●変質者来襲 誰かに見られている気がする――そんな報告がここ一週間で多発している。 ここは小学校。それなりの児童を抱える公的機関だ。そんな場所で見られている気がする、と言う事は変質者が近くに居るのだろうか。これは由々しき問題だ。先日もウチの校長が、 「私がこの職に就いたのは君達が可愛いからなんですよ――ええ、性癖的な意味で」 と、問題発言ぶちかまして教頭にエルボー叩き込まれていた。全校集会で言うとか何考えてんだあの校長。場を和ませる冗談と言っていたが、教頭はマジギレであった。去年からこの学校に勤め始めた新人の私にとっては忘れられない出来事である。正直忘れたい。 「……あれ? もしかして変質者って校長の事かしら……」 あり得るから困る。仮にそうだったらどうすればいいんだろうか。まずは教育委員会からだろうか。いや、もう報告めんどいので警察に直に連絡すべきだろうか。 まぁ真偽はともかく、変質者がいるかもしれない状況ではとりあえず見回りを行って犯人を捜さざるを得ない。幼い子供たちを恐怖に晒す変質者にはどうなるにせよ相応の報いをくれてやるべきなのだ。例えそれが校長でも。校長でも! 「……ん?」 その時だ。不意に、視線を感じる。 「まさか変質者……!?」 今彼女が居る場所は体育館裏だ。茂みが多く、身を隠すには絶好のポイントである。 故に、変質者が潜んでいる可能性も高い。どこから見られているのか分からないが、視線を感じているのは確かだ。 「くっ、校長め……ショタとロリの属性だけに飽き足らず私にまでその毒牙を伸ばしますか……!」 何やら決めつけが混じっているが、とにかく現状はどうするべきだろうか。 声を挙げるのがいいのかもしれないが、変質者に逃げられる可能性が高い。ならば、 「出てきなさい校長……! 私が個人的制裁を加えます!」 見えぬ変質者を相手に一喝した。 武道の心得は多少だがある。生半可な相手に負ける気はしない。 さぁどこからでもかかってくるが良い校長――! 投げ飛ばしてくれるわ――! 『フ、フヒ、フヒヒヒ……』 声が聞こえた。変質者の声だろう。そう思う――が、何かおかしい。 人の声では無い。しかも、 「……下!?」 聞こえてくる声は下――自分の足元からだ。 そんな馬鹿な、下は地面だ。人が入れるようなスペースは無い。だが声は確かにそこから聞こえる。これは、一体、どういう―― 混乱しながらも彼女は視線を傾ける。するとそこには、 <●><●> がいた。比喩では無い。地面に、そのような記号が描かれているのだ。 声が続く。記号から、ありえぬと思考する彼女の脳に人ならざる言葉が届く。 その、内容は―― 『デュフフ、お姉さん初めまして。私アガリ…………と、申します。ま、そんなことより――パンツ黒で御座いますか……大胆でありますな! 大変宜しいッ!』 き、から始まる悲鳴と共に新人女教師は地面に蹴りを叩き込んだ。 ●こっちみんな モニターにそれはいた。 < ●>< ●> 「何アレ?」 「アザーバイドだ。どこぞの異世界から紛れ込んで来たらしいな。で、コイツの退治、もしくは強制帰還が今回の諸君らの任務だ」 『ただの詐欺師』睦蔵・八雲(nBNE000203)が言葉を紡ぐ。 モニターに映っているのは先程の記号であり、アザーバイド:アガリだ。一見すれば壁に落書きされた文字にしか見えない。が、暫く様子を見ていると記号は壁を伝ってその場を移動する仕草を見せる。 成程、これは間違いなく唯の文字では無い。意思を持った生物だ。 「正直な所、危険は無いのだがな……かといって神秘を放っておくわけにもいかん。現場の小学生が見えぬ視線に怯えているようでもあるしな。多少暴力に訴えてでもお帰り願おう。駄目なら退治だ。ま、どちらの手段を取るかは諸君らで判断してくれて構わんよ」 それと、と八雲は言葉を続ける。 「先程の映像を見て分かると思うが、アガリは“壁を伝って移動”する。故、奴に攻撃を仕掛けると建物に被害が出てしまう。まぁ多少ならアークが色々手を回すが……なるべく建物にダメージを与えない様に頼むよ」 「ああ分かった――が、一つ聞いて良いか? コイツ、何の目的でこの世界に来てんの?」 「……カレイド・システムの調べでは『女の子のパンツを見る』為に来ているらしい。特に幼女が好みの様でな……つまり、ロリコンだ」 「うわぁ、最悪だ……」 何このアザーバイド怖い。色んな意味で。 リベリスタがモニターに視線をもう一度移す。アガリの姿、一応目に焼き付けておこうとすれば、 <●><●> 「――なッ」 <● ><● > ……今、コッチみたかアレ……? |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:茶零四 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月19日(日)23:53 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
