●放つは銃弾。秘めるは家族愛 一発の銃弾が、とあるフィクサードを撃ち抜いた。一撃である。 そのフィクサードはフィクサード組織の中でも有力な人物であり、財界でも有力な力を持つ人物だった。だから、その死がその組織に与えた衝撃は大きなものであり、その組織はしばらくの間動くことができなかったという。 放ったのは数十メートル離れた位置で隠れていた少女で、その少女は身の丈に合わぬ対戦車ライフルを地面に固定し使っていた。 彼女の名を、遥奈という。可愛らしい顔を持った17歳の少女であるが、今はその顔が曇っている。彼女は、狙撃手にして暗殺者であった。 (また、人を殺した。……慣れないな、この感覚) 遥奈は今、自分の手を見ながらも、淡々と対戦車ライフルを収納している。 遥奈は黄泉ヶ辻というフィクサード組織に金で雇われたスナイパーだ。スターサジタリ-としての力はその点に特化しており、スナイプのための特殊能力も持っていた。 そんな遥奈は、望んで人殺しをするタイプではない。不器用で喋りが苦手だけど、心優しいタイプだ。 (でも、ボクはこれしかないんだ。……これしかできないから。ごめんなさい) 収納したライフルをゴルフバッグに入れ、背負いながら騒がしい町の中へと消えて行く。 彼女の行く先は、どこだろう。 (ボクは天国に行けるのかな) 上を見上げる。見えてくるのは、どんよりとした曇り空。 遥奈は、アパートの一室で病気の弟を看病している。弟は生まれつき体が弱く、高額の薬を飲み続けることを必要としていた。 「遥奈お姉ちゃん。顔色が悪いよ、どうしたの?」 「ん。ううん、大丈夫だよ」 そんな弟の世話をしていた母も体を壊して他界。父は生まれた時から見たことがない。 「そんなことより。食べて。食べないと元気が出ないよ」 「……うん。分かった」 おかゆを手に無理に笑う。人殺しで薄汚れた手だけど、その手で弟を助けることができるなら、弟を生きながらえる薬を稼ぐことができるなら、と彼女は思う。 「でも、お姉ちゃん。お姉ちゃんの体に何かあったら――」 弟の心配そうな声をかき消すようにして、ネズミのストラップが付いたピンク色の携帯が震えた。 仕事の依頼だ。命のやり取りをする、普通じゃない仕事。 「行ってくる」 ゴルフバッグを背負って、心優しい姉は冷酷な狙撃手に変わる。 彼女の行く先は、どこだろう。 (ボクが向かうのは地獄だろうな) 下を見る。見えてくるのは、どこまでも続く闇。 ●闇の中 携帯電話を閉じて、笑う影が一つ。いや、二つ。その顔は二つともそっくりで、遥奈よりも幼く、遥奈よりも笑顔だった。 「ああ、玩具が行くわ。姉さま」 自分たちを包む黒いロリータをお互いに撫でながら、二人の少女は笑みに狂気は宿す。 「ええ、行くわね。また、人を殺しに」 流れる紫色の髪を撫であい、くすくすという小さな笑い声が暗い部屋の中に響く。 「望まぬ殺し。ただ、弟のために手を汚す。汚れた血はいくら洗っても消えないの。美しいわ、姉さま」 「そうね。人が悩み、苦しむ姿は美しいわ。うっとりしちゃうくらいに……」 その言葉の通り、姉さまと呼ばれた少女はうっとりとした表情を浮かべる。 闇の中には、更に深い闇が潜む。 この双子の少女は、黄泉ヶ辻という名の闇。 ●あなたに問う 資料としてホワイトボードに貼り付けられているのは、少女の笑顔である。写真の日付は三年前であることを示し、その笑顔はまだ普通の少女であったことを示していた。 「彼女の名前は遥奈。今回相手にすることになる、狙撃手」 その写真をじっと見つめながら、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は説明する。 日本のフィクサード組織、黄泉ヶ辻という組織に協力する狙撃手だ。黄泉ヶ辻は何を考えているか分からない節のあるフィクサード組織で、彼女が狙うターゲットもまた、共通項があまりなく、よく分からない。 「ただ、次に狙われるのが一般人。というのは分かるよ」 噂レベルであるが、ただ憎しみをばら撒く為だけに狙撃手を使っているのではないかという話もある。もしそれが本当だとすれば、いつかはアークにとっても脅威になるかもしれない。 「カレイドシステムが見たのは、彼女がとある男性を一撃で殺してしまうという場面だね。姿は見えなかったから、探し出すところから始めて欲しい」 大まかな場所はわかるが、どこに狙撃手が潜んでいるのかはわからないという。まずは、それを探し出すのがリベリスタの役目である。 「だけど、護衛に黄泉ヶ辻の兵隊が付いているみたい。フィクサードだよ」 このフィクサードたちは、どうやら誰かの命令で動いているらしい。リベリスタたちが動き出せば、きっとこの兵隊たちもリベリスタを倒そうと動き出すだろう。 「たぶん、戦闘になると思う。……問題は、ここから」 真白イヴは振り返り、オッドアイがリベリスタたちを見つめる。 説得してもよい。それができるのならば。 そう資料には書かれている。 「あなた達の判断に任せる」 ぎゅっとぬいぐるみを抱きしめ、真白イヴは目を逸らさずに言った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:nozoki | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月10日(金)23:05 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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