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雪原のアウトローズ(ただし雪だるま)

●アウトロー達の解放
 鏡の如く凍りついた湖のほとりに、三人のならず者が立っていた。
『何だかよくわからねぇが、助かったな』
 三人のうち、一番体の大きい者が口を開くと、残りの二人が口々に答える。
『穴みたいなのに飲みこまれた時は、どうしようかと思ったけどよ』
『さすがに、奴らもここまでは追って来られねぇだろ』
 一番体の小さい者が肩越しに後ろを振り返ったが、そこには追っ手どころか、人っ子一人見当たらない。
『ああ。これでセコい逃亡生活からおさらばだぜ』
 体の大きいならず者が、ひとつ、大きく息をついた。少し考えこむような表情をした後、他の二人に向けて話しかける。
『晴れて自由の身になったことだし、ひとつ景気づけといかねぇか。こんな何もないシケた所じゃなくてよ、こっちにだって街の一つや二つあんだろ』
 その提案に、残りの二人は顔を見合わせた後、大きく頷いた。
『そうだな。オレたちの恐ろしさをこっちの奴らに思い知らせてやるのも悪くねぇ』
『必死こいて逃げてる間、ロクなもの食えてなかったしなぁ……適当な奴でも襲って、まずは金でも手に入れるとしようぜ』
 雪原に、三人のならず者の笑い声がこだまする。
 招かれざる来訪者は、獲物を求めてゆっくりと歩き始めた。

●姿はアレでも犯罪者です
「ディメンションホールを通って、アザーバイドの犯罪者たちが現れた。みんなには、その対処に向かってほしい」
 アーク本部のブリーフィングルーム。『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、集まったリベリスタ達に向けて、そう話を切り出した。
「アザーバイドは三体。今、データを出す」
 正面のモニターに、今回戦うべきアザーバイドの姿が映し出される。
 左から順に、大きな雪だるま、小さな雪だるま、雪うさぎ。
 何かの間違いじゃないだろうか、と一瞬考えたリベリスタ達だったが、イヴは淡々と言葉を続けた。
「彼らは元の世界で犯罪者として追われてたんだけど、ディメンションホールから偶然こっちに出てきたみたい。運良く追っ手から逃げられたことで、解放感に浸ってる」
 どう見ても雪だるまや雪うさぎにしか見えないが、これでも犯罪者であるらしい。人(アザーバイド)は見かけによらないということだろうか。
「フェイトを得ていないアザーバイドは崩界を促すし、彼らを放っておいてもきっとろくなことにならない。今のうちに、倒すなり追い返すなりして」
 アザーバイド達は今、湖のほとりにある雪原にいる。彼らが人里に向かう前に対処してほしいと、イヴはリベリスタ達に念を押した。
「……説明はこれで終わり。みんな、気をつけてね」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:宮橋輝  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年02月04日(土)23:34
 宮橋輝(みやはし・ひかる)と申します。

●成功条件
 ・アザーバイド3体の撃破または送還
 ・ディメンションホールの破壊

●敵
 『大きな雪だるま』『小さな雪だるま』『雪うさぎ』に似た姿のアザーバイド3体。
 外見は可愛らしいですが、中身はただのゴロツキです。
 元の世界で犯罪者として追われていたところ、こちらの世界に迷い込み、これ幸いと大暴れしようと考えています。

 現時点で判明している能力は以下の通りです。

■雪だるま(大)
 【スノーパンチ】→物近単[必殺][氷結]
   凍てつく冷気を纏った強力な拳を放ちます。
 【スノータックル】→物遠単[重圧]
   突進し、巨体で押し潰します。

■雪だるま(小)
 【魔法のバケツ】→神遠単[氷像]
   魔力で作り出した冷水入りのバケツを投げ、対象を氷の中に封じこめます。
 【雪玉アタック】→物遠複[隙]
   両手で雪玉を投げ、ダメージを与えます。

■雪うさぎ
 【目からビーム】→神遠単[弱点]
   赤い目からビームを放ちます。  
 【氷雪の嵐】→神遠全[凍結][ショック]
   自分を中心に激しい吹雪を巻き起こします。