■サポート参加者 2人■ | |||||
|
|
●(((< ●>< ●>ヨウジョー 夕暮れ時。 校舎の中に人の気配は“ほぼ”無い。幼き学生達は既に下校しており、残るは見回りの女教師一人のみ。 そう、彼女一人――の筈なのだが、 「センパ――イ! こっち側、巡回終わらせたッスよ!」 声が聞こえる。知らぬ声だ。 驚き、聞こえてきた方面へと振り返ればこちらへ向かってくる人影があった。『レッツゴー!インヤンマスター』九曜 計都(BNE003026)だ。が、勿論計都の事を女教師は知らない。故に件の変質者かと思うが、こちらを知っているかのような言動に困惑し、 「ええと……御免なさい。貴方は、誰?」 「え、やだなーもう忘れちゃったんですか? 昨日赴任してきた――」 瞬間、計都の視線が教師の目を捉える。そこから流れ出でるは神秘の理。 耐性無き者の脳を惑わせ落とす――魔眼。 「――新人の、九曜ッスよ先輩★」 言葉を言い終える前に効果は出た。 教師の意識が濁り、落ちて行く。これで良い。後は適当に話をして危険の無い所に誘導するだけだ。 「やーれやれ。向こうはどうやら上手く行ったみたいだな」 その様子を遠目に見据えるは『自称 大ふへん者』滝川 宗兵衛(BNE003506)だ。状況に応じ、いざとなれば避難誘導を行おうと考えていたが、 「無用な心配だったか。ま、こっちが変質者扱いされる事も無くなったんで、後はアガリに集中できそうだな」 「とは言っても暫く暇そうですけどね。私はゲームでもして暇を潰させてもらいますよ」 『適当人生』マーシャ・ヘールズ(BNE000817)は気楽に、自前の携帯ゲーム機を用いて遊んでいる。その背にはランドセルを背負っているが、少々無理があるのではなかろうか――胸のサイズ的に。 「アガリ様は今どこでしょうか……そうだ、感情探査で動きを探ってみましょうか」 「それも一つの手だけど。ま、今は様子見だけで良いでしょ。何しろ――」 物影に潜む『敗北者の恋』甘咬 湊(BNE003478)の言葉に、『虚実の車輪』シルフィア・イアリティッケ・カレード(BNE001082)が続く。ちなみに彼女、本来は穿いてないのだが――本日はTバックブラックというアダルトな下着を穿いている。理由は勿論アガリ対策である。 ともあれ、シルフィアの見据える先。そこには二人の少女が廊下を歩いていて、 「――今は陽動している真っ最中だし、ね」 ●三< ●>< ●>ハッ、幼女の気配!? ……な、なにゆえこのような事になっているのじゃろうか……!? 『不誉れの弓』那須野・与市(BNE002759)は思考する。何故己はいつもの着物では無くて冬用のワンピースを着ているのかと。 理由は単純な物である――普段の着物姿だと目立たぬように際どかったり細かったりするからだ! むしろ今回の依頼において有効なのは着物よりもワンピース。下着も今回の為に用意した新調物である。ある意味気合いが入っている。 「やーそれにしてもアガリが住んでる世界ってどんな世界なのかなぁ。やっぱり目だらけとか? 右も左も見渡す限り<●><●>みたいな!」 そして与一の隣を歩むのは『なのなのお嬢様なの』ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)である。年齢を見るに現役小学生世代の二人が共に行動する理由はただ一つ。 ――囮だ。女好きで、特にロリコンでもあるアガリの嗜好に合致しているが故に二人は囮役として適任なのである。 「……それなら、朝起きた時に三つ目になってたりするのかぇ? あと同じ目色の目が4つ揃うと消えたりとかかの。繋げて消すと連鎖じゃろうか?」 「どれが自分の目か分かんなくなっちゃいそうだよね! ハハハ、俺の左目、朝から見あたらねぇんだけど! みたいな」 『<●><●> いやーあの時はマジで焦ったわー。