●風を裂く刃 朝。日が差し込み始めた三ツ池公園に、一体の大型アザーバイドが出現することがカレイドシステムによって分かった。閉じない穴が出現した閉鎖中の三ツ池公園は不安定である。大型のアザーバイドが出現したことも、その影響だと考えられた。 そして、そのアザーバイドは大型であったからアークは警戒態勢を強め、注意してこれに対応することになる。フォーチュナが分析を行った。 その結果、アザーバイドは龍の姿をしており、スマートな戦闘機を思わせるフォルムであることが最初に分かる。 次に、その翼を使って超高速で空を飛び回ることが分かると、アークは増々危機感を強めた。もし、これを放っておけば の閉鎖を抜けてしまうかもしれない。超高速で飛び回るようなアザーバイドに閉鎖は対応しきれないのだ。 この為、アークは急いでリベリスタを集めることになるのだが、その間にもアザーバイドのデータは集められた。 それによると、この龍のアザーバイドは風を操る力を持ち、更には風切りの刃を持つという。しかも、風を操る力はかなり強力なものであることも分かった。暴風というだけではなく、周辺を一気に壊滅させるほどの刃を生み出すことができるようだ。 この暴風による風の刃を作り出すことから、このアザーバイドをアークはストームドラゴンと命名。撃破の依頼をリベリスタたちに頼むことになった。 まるで台風のようなこの龍を三ツ池公園から取り逃がしてしまえば、日本中に大きな被害を与えてしまうかもしれない。 リベリスタたちにも、大きな期待と責任がかかる。 ●対決、ストームドラゴン 貼り付けられた画像データには、スマートである種のカッコよさを備えた大型の龍が映っていた。顔こそ怪獣であるものの、まるでアニメのヒーローのようでもある。 「このアザーバイドの名前はストームドラゴン。見ての通り、龍よ」 集められたリベリスタたちを前に、『運命演算者』天凛・乃亜(nBNE000214)が説明をする。 「最大の速度はマッハ2.0以上。だけど、そのトップスピードになるまで時間がかかるみたい。……だからこそ、私達にも勝機はあるわ」 資料の中あるアザーバイドの体内データが根拠となることを、乃亜は難しい用語を並べて説明していく。要約すると、飛び立ってからすぐに手が出せないようなスピードにはならないようだ。 「それでも、非常に素早いわ。その上、風と電気、それに雪を操るみたいなの」 その体全身が雲のようであり、体内の細胞を活性化させることで雷を生み出し、水分を凝固させることで雪を作ることもできるという。それに風の力も合わさり、豊富な全体攻撃を持っている。 「速さ、対応力。その二つが強力な敵といえるわね。……でも、それだけじゃなくて他の能力もあるみたいよ」 龍である。龍であるということは、強靭な肉体を持つというイメージがあるが、その通りでもあるらしい。爪も非常に鋭く、これを使って攻撃を弾くこともあるようだ。 「とにかく、厄介な風の龍よ。暴風に負けないように、がんばってね」 リベリスタたちを見つめる乃亜の目には信頼がある。このフォーチュナは厄介な敵であるということは十も承知だが、リベリスタたちが頼りになるということは十も二十も承知だ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:nozoki | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月15日(水)23:40 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●風の竜と対峙する者たち 作戦のため、閉鎖された公園内部に侵入を始めたリベリスタたちを待っていたのは、遠くからでも感じられる圧倒的なプレッシャーだった。油断すればすぐに気圧されるような、強い威圧感だ。 それは強風に乗ってやって来る異質なもので、アザーバイドが異世界の存在であるということを強く感じられるものであった。 