 ※全員が『冷気無効』のスキルと同等の能力を所持、炎による攻撃にはやや弱い。

●戦場
 近くに湖がある広い雪原。
 周囲に木がまばらに生えていますが、視界を遮るほどではなく、身を隠すのは難しいでしょう。

 雪が積もっているため、リベリスタ側のみ命中・回避にペナルティがあります。
 適切なスキル・装備の使用で、ペナルティを無視(あるいは軽減)できるかもしれません。

 なお、ディメンションホールは少し歩けばすぐ見つかります。


 情報は以上となります。
 皆様のご参加を心よりお待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
マグメイガス
音更 鬱穂(BNE001949)
ナイトクリーク
フィネ・ファインベル(BNE003302)
プロアデプト
プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)
ダークナイト
ウィンヘヴン・ビューハート(BNE003432)
ソードミラージュ
災原・闇紅(BNE003436)
ダークナイト
ロズベール・エルクロワ(BNE003500)
覇界闘士
鈴鳴 蓮華(BNE003530)
デュランダル
幸村・夏心(BNE003531)

●光溢れる雪原
 そこは、一面の銀世界だった。
 どこを向いても雪、雪、雪。時折、風が粉雪を散らし、太陽の光に反射して輝く。

 八人のリベリスタ達は、深い雪の中、慎重に歩を進めていた。
 美しい風景の中にも、自然の猛威は存在している。『紅翼の自由騎士』ウィンヘヴン・ビューハート(BNE003432)を始め、多くのメンバーが靴などで足場の対策を行っていたが、それでも時折足を取られてしまう。
 幸いだったのは、この日の天気が良かったことだろう。幸村・夏心(BNE003531)などは万一に備えて懐中電灯を準備していたが、今のところ明るさの面で心配はない。陽に照らされた白い雪原は、むしろ眩しいくらいだった。
 今回の任務はアザーバイドの撃破か送還、そしてディメンションホールの破壊。リベリスタ達はまず、穴の位置を確認することにした。それはすぐに見つかったが、この段階では塞ぐことはしない。状況によっては、アザーバイド達をここに追い込む可能性があるからだ。
 念のため強力な結界を周囲に張った後、『孤独嬢』プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)が寒さに耐えかねた様子で声を上げる。
「クソ寒ィ……カゼひいたらどうしてくれんだよ!」 
 マフラーをしっかり巻き、上着の中には湯を入れたペットボトルを忍ばせて防寒対策をしてはいるものの、寒いものは寒い。「夏は暑いし冬は寒いって、なんなんだよこの国……」と零す彼女の隣で、『深紅の眷狼』災原・闇紅(BNE003436)が口を開いた。
「ただでさえ寒い季節なのに……ホント空気読めてないわね……」
 さっさと潰すなり帰すなりして終わらせましょ、と言って、ディメンションホールに背を向ける。
 アザーバイド達の足跡が残っているので、彼らの位置を特定することは容易い。防寒着を着込んだ『何者でもない』フィネ・ファインベル(BNE003302)はそう考えてから、小さく首を傾げた。
 ――足跡……雪だるまや雪うさぎの、“足”跡?
 とにかく、移動の痕跡が残っていることには違いはない。気を取り直して、アザーバイド達に追いつくべく移動を開始する。

 やがて、リベリスタ達は凍った湖のほとりを歩く三体のアザーバイドを発見した。
 大きな雪だるま、小さな雪だるま、そして雪うさぎ。ブリーフィングルームのモニターで見た通り、どれも可愛らしい姿をしている。
「雪だるまは素晴らしい。雪うさぎも素晴らしい。あのディティール。ものすごくかわいいです」
 そう口にした『ネガデレ少女』音更 鬱穂(BNE001949)は、しかし、と言葉を続けた。ああ見えても、彼らは性質の悪い犯罪者なのである。
「雪だるまは中身も可愛くある必要があります。こんな雪だるまは真の雪だるまとして認められません」
 静かに敵意を燃やす欝穂の隣で、『のっぺらぼう』鈴鳴 蓮華(BNE003530)が、つるりとした仮面の奥から「わあ、かわいいねぇ」と声を上げた。
「――でも、容赦はしちゃいけないね」
 姿に騙されたりはしない。仮面の下で、蓮華は人知れず表情を引き締める。『祓魔の御使い』ロズベール・エルクロワ(BNE003500)が、訥々とした口調で語った。
「異世界のはんざいしゃ、そしてこちらの世界を綻ばせる異物。だったらこちらの世界で、こちらの手段でさばきます」
 それが嫌なら、元の世界にかえってもらいましょう――彼の言葉に、リベリスタ達が次々に頷く。
 暢気に雪上の散歩を楽しんでいる不届き者たちに向けて、リベリスタ達は一斉に行動を開始した。

