●ピグマリオンの工房 闇の中で少女は震える。 なんでこんなことになってしまったのだろう? 目を覚ますまではいつも通りだった。 いつものように朝起きて、いつものように学校へ行き、いつものように友達と過ごしていた。 それなのに……。 「どうしたのお姫様? ほらほら、笑って笑って。せっかくの可愛い顔が台無しだよ?」 目の前のお兄さんは、写真屋さんみたいにわたしに声を掛けてくる。ただ、写真屋さんと違うのは、手に持っているのがカメラではなく、鋭い刃物だということ。そして、写真を撮るのではなく、わたしの命を取ろうとしていること。 「やっぱし、俺はアーチストとして考えるわけよ。美しいものを、如何に美しく残しておくのか、っていうことをさ。昔から色んな偉いゲージュツカのセンセーがやってきた。同じものを表現するのに、絵を描いて、音楽を奏でて、彫刻を彫って! そして、そこで表現を模索することを止めたら、人類の魂は死んでしまう! だから、俺も先達のセンセー方に負けられない、ってね」 お兄さんの言うことは全く訳が分からない。 だけど、もし逆らったら何をされてしまうのか分からない。 「つーまーり、出来る限り、綺麗な姿になって欲しいわけよ。ほらほら、そんな感じ」 だから、お兄さんに従って、無理矢理笑顔を浮かべた。従っている内は、多分大丈夫。 「はい、良い顔だねー。そうそう、そのまま、そのまま。それじゃ、よろしくお願いしまーす」 その言葉と同時に鋭い痛みが走った。 そして、お兄さんの後ろにいる何かが光を放って……。 ●リベリスタの使命 リベリスタ達がブリーフィングルームに入ると、そこにはぐったりと疲れた雰囲気の少年がいた。あまり見かけない顔だ。たしか、新しく入ったフォーチュナであったか。体調が悪そうなのを見て取ったものが、大丈夫かと声をかける。 「あぁ、大丈夫。元々、こうなることはよくあるんだ。この説明が終わったら休むから、安心してくれ。それじゃあ、説明を始めようか」 『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)はふらふら立ち上がると、端末を操作し、説明を始めた。 「今回はちょっとばっか胸糞悪い事件だ。現れたのはフェイズ2、戦士級のエリューション・フォース。名前は『ゾンビメイカー』と呼ばれている。元になったのは『故人に生き返って欲しい』っていう想いから生まれたって言われている」 『ゾンビメイカー』は、木で出来たデッサン人形のような姿をして、生き物の死体を動かす力を持っている。基本的には操り人形のように対象を動かすだけだ。しかし、エリューション・フォースの近くにある死体が、増殖性革醒現象の影響を受けて、エリューション・アンデッドになってしまうのは時間の問題である。 戦闘になると、『ゾンビメイカー』はその手から糸を投げかける。この糸は鋭い切れ味を持ち、遠距離攻撃として機能する。さらに、自分の周囲に張り巡らせることにより、周辺にいる相手の動きを封じることも可能だ。また、自分が操る死体の傷を癒すことも出来る。生まれる要因になった、願い故だろうか? 「『ゾンビメイカー』だけだったら、それほど問題にはならなかったんだろうがな。性質の悪いことに、こいつに偶然遭遇した人間がいた」 さらに悪いことに、その男は殺人鬼だった。彼は『ゾンビメイカー』の力を理解し、その力を研究する中で、革醒を果たす。最悪の組み合わせだ。 「氷室・霧人(ひむろ・きりひと)。いわゆる、快楽殺人鬼って奴だ。『ゾンビメイカー』でエリューション・アンデッドを作ることを『芸術』とか言っている、壊れた頭をしている」 機嫌の悪そうな表情の守生。元々目付きも悪いので、その効果はひとしおだ。リベリスタの中に怖がるものがいるのに気付き、表情を緩めて、謝罪をする。 「すまない、冷静さを欠いていた。で、こいつはナイトクリークとして革醒して、そこそこの腕前を持っている。