左目と右目で全然違う景色見えてて困ったわー』 「成程のう……アガリ様の目もどうやら不思議なご様子で…………うん?」 瞬間。与一とルーメリア二人での会話に介入した者がいた。 それは人では無い。ましてやこの世界の生き物ですらない。 別次元より現れた招かれざる客――アザーバイドである。 『<^><^> こんにちはお嬢さん方! 早速で申し訳ありませんがパンツ何色でありますか!?』 ――訂正。ただの変態であった。 ●<●><●>ハァハァ うひゃあ――!? という悲鳴を『白虎ガール』片倉 彩(BNE001528)は確かに聞いた。 「この声はルーメリアさんの……アガリが出ましたかッ!」 潜んでいた教室より飛び出て向かう。距離はそう遠くない。角を曲がれば直ぐそこで、 「自覚があるのかわかりませんけど、貴方がしていることは犯罪ですよ! このまま覗き行為を続けるというなら相応の対応をとらせてもらいま――」 『ぐぅうう、見え、見えな――見えたァッ! 青のストライプごちそうさまです!』 「ひ、ひゃあ!? ちょっと、足元回るな! のーぞーくーなぁ――!」 よし、倒そう。ルーメリアの足元に回って全力で覗こうとしてるアガリに、そんな事をちょっと本気で考えかけた彩だが直ぐに思考を正す。 ……アガリに乗せられてはいけませんね。ええ、まずは穏便な話し合いが大切。ええ、まずは、ですが。 「やれやれ……スカートの中を覗くなど小学生の子供ではないのだから、許されないのはお前も分かるであろうアガリ」 彩とは反対側の角より『硝子色の幻想』アイリ・クレンス(BNE003000)が姿を現す。 手には武器の代わりにタッパーを所持。隙あらばこれで確保しようと言う考えである。交渉に応じて帰ってくれるならそれに越したことは無いが―― 『お、おおう!? おパンツ様がひーふーみーの……選り取り見取りでありますな! え、スカートの中を覗くのは許されない……? ハハハまっさかぁ!』 これ帰る気あるのだろうか。パンツへの執着が凄過ぎて無い気がする。というか反省ゼロである。どうしよう、対応に本格的に困って来た。 そんな折に口を開いたのはマーシャで、 「とりあえず私達をパンツ単位で数えるの止めてくれません? 第一――私は穿いてませんし!」 『なん……だと……!? 穿いてないだなんて、そんな、そんな馬鹿な事ある筈が無い! 神は死んだとでも言うのか――!』 ノーパンツだと言うだけでそこまで言うのか。マーシャの唐突な宣言に、まるでこの世の終わりかの様にアガリが泣き出している。そこまでして覗きたいのか。パンツを。 「ふむ、随分と面白い方ですが……アガリ様の世界はどんな世界だったのですか? 食べモノとか、その姿でどうしてるんですか?」 『う、うう……え、私の世界? 色んな種族の“目”を持つ世界だよ……まぁ姿形は私と全部似たようなものかな。栄養はね、私ら光合成出来るんだ! ……ところでお嬢さんパンツは――』 「穿いてますが、普通なのでお気になさらず」 『穿いてるだけで十分ヤッホッォォオイ!』 湊の答えに先程までと打って変わって一気に機嫌が良くなるアガリ。泣き顔から<^><^>への変化である。お前本当にどれだけパンツを覗きたいんだ。 さてしかし、湊の言葉はまだ終わらない。他愛も無い言葉を織り交ぜてから発するは本命の――交渉。 「しかしアガリ様。貴方の様な外の存在がこの世界にいると――どうなるか知っておられますか?」 「覚醒影響の推進……まぁ世界にとってあまりよくない事が起きると認識してもらいたいのじゃが、いいかえ?」 『< ●>< ●>うむ、うむ、それで?』 ……隠しもせずに覗きに来るのお。まぁ、その……見せてるんじゃが…… 屈みながら説得する与一のワンピースの隙間をこれまた全力で覗くアガリ。一応、話はちゃんと聞いてくれているみたいなので効果はあった様だ。恥ずかしいが。 「ま、つまりだな。これ以上この世界に滞在してもらうと色々困るんだよ――自力で帰れるのなら是非とも帰ってほしい所なんだが?」 『むぅ、だが私にもこの世界に残りたい事情があってだな……』 「なんか深刻そうに言ってるけどどうせパンツの事だよね!? ルメ達の覗いたんだし気が済んだでしょ早く帰ってよ――!」 『やだ――! まだ78人のパンツしか覗いてないのに帰るなんて嫌だ――! 世界中の少女のパンツを覗くんだ――い!』 「さ、最悪だなお前! 大体78人も覗いてまだ満足しねーのか!?」 宗兵衛からの要求に、アガリは渋る。 