●大地に愛された竜 地面を迫り上げながら、大型のアザーバイドが三ツ池公園に出現した。公園の石片を吹き飛ばし、木々をなぎ倒しながらゆっくりと進むそのアザーバイドは大きなトカゲのような姿を持つ竜である。一目で重量級ということも分かった。 翼は大きく退化しており、飛ぶことができないのだろう。重そうな体をゆっくりと動かして歩くその姿はどこか堂々としており、目の前に現れたものをすべて踏み潰すブルドーザーのようでもあった。 重機めいた存在感を発揮するこの竜は我が物顔で三ツ池公園を闊歩し、その途中で現れたものをすべてなぎ払いながら進んでいる。幾つかのアザーバイドやエリューションがこの竜の進路上に居て、戦闘を開始したものもいたが、この竜の足を止められるものは未だ現れていない。 あらゆる攻撃は鋼鉄よりも硬い体に弾かれ、もし傷ついたとしてもしばらく経てば回復してしまう。そんな圧倒的な耐久力と、大地と石を操る能力。それがこのアザーバイドの持つ力である。 「ヴォォォォ……!」 竜がゆったりとした動きで太い腕を振り回すと、目の前に巨大な岩石のシャワーが現れて目の前にいる敵を蹂躙。お相撲めいた四股を踏めば大地の力が発動し、大地が割れてその裂け目に敵は飲み込まれていく。これがこの竜の攻撃だ。 これをモニターしていたアークはこの竜をグランドドラゴンと命名する。大地に愛され、大地の力を持つ竜であることから命名されたのだ。 この災害のような竜は、先に現れたという竜との関連性があるとされている。アザーバイドというのはそういうものといえばそうだが、竜というものは災害であるらしい。 カレイドシステムが見た未来によれば、この竜はこのスピードを維持したまま三ツ池公園の封鎖を突破。街に出てまるで怪獣映画のように暴れるという。 無論、それを見逃すアークではない。リベリスタたちに、この竜の退治を依頼した。 竜退治、再びだ。 ●竜退治、再び 巨大なトカゲのような無骨で力強い竜の姿は、暴力的な印象を与えてくれた。 巨大なその竜の姿を確認しながら、リベリスタたちは息を飲む。この竜に比べたら人はあまりにも小さい。一振りの動きによって一瞬で蹴散らされてしまいそうな、そんなイメージが頭の中で勝手に思い浮かぶ。 「……大丈夫?」 手製の資料を配りつつ、『運命演算者』天凛・乃亜(nBNE000214)は真剣な顔でリベリスタたちの顔を眺める。イメージに踏み潰されないか、飲み込まれていないかを確かめるように。 しかし、そこはリベリスタだ。心の力はそのイメージに負けていない。 「大丈夫みたいね。それなら説明をするわ」 それを見て一安心。肩の力を抜いて乃亜は説明を開始する。 「今回の敵はこの竜。グランドドラゴンと命名されたアザーバイドが相手よ。……少し前にも竜の出現が分かったけど、それとの関連はまだ不明ね」 まあ、何かあるかもしれないけど。と、乃亜は小さく咳をしてから説明を続ける。 「最大の特徴は再生能力よ。数分で自分の傷を完全に防いでしまうほどの力みたい」 厄介な力である。その上、体も硬く物理に対しても神秘に対しても防御力が高いという。 「体は重いけど、中々俊敏で対応力は高いみたい。何度も攻撃を仕掛けてくるわよ。油断はしないでね」 重いからといって、動けないという訳ではないらしい。ゆったりとした動きは余裕から来るものなのだとか。この世界も舐められたものである。 「攻撃方法は幾つかあるわ。石の雨を降らせる力に、大地を割る力。それに腕の爪を使った単純な攻撃と、鉄球を投げつける力もあるみたいね」 「鉄球?」 他はイメージしやすいが、鉄球についてはイメージが掴めない。思わずリベリスタが質問するのも無理はない。 「尻尾の先に鉄球を精製して、それを飛ばして遠距離攻撃するみたい」 なんとも不思議な体を持っているものだ。しかし、これがまた威力が高い遠距離攻撃であるらしいので、後衛も気を付けねばならないようである。 「喋ることはしないけど、知能もある竜みたい。作戦する時も慎重にね」 リベリスタが作戦を立てても、作戦が気取られれば対応されてしまうという。どうも、戦うには単純な方法か一工夫が必要らしい。 「単純だけど難しい相手。竜退治は難しいわね」 乃亜の感想に、リベリスタたちも頷いた。