● マイノリティだけどさ。 その中でも、マイノリティってどういうことさ。 畜生、幸せそうに寄り添いやがって。 俺は叫ぶぞ、フロアの真ん中で叫ぶぞ。 「リア充、爆発しろ~!!」 どっか~ん!! ● 「イン・ザ・ゲイナイト」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)がそう口にし、モニターに某二丁目的な映像が出たあたりで、リベリスタの何人かが、ガタガタと椅子を蹴倒して入り口に殺到した。 すいません頭が腹痛で腰が歯痛なので早退させて頂きます。 ――開かない。 「電子ロック。諦めて、着席して」 分かってたけど、夢も見せてくれないんだね。ひどいや、イヴちゃん。 「革醒したてのもてない人が、フロアの真ん中でリア充爆発しろJ・エクスプロージョン無双。一般人には致命傷。というわけで、その前に止めてきて」 「どうやって」 「要するに、非モテじゃなければいい訳だから。ナンパして、ちょっとお話すればいいと思う」 あの、ほんとに腕の邪気眼が暴れだすんで勘弁してください。 「人の生き死に掛かってる」 イヴの言葉が重い。 「ゲイナイトなので、基本ゲイでないと入れない。一番面倒がないのは、ゲイカップル偽装して入る。ちゃんと中でもカップルしてね。ばれたらつまみ出されるよ」 なんだろう、背中が寒いよ。 「女子も一応入れるけど、死ぬほどアウェイだから。何でこんなところにいるのってGを見るような目で見られると思うけど、負けないで」 さもありなん。 「ちなみで一人で入店する人も決めてね。危険だけど」 なんで。 「このお店、ゲイナイトに一人で来るってことは、ナンパしてって意味になるらしい。次から次へとナンパされて、身動きできなくなるかも」 ひゃっほう。モテ期到来! ……したら、泣ける。 「でも、ナンパする必要上、カップルの一人がナンパに行ったら修羅場な感じで面倒なことになりそうだし」 あ~、そうね。 「件の彼は、一人なのにも関わらず。お呼びかからず。というか、このお店に集まるお客のニーズにあってないからってのが一番なんだろうけど」 それも泣けるね。いや、もてたいわけじゃ、ないよ。ないよ!? 「大丈夫。人間死ぬまでに一回はモテ期来るらしいから。この人もいつかはモテルハズ」 何で最後の方、片言なんですか。 「でも、自分がもてたことがあるって自信は、プラスに働くはず。がんばって励ましてきて」 なんかいい話に持っていって、僕らのやる気を上げようと努力してくれる幼女、まじエンジェル。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月08日(水)22:30 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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● 「こんばんは、可愛い子猫ちゃん。今夜は1人かな? こんな可愛い子と出会えるなんて今日の俺はすごくついてるね。よかったら今から一緒に飲まない? 今夜は寝かせないぜ」 『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639) 、アークが誇るジーニア腐ランダル。 そんな彼女が有頂天。 今日の仕事場は、まじガチ現場だ。 二次元サイコー! だけど、生ものも嫌いじゃないよ! 「そんな感じのゲイ♂ ナイトフィーバー!!!!!」 『二正面乙女』ツヴァイフロント・V・シュリーフェン(BNE000883)は、大正趣味での男色小説好きである。 正しく硬派好きである。 恋人ではなく、念者である。 そんな夢見がちな、独逸の、乙女だ。異論は許さん。 逃げろ。 リベリスタも、フィクサードも。生きている者も、死んでいる者も、有機物も無機物も、形而上学の存在も、男だと自認するなら、今すぐ逃げろ。 彼女らは見逃さない、躊躇わない、諦めない。 BLを、男色を愛しているからこそ、それを怠らない。 