「件の穴からは様々モノが顕れるのは想定しうる事態でしたが、まさか龍とは……」 風を一身に受け、緑の髪と魔導師の服をなびかせながらも『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)は両手を重ね、祈るようにしてその先を見据えていた。 「ですが、例えどれだけ強力な相手であっても、危険な存在を解き放つ訳には参りませんね。必ず此処で止めてみせましょう」 三つ編みを整え直して、暴風に向けて気丈に立ち向かう。どんなに強い風だろうとも、どんなに強い相手であろうとも、カルナが引くことはない。そこに可能性がある限り。守るべき人達がいる限り。 例え、理想が遠くとも。 「ドラゴンかー。ボクは初めてだけどアンタレスはどうなのかなー?」 首を傾げてクエスチョンマークを出してから、愛用の武器アンタレスに問う『吶喊ハルバーダー』小崎・岬(BNE002119)。かつて、熟練の使い手の元にあったというハルバードは、その問いには答えない。何か会ったのかもしれないし、何もなかったのかもしれない。真相は、分からない。 「どんな凄い相手だろうとボク達がやることは同じだよねー。さあ狩り立てに行こうか、アンタレス」 とはいえ、そんなことは岬にとってはそれほど重要ではない。いつもの通り、アンタレスの力を少しでも引き出し、敵を倒すのみだ。今日は少しだけ強い大きなトカゲだけど、それでもアンタレスに斬れない敵はないと、信じている。 もし、失敗したら自分の力量不足だ。 「やるぞー。おー」 少なくとも岬はそう思っている。 「竜狩りはゲームの方が面白いんだが。剥ぎ取る楽しみもないしな」 くすくすと笑いながら、ゲームの中で見てきた竜を『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)は思い出す。竜はいくつも退治してきた。現実ではそうではないけれど、ゲームの中ならば苦労しつつも倒すことができたのだ。ならば、この竜とて苦労するだろうが、倒せるはずだろう。バトル好きのユーヌはその苦労を楽しみにしながら、くすくすと笑っている。 「せめて狩り一回分の時間ぐらいは持ってくれよ?」 長い黒髪が強風で流されていく。スレンダーで、細い体は吹き飛ばされそうなほどの風だ。 だけど、悪魔は微笑む。 「空に輝く星は、いつか落ちるものだ」 余裕を覆う大きな想いを胸に抱いて。 「今回の相手は、竜か……。良いねぇ、燃えて来る相手だ」 両手の甲と甲を勢い良くぶつけ、風に立ち向かうように手を振り上げるのは『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)だ。その心には、どんな風にも消せない蒼い火が宿っている。 「全員で空から地面に引きずり込んで、そのまま押し切ってやンよ」 空に向けて拳を向けて、風を切って先陣を走る猛の目には、強敵と戦えることへの嬉しさが宿っていた。健全なものとは言いがたい感情ではあるが、猛はそれを感じさせない、爽やかな顔をしている。これが熱血だ。 「古今東西に伝説としての題材にある竜退治を実践することになるとは予想外ですが、これからもどんどんと色々に出てくるでしょうね」 対照的に、風に逆らわず冷静に状況を判断しているのは浅倉 貴志(BNE002656)である。こちらも猛と同じように拳を握って戦意を高めているが、その呼吸は整えられており、心は水の流れのように穏やかである。 「特に今回の敵は飛行している敵。気を引き締めて倒さないと」 そんな貴志は、敵の飛行能力を高く評価する。ただの飛行能力ではない、最高速度がトンデモないスピードとなるような戦闘機ドラゴンの飛行能力だ。 叩き落とさなければ勝機はない。猛と同じく、貴志もそう思う。 「自然を操る能力とその速さ、力の象徴たる竜の名に違わない強大な存在ですね……。捨て置けば、きっとこの世界に少なくない破壊をもたらすのでしょう。竜とは力であり、暴威とはそういうものなのですから……」 暴風が近づいてきた。