気がするが、気のせいだろう。 と、いうか。先程からそわそわそわそわと龍治が何事かに気を取られて気が気でない様子を見せている。実にあからさまに「おれは焦れてなんて居ない」と言いたげな龍治の雰囲気を、木蓮が気付いていないわけでもなく。 「俺様からのは帰ってから、な? へへ、ここで渡せるのはこれくらいだけれど!」 「……む」 チョコを今や遅しと待ち構えるのは、何歳になっても変わらないということか。 木蓮の対応が一枚上手なのも、まあ男女関係というやつなのだろう。 頬に残る唇の感触を確かめつつ、とても冷静にはなれない龍治だった。 ●放課後2―最終決戦・屋上変 「お祭りの日に一人だけ高みの見物決め込もうなんて、そうは問屋が卸さないよ、夜倉さん……」 グラウンドに陣取った快は、他の面々との連絡を通し、次々と支持を出していた。チームワークを上手く利用し、周囲を巻き込む様は流石体育会系頭脳派のラガーマンといったところだろうか。 「ねーまだー。まだつかまらないのー。のどかわいたー」 「そろそろ、屋上に向かいそうなルートですから……もう少しです、ソラ先生」 やっぱり、ソラはソラなのである。 時間をいささかさかのぼり、屋上。 純粋にチョコを探しに来た三郎太と、【夜倉狩り】の屋上班がそこにはいた。 「今のボクには渡す人はいないけど……またきっと渡せる人みつけたいな」 落ち着け三郎太。男チョコなんて商業主義とフェミニズムのだまし絵だ。渡すな、つけあがる。 こそこそと探している彼が見つけるのは時間の問題として、それ以外。 「あぁー。焦がすなよ? ……ばかっ! 余所見すんな!」 「ジースェのくせにぃ!」 とらとジースが、ナンドッグ作りに精を出していました。ええ、朝から晩までです。 「ホットコーヒー持ってきた、暖まると思ってな」 「僕にもナンドッグちょーだい!」 「500円でいいよ☆」 と、ひとつふたつとナンドッグが出来上がったあたりで、争奪戦を装っていた(一部本気だった)翔太と夏栖斗が相伴に与ろうとする。二人が頬張ったタイミングで料金を述べるとか、あざといこのホリメあざとい。まあ、冗談らしいのだが。 「とらのお手製ピクルスは、ちょっとわさびを利かせた大人の味わい。学校サボって研究を重ねた成果の集大成なのよ☆」 「……学校サボってんなよっ!」 いや、本当にそう。そんなに君たちは僕の授業が嫌いですか、的な感じである。 「それにしても、随分と屋上にチョコが固まってるよねぇ……展開読んでた?」 「さあな。包帯の中身ぐらい考えが読めないし」 そして、夏栖斗と翔太もそれぞれチョコを手に入れている。先程、快が屋上への誘導に成功したと言っていたことを考えれば、そろそろ本人が来ると思って違いないだろう。相棒は本当に頼りになる。 「壱也君の同人誌は全部買ってシュレッ……あれ?」 まんまと騙されて怒鳴りこんできました。 「ふははは! 屋上にきたが最後!! 狩らせてもらうぜ!!」 「え、あれ? これってもしかして、とっても」 「さあ、覚悟……あれ? 天乃なんでここゲフゥ!?」 「私こそ、獅子身中の虫……」 クリティカルなタイミングに、夏栖斗の腹筋にクリティカルヒット。すげぇ痙攣起こしてるので、暫くは立ち上がれなさそうだ。 「夜倉を追い詰めたと聞いて! ついでにあまのんペrぶっふぉぅ!?」 「残念……はいてる」 次いで屋上に現れた竜一は、天乃の華麗なハイキックに沈む。空手なら一本(三ポイント)ものだ。 しかも本気用の下着である。穿いてる。正直、これは夜倉でも頬が引き攣った。 学園のイベントひとつに全力出し過ぎだよこの子。半分くらい僕のせいだけど。 だが、多勢に無勢とはいったもので。 チョコをゲットしつつも半泣きで人体模型直してたモヨタとか、保健室から復帰したツァインとか、さっきまでのぐーたらはどこへやらのソラとか、寧ろ指揮官の快とか、その他大勢。もうフォーチュナ一人とナイトクリーク一人を抑えこむのには過剰戦力もいいところのお出ましである。洒落んなってねぇ。 だが、何しろこの学園は三高平学園であり。 「ちょーっと待つにゃん!」 