逃げろ。目に留まったら、最後。 掛け算されるぞ。 (コ コ は 地 獄 だ ) 『正義のジャーナリスト(自称)』リスキー・ブラウン(BNE000746)、口からエクトプラズム出てる出てる。 (綺麗なお姉さんばかりの天国への道はどっちですか? 蜘蛛の糸とか垂れてませんか?) 悪いがこんなところに糸たらしてるクモは、きっと801号だと思うよ。 そんなリスキーと今日コンビいやさ偽装カップルを演じる『淋しがり屋の三月兎』神薙・綾兎(BNE000964) の態度はなんとなく照れてるというかとげとげしいというか、というか嫌われている感じはしないしこれから痴話げんかのはずなのでそれでOKというか、これはアレですね、ツンですね分かります! (中性的だし、女だと思えればいけるんじゃないか。そうだ。こいつは女だ。男装令嬢とかそんなの) 目にうろこオン! 大丈夫! 節分に男の娘と楽しく恵方まきも食べられたし! 今日のリスキーも輝いてるよ! 『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)は、恋人からそっと手渡されたお守りを握り締めていた。 『絶対に負けてはいけませんよ……!』 絶対に負けなかった恋人の励ましの声が耳の奥にこだまする。 (僕は、恋人のためにも、自分のためにも、社会的に死ぬ訳にはいかない……!) 社会的死亡は、運命の恩寵を以ってしても修復は如何ともしがたい。 すなわち、一切の妥協は許されず、最後まで立っていなくてはいけない。 過酷な戦場となることを、死地の臭いを、この一ヶ月数多の戦場を駆けてきた、かつての「臆病者」は、感じ取っていた。 悲壮感たっぷりの悠里に、ねえねえと声が掛かる。 「……相談している時から思っていたけれど、こんな素敵なお仕事なのに、始まる前から疲れてる子が多くない?」 一部参加者が暴れたせいで、ブリーフィングルームの電子ロックがぶっ壊れ、ついでに金属ドアがへしゃげてまともにドアが開かなくなり、修理が終わるまで本気で部屋から出れなくなったのは、いい思い出である。 『メカニカルオネエ』ジャン・シュアード(BNE001681)は、楽しそうだ。 一緒にカップルする柿木園 二二(BNE003444) は、なかなかキュートだし! 「うふふっ、あたしはやる気満々よ! 不束者だけれど宜しくね」 お辞儀した後、ウィンク! したのは分かるけど、ゴーグルしてては、よく見えない! 楽しそうなのはジャンだけではない。 「パーティーに行くのだから少しはお洒落しておかんとな!」 『眼鏡っ虎』岩月 虎吾郎(BNE000686)は、ごりマッチョである。虎だけど。 白を基本としたスーツに白いコート。白い帽子にサングラス。 とどめに葉巻。 「ふむ、これで完璧じゃな」 素敵です。おじいちゃま。 (ダークナイトの後釜のジョブがまさかゲイナイトだったなんてな。頼む、智親、早くジョブチェンジ実装してくれ ) いや、ゲイナイトのナイトは、Kから始まるナイトじゃないから。 『いい男♂』阿部・高和(BNE002103)の頼みといえども、それは危険。じゃない、聞けん。 いつもの青いつなぎがまぶしいです、それ勝負服という名の戦闘服ですかそうですか。 (さて、心情察するが暴走したならば容赦はせぬし出来ぬ。暴走する前に何としても思い直して貰わねばなるまい) 『我道邁進』古賀・源一郎(BNE002735)、あなたがこの場の良心……って、あれ。 どうして肩に真空管つけた我らがメカフォーチュナに唯一無二とか特別な存在とか大切な人とか……マブダチは分かった。それはいい。 でも、ラブリーって? どういうこと? さあ、いざ征け、男子。 一人の革醒者と一般ピープルの命が掛かってるから。 大丈夫。 一部のいい男を除いたみんながノンケだってことは「大事な萌え要素」だから、腐女子が覚えていてくれるから。 ● 偉い人は言いました。 「斜め前髪毛先15センチカール甘ワンピと、短髪ヒゲガチムチピチTというのは、愛され系という点でイコールである」 そして、そういう愛されファッションの中にちがうのが混じってると、すごく目立つ。 