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渇愛闇を呼ぶ

●鍋やろう、鍋
「最近忙しかったですし、鍋でもつつきましょう」
 ブリーフィングルームに呼び出されたリベリスタ達は、『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000201)が何をいったのか一瞬、理解できなかった。
 ご丁寧にも中央に鎮座するのは土鍋。しかし、明らかにひとグループ、せいぜい八人かそこらでつついたら底をつくようなサイズだ。
 だが、よくよく見回してみれば、調理鍋が相当数、カセットコンロも同数ほど存在した。これはいったいどういうことなのだろう。さりげなく、土鍋が普通じゃないっぽいし。

「『強欲の鍋』。かなり前になりますが、とある相撲部屋に流れついたこのアーティファクトを回収する機会がありました。それ以来、これは倉庫で誇りを被っていたのですが、何せ土鍋です。放置しておくのも、もったいないと思いまして」
 アークがわざわざ回収するような土鍋が、ろくなもんな筈もないと思うが。

「この鍋は、調理した人間のその時点での最も強い欲求を吸収し、対象の欲望が潰えた段階でエリューション化させる、という性質がありまして。裏を返せば、皆さんにはたいして問題ではないのですが、その。極端に異なる欲求を持つ人間同士が集まってこれで鍋を作ると、形容しがたい味になってしまう、と。そんなことを聞いています」
 おわかりいただけただろうか。
 つまりは、材料がまともでも場合によりけりで味が闇鍋になるらしい。なにそれこわい。

「人数が多い場合も加味して、出来た分の鍋をこちらに移して別のグループが作り、を繰り返せればなあと思いまして。どうでしょう?」

 どうでしょうも何も。あんまり労っているように感じられなかった。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:風見鶏  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年02月04日(土)23:22
 闇鍋(味だけ)。

※Caution!!
 このシナリオでは、フェイト残量に関わらない死亡判定やカオスゲージの増減はありません。
 ですが、人生的な意味で大きな傷をおったり、味覚のカオスゲージが人知れず増減する可能性は否定できません。
 むしろ保証できません。

●達成条件
 楽しく鍋を食べること。経緯問わず。

●アーティファクト「強欲の鍋」
 鍋を調理する人間の、その時点でもっとも強い欲求を吸って鍋の味に反映させる。
 E能力を持たないものが単独で調理した場合、欲求を奪われエリューション化する。
 革醒者には特に影響はない。
 極端に異なる欲求を持つもの同士が集まって鍋を作ると、味が複雑怪奇になる、らしい。
 詳細は拙作「<相撲の腹>部屋に咲くちゃんこの花」参照のこと。

●イベントシナリオのルール
・報酬はVery easy相当です。
・法律に触れる行為、倫理的にアウトな行為、公序良俗的にアレな行為、不特定多数の他人または特定個人を不快にさせる行為、白紙プレイングは原則として描写されません。
(故意に闇鍋状態を作り出すことはこれに該当しません)
・行動を共にしたいPCがいる場合は、名前とIDの付記をお願いします。NPCの場合は、名前だけで結構です。グループ単位の行動の場合は、それとわかる表記を共通でお願いします。

●鍋ルール
・基本的に3~8人が望ましいですが、一人鍋がとかカップルがとかは止めません。
・「欲求」にかんしては、ステータスシートとプレイングによる総合判断です。
 独断も混じるかもしれません。
・材料は自由。時節に極端に会わないもの、食べ物でないもの、その場の空気を物理的に著しく汚染するものでない限りは可。
・夜倉は特になにもなければ一人鍋です。

 細かいことを気にせず、こう、ぱーっと。
 ご参加お待ちしております。
参加NPC
月ヶ瀬 夜倉 (nBNE000202)
 