●可愛い顔してならず者
 背後からの足音を聞きつけ、二体の雪だるまと雪うさぎが振り向く。
『何だありゃ? 追っ手じゃなさそうだな』
『こっちの奴らじゃないのか? 雪の上でオレたちに挑むなんざ身の程知らずめ』
『ま、軽く捻ってやるとするか。運が良けりゃ金目の物でもいただけるだろ』
 雪に足を取られながら近付いて来るリベリスタ達を見て、与しやすい相手だと判断したらしい。彼らは、余裕の表情でリベリスタ達へと向き直る。
 だが――その認識は少なくとも半分誤っていた。フィネが背にたたんでいた翼を広げ、低空を舞う。彼女は相手の油断を誘うため、わざわざ地上から接近していたのだ。
「こちら側、雪だるまさんに快適な環境では、ないと思うのですが……」
 そう言って、彼女は脳の伝達処理を高めていく。彼らがあくまでもこの世界に拘るのなら、命を奪う事も辞さない。それを、行動により示すつもりだった。
 正面から見た雪だるま達は、いかにも悪党じみた雰囲気を身に纏っている。欝穂は僅かに眉根を寄せると、彼らの立つ場所に向けて魔炎を召喚した。 
「認められないのならこの世界から消えてもらうしかありませんね」
 こんな可愛くない雪だるまなんて溶けてなくなってしまえと、念を込めた彼女の一撃は、しかし狙いを大きく外れ、雪だるま達から数メートル離れた地点で炸裂した。空を飛ぶ翼も、雪道に適した靴も持っていないがゆえに、攻撃の瞬間、深みに嵌ってバランスを崩してしまったのだ。
 ブーツの爪先で足元の雪を踏みしめつつ、闇紅が大きな雪だるまへと接敵する。全身の反応速度を高めつつ、彼女は眼前の雪だるまを挑発した。
「目障りよ……さっさと潰れるか逃げ帰ってピーピー泣くと良いわ」
『あぁ? 誰に向かって言ってやがる。帰れと言われて帰るバカがいるかよ』
 ゴロツキそのものの表情と口調で、大きな雪だるまが言い返す。闇紅は軽く鼻で笑い、さらに辛辣な言葉を投げかけた。
「あんた……選択肢があると思ってるの……? あるわけないじゃない……ホントバカだるまね……良いわ……ここで潰すと今決めたから」
 びきびきびき。
 非常にわかりやすい音を立てて、大きな雪だるまが文字通り『青筋を立てた』。血管が存在するのか、それに似た別の器官なのかはともかく、これが彼らの怒りの表現らしい。
『てめぇ……後悔するなよ……!』
 その様子を見て底の浅い奴、などと思いながら、プレインフェザーが自らを集中領域へと導く。闇紅が近接攻撃に長けた雪だるまを抑えている間、まずは雪うさぎから倒していかねばならない。蓮華は雪うさぎとの距離を詰めると、炎を纏った拳をそこに繰り出していく。
「――自分達の世界に帰ってもらうのが一番だよね。うん」
 辛うじて直撃は避けたものの、自らの身体を炎が掠ったのを見て、雪うさぎが慌てふためいた。
『ちょ、あち、あちっ! やめ、溶けるっ!』 
 身の危険を感じた雪うさぎは赤い瞳から眼前の蓮華に向けてビームを放ったが、その隙に夏心が背後に回り込み、逃げ道を塞ぐと同時にプレッシャーをかける。
「盛り上がってるところ悪いけど、逃亡生活はまだ終ってないわよ」
 彼女の全身に破壊の闘気が漲るのを見て、雪うさぎはびくりと体を震わせた。もしかしたら、三人組の中でも小心な性質なのかもしれない。その様子を見て、小さい雪だるまが声を張り上げた。
『ビビってんじゃねえ! だからおめーはダメなんだよっ!』 
 雪うさぎに発破をかけながら、両手に構えた雪玉を投げつける。蓮華と欝穂に雪玉が当たり、二人の防御を崩した。