識別名「もてない君」はっけ~ん。 (((あれかぁ……))) 土佐犬の中に柴犬を放り込んだ感じといえばわかるだろうか。 (あれとカップリング……いじめっ子系副会長。もしくは熱血系運動部の先輩、いやさ、同じくなごみ系の先輩……) 腐女子は、呼吸するように掛け算の試算をするものである。 それはともかく、もてない君の好みと思しき頼れる、お爺ちゃん枠虎吾郎、誠実派兄貴枠源一郎、危険な兄貴枠阿部、年が近いお兄さん枠悠里がナンパという名のアーク勧誘に勤しむことになっていた。 アークなら、きっと受け止めてくれる頼もしい人がいるはずだ。 他力本願? そんなことないよ!? そんで、カップル三組がスムーズにもてない君に到達できるよう、いろいろ騒ぎを起こす算段だ。 待ってろ、もてない君(仮)。 今、君の暴走を止めてやる! リスキーと綾兎は腕を組んで入店した。 リスキーは、心に仮面をかぶる。 よっしゃあ、これで綾兎は愛しい人以外の何者でもない。 「おいおい、あまり引っ張るなって」 リスキーと腕を組みつつ、話す時は背伸びして耳元で囁くように……。 (て、恥かしすぎ……) 綾兎の頬に血が上る。覚悟完了って、なんて重たい言葉なんだろ。 リスキーの愛情たっぷりに見える視線を食らってしまう。 真っ赤な顔して、ぷいとそっぽを向いたら、ぐっと体を引き寄せ。腰に手を回された。 「ほらこっちだ、こっち」 ナンパ組が、移動を開始している。 そんな彼らに、食指を動かされたガチムチ兄貴たちも動き出す。 「今日は帰さないぜ?」 少なくとも、任務が終わるまでは。 「そこのつなぎの……」 「きゃっ! やっだぁ、転んじゃった!」 振り向くまでもなくいい男に声をかけようとした彼は、間に割り込むように尻餅をついたオネエにブロックされてしまった。 「やぁだぁ。ごめんなさいねぇ。お怪我なぁい~」 店の狙いから外れてる系オネエ。どうしてここにいるの。 「見て見てあのカクテル、貴方に似合いそうじゃない?」 正しくオネエだ。ワールドイズマイン。世界は自分のもの的通行ルート。 道よ、紅海のごとく割れよ。ガチムチ一般人を「退かせて」ずんずん横断。 「なあジャン、俺……酔っちゃったァ……休もぉぜ……」 すりすりボディタッチ大目でお送りしております。 二二の方が年上だけど子供っぽいのとあいまって、ここは年下オネエ左側というなかなかレアなカップリングに! お酒入った感じで、でもお仕事忘れてません。振りです、振り。 千鳥足でナンパしてくる奴にタックル。 「あ、ごめんなさい……」 よ~し、その顔はなかなかいいぞ! (ゾワッ、俺キモッ!) がんばれ! ● ……てな感じに擬似カップル二組が進路妨害に勤めている中、どっからどう見ても外人のツヴァイフロントが紋付羽織に中折れ帽で現れたら、そりゃもう訳分からん。 「俺の名は一・朱理。初めの朱い理、だ」 こういうの男装ネームって言うの? もうここまで日常を逸すると「女かも?」とか、ちらとも浮かんできません。 異分子怖い。触らぬ神に祟りなし。キットマチガエテハイッテキタガイジンサンダヨウンソウキットソウ。 決して色気がないからでもかわいらしさがないわけでもないよ、怖くてまともにそっち見てないんだよ、だってあまりに守備範囲外なんだもん。 そこいくと、ちんまりした方は人ごみにつるんとまぎれていた。ちっこいし。 ともすれば、恋人とおんなじような格好。パーカーにジーンズ。眼鏡。 (胸つぶし? 必要な……とか言ったやつ殴る) 年齢? 問題なし。こないだ19になったんだ! 名前も壱也だし。 「うわ、びっくりした。袖が引っかかったんだな。飲み物零れなくてよかった。こんなところくるの初めてで、緊張しちゃって。あんたはよく来るのか? よかったら色々教えてほしいんだけど、俺じゃ、だめ?」 残念、坊主。体重と筋肉倍に増やしてきてからな。的、頭ぽんぽん。 満喫。 別に壱也だって遊んでいるわけではない。 見よ。