戦い辛い竜だ。 それでも、リベリスタたちは竜に挑む。人々を守るためか、それとも、竜殺しという名声を得るためか……。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:nozoki | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月21日(火)22:16 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●地を這う大型竜 今回の目標であるグランドドラゴンが通った後と見られるえぐれた歩道の上を走りながら、リベリスタたちは息を呑む。強いプレッシャーが道の向こう側から伝わってくるからだ。 「竜は災害……なら、振り払う」 そのプレッシャーと共に、上がっている土煙を言葉通り小手で振り払いながら『斬鱗』司馬 鷲祐(BNE000288)は走る。鷲祐の疾風に例えられる素早さで目指すはグランドドラゴンの正面。この強大なプレッシャーを放つドラゴンに対し、正面と側面から攻撃、という二面作戦をリベリスタたちは立てたのである。 「神話の怪物。神秘の秘奥。強靭なる肉体と類稀なる叡智を持つ竜が相手か」 竜が作った瓦礫の道を鋭い視線で見つめつつ、『鋼鉄魔女』ゼルマ・フォン・ハルトマン(BNE002425)は薄く笑ってみせる。長い銀髪をなびかせながら、脅威に向けて走り抜ける姿は美しくも神秘的であった。ドラゴンに負けず劣らず、魔女であるゼルマも神秘的なのである。 「ふむ、実に面白い。先にも別な竜が出てきたというが、竜とは同一チャンネルの存在なのか? それとも複数のチャンネルに竜という種族が存在するのか?」 そんな魔女が走りながら思案するのは、竜の形をしたアザーバイドについて。我々の知る竜と似たようなアザーバイドが複数体出てきた、という現象は果たして偶然なのだろうか。彼らはどういう存在であるのか、考えを巡らせても分からない。推測はできるが、真実は遠いのだ。 「何れにしても興味をそそられる」 スラリとしたスタイルの良い豊満な体をくねらせながら、魔女はプレッシャーを笑い飛ばす。 「最近は穴から出てくるモグラたたきのお仕事ばっかりしてる気がするね。まあモグラみたいに可愛いのなら大歓迎なんだけど」 グランドドラゴンが空けたと思われる大穴をひょいっと飛び越える『いつも元気な』ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)はいつものように元気な顔である。コロコロと表情は変わっているが、その中に絶望や大きな不安はない。可愛らしい笑顔がほとんどだ。 「それじゃ竜に対して私の力がどれだけ通じるか試しにいこっかな!」 ジャンプをして、翼を使ってくるりと空中で一回転。それからウインクをして、あくまでも明るい雰囲気を作っていた。どんな強敵であろうとも、ウェスティアは変わらない。いい加減ともいうが、それがウェスティアの良さなのだろう。 そして、リベリスタたちは大きな存在感を放つ竜の姿を確認する。資料からその大きさや形は十分に理解していたが、本物はやはり違う。独特の呼吸、プレッシャー。異質というものがそこに鎮座しているようであった。 「ドラゴン……。ゲームや漫画ではよく見るけど本物を目にすると流石に圧巻だなぁ……。気合を入れろ、悠里」 呼吸を整えながら、グッと手を強く握る『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)。握りしめた手のひらの中は熱く、自分の汗も十分以上に感じられる。気圧されている自分がいることに、気付く。 「さぁ、竜退治だ!」 それでも行く。仲間がいるから、剣にも盾にもなれる。平凡だった男でも、戦えるのだ。 「うわっ、怪獣退治だよ! あたしも巨大ヒーローに憧れてた! あたしもヒーロー!」 握った拳に力をこめるのは、『食堂の看板娘』衛守 凪沙(BNE001545)だって同じだ。打ち捨てられた子供だった自分が竜と対峙するスーパーヒーローになってしまっているなんて、と凪沙は自分で自分に驚いている。 「でも3分以上戦えないヒーローみたいに、あたしたちも長くは戦えないんだよね」 だけど、頭は冷静に回っていく。