「わ、わ、冷たい」
 ぶつかった雪玉の欠片が襟元から服の中に入ってしまい、蓮華が思わず飛び上がる。冷たさもさることながら、雪玉そのものも結構痛い。どうにも気の抜けた外見の連中ではあるが、実力は確かであるらしい。
『氷をも砕くオレ様の拳、受けてみろぉ!』
 外見に似合わぬ野太い声とともに、大きな雪だるまが繰り出した強烈なパンチを、闇紅はすんでのところで受け止めた。盾ごしに衝撃が伝わり、ひやりとした空気が頬を撫でる。まともに喰らっていたら、氷漬けにされていただろう。
「見た目はアレでもさ、悪者なんだよね。だったらボクのランスの餌食にしちゃおう」
 不死鳥を思わせる自慢の翼を羽ばたかせ、ウィンヘヴンが愛用のランスの穂先を敵に向ける。そこから放たれた暗黒の瘴気が、雪うさぎを始めとするアザーバイド達を呑み込んだ。白い翼でふわりと舞うロズベールが、同じく暗黒の瘴気で後に続く。
 立て続けの攻撃に慌てふためく雪うさぎにフィネが接近し、全身から気糸を放ってこれを縛り上げた。その様子を横目に、闇紅が大きな雪だるまをさらに挑発する。
「図体だけでかくて……ホント邪魔ね……」
 そう言って敵の注意を自分に向けつつも、空中から雪うさぎを強襲することは忘れない。その多角的な攻撃に翻弄され、雪うさぎは判断力を失った。
「私は見た目も中身も可愛い雪だるまと戯れたかったのです。それなのにあなたたちときたら……許せません。雪だるまに対する冒涜です。万死に値します」
 ぶつぶつと呟く欝穂の赤い瞳は、暗い光を湛えて雪だるま達へと向けられている。
「私の雪だるまへの愛を返してください」
 続く言葉とともに、一条の雷光が走った。彼女の怒りをのせて電撃が荒れ狂い、雪だるま達を次々に貫く。さらに、プレインフェザーが気糸を放った。
「こんな所に長く居るなんてゴメンだからな、遠慮なんかしねえよ?」
 彼女の気糸が雪うさぎの耳の根元を正確に射抜き、緑色の葉に似たそれを激しく揺らす。混乱の極致にあった雪うさぎの思考が、さらに怒りに染まった。
 気糸に縛られたまま、じたじたと暴れる雪うさぎを眺めつつ、蓮華が後退する。打たれ強くない身にとって、先に受けたダメージは大きい。このまま前線に立ち続けるのはあまりに危険すぎた。距離を置き、蹴りから真空刃を生み出す。
「倒れる前に押し切る。攻撃こそ最大の防御よ」
 夏心がそう言って、踏み込みから強烈な打ち込みを雪うさぎに浴びせた。回復役がいない以上は、やられる前にやるしかない。
『ちっ……やってくれるじゃねぇか!』
 小さい雪だるまが、雪に足を取られて動きの鈍い欝穂に向けて冷水で満たされたバケツを投げる。欝穂の頭上でバケツがひっくり返り、瞬時に凍りついた水が、彼女を氷の中に閉じ込めた。続けて、大きな雪だるまが、闇紅に正拳を打つ。
『――調子に乗るんじゃねぇぞコラァ!』
 今度は、避けることができなかった。纏わり付く冷気によって、闇紅の全身が凍る。
 傾きかけた流れを引き戻さんと、ウィンヘヴンが雪うさぎに向かって駆けた。禍々しき黒い光を帯びたランスが雪うさぎを貫き、幾重もの呪いでその身を削っていく。そこに、ロズベールが再び暗黒の瘴気を放った。
『『ジョ、ジョニィー!!』』
 目を回して倒れた雪うさぎ(ジョニー)を見て、雪だるま達が叫ぶ。
「ふわふわ可愛くても、ロズはさばきの手を緩めません」
 ロズベールが、純真さを湛えた迷いのない瞳で彼らを見た。