最初のリベリスタが、もてない君に到達したぞ。 目的のためなら、路傍の石扱いも辞さない。 目立たない様に潜入したのは、阿部さんである。 (果断迅速、男は度胸!もてない君の所に行くと決めたらさっさと行くぜ) 途中、目があった男の記憶をもちょもちょ。 『あ…ありのまま今起こった事を話すぜ、兄貴とゲイナイトに行ったら兄貴が設楽悠里になっていた!』 それ、なんて情報テロ。 そんなに「俺の間合いに入ったら、壱式迅雷かます!」って言われたのがショックでしたかそうですか仕方ないね。 ナンパ男が惚けている隙に、他のヤツに押し付けて先へ行くを繰り返し。 もてない君の前に回りこんだ阿部さんは気配遮断を消し、ベンチを取り出そうとした。 しかし、ここは立錐の余地もないフロアのど真ん中。 そこに二人がけベンチをどっかり置いて、どっかりと腰をおろし、ホックを下げながら決め台詞とか、無理!まじ無理! 阿部さんといえどもそれは無理! しかし、阿部さんの熱い視線から逃れるのは、もてない君にとっては難しい。 「気に入ったよ……、キミのその体……、そしてジュニアもな……」 赤面するもてない君。 いや、いきなり、体が目当てなんて。 男同士は体からなの、やはり? 趣き欲しいな、そうかな!? 「人は感情をおもむくまま行動するのがいちばんだ。君も素直になりなさい」 「え、あ、はぁ……」 素敵だ、阿部さん。しかし、しかし、ベンチがないっ! 美形の兄貴からいきなり声をかけられたことに動転したもてない君は、――びびって、逃げちゃった。 (これも仕事だ……!) 噛み締めていた唇をにこやかに。 (後頭部に、正確にいうと後頭部から眉間に抜ける角度で視線を感じる。この仰角は、壱也!) みてる。お腐れ様がみてる。 「初めまして。僕は設楽悠里。君の名前は?」 「え、あ、いいくら、飯倉です」 「ふふ。知ってるんだよ?穏やかじゃないよね。こんなとこでJ(ジュニア)をエクスプロージョンさせようだなんて」 ――Jは、ジュニアのJじゃないと思うな。 謝れ。女性プロアデプトに謝れ。 「あぁ、そんな事はどうだって良いんだよ。僕は君に会いに来たんだ」 うわ~い。ちょっと謎めいた金髪の王子様キタコレ。 「この店は僕達には似合わないよ。さぁ、僕達の箱舟(アーク)へ行こう」 そのとき。 フロアの一部がどっかんと沸いた。 「シタラユーリだとう!?」 「あの伝説の!?」 「どこだ、本物!」 なんということでしょう。振り向くほどいい男のお茶目が、あっというまに伝説に昇華しておりました。 いかん。押し寄せるガチムチの人津波に巻き込まれたら、もてない君改め飯倉君が危ない。 設楽悠里、後を仲間に任せ、離脱! しかし、その前に済ませねばならないことがある。 「おおっと、よろめいたぁ!」 「のあっ!?」 説明台詞と共に、とある眼鏡君の眼鏡が床に落ちた。 ガチムチ兄貴たちに踏み潰される隠しカメラ。 「シ~タ~ラ~ユ~リ~!!!」 受けろ、腐女子の呪い。 「阿部さん、設楽悠里はあっちだあぁ!」 「いいのかい、ホイホイ手引きして。俺は……」 「一向に構わん!」 この後、遠くから、「これは竜一くんの分! これは快の分! これは九条さんの分! そしてこれは君に怯える夜を過ごしたこの僕の怒りだー!!」とか言う声が聞こえてきたとか来ないとか言うのは、本案件では重要なことではない。 「おおすまんすまん、大丈夫か?」 人の波に押されて、倒れさせてしまった飯倉君に、虎吾郎じいちゃんが屈んで手をさしのべた。 「こういう所に来るのは初めてでのう、つい不注意になってしまったようじゃ。お詫びに一杯奢らせてもらってもいいかのう」 「え、あの、でも……」 とらとらとらとらと、飯倉君の口が動く。 ビーストハーフをみるのは、これが初めてだった。 「ええから、ええから」 その辺も説明してやろうかのぅ。と、カウンターについた虎吾郎じいちゃんは、自己紹介及び自信の近況について話した。 「所でお主、何だか寂しそうな気がするんじゃが、何か辛い事でもあったのか?お主はまだ若いから色々良い事もあるじゃろう」 コートの中に入れ肩を抱き寄せる。 