■メイン参加者 54人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
ナイトクリーク
ウーニャ・タランテラ(BNE000010)
覇界闘士
テテロ ミーノ(BNE000011)
ナイトクリーク
星川・天乃(BNE000016)
覇界闘士
月星・太陽・ころな(BNE000029)
デュランダル
雪白 桐(BNE000185)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
マグメイガス
月星・地球・宇宙(BNE000353)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
インヤンマスター
ハイディ・アレンス(BNE000603)
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
クロスイージス
祭 義弘(BNE000763)
デュランダル
桜小路・静(BNE000915)
ソードミラージュ
戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)
ソードミラージュ
上沢 翔太(BNE000943)
ソードミラージュ
紅涙・りりす(BNE001018)
デュランダル
四門 零二(BNE001044)
インヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
スターサジタリー
リーゼロット・グランシール(BNE001266)
クロスイージス
アウラール・オーバル(BNE001406)
マグメイガス
風宮 悠月(BNE001450)
デュランダル
桔梗・エルム・十文字(BNE001542)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
ホーリーメイガス
ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)
覇界闘士
宮部乃宮 火車(BNE001845)
マグメイガス
丸田 富子(BNE001946)
デュランダル
イーリス・イシュター(BNE002051)
スターサジタリー
結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)
ホーリーメイガス
月杜・とら(BNE002285)
デュランダル
ジース・ホワイト(BNE002417)
ソードミラージュ
ルカルカ・アンダーテイカー(BNE002495)
クロスイージス
ノアノア・アンダーテイカー(BNE002519)
デュランダル
蜂須賀 冴(BNE002536)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
デュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
スターサジタリー
白雪 陽菜(BNE002652)
デュランダル
結城・宗一(BNE002873)
クリミナルスタア
烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)
ナイトクリーク
宮部・香夏子(BNE003035)
ホーリーメイガス
ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)
ソードミラージュ
ポルカ・ポレチュカ(BNE003296)
覇界闘士
クルト・ノイン(BNE003299)
ナイトクリーク
フィネ・ファインベル(BNE003302)
ホーリーメイガス
氷河・凛子(BNE003330)
クリミナルスタア
阿倍・零児(BNE003332)
ホーリーメイガス
雪待 辜月(BNE003382)
ホーリーメイガス
護堂 陽斗(BNE003398)
ダークナイト
七斜 菜々那(BNE003412)

ユーキ・R・ブランド(BNE003416)
ダークナイト
アルトリア・ロード・バルトロメイ(BNE003425)
ダークナイト
バゼット・モーズ(BNE003431)
ダークナイト
ウィンヘヴン・ビューハート(BNE003432)
ダークナイト
ロズベール・エルクロワ(BNE003500)

●前準備的な
「……むぅ」
 鍋の日、朝。
 自宅の調理場で材料と格闘していたのは、優希だった。
 決して器用ではないという自覚がある彼は、事前に下拵えを済ませて向かおうと考えていたようだ。
 既にタッパーに幾つか詰め込まれていた野菜などは綺麗に仕上がっているとは言い難いかも知れないが、食べやすさなどを考えれば丁度いい程度かもしれないだろう。
「らしい」といえば、至極そのとおりだった。

「おやじさん、鍋に合う旬のものを是非頼む」
「オウ、いいとこに来たなニイちゃん! 丁度いいブリが入った所なんだよ、どうだい? イワシもあるぜ!」
 それよりもやや早い時間帯。零二は、鮮魚店に来ていた。旬が冬の魚、というと代表例が鱈、次いで鰤や鰯が該当する。季節柄故にそのどれもが鍋に合う魚であるあたりは、有難いことこの上ない。
 一方、富子の作る鍋に賛同したハイディは紅鮭の確保に訪れていた。一般的に紅鮭は輸入品が主で、国産品を入手するにはかなりの苦労が必要なのだが……手に入るものである。何かの運命が働いてやしないだろうか、これ。
「荷物持ちなら任せな!
山ほど食わせてもらうつもりだからな。その分はしっかり手伝わせてもらうぜ!」
「俺も手伝うぜ。クーラーボックスなら準備してあるしな」
「頼もしい限りだねぇ、助かるよっ!」
「はい! わたしもてつだうのです!!」
 丸富食堂前では、出発に向けてフツ、義弘、イーリスの三名が荷物持ちとして出張っていた。ハイディの連絡もあってか、今からより好いものを作れる予感に誰よりも楽しみにしているのは、誰あろう富子自身だ。
 こと、フツと義弘は食堂の常連客でもある。彼らにとって、富子が腕を奮うという意味が分からぬ道理も無い。
 最高の鍋の為に、一致団結。美しい光景だった。

 ……ところで。
「土鍋って言ったら、アレでしょ。ぬこ鍋!」
 アウラールの脳裏に浮かぶのは、土鍋にみつしり詰まった猫達の可愛らしい光景であった。
 猫好きなのはわかるけど、使いまわす鍋だからな。猫の毛とかな。
 自称・三高平の猫ポイント把握者であるアウラールの進軍を阻むのは……とらからの唐突な電話だった。
「ビターライフを収穫に行くから、アウラ君は運転手でついてきてね♪」
「いやでも、俺、今ぬこを……」
「ぬこぬこ言ってんじゃねーですよ、リア充!」
「ぁ、はい、すみません……」
 恐るべし、とらの有無を言わせぬ威圧感。
 三高平市民の鍋にかける情熱はとんでもありません。

●言いようもない製作過程
「まかせとけ! 安心してよ、僕こうみえても自炊とかできるから」
 自信満面で自炊が出来ることを自慢する夏栖斗に対し、火車はしかし信用の欠片もない様子だった。
 っていうか、明らかに虎視眈々と腹パンするタイミングを伺っている。何この二人こわい。

