● 始めはちょっと遅れてるのかなって思ってた。 いつまでたっても来てくれなくって。 泣いてたら、周り中真っ白になっちゃって。 これじゃ、ますます来てくれない。 うざい女と思われちゃうと思ったらますます悲しくなっちゃって。 超局地的。 だが、確実に、その周辺は猛烈な降雪に襲われていた。 「だって。まだきてくれないんだもん」 ● 「結論としては、昨今の男子の草食化がいけないと思う」 ほほう。 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)さんは、肉食系男子がお好みですか。 「そういう話じゃなくて。この地点。ここに急速に発達したごくごく小規模ながら非常に勢力の強い低気圧のE・エレメントが居座っている。識別名『ドカ雪小町』」 模式図は、白い連獅子のような髪をした女の子の形をしたエネルギー体。 「ホントなら、この辺りで偏西風に押されて、とっくに消えているはずだったんだけど」 本来の天気図、モニターにドン。 「今年の偏西風は押しが弱くてこの地点になかなか到達できず、刻々と時間が過ぎていく中、どんどん不安になってくるドカ雪小町。それに比例して勢力倍増しドン、ますます近づけない悪循環……識別名『ヘタレ偏西風少年』」 ひどいがわかりやすいネーミングありがとう。 なんかさわやかだけど、ひよひよした男の子型エネルギー体。 「必要に応じて雪かきしながら進路を確保し、ヘタレを小町のとこまで連れてって。暴風に吹き飛ばされないようにね。雪もここまで威力があると質量武器。具体的に言うと、常に雪崩を食らう危険に晒されていると思ってもらえれば」 自然災害、マジ怖い。 「偏西風を弱らせないようにね。ますますヘタレるから」 かばえとおっしゃいますか。 「接触したら、後はこっちのもの。二人でいちゃいちゃしながら、湿っぽさもどっかいって、普通のからっ風になるから」 あれ、いちゃいちゃなのかよ。知りたくなかったな。 「発生場所は、人里離れたとこだから。人目を気にすることはない。周辺には避難指示発令済み。ガツンとね。ガツンと」 イヴさん、なんか語気荒くないですか? 「好かれてるくせに、男子が女の子を不安にするとかありえないから」 恋する女の子の味方の幼女、マジエンジェル。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月07日(火)23:45 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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● くるこないくるこない……。 待ち合わせはとっくに過ぎてしまった。 ちょっと早めに着いてしまって、そのせいでちょっとだけ重くなっちゃったから、嫌われてしまったのかしら? くるこないくるこないくるこない……。 今、八十四回目の屋根から雪の崩落。。 後いくつ落ちてく雪を数えたら、あなたはここに来てくれるの? 早く来ないと、どんどんどんどん大きくなっちゃうんだから。 来てくれるまで、動かないんだからぁ。 ● 白一色の世界の中、防寒着を着込んだリベリスタが、吹雪のラインの外に集結している。 万が一、雪に埋もれてもすぐに発見できるようにという覚悟のまっかっかだったり、キンキラキンだ。 「さぁぁあむうい!!!」 『Gloria』霧島 俊介(BNE000082)は、すこぶる親父臭いくしゃみ連発しながら、空に向かって叫んだ。 寒いというより、痺れる。痛い。 末端血行障害により、じんじんと四肢の指先が痛む。 動いてないと死ぬ。寝たら死ぬぞぉ!? いや、まじでまじで。 風が吹かなければ雪の壁の間は結構空気がたまって暖かいもんなんだけど、ひーっひーっと、女の子の泣き声のような風が吹きすさんでいる。 