「わしで良かったら、なんでも力になるぞ」 飯倉君は、色々つらかったのだ。 マイノリティの中のマイノリティだし。 なんだか、最近頭の回転がおかしいし。 そんなこと言われたら、言われたら、言われたら……。 だあだあと涙を流しながら、飯倉君はおじいちゃんの腕の中で泣いていた。 設楽悠里の離脱にも、偽装カップル組は奮闘した。 「俺がいるのに他に目をむけるなんて、一体どういうつもり?」 綾兎は懸命に声を張り上げた。 「何を言ってるんだ。オレにはお前しか見えてない」 リスキーの押し殺すような声が余計に真に迫る。 「そっぽ向きながら言うせりふじゃないよね!? そっちがそのつもりなら、俺も浮気するし?」 綾兎が、悠里の肩を掴もうとしたガチムチの腕を、がしと捕まえて邪魔する 「違う。違うんだ……お前の顔を直視していられなかったんだ。今日のお前は一段と素敵で。こんなオレで釣り合うのだろうかと思うと」 顔をぐっと近づけ。 「この目、嘘を言ってるように見えるかい?」 これは、思わず見物してしまうぞ。今、フロアの視線は君たちに釘付けだ。 (ここは抱擁したり口を塞ぐ為のキスをする場面か?) ナイス、空気読み。そ~れ、ちゅ~う、ちゅ~う、ちゅ~う。ちゅ~う。 ( どうする? どうするよオレ! ええい、ままよ!) 大、兄貴の人垣でなにが起こったか全然わからない。 「これで分かってくれたか?まだわからない?ならもう一度……」 切れちゃダメえっ!? ● 少し落ち着いた飯倉君の隣に、源一郎が座った。 「汝と話がしたい。名を聞かせて貰えるか。我も名乗ろう。古賀源一郎」 虎吾郎は、では、わしは踊ってくるかの。と、席をはずした。 「え、でも、俺……」 「正直な所ナンパしてくる男より汝と共に居る方が落ち着く。暫く傍に居させて貰うが構わぬな」 飯倉君は、はい。と、小さく言った。 青年にとって幸在る時間と成る様に誠心誠意相手どる。 口下手故余り会話は思いつかぬ。その分行動にて好意を示すのみ。 その様子を、ツヴァイクロフトは逐一一眼レフカメラに収めていた。 (ふ。何をしにきただと? 愚か者共、教えてやる。女が、男同士の熱愛を鑑賞(み)てする事は一つ。欲情だ) 一般論? 審議中。 源一郎は、暫し後に手帳に我の名と携帯電話の番号、三高平のアークの住所を書いてそのページを破り、手渡した。 「理解ある者が多い、良き仲間も見つかる事と思う。無論、我も居る」 「ええ。多分。そういうことだろうなって分かりました。困りますね。変に頭が働くようになっちゃって……」 飯倉君は、少しさびしそうな笑みを浮かべた。 「待っている故、必ず来る様に。約束だ」 あははと、飯倉くんは声を上げて笑った。眼鏡を外し、涙ぐんだ目を手でぬぐう。 「少し、時間もらっていいですか?」 「……あら、良い男じゃない。これなら大丈夫そうね」 邪魔が入らないようにしていたジャンが、飯倉君の素顔を見て、笑みを浮かべた。 「新しい出会い……それこそ恋愛以外でも有り余るくらいあると思うの。彼には孤独な思いをしてほしくないわ。こっちへ来て幸せそうな顔を見せてくれるといいわね?」 二二は、こくこくと頷いた。 (知世、ゴメンな……) 特に理由があるわけじゃないが、幼馴染に心の中で詫びを入れた。 その後、源一郎から別働班に送迎を断る電話があり、三高平に戻ってきたのは翌日になってからだったことは、今案件とはあまり関係がない。 重要なのは、一人の革醒者が、やがてアークに来ると決まったことだ。 付け加えれば、その店では「スタラ、ユーイ」という意味不明の単語が伝説化し、とあるリベリスタがその界隈に出没するのは永久に無理になったが、そんな所に出入りする必然性がないので問題なしということになったのも、どうでもいいことである。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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