「エプロン超かわいいだろ! 裸エプロンのがよかった?」
「手前の裸エプロン見て喜ぶかバカ! 「この場には腐った連中も居るんだぞ! 珍妙な事言ってんじゃねえ!」
「ぴぎゃあ」
 鋭く腹パン一発目。あらやだ軌道が早速見えない。

「火車きゅん、辛いの得意?血の色鍋がいいっつってたしさー」
「キムチは血じゃねーだろ……血ってのはこう!」
「ぎゃぁ」
 辛いのは平気な火車の二発目。あ、ちょっと口の端に血。

「そいや、火車くんもリア充になったんだよね。乱暴で粗野な火車くんが……僕うれしいよ。
 もう、彼女の前では初々しい火車くんかわいいよねえ」
「お前はオレの親か何かかアホンダラ! オレじゃなくて朱子が可愛いんだよ! 死ねぇ!」
「ぐふぅ」
 続け様に三、四発。ラッシュ入りました。
「っしゃ! できたーぶべらっ」
 そしてフィニッシュ。
 完成したはいいけど、夏栖斗の腹筋は大丈夫なのでしょうか。

「昆布を水から入れて沸かして出汁取りから、ですね。後は簡単な分最初をしっかりしておかないと」
「味付けはなしでいいので楽なものですね」
【ぢごく鍋】メンバーは、安定の調理上手二人の存在が大きかった。
 手際よく仕事をこなしていく桐と凛子の二人の傍ら、ころなと宇宙は他の面々への挨拶や交流を主だって行なっていた。
 ときに、グループの主催であろうりりすだが……すっごいぐだぐだしていた。既に欲望を鍋に送り込んでいるのか、調理に我関せずといった風情だ。
「はんぺんの材料って鮫ですよね」
 桐の言葉尻にちょっとした棘が浮く。
「紅涙さんも準備お願いしますね」
 凛子の声にもやんわりとした棘がある。
「じゃあ食材投下するよー。ぽいぽいっと」
「はわーザリガニ発見……ぎにゃー挟まれた-!」
「大丈夫ですか?」
 勢いで具材を投入し始めたりりすの傍ら、ころなが目についた伊勢海老に手を挟まれるという珍事が置きつつ、調理は異常なく進んでいた……いた?

「何か罠の臭いがするわね。幹事が月ヶ瀬さんってとこから怪しい感じだわ」
「幾ら僕だって福利厚生に罠を仕込むほど鬼じゃないです。罠になるのは君達の想、いやいや引っ張らないでくださいウーニャ君、延びますって」
「野菜がいるときいたからそのへんで草もってきたわ。なんかビターなんたらっていうレタス」
「ああ、三高平商店街で買ってきたんですね。……買ってきたんですよね? ルカルカ君?」
「なんだよー、闇鍋って言いつつふつーじゃねーかよー。その点トッ○はすげーよな、最後までチョコたっぷりだもん」
「ノアノア君、流石にアウトです。っていうかその草食べられますけど雑草ですよね?」
【3P】で参加したウーニャ、ルカルカ、ノアノアの三名は相変わらずだった。安定ってレベルじゃねえ。
 ウーニャ、林檎と蜂蜜。
 ルカルカ、ビターライフ(収穫元不明)。
 ノアノア、その辺の草。
 これで美味しくなったらすげえ。因みに、『ピンク三名』って意味だそうです。えろくないよ。

「なべ、なべ……ポトフみたいな物ですよね」
「寒い冬に美味しいお鍋とそれを囲む仲間達。最高のシチュエーションですね」
「亘くんとは、クリスマス以来。二人初めまして、ね」
「うん、いい匂いだね……楽しみだ」
【あっとほーむず】の四名は、さして深い交流があるわけではない。
 しかしながら、亘の呼びかけに賛同した者達は、何れも人の心の闇を知り、優しさを願い求める者達だ。
 その思いの結実が味を悪戯に変質させるわけがない。至って健全、四人鍋。
 零二、ポルカ、ロズベールの三名が材料調達に回り、亘が概ねの調理を進めていく。
 ロズベールの持ち込んだレンズ豆は、洋風鍋というべきポトフの具材としてはポピュラーなもの。
 決して、和風の鍋と喧嘩するような品ではなかろう。
 斯くして、平和裏に調理は進んでいく。

「どーりゃぁぁぁぁーーーーー!!」
 その、一方。
『丸富食堂』店主・丸田富子五十三歳、只今全力調理中。
 ハイディが、フツが、義弘が、イーリスが手伝ってくれたのなら、それを味で報いない道理はない。
 寒い最中の鍋である。これはやるしかあるまい。楽しませなければなるまい。
 他のものにも振る舞うのだと、富子は全力で調理する。
「アタシャ食材の声が聞こえるんだよ……おいしくして欲しいって声が……ね」
 味にかけてここまで言わしめる彼女の料理が不味いわけがない。救世主バンザイ。