エリス・トワイニング(BNE002382)は、吹雪の向こうを見通す目をする。 (季節毎に……現れる……E・エレメントたち。エリスよりも……人間的な……感情を……表現している……と思う) 夏に、台風。冬に、吹雪。 「よく言えば……季節感が……出ている……と思う」 エリスが呟くと、 「そうなのですが、物事には限度というものがあるというか……」 『デモンスリンガー』劉・星龍(BNE002481)が、目の前のドカ雪を見て言葉を濁す。 普段は黒スーツ黒帽子、黒手袋にサングラスだが、今日は華々しく明るい色合いのスキーウェアにゴーグルにニット帽。 今回みんなそんな感じなのだが、板のつかなさっぷりは群を抜いている。 じっとこちらを見ているエリスの無言の視線が痛い。 「視界が真っ白になりますから、服装は出来るだけ目立つ明るい色のものにしたんです」 エリスは、星龍に頷いた。 分かってる。皆まで言うな。 「迷惑なのには……変わらない。早く……解決……したい」 吹雪の周辺をうろうろしていた偏西風少年はすぐに見つかった。 (恋人がいる風でござるか……片隅に置けない風ではござるが、女の子を待たせるなんて男の風上にも置けない男でござるな) いや風だから。上も下もないから。 『女好き』李 腕鍛(BNE002775)も、普段は青系の服が攻撃色、ぶっちゃけ赤い防寒ウェアだ。 「これ以上待たせることのないように拙者も協力するでござるよ。だから、風の少年も気張って行くでござるよ」 そう言って、偏西風の頭から防犯ブザーを斜めがけ。 「紐は拙者が持つでござる。離れることがあればブザーが鳴って、少年の場所はすぐ分かるでござるからな」 (拙者が吹き飛ばされたときは、とっさにフォローに入ってもらわねばなりませんからな) ぐだぐだ言いながら、かゆいところに手が届く男だった。 『剣を捨てし者』護堂 陽斗(BNE003398)は、無言で偏西風少年に寄り添った。 (恋愛はとても難しいもの。けれどお二人が両想いならば、そっと背中を押してあげればいい。願いが叶うよう、できる努力をしよう) 優しいまなざしに、偏西風少年は少し緊張がほぐれたようだった。 「押しが弱いって……まぁ、気持ちはわからなくもないけれど、待ってる人がいるんだから、頑張らないと……」 『淋しがり屋の三月兎』神薙・綾兎(BNE000964)は、励ました。 (昨今の草食系男子というものは情けない。本当に情けない。軟弱貧弱……鍛えて漢にしてやりたい) 『鋼鉄の信念』シャルローネ・アクリアノーツ・メイフィールド(BNE002710) は、なにやらふらふらしている偏西風を見ると、握った拳がふるふる震えてしまう。 (しかし消滅されるのは困る。ぐっとこらえて連れて行ってやるしかないか) 消滅させたら、また一昼夜この雪が吹きすさび、被害が増えてしまう。 私情は鉄の意志で押さえ込み、任務に邁進してこそのリベリスタだ。 (……うわー、根性注入とかしたいわー。ほら尻にね? バットでこう……ダメ? ダメよねそうよね知ってるわ) 『紅瞳の小夜啼鳥』ジル・サニースカイ(BNE002960)も、性根を叩きなおしたいタイプ。 「じゃあ必殺、誰でも勇気の出る薬ー!」 ぶっちゃけ、スピリッツ。きっつい酒だ。 「はぁ? E・エレメントにも飲酒制限あるとか言わないでしょうね」 偏西風少年が、消化器官がないので、飲めません。ということを、よく分からない言い回しで、申し訳なさそうにジルに告げた。 ● とにかく、早いに越したことはない。 なりふり構わず進む道。 最短でドカ雪小町に進む道の両ぐぁにはそそり立つ雪壁。 身の丈の倍まで降り積もった雪は、建物を閉じ込め、わずかな傾斜が名残を残す。 各々思いつく限りの用意はしてきたが、リベリスタの無尽の体力をもってしても一歩進めば膝まで埋まる雪をかきわけ進むのは容易ではない。 進むべき方向は、『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)が、ドカ雪小町の泣き声を探り当ててくれている。 