●ボトム・チャンネルの恐怖
 フィネが神々しい光を放ち、凍りついた欝穂と闇紅を始めとして仲間たちの呪いを消し去る。体の自由を取り戻した闇紅が、小さな雪だるまに空中から襲い掛かった。欝穂の放つ雷が、後を追うようにして雪だるま達を貫いていく。
「私にできるのは、全力でこの雪だるまたちを否定しながら攻撃し続けることだけです」
 黙っていればまだ可愛げもあるのに、身に纏う雰囲気や表情、そして野太い声や三下じみた口調が全てを台無しにしている。まったく許しがたい。
 プレインフェザーの気糸が小さな雪だるまの人参に似た鼻を掠め、蓮華の斬風脚が刃物の切れ味をもってその身を削る。ウィンヘヴンのランスから放たれた暗黒の瘴気が、二体の雪だるま達を覆った。
『よくもジョニーを……!』
『オレ様を本気で怒らせちまったようだな……!』
 仲間を倒された雪だるま達は、ここで最大の反撃に出た。小さな雪だるまが特大の雪玉を欝穂と蓮華に投げつけ、大きな雪だるまが巨体を武器にして闇紅に突進する。
 雪だるま達にとって、それは会心の――必殺の一撃だった。手応えは充分、これで立っていられる者は、おそらく存在しないだろう。
 しかし、彼らは次の瞬間、我が目を疑った。
『な、何だこいつら……!?』
 タックルをまともに受けて、崩れかけた闇紅の膝がギリギリのところで踏み留まる。彼女の虚ろな瞳が、眼前の大きな雪だるまを捉えた。
「まだ足りないなら……良いわ……運命くらいかけてあげるわよ……!」
 次々に運命を引き寄せ、リベリスタ達は途切れかけた意識を繋ぐ。蓮華が頭の雪を払いながら立ち上がり、欝穂が静かな怒りを込めて小さな雪だるまを睨んだ。
『な、何でだ……何で、倒れないんだよ!?』
「なぜかって? あなたたちが許せないからです」
 慌てふためく雪だるま達に、欝穂が美しい声で言い放つ。
「私の目の前から消えてください。完全消滅かこの世界から立ち去るかは問いません」
 その迫力に、雪だるま達は思わず身を竦ませた。
「――さぁ、清い魂で天にめされて下さい」
 傷の深い闇紅をフォローするべく、ロズベールが前に出る。十字架を模した長柄の鉄槌が赤く染まり、命を奪う魔具と化して大きな雪だるまを襲った。
「今回は見せ場譲るわ……しっかりやんなさいよ……?」
 もう一度同じ攻撃を喰らえば、立っていられる保証はない。闇紅はやや悔しげにそう言うと、後方に下がって距離を取り、地を蹴って空中から攻撃を仕掛けた。
 そろそろ頃合か。小さな雪だるまを気糸で絡め取り、フィネは雪だるま達へと語りかけた。
「こちらで過ごすおつもりなら、フィネ達の世界のこと、知りたくありませんか?」
 雪だるま達の視線が、彼女に集まる。ロズベールが、真面目な表情で口を開いた。
「この世界はもうじき、雪や氷がそんざいできない世界になります。ここの雪も、きっとあなた達も、全てが解けてなくなってしまいますよ」
 訥々とした彼の口調が恐怖を煽ったのか、雪だるま達の表情が文字通り凍る。実際は春になって雪解けの時期を迎えるというだけだが、少なくとも嘘は言っていない。
 さらに、フィネがこちらの世界の四季について語る。雨が降り続く梅雨時、じめじめと湿度が高く、蒸されるような暑さが続く夏。
 それが過ぎれば、涼しい秋が来るけれど――。