もっとも、リベリスタやフィクサードとの交戦経験は無いから、勝負度胸みたいなものは据わっていないようだがな」 スクリーンに映し出されるのは、20歳前後の軽薄そうな男の顔。遊びなれていそうな雰囲気をしている。実際に、フィクサードになる以前もそうした盛り場で「獲物」を探していたらしい。 「そして、言いたくは無いんだが……こいつに作られたエリューション・アンデッドが5体、護衛として存在する。もちろん、氷室の犠牲者だ」 既にフェイズ1のエリューション・アンデッドと化してしまっている。その姿はいずれも少女のもので、めいめい手に持った工作道具を武器にしている。それによる攻撃は流血をもたらすだろう。 「こいつは現在、山中のアジトへ小学生の女の子を捕らえている。アジトの中は狭いが、それ程戦うのに不自由な場所ってことも無い。女の子は……今晩の獲物、ってことだろう。名前は藤井・美咲(ふじい・みさき)。今からなら、この娘が殺される前に十分間に合う」 守生は力強くリベリスタにその事実を告げる。その瞳は「彼女を救ってくれ」と、言葉以上に語っている。 「説明はこんな所だ。資料も纏めてあるので目を通しておいてくれ」 説明を終えた少年は、その鋭い瞳で睨むように、リベリスタ達に送り出しの声をかける。 「あんた達に任せる。無事に帰って来いよ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年02月02日(木)23:14 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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● 「へぇ? キミたち、何処から来たの? いつから覗いていたの? いけないなぁ。そういうのは犯罪だって、お母さんから習わなかった?」 氷室霧人は陽気に笑いながら、目の前の2人、『人間失格』紅涙・りりす(BNE001018)と『Unlucky Seven』七斜・菜々那(BNE003412)を見下ろす。それに対して、2人は目一杯怯えている……振りをする。 りりすと菜々那の前にいるのは、フィクサード氷室と、2人の少女……だったもの。それに対する憐憫も、フィクサードに対する怒りも無い。ただ、仲間達が動くタイミングを計る冷静さだけがある。 一方、氷室は自分が芸術家の端くれとして殺人を行っているのだとか、あのジャックをリスペクトしてこの道を選んだのだなどと、自分が如何に壊れているのかを楽しげに語る。聞かれもしないのに。そして、語りが一段落した所で、手に持っていたスティレットを抜き放つ。 「そう言えば、キミたち、なんか普通と違うよね? こっち系っつーか。第3の目があったり、右腕が疼いちゃったりする、みたいな。だったら、楽しみだなー。同類殺すって、どんな気分なんだろうなー」 ● 「では行こう、各人の活躍に期待する」 『生還者』酒呑・雷慈慟(BNE002371)は目を見開く。ファミリアからの情報で、標的である氷室が囮である2人の方に向かい、十分な距離を取ったのは確認した。予定外なのは護衛として、E・アンデッドを2人連れて行ってしまったことか。おそらく、相手より多く人数を揃えることで、確実に獲物を捕らえるためだ。 「既に5人……もしかしたらそれ以上の犠牲者が出てる、か。ふざけやがって、これ以上の犠牲は絶対に出させねぇ」 そう、「護衛のE・アンデッド」はいずれも、氷室がゾンビメイカーと共に作ったもの。それは、取りも直さず5人の少女が殺されているということだ。いや、フィクサードとして革醒する前から殺人を行っていたということだ。おそらくはそれ以上の被害者がいることは明らかだ。 (……必ず、救い出してやるからな) 『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)は胸に誓い、魔力を集中させる。 