冷静な部分もあって、自分たちは十分竜と戦えるだけの実力があるんだと分かるから、怖さも飲み込めるし、どうやって戦うのかも頭の中で整理できる。焦ったりはしない。 そんな凪沙のように、リベリスタたちあくまでも冷静に、そして慎重にフォーメーションを組んで近付いた。それからそれぞれ自分の力を引き出すために付与を開始する。自らの力を高めてから、戦いを始めようという作戦だ。特に、地震攻撃を回避するための翼の加護を七布施・三千(BNE000346)が使うことは大きいと判断した。 「ま、まさかセッションじゃなくて、本当にドラゴンと戦うことになるなんて……」 しかし、それに気付いた竜は動いた。知恵を持つ竜は、一方的に有利な戦況を作ることを許さない。 「とあるRPGでは、こう言ってます……。竜と出会ったら、逃げろ。……または、諦めろ」 まず放たれたのは、振り下ろした腕と連動するように落とされた岩の雨。先制攻撃を仕掛けに来たのだ。 「だけど、僕は逃げません……。帰るところがありますから」 確固たる意思を持って石の雨の中をくぐり抜けようとする三千と翼の加護を受け取った正面のリベリスタたちだが、石の雨は飛ぶ鳥を逃さない。石の雨によって地面に叩き落とされた上に、ダメージは予想以上に大きかった。 「……でも!」 三千は傷ついた体を起こして耐えぬく。今は、タフを演じる時。 しかし、それを嘲笑うかのように足元が揺らぎ始める。見れば、竜は既に地面を巨大な四肢を使って叩いていた。 「グォォォォ……!!」 グランドフォール。竜は地面を叩き割り、地割れによって周囲を巻き込んでいく。 「ふむ、竜か……なにか昔。この十倍くらい大きさのヤツを相手した事がある様な無い様な」 割った地面の中に落とされながらも、『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)は真面目な顔で自分の記憶を疑っている。自分がどこから来たのか、何をしていたのかまったく分からないアラストールにとって、こういう引っかかりも大事な記憶の一部だ。 「……ともあれ竜に挑むは武人の誉れ、守護の為に剣をとるは騎士の誉れ。それらに恥ずべき事なき戦いをしよう」 だけど、今は竜退治が先決。割れた地面に叩き落とされながらも、頑丈な体を使って耐え抜いたアラストールはジャスティスキャノンを使って、竜の気を引こうとする。……が、狙いすぎた。 「……む、見た目に合わず回避はあるのか」 狙われた足を振り上げ、グランドドラゴンはそれを回避してしまう。後ろを見れば、かなりのダメージを負ってしまった仲間たち。しかも地面の中に叩き落とされたことで圧倒されてしまっている。 「調子に乗るなよ竜。すぐにバラしてくれる。」 「ドラゴンスレイヤーは英雄談の定番ですね。強大な存在故を討ち滅ぼすことで誇示する己の力、それに伴う名声や富。そういう称号に見合う敵、ということでしょうか」 「ドラゴンバスター……なかなかに魅力的な称号だ。確かに、戦い甲斐のある相手だと言えよう」 その上、一部の仲間――『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)と三千を庇った鷲祐、ゼルマはフェイトを使って立ち上がらざるを得ないところまで体力を削られてしまっていた。モニカはメイド服のスカートを手で払ってから、目線を竜に向けて無表情を向ける。その体は、予想以上のダメージを受けてしまっていた。 「ぶっちゃけドラゴンって、英雄と呼ばれる人間の為の噛ませ犬なんですよね。私は見ての通りただのメイドで名声や富には興味無いです」 しかし……モニカは何事もないような様子で重火器を取り出して構える。意外と余裕の表情だ。 「これと戦う理由は“仕事だから”で済みますので、とりあえず脇役に徹しておきます」 三千やゼルマの方を見ながら、ハニーコムガトリングによってとりあえずの目くらまし。 「中々言うではないか。ならば、ワシはその手助けでもしようかの」 ドラゴンが放つ石の雨から逃れるように位置取りを変えながら、ゼルマは天使の歌を使って正面に立っていた仲間たちを回復していく。そう、一度攻撃を食らったが、戦いはまだこれから先も続くのだ。 