『蒼銀』リセリア・フォルン(BNE002511)のポニーテールはそれを敏感に感じ取って、こぼれ落ちそうになる。 リセリアはそんなポニーテールを整えなおし、息をゆっくりと吐いて心を整える。風から伝えられるプレッシャーに負けてしまえば、自分も暴威によって蹂躙されるのは確実だ。 ……ひょっとしたら、人もリベリスタも歯牙にもかけないような存在なのかもしれない。 「――だから。例え竜が相手であっても臆する訳にはいきません。全力を以って、ここで討ちましょう」 剣を取り出し、勢いを付けて構える。構えるだけでも、気持ちはかなり違う。いつの日か、と憧れたあの背中に少しでも近づけるような気がする。 「私は、リベリスタは引きません。あなたを倒すまでは」 胸と剣に手を置き、リセリアは空を見上げる。 そこには、空気の歪み。 爆風のような衝撃。次いで、空気を振動させながら現れるのは戦闘機のようなフォルムを持つ巨大な竜。飛翔天候操作大型竜アザーバイド、コードネーム“ストームドラゴン”。咆哮と共に登場。 「うわぁ、かっこいい……って見とれてる場合じゃないわ」 その衝撃と登場のインパクトに、『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291)も普段のぼんやりした感じから、戦闘モードへと移っていく。のほほんとした言葉の端々から、やっぱりぼんやりしているような気もするが、恐らくは気のせいである。 「こんなのが街に飛んで行っちゃったら大変なこと。絶対ここから逃しはしません」 改めて、気の強い目線をストームドラゴンへと向ける。強いと感じていた風は、ここに来て今まで以上の衝撃を与えてきており、ニニギアのウェーブも吹き飛んでいってしまいそうになってしまう。 それでも、やはりニニギアはマイペースだ。自分の力を十分に引き出し、このプレッシャーの主と戦おうとする。しっかり者だ。 「キライじゃねぇぜ、分の悪い喧嘩はよ……」 仁義上等、と空のバケモノに向かって強い視線を向けて、桐生 武臣(BNE002824)は静かに吠える。自分に向けて、吠えている。 「……仲間とならよ……蒼穹の空でも手は届くんだぜ」 強い風によってタバコは既に使い物にならない。だけど、武臣は咥えながら笑う。 この強い風でも、どんな暴風であっても、心の中に宿る炎は消せないのだから、次に点火するその時まで銜えているつもりだ。 リベリスタたちを狙って、ストームドラゴンが羽ばたく。風を纏い、雨雲を作り出す。 とんでもない力を持つ竜との、戦いが始まった。 ●暴風竜 ストームドラゴンとの戦闘に入り、最初に飛んできたのは強烈な風の攻撃であった。公園の土やコンクリートすらも吹き飛ばすような、強烈な風が刃となってリベリスタたちを切り刻んできたのである。 「ヤバいのを仕掛けてくる! 構えろ!」 「ウインド・ストライク……!」 カルナはその技の名を呼ぶ。記載されていたデータ通り、自分たちでは対処できない距離からの攻撃で、その威力は高い。 「今回は、余所様の天使を守る役目につかせて貰ったんでな。そう簡単に沈んじゃやれねえ……!」 暴風の刃を受けきったリベリスタたちであったが、その体に切り傷が幾つもできていた。特にカルナを庇った猛は、風の刃によって与えられたダメージが深刻だ。耐えきれない程ではないが……。 「……ッ!」 しかし、そんな猛をあざ笑うかのように、もう一度風の刃……ウインド・ストライクが放たれる。再び、リベリスタたち全員がダメージを負って、ほとんど瀕死というところまで追い込まれる者や、フェイトを使って復活せざるを得ない者が現れる。 「まだだ、まだ終わらねぇぜ! 俺とお前の喧嘩はよぉ!」 「竜……。正直、怖いですが……ま、怯えている場合じゃありませんか」 猛は叫び、ニニギアを庇い続けていた『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)も心で叫ぶ。こんなところで倒されてたまるか、と。 「まったく、非常識なやつだ……」 ユーヌもまた、その風の刃に晒された体を立ち上がらせるためにフェイトを使わざるを得なかった。