同じく、『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)の胸の内にも、怒りの炎が渦巻いている。 「殺人鬼……ね。殺し方か、死体の扱いか…何かに『美学』を見出してるタイプですか」 言葉の上では淡々と。だが、手に込められた光に力が集まる。 アークが行っていることも、決して人に胸を張って言える「正義」ではない。だが、相手はそれ以下。いや、比べることすらおこがましい何かだ。 「……外道。これ以上の犠牲者は、出させません」 ユーディスの手から光の十字架が、氷室のアジトに向かって放たれた。 続いて、その強い光を包むように暗黒の瘴気がアジトに襲い掛かる。『殺人鬼』熾喜多・葬識(BNE003492)のものだ。 「やだな。俺様ちゃんとかぶっちゃう殺人鬼君。最初のアークの仕事としては、殺し甲斐あってステキ!」 歓びの声と共に放たれた瘴気はアジトの扉を溶かしていく。 葬識も氷室と同じ、殺人鬼だ。だが、同じにされるのは全く嬉しくない。葬識は少なくとも、自分の理性で殺人衝動を制御することは出来るからだ。そして、殺したりない分は……氷室本人に払ってもらおうと、舌なめずりをする。 その時、扉の内側から不気味な動きをしながら、不恰好な木製デッサン人形のようなものが出てきた。アレが話に聞いていたゾンビメイカーなのであろう。横にはその糸に操られるように、少女が付き添っている。 少女達を見れば、氷室の言う「芸術」で何が行われていたのかは一目瞭然だ。もしも、この姿で生きていたとしても、痛みですぐに正気など失われてしまうだろう。そんな痛ましい姿だ。 そんな少女達の姿を見て、三角・木馬(BNE003495)は吐き捨てるように言う。 「ゲージツって奴はわかんねーなぁ。なんで落書きが何百万もすんだ? そういうんはせめて自分の空間でやってほしーよな」 木馬には氷室の心中は分からない。まだリベリスタとして目覚め、間もない彼女にとって、フィクサードの中でも異常者である殺人鬼の狂気など理解しようも無い。 「んー、芸術ですかあ。ステイシィさんも美術にはうるさい方ですがねい。美しいモノってのは滅びるからこそ美しいのだと思いますよう」 木馬に『リピートキラー』ステイシィ・M・ステイシス(BNE001651)は、間延びした口調で答える。何処と無く、自嘲の響きも感じられる。そして、彼女は目の前にあるアレらが芸術というのは、芸術と言う言葉への冒涜であると感じた。だから、手元のチェーンソーを起動させた。 「うら若き乙女を己の勝手な思想で散らすとは、何たる愚行。芸術家気取りでやっている事は稚児にも劣る自己満足……」 怒っているとも取れる語調で呟きながら、雷慈慟はゾンビメイカーを見据える。彼の頭は冷静に現在の状況を分析し続ける。今なら、確実に囚われた少女を確保し、フィクサードとエリューションを倒せるはずだ。 そして、仲間達へ突撃の号令を飛ばした。 「そもそもアーチストではない。アーティスト、だ!」 ● 「ウギャァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」 山中にフィクサードの悲鳴が響き渡る。 「まったくどうでもいい」 「いてぇっ! いてぇよッ!?」 りりすの目にも止まらぬ斬撃に体を切り刻まれ、痛苦にのた打ち回る氷室。彼は自分を切り刻むナイフが、かつてジャックに付き従っていた男の手に握られていたものだとは知る由も無い。 「人と違う事をすればソレが芸術だ。自分は特別だとか、必死で自分に言い聞かせなきゃ、夜も眠れなさそうな餓鬼なんざ如何でも良い。だが、仕事だし」 氷室は痛みに苦しみながらも、一応革醒しているだけのことはある。自分が罵倒されていることに思い至り、その痛みを押さえ込もうとする。 「お、おまえぇぇぇぇぇぇぇッ!!」 