「唯一ぽっかり空いてる弱点に無理矢理にでもこの黒い鎖を通してみせる……!」 なので、ウェスティアは空中で葬操曲・黒を展開。体に押し込むように叩きこんでいく。この力で相手の足を引っ張ることができれば、この先を有利に進められると思ったのだ。 確かにそれは命中し、ダメージを与える。が、クリーンヒットには及ばなかったようでバッドステータスは発動しない。がくり、とウェスティアは肩を落とす。 「僕の拳、どこまで通用するのかな……。ううん、弱音を吐いてなんていられない。ただ全力で! 僕の全身全霊で! 拳を撃ちこむ!」 だけど、これぐらいで負けてはいられない。悠里は拳を合わせる。 ●再生する暴力 グランドドラゴンは超再生能力によって傷を塞ぎ、更には連続した攻撃によって大きなダメージをリベリスタたちに与え続けている。これによって、二部隊に別れたリベリスタたち全員が疲弊していた。 「皆の怪我を直したり、全力で戦えるように援護するのは、私達の役目。頑張ろう!」 故に、『おじさま好きな少女』アリステア・ショーゼット(BNE000313)は天使の息によって側面から攻撃するリベリスタたちの傷を防いでいた。攻撃を受けて何度もボロボロになっているが、その度に仲間と自分を回復させてきた。アステリアは現代に現れた竜退治に恐れを抱いてはいるが、今日も変わらずにがんばる、ということを信条にまっすぐ生きている。それにおじさまと素敵な時間を過ごしたい、という願望の実現のためにも負けらない。 「ドラゴンスレイヤーと参りましょうか。しかしモニカが同伴とは、倒されでもしたら後で散々バカにされかねませんわね」 傷ついた体を癒し終えた『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花(BNE000609)は低空飛行から舞い降りるようにしてグランドドラゴンへと接近し、炎の力を拳に込めて業炎撃を叩き込む。その一撃は狙い通りグランドドラゴンの体を炎上させることに成功。ダメージも与えられた……が、これはグランドドラゴンにとって大きなダメージとはならなかったようだ。 「流石に、硬くて太いですわね……」 脚が。 「ドエロなセリフが聞こえた気がしますので、そろそろ本格的に反撃しましょうか」 そうモニカが笑った時、グランドドラゴンは再び動き出した。炎上し、感電、出血させられている体はダメージを受け続けているが、それでも超再生能力が上回る。今までのダメージはもうほとんど消えてしまっていると言ってもいいだろう。 「この反応は、焦り? ……少し、聞いてみます」 グランドドラゴンには知恵があるという。このタイミングで動いたのを、焦りや恐怖だと考えた三千は感情探査を使って調べてみる。もし、焦っているのだとしたら自分たちにも付け入る隙がある、と思ったのだ。 (カエリタイ……アノバショヘ……。カエリタイ……) 「えっ」 それは、戦いの感情を覆い隠すほどに大きい帰郷の感情であった。その理由は三千もよくわからない。 「来るよ! 気をつけて!」 そんな三千の耳に、凪沙の大きい声が入ってくる。ハッとした三千の前に、石の雨が現れる。あのストーンシャワーだ。よく見れば、向かい側に居る別のチームをストーンシャワーを食らっていた。……同時に動いたのだろう。 「負けてられないんだ! 僕達は! こんなところでぇ!」 「危ないっ! って、やっぱりいたいーっ!」 「……くっ。弾幕にも怯まないか」 かけ直した翼の加護の力もあったが、リベリスタたちは地面に叩き落とされる。その際に、かなりのダメージを負ってしまい、悠里はフェイトを使って立ち上がる。アリステアを庇った『ハッピーエンド』鴉魔・終(BNE002283)と後方の『Star Raven』ヴィンセント・T・ウィンチェスター(BNE002546)もまた、大きな岩が直撃してしまい、フェイトを使って死の運命を跳ね除けねばならなかった。 「だが、これで……!」 攻撃を終えたグランドドラゴンに対して、反撃のチャンスが生まれる。そう思った。 しかし……グランドドラゴンは更に彷徨し、傷ついた足で地面を踏む。この動きは先にも使われたグランドフォールだ! しかも、二連続のストーンシャワーによってリベリスタたちは地面に落とされている。 