「おいしーところをみんなでげっとなの~」 「美味しいトコだけまるかじり……、それが三高平の小悪魔『ピンクの害獣』!」 ウーニャ、ミーノ、静、そして舞姫。こんな所で通名を名乗っていたら三ツ池公園プールで戦った彼は草葉の陰で泣いているのではなかろうか。いいのかよそんなんで。【害獣谷】、堂々たる登場だった。 「ねぇ、おじさま? きっと、夜倉おじさまのことですから、全種コンプで自分用チョコも買ってますよねー?」 正面から、舞姫が。 「いつもは包帯剥ぎまくるオレだけど、今日は味方しちゃうよ。嘘つかないよ、信じていいよ。だから今度ちょっとだけ、チョコ貰えたら嬉しいな?」 背後から、静が。 「いや、あの、なんでそんなコアな質問してくるんですか。むしろ何時もは剥ぐのですね」 必死のオーラでチョコを要求してくるのですが僕はどうしたらいいのでしょうか。 「舞姫お前夜倉狩りじゃなかったのかよ! 抜け駆けかよ!」 「なんと、舞にゃんはスパイだったのか!さすが(残念だけど)小賢しい女だ!」 夏栖斗のヤジも何のその、ウザい反復横跳びで夜倉の前を右往左往する舞姫、もとい【害獣谷】の仲間、舞にゃん。 「みんな~じゅんびおっけ~?」 守護結界を張り巡らせるお菓子系女子、みーにゃん。 「ここは絶対行かせねーぜ、デュランダルの名に懸けて!」 昆を手に、正眼に構え見栄を切る静にゃん。 「えっ、うーにゃんも働け? しょうがないにゃあ」 でもって、リーダーのうーにゃん。 「こんな所で邪魔が入るとはな。面白い、相手をしよう。やるぞ、ジース。来い、静!」 「は、はい!」 「拓真さん相手か……! 月ヶ瀬先生がチョコくれるなら張り切るんだけどなー!」 多少の関係からの因縁(?)も孕みつつ、戦いは切って落とされる。 「ああ、戦場ヶ原先輩の裏切り、見越していた通りです。私は諦めない、その包帯、取るまでは! ……ぐっはぁぁ?!」 気合一閃、京子が踏み込む。だが、このタイミングで。何故かこのタイミングで、靴紐が盛大に真っ二つ。転がるようにフェンスに激突、までは行かなかったが、ずっこけていた。 「切れ目を入れておいたのさ!」 さすが舞にゃん、悪い意味で抜け目ない。 「ちょっ向こう数多すぎない? 月ヶ瀬さんどんだけ恨まれてんの?」 「……どうなんでしょうねえ」 「うわー、このままじゃ押し切られるー。『チョコを受け取ってくれて有難う』の気持ちも欲しいなー?」 「貰えること前提なんですか舞姫君!? っていうかそのスピーカー音! 録音してるでしょう!?」 「チッ……」 チッじゃねえ。抜け目ねぇ。 「みーのたちはそろそろしつれいするの~。やくらちゃんも来るの~」 気付けば、争奪戦の合間を縫って既に翼の加護が付与されていたりする。恐るべき先見の明だ。あと、堂々たる卑怯さだ。 「……ふむ」 両者入り乱れての大騒動だし、確かにここは逃げおおせるかもしれないが。 「えーっと。取り敢えず一度やめにしましょうか」 言うや否や、夜倉は唐突に包帯に手を掛けた。するするとほどけて行く包帯に、あるものは目を瞠りあるものは自分にやらせろ、とわめく。 だが。世の中そうも上手く行かないもので。 「……と、いう感じで。二重巻きだったんですよ、寒かったですし」 はらはらと周囲に舞う「ハズレ」の紙札。包帯の下には、また包帯。マトリョーシカかこいつは。 そんなこんなの大騒動、顛末としては残っているであろうチョコの位置は殆どエナーシアと桜が割っており、その半分を彼女らが確保。 【害獣谷】のせいで夜倉の財布が更に薄くなったのは言うまでもない。 「夜倉お兄さんも、ナンドッグ食べるよね?」 「ギロチンさんに誘われてザッハトルテ作ってきたんだけど、食べる?」 「……有難いです。逃げまわっててお昼も食べ逃していて」 とらと快の心遣いが嬉しかったとか、そんな結末。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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