「役割分担の確認な。偏西風は、ジル、李、戦場ヶ原。神薙は霧島、シャルローネが護堂、劉がエリス。よろしく頼むな」 仲間の連携について、出発前に確認した『てるてる坊主』焦燥院 フツ(BNE001054)は、身の丈1メートルほどの雪だるまを作っていた。 符を貼り付けると、雪だるまは大きく体をかしげながら歩き始めた。 (雪だるまなら、吹雪とかには強いだろうしな) 式神を行軍中の盾として、一団は少しずつ進み始めた。 使い捨てカイロをあちこちに貼り付けているエリスは無言で進行中。 (凍傷は……ともかく……、風邪は……ひかないようにしないと……) 「凍てつくような寒さ。過酷な状況。悪くないな」 シャルローネは元気だ。 すごく元気だ。生き生きしている。 スコップにスノーダンプを引きずりながら、長靴の足取りがやたらと軽快だ。 「ほら頭下げる―。とにかく姿勢を低くして踏ん張んのよ」 ヘタレは好みじゃないのでローテンション気味のジルは、それでも以前戦った寒風形の敵と戦ったときの教訓を生かそうと、ヘタレにレクチャー中。 ヘタレは、素直にジルの姿勢の真似をする。 雪かき要員は、誰も怪我していないのでやることがない俊介のみだ。 「あー。あー、めっさ労働」 (だりー) と思いつつも、これで雪崩がちょっとはマシになるというなら、仕方がないね。えんやおんや。 「……こんなに雪が降るとは、ね。寒すぎる……」 腕をこすりながら、うめいていた綾兎が、ピクリと耳を震わせる。 「あ……雪崩、かも?」 予感が確信へ。 ずずず……という振動と崩落音に、リベリスタの頬がこわばる。 「雪崩!」 雪煙を巻きたてて、白い壁が崩れてくる。飲み込まれる。 自分が守るべき相手に飛びついて、衝撃を凌ぐ。 それは冷たさとか重みという次元の問題ではない。 飲み込み撹拌し一瞬何もかも忘れさせてしまうものだ。 痛みや衝撃や窒息は、後から来る。 回復陣と偏西風。 更にそれをかばった者。 かろうじてよけた、ふつ、ジル、舞姫がスコップを使って、雪の下から声がするところを懸命にかき出す。 「本当は美少女とか庇いたいんでござるがなぁ……」 腕鍛の声がする。 掘り進めると、偏西風を抱きかかえ、その顔色は抜けるように青くなっている。 事前に、仮初の翼や聖戦の守護、守りの結界がくくられていなければ、もう動かなくなった腕鍛と会うことになったかもしれない。 がががががが……と、止めることも出来なくなっている瘧のような震えの下から、 「今回は、この先に待つ彼女に免じて我慢するでござる」 と付け加える根性は、『女好き』の面目躍如。 回復役をかばった三人も、その身の半ばを凍てつかせ、ありえない重さを耐え忍んだ衝撃で、体の自由が利かなくなっている。 矢継ぎ早に、フツから凶事払いの光が放たれた。 「エリス、聖神? 俺、歌な。そんで、陽斗、休み! 次、陽斗からな」 回復陣は、お互いの術を確認しあい、魔力の温存を図る。 ほぼ万全に回復したが、同じだけのケアを継続して行うことは難しい。 それでも、歩ける。 体に血は巡り始めた。 リベリスタ、前進。 ● 吹きすさぶ雪風に、視界もままならない。 リベリスタが二人がかりで集音して、進むべき方向を逃さないようにするのが精一杯。 まだほとんど進んでいないというのに。 目の前を歩いていたフツの雪だるまが、ころころと転がっていく。 なぜ。 不意に、リベリスタの上にそれが崩れて落ちる。 リベリスタそれぞれが、圧倒的な何かに飲み込まれた。 反射的に飛び退った舞姫は、雪煙の向こうに隻眼を凝らし、耳を済ませる。 「みん……な……」 誰もいない。 白い雪が、道路全体を埋め尽くしている。 崩れた雪の高さは二階の窓を半ばまで埋め尽くしていた。 みんな、埋まってしまっている。 わずかに見える赤い色を頼りに、舞姫は片手でスコップを取り回すと仲間を掘り返す。 