え、理由? ルーメリアの言う通りパンツ見たさに決まっている! 変態だからね! しかも邪な野望を持っているようで、帰る気が見られない。最低である。 「アガリ様……もし、帰って頂けないとわたくし達をここに派遣した睦蔵八雲という方にお仕置きをされてしまいます。鞭で叩かれてしまうんです……わたくし達もアガリ様と別れるのは辛いのですが……どうか、わたくし達のお願いを聞いて頂けないでしょうか……ぐずっ……」 本人がいれば焦って否定していただろうが、いないのである事無い事色々言える。素晴らしい。 言葉の終わりに泣き真似も含めれば、アガリへの説得力が情の面で増す。が、それでもアガリはまだ渋る様で、 『う、うーむ君達の言う事は分かる。だが私をまだ見ぬパンツ達が呼んで……』 「帰らないと言うなら帰らないでも良いわ。ただし、此処で始末されるか大人しく帰るか――今直ぐ選べ」 シルフィアだ。彼女がその身に滾らせるは殺意。 脅しでもあり、本気でもある。帰るならば良し。だが帰らぬのならば――そう言う事だ。 「殺すかはともかく、実力行使には出るよ! パンツもみられたしね……!」 「はぁ……応じてくれればこれで依頼完了して楽だったのに……」 「まぁ撃破は最終手段としても、覗きは犯罪ですし。痛い目にはあって頂きましょうか」 ルーメリアが、マーシャが、彩が――各々準備を整える。 殺すかどうかは置いておくとしても、アガリの態度を見るに一度痛い目にあわせなければ駄目なようだ。 何、この数の差ならば負ける事は無い。そもそも遠距離主体のアガリとの距離が既にほぼ無い時点で詰んでるような物だ――アガリが。 『え、ちょ、ま、なんで君達そんなやる気なん? おかしくない? パンツ見ただけじゃないか! 何が悪いって言うんだ――!』 「それが原因に決まってるだろうが――!」 アイリの叫びと同時、全員が一斉に動いた。 床に張り付くアガリに向けてそれぞれ往く。変態滅ぶべしッ! ●<×><×>ギャアアア――! 『う、うわあああ! こっち来るなぁ――!』 再び泣き顔に成りながらもアガリは抵抗する。 向かってくるリベリスタ。それらに対して己が目をすげ替える――メデューサの目へと。 「ッ……! この目は、さっきの……!」 ルーメリアの動きが止まる。否、あの目に捉えられた者の動きは高確率で止まるのだ。 メデューサの目。正しくその名の通り、見たモノを石のように“動きを止める”能力を持っている。中々に厄介な能力だが、 「つってもその眼に映らなきゃ問題は無いよな……!」 宗兵衛が印を切る。アガリの動きを止めんと、呪印を展開させたのだ。 空に浮かぶ無数の印がアガリへと行く。捕縛の動きであり、包み込むようにして対象をその場に括りつけようという訳だ。 『だが甘いッ! そう簡単には捕まらぬ!』 しかし速い。呪印の包囲が完成する前にアガリは床を滑る様に移動し、躱わしきる。 床を伝い壁へ、そして天井へと<●><●>模様は移動を続ける。文字の形たるアガリには重力が基本として意味が無い。床が、壁が、天井が――繋がってさえいればどこにでも移動できるのだ。 ただしそれはアガリだけの特権では無い。 「甘いのはそっちです! そうすれば逃げれるとでも思いましたか!?」 彩がアガリを追う。床を蹴り、壁を蹴って天井に張り付く。 ――面接着だ。こちらも足場があるのならどこにでも移動できる性質があり、アガリを完全に追えている。 「――ふっ!」 吐息一つ。冷気を纏う拳を<●><●>模様へと天井に叩き上げた。 快音と共に、模様が歪む。 『あ、あいたぁ――!? え、何で天井までこれてんの!? チート?!』 「チートでも何でもない。どこにでも移動できると自負があったか? ――安い自負ね」 「さ、て。それじゃあ折角の機会だから色々試させてもらいましょうか!」 シルフィアは戦闘の気配に感化されたのか、高圧的な言葉をアガリへちらほらと見せ始める。次いで即座に魔力によって毒の弾丸を作り出し、射出。さらに追随する形でマーシャが気糸を放った。 それは呪印とは違う形でアガリを捕えんとする。天井に張り付くソレを包み込む為に、アガリの周囲を気糸で包囲。その上で包囲を狭めて包まんとすれば、 『あ、ああ――! ちょ、これは、ああ体が痺れる――! ああ新しい感覚が体中を巡る――!』 「じゃあもう一つ刺激追加しようか――! 穿いてないナナも行くよ――!」 『Unlucky Seven』七斜 菜々那(BNE003412)が収束された黒きオーラを放ち、痛みを追加する。 