だが、動くことは叶わない。 痛みで動きが麻痺している氷室に、2本のショーテルが襲い掛かる。 「あは、やられちゃったの? ……あはははははは!!」 氷室の苦しむ様を見て、菜々那は狂ったように笑い出す。 「せっかくの死体なのに動かすだけなんて勿体ないの。死体なら葬るべきなの。バラバラにしたり燃やしたほうがスッキリするの。あなたとは相容れないの。モノは『壊れる』時が一番美しいの。おっと、芸術口論してる場合じゃなかったの。お仕事はちゃんとやるの。でもね、胸の奥がモヤモヤするの! あなたを壊したくって仕方がなくなっちゃったの! 壊してやる殺してやる潰してやる! 死ぬの死んだら死んでよ死ねなのさっさと死んでよ! うふうふ……あなたが壊れる度にモヤモヤが晴れるの! 気持ちイイの!」 支離滅裂な言葉を、壊れたラジオのように吐き出す菜々那。 言葉の勢いも速いが、赤く染まった2刀のショーテルから繰り出される斬撃の勢いはそれ以上だ。 それに続けて、りりすの刃がさらに氷室を切り裂く。その時、氷室の覚悟は「決まらなかった」。 「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」 操られた哀れな少女達は、自らを殺した殺人鬼を守るべく、リベリスタの前に立ち塞がる。 そして、流れる血を抑えて、氷室は逃げ出す。 自分で作った「芸術」も、そのために必要な「道具」も見捨てて。 ● 「そんじゃま、殺戮しようか。殺し終わったのを殺すのは趣味じゃないけど」 葬識は薄く笑うと、かつて愛するものの命を奪った刃をE・アンデッドに向ける。彼が好むのはあくまでも人を殺すこと。人が殺したものを、また殺すなど、お下がりをもらったようで気分が悪い。愛する相手というわけでもないので、なおさらだ。 今度はその闇の瘴気を打ち払うように、大きな構えから聖なる光を帯びた槍が一閃する。ユーディスの槍は、目の前の少女達を守ることが出来なかった。だから、せめて一刻も早く彼女らを解放する。それが自分にとって出来ることだと、槍を突き出す。 その背中に忍び寄るナイフ。E・アンデッドのものだ。エリューションに操られる少女は、かつての思いに関係無く、主の邪魔を排除しようとする人形に過ぎない。 だが、その刃は『鋼鉄の戦巫女』村上・真琴(BNE002654)によって弾かれる。現在、戦場は4対7。数の上では優位に立っている。なおかつ、本来ならあったろうフィクサードの妨害はなく、護衛の数が減っているのは大きい。 ゾンビメイカーは自らが繰る糸で襲撃者を牽制するも、エルヴィンが響かせた癒しの聖音の前では、あっと言う間にその傷が癒えて行ってしまう。 「こんな糸っきれで、縛られてる訳には行かねえんだよ!」 エルヴィンは自分から積極的な攻撃は仕掛けていない。それは、自分が後ろに回ることで、確実に仲間達がエリューションを倒してくれると信じているからだ。 「けひひっ、このオモチャ共を片してやるからな。お嬢ちゃん、待ってな!」 木馬の含み笑いと共に、戦場を雷が包む。痛みを感じないであろうエリューション達だが、しばらくは痺れが抜けることはあるまい。 木馬はそっと、帽子を目深に被る。 その時だった。 雷慈慟の脇に、1人の男が音も無く現れる。 『無形の影刃』黒部・幸成(BNE002032)だ。手には意識を失った少女、藤井美咲を抱いている。エリューション達を外に連れ出し、隙を突いて少女を救出するという作戦。見事に成功したのだ! ファミリアからも、りりすと菜々那がE・アンデッドを倒した光景が流れ込んでくる。雷慈慟が頷くと、幸成は姿を隠す。まだ目の前に敵は残っている。これを倒すまで、彼女の安全は確約されていない。 「後生大事に抱えてたって、腐っちまうだけです。私みたいにねい」 少女達、いやE・アンデッドが既に倒れていることを確認すると、ステイシィは十字の光をゾンビメイカーについて放った。