白い世界に、腕鍛と偏西風を繋いでいた防犯ベルのけたたましい音がこだまする。 「わんた……っ、腕鍛、偏西風、どこだあああぁ!!」 防犯ブザーの音で、偏西風は程なく助け出された。 スノーダンプとスコップを駆使する舞姫の姿に、おろおろしていた偏西風は、このくらいは独断でしても怒られないと思うと趣旨のことを呟くと、雪が巻き上げられた。 呼吸音を頼りに次々と掘り起こされるリベリスタ。 「俊介、だいじょぶ?って……寒そうだね」 袖でぐいっと頬の雪落としつつ、綾兎が這い出してくる。 そう言っている綾兎のほうが危ない。顔色が真っ白だ。 もう少しでそれこそ動けなくなりそうだ。 「超寒いな、人肌で温めてよ綾兎」 俊介の歯の根が合わない。このままでは正確な詠唱できない。 (人肌?) 「……何で今頬赤くしたし! つんでれめ」 「年上からかうんじゃありません!」 綾兎は、ほんのり頬そめて、それでも俊介にそれ以上雪が及ばないように気を使う。 かばわれていた回復陣が、次々と回復詠唱を始める。 傷を癒されたリベリスタが自力で雪を掘り返し、次々と顔を見せる。 「星龍さ……、星龍さんが……いない……」 エリスを頭上から降り注いでくる雪の塊の向こうに突き飛ばし、そのまま消えていったと、エリスはつかえながらも、仲間に伝えた。 さらさらと偏西風で吹き飛ばされる雪。 不自然な光点。懐中電灯。ちらりと見える攻撃色のジャンパー。 そして、普段は着ない明るい色合いのスキーウェア。 「いた!!」 「掘れー!!」 二人とも窒息はしていなかった。 懸命の治癒詠唱の末、命に別状がないところまでは到達したが。 「む、無念、でござる……」 凶事払いで払えない衝撃を体に受けている腕鍛にこれ以上の護衛任務は無理だった。 「後は任せたでござるよ、おのおの方。拙者、ここで待ってるゆえ。建物の影にいるから大丈夫でござるよ」 「星龍も……」 一緒に休んだらどうかと、エリスがぼそりという。 「まあ、何とかなるでしょう。大丈夫です」 星龍は、そういって立ち上がった。 リベリスタ達はこれ以上の損耗を避けるため、少し回り道をすることにした。 ● 「ここ、なんか崩れそうな」 先に行った雪だるまがおぶおぶしている。 どうにか戻ってくるのを確認すると、リベリスタ達はうなずきあった。 「よし、あっちを通ろう」 様子を見ながら迂回する。 リベリスタは、じりじりと前進を続けていた。 回復陣の魔力の消耗は、最低限に抑えられていた。 選定されたルートにより、先ほどのような体をミキサーにかけられるような雪の中に巻き込まれることもない。 それでも、エリスの最大回復の御業は打ち止めだ。 「最悪、なんだって雪の中に放置してでも、最後の一人がヘタレを送り届けりゃこっちの勝ちよ」 ジルが真顔で怖いことを言う。 そんな特攻精神、いけませんというような趣旨のことを偏西風少年が慌てふためきながら勿体つけた言い回しで言った。 ジルの頭の中でケツバットによる制裁が行われたかどうかの記録は残っていない。 回復の仕事が減ってきた唯一の雪かき要員の俊介は、あまりの重さに動かなくなったスノーダンプに悪戦苦闘しながら、偏西風に活いれ。 「男がへたれてどーすん。男がリードしないとだめだろー。恥ずかしい? んなの吹っ切れ! 彼女を思えばなんだってできる。俺がそうだし、さ!」 経験に裏打ちされた言葉は、説得力がちがう。 「日々の鍛練の成果が試される」 シャルローネが手を貸すと、うんともすんとも言わなかったスノーダンプが動いた。 ひいーっと、冷たい雪風が吹きつける。 「もう少しなんだから、頑張りなよね。……彼女、ずっと待ってるのに……嫌われちゃったって、泣いてるみたい。男ならさっと迎えに行って涙拭ってあげないと、でしょ」 綾兎が言う。 力ない指先でも、それだけのことはできるのだと。 ● ドカ雪小町は、火の見櫓の上で泣いていた。 