「さすがは地の名を持つ竜といったところじゃのう。……なるほど、こんなものと対峙すれば人は恐怖するものじゃて」 「目障りな敵を一気呵成に打ち砕くということか。しかし、――来て早々に悪いが、お帰り願おう来訪者」 冷静さを失わないゼルマやアストラールを地面の中に叩き落としながら、グランドドラゴンは吠えている。何かを呼ぶ声なのだろうか、それとも勝ち誇っているのか、それは分からない。分かるのは、リベリスタたちが壊滅的な被害を受けたことだけだ。 「くっ……だけど、まだ私は戦える。いざとなれば、盾にだって……!」 「まだ、チャンスはある! 私の力で呪縛できれば!」 凪沙は傷つき、ウェスティアと彩花もフェイトを使ってしまった。 「……こんなことまでして、どこに帰りたいの?」 だからこそ、分かる。ここからが、最後のチャンスだ。あの再生能力、そして攻撃力。どちらをとっても、このチャンスを逃せば後はズルズルと敗れるだけだろう。 「俺の速さがタイムアタックのトリガーだ。……神速で斬り抜ける!」 鷲祐が先行し、攻撃を仕掛ける。これに合わせて攻撃を開始することで、一斉攻撃により一点集中された火力でグランドドラゴンを突破しよう、という作戦だ。とはいえ、味方を庇ったことで動けない者もいる。果たして火力は足りるだろうか……? 「地面は力で砕いてぶつけるものじゃあない。共に跳ねるものだ。俺の足が地に力を掛け、地がそれを受け取り、俺を加速させる。――真に地の力を得るのはっ、どちらかなッ!」 ともかく、鷲祐の攻撃は成功した。集中を重ねたソニックエッジはクリーンヒットし、爪を剥いで四肢を傷つけていく。 「あたしの掌打は骨から壊すよ!」 体の硬さなんて関係ない、と凪沙の土砕掌が前足に叩き込まれる。叩き込まれた土をも砕く拳は、前足に致命的なダメージを与えていった。 「一気に決めてやる! 皆でやれば!」 これまでやってきたように、悠里は全身の力を込めて壱式迅雷を前足に何度も叩き込む。そして、腰に力を入れたその拳はその足を吹き飛ばす。 「じゃあ! 次はこっちだねー!」 「堅さに精度で対抗し、貫きます」 カルマのソニックエッジが本体を狙って放たれて、竜の鱗を吹き飛ばし血を流させる。それに合わせるように、ヴィンセントの1$シュートが血の内部へ入り込み、えぐり込む。 「わたくしの実力、とくと御覧なさい!」 更に痛みを与えようと、壱式迅雷を彩花は流される竜の血に向かって使用した。 痛みで、グランドドラゴンは吠える。そして吠えながら、バランスを崩して倒れた。 「やったか。という場面でしょうが、トドメを」 「これで最後! 私の力でババーンとやられちゃえー!」 空に浮かぶは黒い魔方陣。低空飛行しながら空中に描かれた葬操曲・黒は、地面に抉り込むようにしてグランドドラゴンを囲い込み、その身を包み込む。そして、そこにモニカの火力……1$シュートが集中した! 黒が空間を包みこみ、次いで爆炎が上がる。 「……地はいつも俺を支えてくれる。その力の一端、貰って行くぞ」 「……ふむ。竜の遺骸を得る機会なぞそうそうないじゃろう」 安堵して、ゼルマと鷲祐は周囲に目を向ける。戦いの跡から、何か使えそうなものがないかと探っているのだ。 しかし。 「危ない!」 三千の声に続くように、黒い塊――いや、球体が二人の前を掠めていく。これが示すのは、鉄球攻撃。グランドドラゴンの健在。 「……どうやら、ここまでのようですね」 ヘビースマッシュをするために剣を構えたアラストールだが、その信じがたい光景を受け止めて判断を下した。 吹き飛ばしたはずの足が、再生し始めている。それだけではない、与えたダメージもかなり回復されてしまった。 「撤退しましょう」 「ドラゴンに会ったら逃げろ……か」 こうしてリベリスタたちは、敗走した。 石の雨をゼルマとアステリアの天使の歌で切り抜けながら、歯噛みする。 戦いを続ける力は、もうほとんど残っていなかった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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