 フィネの言葉に重なるようにして、味方を巻き込まないようギリギリの地点に放たれた欝穂の魔炎が爆音を轟かせる。
 炎に包まれて悲鳴を上げる彼らに向けて、フィネは小さく首を傾げてみせた。
「……また冬が来るまで、耐えられるでしょうか?」
 雪だるま達の背後に回りこんだプレインフェザーが、思考の奔流を彼らに向けて炸裂させる。
「この寒さでムシの居所が悪ィんだよ、これ以上ここに居るってんなら……お前らの世界の法に代わって、恐ろしい目に遭わしてやんぜ?」
 睨みをきかせながら、彼女は雪だるま達をディメンションホールがある方向に向けて吹き飛ばした。畳み掛けるようにして、蓮華が斬風脚を浴びせていく。
「こっちの世界は危ないよ。自分達の世界へお帰り」
 ここで仕留められるなら良し、元いた世界へ逃げ帰るならそれも良し――夏心は輝くオーラを纏った大剣を小さな雪だるまに振り下ろしながら、彼らに声をかけた。
「はみ出し者はどこに行ってもはみ出し者よ。知らない世界なら好き勝手出来るなんて道理が通らないわ」

 小さな雪だるまはようやく気糸から逃れたが、もはや、彼らの戦意は底を尽いていた。逃げなくては殺される――恐怖に駆られた彼らは、目を回したままの雪うさぎ(ジョニー)を拾い上げ、一目散に逃げ出す。
 雪だるま達の逃げていく方向がディメンションホールから若干ずれていることに気付いたウィンヘヴンが、彼らに声をかけた。
「へーえ……、そのしょぼい見た目通り根性すらないんだねぇ。わーだっさいなぁー」
『何だと……!』
 口に手を当て、指をさして笑う彼女に、雪だるま達が振り返る。直後、彼らは自分達が道を間違えていたことに気付いた。
『兄貴、こっちだ!』
 ディメンションホールの方に逃げていく雪だるま達を、リベリスタ達が追う。大きな雪だるまの背中目掛けて、夏心が大剣を振り上げた。
「帰りたいのでしょう? 手伝ってあげるわ」
 大きな雪だるまが、吹き飛ばされて宙を舞う。すかさず、プレインフェザーが思考の奔流で雪うさぎ(ジョニー)を抱えた小さな雪だるまを弾き飛ばした。
 雪だるま達が、相次いでディメンションホールに吸い込まれていく。
『『おぼえてろーぉ……』』
 涙声の捨て台詞だけが、穴の奥から響いた。

●嵐の後に
「皆、お疲れ様ね」
 雪だるま達が元の世界に帰ったのを見届けて、夏心が全員を労う。欝穂は、まだ怒り覚めやらぬといった様子で、彼らが消えた穴をじっと睨んでいた。
 ウィンヘヴンが、ディメンションホールを跡形もなく破壊する。閉じた穴などに興味はないといった様子で、闇紅が踵を返した。
「ふぅ……お疲れ様……寒いし、さっさと帰りましょ……」
 直後、ロズベールが「くしゅんっ」と可愛らしいくしゃみをする。
「……早くかえって、お風呂で温まりたいです」
 彼の言葉に、プレインフェザーも体を震わせて呟いた。
「温かいコーヒーでも飲んで一息つきてえなあ」
 そんな二人に、蓮華が持参した水筒から温かい茶を振舞う。
「どうぞー」
 帰る前に、冷えた体を温めておくのも悪くないだろう。リベリスタ達はしばし、生き返ったような気持ちで茶を味わった。

 茶をゆっくりと口に含みながら、フィネがふと、背後を振り返る。
 ならず者たちが去った後の雪原は、どこまでもキラキラと美しく輝いていた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 まずはお疲れ様でした。
 今回は回復手段に乏しい中での殴り合いとなったため、リベリスタ側の損害も結構無視できないレベルになりました。
 基本的に雪だるまアウトローズのメンタルは三下レベルなので、追い詰めたタイミングで脅しをかける作戦は有効だったと思います。最終的に見逃してもらったことを彼らが感謝するかどうかは謎ですが、ボトム・チャンネルが恐ろしい場所ということは嫌というほど思い知ったことでしょう。
 ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。