アガリが何かに目覚めそうになっているが、これはもしかして新たな変態性の開花だろうか。それはそれで嫌だが、まあともあれ、 「アガリ様どうじゃろうか? 攻撃されるのも嫌じゃろう? そろそろ帰る決心を……」 『たたたた助けて白色木綿の少女――! 体が、体が痺れて上手く動かないの助け、え、なんで弓を構えて、というかそれどこから――』 次の瞬間、与一は無言で優しい笑みを携えながら――容赦なくアガリの左目を穿たんと矢を放った。ついでに極限の集中効果も併用しているので命中率がやばい。 ――着弾する。 『<×><●>あ――! 止めて痛い痛い――! く、くそう! こうなったら……!』 左目に特に酷いダメージを背負いながらも、アガリは再び目をすげ替える。 メデューサのでは無い。それは、特殊な目。 世界中の、いかなる謎をも、解き明かす。そう言われる悪魔―― ――“アガリ”アレプトの目。 『せめて最後にこの能力でパンツの色を判明させてくれるわぁ――!』 「ち、小さい! 能力の大きさと比べてやることが小さすぎる!」 やかましい、と言う時間すら惜しい。もうやられるのは目前だ。故に、誰のパンツを覗くべきか。 先程突っ込みを入れたルーメリアは駄目だ。もう青のストライプと判明している。可愛かったですごちそうさまでした! 与一も同様に白色木綿と言う事が判明している。言ったら凄い攻撃を入れられたが、何故だ。ヤーシュと菜々那は穿いていないらしいので調べる意味が無い。中身には興味ない、重要なのはパンツだ! 宗兵衛は男なので却下。となれば後は湊とシルフィア、そしてアイリだが―― 「今すぐ捕まえてやるからそこを動くなよアガリ……!」 声はアイリだ。右手に持ったタッパーで、今は天井では無く壁に張り付いているアガリを捕獲せんと向かって来ている。 ――丁度良い、彼女にすべきだ! 『今こそ我が力の全てを集め……パンツの色を、判明させるッ!』 知識が流れ込む。視線の先に居るアイリに関する情報が入ってくる。 彼女のパンツの色が、アガリの知識として認識される。脳髄に埋め込まれ、何よりも間違いの無い絶対な情報として入手される――どう考えても能力の無駄遣いである。 『……見えた! 色は――白! 純白を表す白でありますな!? 英語にするとホワイト! よっしゃあああ――! 好みの色キタコレ――!!』 「お、大声でばらすなぁ――!」 アガリをタッパーで閉じ込める前、アイリは顔を赤に染めながら、蹴りを連続的にぶち込んだ。意識が途絶えるレベルの連撃である。 そして瞬時、両目ともに<×><×>になったアガリを――アイリのタッパーで遂に捕獲に成功した。 ●<×><●>……ハッ!? ここは!? 「おやアガリ様気付かれましたか?」 湊の声が聞こえる。意識不明となったアガリが目を覚ました場所、それは学校の屋上。 その片隅には“穴”がある。――D・ホールだ。ここをアガリは通って来たのだろう。 「ね、ここまで来たら帰るよね? まさか帰らないなんて言わないよ、ね? どうなのかなー?」 『待って! 帰る、帰るからタッパーの中にレモン汁入れようとするのは止めて!?』 えー? と若干不満げなのはルーメリア。切ったレモンを片手に汁を入れようとしていた。苦手なのだろううか、アガリが本気で怯えている。レモンに。 「やれやれ……最後に大声で暴露されるとは思わなかったぞ……」 『おや先程の方――最後にもう一度直に見せていただけないでしょうか!?』 「なッ、直に、だと!? う、うぅ……もう二度と来るなよお前……!」 若干涙目な気がするのは気のせいだろうか。アイリは少し悩んだ末に――床に置かれているタッパー。それに恐らくは見えるだろう範囲で青のドレスを持ちあげれば――菜々那も<●><●>状態で―― 『ぐはぁ! 恥じらいながらのこれは……ダメージが極大で……!』 「は、はいはい! じゃ、放りこむので今度こそちゃんと帰ってくださいね!?」 アガリのテンションが垂直にマッハである事になんとなく危険を感じた彩が、タッパーをD・ホールへと放り投げる。 直後、穴の奥に消えるアガリを見送りつつリベリスタ達はD・ホールを破壊すれば、 「あ、下着の色は忘れてね――!?」 届くかどうか分からぬ声を放ちつつ――ロリコンの変態、アガリはここに消えたのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|