ボロボロになった服を纏う自分を自嘲的に笑いながら、まるでゲームや漫画の主人公のようだと思う。 「さあ、ここからが反撃……?」 笑いながら、ユーヌは違和感を覚える。風の振動はまだ、止まない。 風の刃は、再び放たれる。 「開幕三連発とかクソゲーすぎるだろー」 岬の言うことも最もである。ウインド・ストライクはもう一度放たれ、リベリスタたちを襲ってきたのだ。 それはギリギリのところで踏みとどまっていたリベリスタたちの膝を付かせ、気力とフェイトを振り絞って立ち上がることを強いる。 「私……はっ!」 リセリアは立ち上がりながら歯を食いしばって、血を飲み込む。体は、早くも限界を迎えている。これが竜の力だろう。 「負けませんよ!」 「……ん。風、すごい」 「必ず守る! この手でな!」 貴志もまた、体の底にある気力を振り絞って立ち上がる。後方で回復の準備をしていたエリス・トワイニング(BNE002382)を庇う武臣もフェイトを使って立ち上がった。皆、かなりのダメージを負っている。 「改めて、ここから反撃しましょう! フォーメーショントライアングルです!」 だけど、ここで敵の攻撃を耐え切ったのだ。リベリスタたちは体勢を整えながら、事前に打ち合わせをしたフォーメーションを作っていく。 「皆さん、厳しい場面ですが。力を合わせて戦いましょう」 「ありがとう! すぐ治すわ」 この場面で、カルナの聖神の息はその力を発揮した。傷つき、ボロボロになっていた仲間たちの体が一気に回復していったのである。それに加えてニニギアとエリスが天使の歌を使うことで、リベリスタたちの体は全快していく。 「さて、竜を落とす時が来たか。こう言うと、まるで私のヒロインみたいだな」 ユーヌが呪印封縛を飛ばして、空を飛ぶ竜の体を叩き落とそうとする。しかし、暴風の中にその呪印封縛は阻まれてしまい、逸れていく。 「動きが一瞬止まれば問題ない。打ち落とす隙は十分だろう?」 逸れたとはいえ、呪印封縛は命中。その身を一瞬だけでも止めた。 「今です!」 そこにリセリアのソードエアリアルが飛んでいき、翼を切り裂いてダメージを与えていく。 「……また来る!」 それでも、自分たちの力を高め、フォーメーションを整えている間にストームドラゴンは再び動き出してリベリスタたちを攻撃し始めた。今度は接近した者たちを迎撃するために雷を落とし、雪を発生させる。 この雷は命中精度が低くそれほど大きな損害を与えなかったが、ダイヤモンドダストという名を持つ氷の力はリベリスタたちを凍らせ、ダメージを蓄積させていった。この攻撃はリベリスタたちに膝を付かせなかったが、動きは封じた。 「……歌を」 「私の役目は全力で癒すこと!」 エリスは聖神の息吹を使い、ニニギアが天使の歌を奏でていく。これが傷を直し、再びリベリスタに戦いを挑ませた。 ……しかし。 ●翼と共に リベリスタたちは、既に追い込まれていた。敵の攻撃は三人の回復役が回復を重ねることで何とか耐え切ることができるが、ユーヌの呪印封縛がうまくいかず、動きを止めることができない。 「……ちっ! 上等だ!」 「うまく当たらないなー。やっぱり速いー」 武臣のバウンティショットや岬の疾風居合い斬りが翼に傷を与えていくものの、地面にたたき落とすというところまではいかない。 「また、攻撃が来ます……!」 カルナの悲痛な声が響き渡る戦場に、風の刃と雷、それから極寒の雪が連続で発生する。 「……まだ、私は」 「ここまで、なのか……?」 天候を操作することで発生したありえない猛攻を受け、リベリスタたちは次々に倒れていく。うまく攻撃を当てようと集中していた『初代大雪崩落』鈴宮・慧架(BNE000666)、『赤光の暴風』楠神 風斗(BNE001434)もかなりのダメージ量によって追い込まれていた。 それに、何度も何度も攻撃を受け続け、回復役を庇い続けていた猛たちも地面に倒れ伏しており、うまく立ち上がることができていなかった。 歯を食いしばっても、地面を掴むことしかない。 