一足飛びに、舞姫がドカ雪小町の元に急ぐ。 偏西風の背中を押してやりたいが、ドカ雪小町が泣き止まなければ、目と鼻の先で凍ってしまいそうだったからだ。 綿のような髪をした、こう白くてちっこくてぷにっとしてて、抱っこしたらぽちゃぽちゃ柔らかくて気持ちよさそう系。 ずっと泣いていた成果、黒目のない目が、文字通り真っ赤だ。 「早く泣き止まないと、わたしが王子様もらっちゃうよ?」 ほら、あそこあそこと指差す先に、偏西風の姿が確認できる。 べそべそしていたドカ雪小町がぴたりと泣き止んだ。 ふにゃと眉と思しき部分をハの字にするが、涙はぎりぎりこぼれていない。 (ほら、偏西風くんも勇気出して! I love you, my Angelとか言っちゃいなよ、いぇい、いぇい♪) ドカ雪小町に見えない所で、ダンスを踊る舞姫がリベリスタからも確認できる距離で、偏西風少年がの足が止まった。 ドカ雪小町は、膝の上でグーを握って、うゆ~っとにらんでいるように見える。 「よーし、いけ偏西風! 大丈夫。大遅刻したぶん沢山抱きしめてやれ! 言葉より、まず行動! 女は押しに弱い、たぶん」 きっとやらかしたことがあるのであろう経験に裏打ちされた俊介の説得力。 やたらとさわやかに無言で微笑むフツの説得力。 「彼女の所へ辿り着けるよう、僕達も手伝います。だから勇気と力を振り絞って頑張って」 陽斗も、ここまで力を振り絞って歩いてきた。 「辛くなったら、彼女の笑顔を思い出して。本当に好きになれる相手を見つけられたのなら、手を繋ぎ続ける努力をしないと」 出ないと、指の間から大事なものは逃げてしまう。 「彼女には君が居ないと駄目なんだ!」 ジルは、いいから早く行けと、追い払うような手まねをする。 早く行かないと、本当にケツバットも辞さない構えだ。 シャルローネにいたっては、偏西風をハンマー投げでドカ雪小町にぶんなげそうな気配がする。 いや、彼女は軍人だ。一時の私情でそんな真似はしない。絶対しない。 エリスも見ている。 寒いから、早く何とかなってほしいという催促めいた足踏みがずっと続いている。 偏西風が、このご恩は忘れませんというようなことをやたらと婉曲表現を織り交ぜて回りくどく礼を言うと、雪の上を走り出した。 よたこらよらこらと雪に足をとられながら、前に進む。 ドカ雪小町が、火の見櫓から飛び降りた。 互いに抱き合い、二体のエレメントは互いを抱きしめあった。 偏西風が小町の涙を指でぬぐうと、ぽちゃぽちゃしていた体が、みるみるほっそりとしてくる。 水気が抜けて、正常な寒気になったのだ。 何度も何度もリベリスタに頭を下げながら、空に上っていった。。 さらりとしたすがすがしい空気。 じっとりとした湿気がなくなった。 「春だねえ」 「あー、なんだか急に暑くなって参りましたね~……爆発しろ」 ジルが、エアバットの素振りしてしまうのは、ぜひとも見逃してほしい。 「無事終えたら温かい紅茶を飲みたいです。後、移動中に汗をかいているから、汗を流しておきたい。 温泉があれば一番なのですが」 エリスは細かな足踏みを繰り返しながら、もと来た道を戻り始めた。 おお~っっと、リベリスタから沸きあがる拍手。 そのくらいの寄り道は許されてもいいかもしれない。 どこの温泉によるか相談を始めたリベリスタの最後尾。 陽斗は後ろを揺りかえった。 二人が上っていった空を眩しそうに見あげる。 「お幸せに」 ● (拙者も恋人に会いたくなってきたでござるなぁ……ぱっぱと帰って、会ってこようかなでござる) 建物の影から、腕鍛は空を見上げた。 いつの間にか、風の音はしなくなっていた。 雲の切れ間から青空が見える。 雪の壁の隙間から、仲間が見えた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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