彼女の過去について知る者はほとんどいない。ただ、「不死」というキーワードがちらほらと見え隠れするのみだ。そんな彼女だからこそ、目の前のエリューションに対して、思うところがあるのかも知れない。 「花は開いてこそ、華! それすら理解せぬ下賎の輩に撃鉄を起こす!」 徹底した集中と共に、雷慈慟の手から気糸が現れる。もはや、倒れ伏す少女達が花開くことは無い。怒りを覚える。その怒りに呑まれる事無く、されどその怒りを力に変えて。 糸を撃ち込まれたゾンビメイカーが大きく震える。その場にいる者達が、トドメを刺したのか、と思う。だが、それは最後の力を振り絞るための予備動作だった。 ゾンビメイカーの手から無数の糸が放たれ、前線に立って戦っていた者達の体を縛り上げる。そして、その隙にリベリスタ達から距離を取ろうとする。自分を捨てて逃げ去った主の元へ、馳せ参じようとでもいうのだろうか? その答えは永遠に分からないだろう。 目の前で、恐怖を打ち砕く勇気の光が輝く。正義の怒りを秘めて、エルヴィンがゾンビメイカーを見据えていた。 体を縛っていた糸を振り払うと、頷くユーディス。 神聖な光が槍に集まっていく。 「先ほど言った通りです。……これ以上の犠牲者は、出させません」 ユーディスの渾身の一撃がゾンビメイカーを貫く。 ゾンビメイカーは音も無く崩れ落ちた。 ● 「みんなー、こっちは無事に終わったのー」 憑き物が落ちたような明るい表情で、菜々那は仲間達と合流する。だが、顔や服に返り血が付いており、ただならぬことがあったことは、想像に難くない。 「好き好んで喰い殺したい敵でも無かった。まぁ、目的は達成出来たし、無理して深追いする程の相手でもないよね」 本来は執念深いりりすだが、今回の相手はそれにも値しない。 「本人が「芸術」にならなかったのは、運が良かったのかも知れませんねい」 ステイシィは苦笑を浮かべて答える。もし、ここに氷室が残っていたのなら、間違い無くそうなっていただろう。フィクサードを殺したがっている「殺人鬼」はこの場に少なくないのだ。 「無様に殺されてもう一度殺されるのも殺人鬼冥利に尽きるかもだね」 当の殺人鬼である葬識はけらけら楽しそうに笑っている。同じ殺人鬼である彼には、彼なりの美学があるのかも知れない。 その横で、アークと連絡を取ろうとする雷慈慟。アジトの中から発見されたのは、ジャックの起こした事件を纏めたスクラップ帳、それも公表されているもの程度で、大したものは見つからなかった。すると、木馬が被害者の少女、美咲に話しかけている姿が目に入る。 「よかったナー。ゾンビ一号にならねーで」 けひひ、と笑いながら、木馬はつとめて明るく美咲に接している。 「趣味の悪い芸術家が本物に手を出そうとした」、そんな事件だと伝えているのだ。もちろん、今すぐに心の傷が癒える様なことは無いだろう。だが、少しでも傷の治りは早くなるはずだ。そう、信じている。 同じ祈りを抱く雷慈慟に、エルヴィンが話しかけてきた。 「なぁ……アークに連絡取るなら、あの子らの遺体も引き取ってもらえるよう、お願いできないかな?」 いつもは陽気な表情の男だが、今はこの上なく真摯な瞳。 「……こんな状態だが、出来れば家に帰してやりたいんだ」 「私も同感です」 ユーディスも頷く。親子の絆、に対して思う所もある。 「構わん。作戦行動に支障は来さないだろう」 それから暫くして、アークの処理班がやって来たのを確認してリベリスタ達は帰路につく。 リベリスタとフィクサード。 それはコインの裏表。 同じ力に対してどう向き合うかによって、その差は表れる。 これはそんな同じ景色を眺めた者達の物語……。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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