誰もが、負けを想像した。 だから、その男は決断をする。分の悪い喧嘩 「あんた、喧嘩をするんじゃなかったのか?」 男は“侠”であった。そして、猛と同じく竜という怪物と喧嘩をするために、ここにやって来ていた者だ。 「そう、だな……男の喧嘩は、最後の最後まで分かんねぇよな。竜だろうが、なんだろうがよ。俺にとっちゃあ、こいつはただの“喧嘩”だ。なら、負けちゃなんねえ、負けられねえ……! 最後の最後まで、指の一本でも動くなら諦めねえさ……!」 男に励まされ、猛は立ち上がる。かつて、男が“侠”に教えられた時もこうだったかもしれない、と男は自嘲する。 「負けねぇよ……俺達は進み続けるんだ」 運命は、男たちと共にまだ立ち上がる。 ストームドラゴンの翼は健在だ。だが、それでも傷はついており、時折地上に降りてこようとする素振りを見せている。 「独りじゃてめぇには届かねぇ……だからよ。オレが誰かの翼になる…誰かが他の誰かの翼になる。見えるだろう……てめぇにも、“オレ達の翼”がよ……!」 バウンティショットが肩を貫き、ストームドラゴンの高度を少し下げる。集中力と共に放たれたそれは、素晴らしいショットであった。 「この世界の空は、貴様のものでは無いっ!」 更に風斗が放った疾風居合い斬りが、ストームドラゴンの体を切り裂く。これによって、更に高度は下降。 「とりゃー」 そのタイミングで、棒高跳びの要領でストームドラゴンの背中に飛び乗った岬。揺れる背中にわわわっ、と焦ったりはしたものの、なんとかアンタレスを振り上げる。 「一緒に落ちる? 落とすんだよー」 そして、下方向へのメガクラッシュを叩きつける。槍斧を叩きつけられた竜の体は、地面へと落ちていく。岬の言葉通りに。 「この一撃に全力を賭けます!」 そのチャンスを慧架は逃さない。今まで貯めていた集中をすべて解き放った大雪崩落を放ち、地面に叩きつけた。 叩きつけられた竜の巨体はいともたやすく跳ねていき、今まで見せなかったような隙をさらけ出していた。 「やらせてもらうぞ、竜殺し!」 隙を突くように、風斗がオーララッシュを連打してストームドラゴンの傷を広めていく。 「暴風も雪も雷も、もう沢山です。私は晴れ空が見たい」 うさぎは接近してからのメルティーキスをしながら、横目で明らかに消耗している武臣を心配していた。 「力なき正義は無意味……だから僕は力を欲する……」 自分の無力さを口の中で強く噛み締めながら、貴志は魔氷拳を放つ。思いを乗せた氷の拳による力強い一撃は、ストームドラゴンが纏っていた水分を一瞬で凍らせ、その体を固定化させた。チャンスである。 「総攻撃チャンス……っ! 行くぜ、リセリア!」 「リセリア、頼んだ。あいつはもう、落ちている」 「おまかせください! 竜殺しなら私も……きっとできる!」 そこに飛び込んだリセリアがアル・シャンパーニュを叩き込み、ユーヌが陰陽・星儀によってストームドラゴンの星回りを不吉に変えていく。 「動くなよー。攻撃が外れるからー」 更に岬がアンタレスを地面ごと刺して、その体を固定化する。 そして、猛が構えている。両手を合わせて、勝ち誇った顔で拳を握っていた。 「悪いな。この喧嘩、俺の……俺達の勝ちだ」 リセリアの顔を見てから、自分の拳に力を込め……土砕掌がストームドラゴンの体に炸裂する。炸裂した衝撃は体の芯ごと竜の体を吹き飛ばし、バラバラに変えていった。跡形もなく。 こうして、空の竜は敗れた。 男の拳と、運命の力の前に。 「……帰りな魂だけでも……オマエの空によ……」 一枚だけ残った鱗を手に武臣は笑う。 「あばよ“空の王”」 ボロボロの体を無理矢理動かして、タバコを咥えて火を付ける。 味も分からぬタバコを味わってから男は、侠は空を見上げた。 そこにあるのは、この世界の澄んだ青空。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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