「……え? カレーはダメなのですか?」
 香夏子の声に、若干の絶望の篭った響きが交じる。
 止めに入ったのは【なのはな荘】三名のリーダー、ルーメリアだ。
 常にカレーの匂いから逃れられないコーポなりの必至の抵抗。【かれはな荘】は遠慮願いたい。
「もうほぼ毎日カレー食べてるんだからこんな時までカレーとか嫌なの!」
 でも野球の欲望もないとおもうなあ。
(カレーカレーカレーカレーカレーカレーカレー……)
 諦めるといいつつ一切諦めない香夏子である。
「突出した何か凄いものは無く、基本の味がしっかり出ているものを……」
 平均をどこまでも追求する零児、赤い球団LOVEなルーメリアともども……本当に読めない面々である。


「食材は皆に任せた~!アタシは味付け(欲求)に専念するよ♪」
 タッパー(材料用)を持ち込んだ優希と、タッパー(お土産用)を持ち込んだ翔太、そして己の想いを叩きこむべく現れた陽菜。
 何だかんだで仲いいな【猫鍋】の三人。
 翔太は、至って普通……というか、穿っていないというべきか。やる気がないと公言する裏腹、為すべきことに真摯な彼の思いは、僅かな生存執着と平和に過ごしたいというもの。
 優希は優希で、周囲の欲求に頓着しないためか各々の欲求がわからない。こと、陽菜については分かっていない様子。
 擬似的にとはいえ婚礼を執り行った身でこれである。ある意味すげぇ。しかもガン見してる。
 あ、それで当の陽菜さんは優希君をガン見です。
(優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪ 優希LOVE♪)
 なげえよ!
 そんなわけで結婚しちゃえよ本当。

「忘れることで生きていける、時が癒してくれる、と人は言う。では、時も経ってなくてまだ忘れられない時はどうすればいい?」
 快は自問自答する。こんな時にはイベントに参加するしか無い、と。
 だが、快には誤算があった。グループ主催者の選択を誤ったのだ。
「やばいだろこれメンツやばいだろこれ」
 同じく、参加した悠里も窮地に立たされていた。っていうかこの面子どうなんでしょうか。
「素敵なメンバーが集まったじゃない。ふふっ、良かったわね、守護神
 ……あら、設楽悠里も来たのね。ふふ、良いわ。楽しめそうね」
 称号に嗜虐なんて入ってるんだからそもそもこの人とんでもねぇ。ティアリア。
「目指せ、カオス鍋で鉄壁男子新田の目からハイライトを消してみようの巻」
 そうだね、君は最近目からハイライトが消えたって聞いた。虎美。
「あれ、千堂さん? まだ、アークにいらしたんですね。
 イメチェンですか、メッシュやめちゃったんだ。……って、千堂さんじゃないよ!? 新田さんだったよ!」
 うっわ白々しい。超白々しい。アーク屈指の残念女子、舞姫。
「守護神がいると聞いてシュバババッ」
 最近本家食いが激しい腐ランダル、壱也。
「皆、いいもの持ってる! その捩れた想いをこれにぶつけて☆」
 そして言わずもがな、主犯のとら。
 あとまあ、被害者数名を交えて。【病み鍋】です。誤字じゃねえ。

「出汁の味が楽しめるようにお麩を入れましょうか。
 後は……そうね、栄養価も考えた方がいいわよね」
 ティアリアさん、闇鍋に麸って絶対あんた経験者だろ。
 あとクロレラとかモロヘイヤとか、栄養価って問題じゃない。ねばっとしてるしモロヘイヤ。
「わたしはね、えへへ、これ持ってきたよ!」
 壱也、割り下にチョコを投入。
「これで来月もチョコ欲しいなんて腑抜けた渇望は起こらないはずよ」
 こええ。これもとらの差金かよ。
「ぱぱぱぱっかぱー♪ まーぐーろーへーっどー!」
 ある意味絶対的黒歴史を惜しげもなく披露。舞姫、本当に自分を捨てている。
 っていうかそれ食用じゃねーだろ! 色々な意味で!

(お兄ちゃんがほしいお兄ちゃんがほしいお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんぐぎぎまた他の女見てるしこっち見てよお兄ちゃんお兄ちゃんぺろぺろお兄ちゃんぺろぺろお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんが欲しいぃぃぃっ! )
 これはひどい。一人鍋の準備をしていた竜一も背筋を正すレベル。
「僕の欲求かぁ。なんだろう。今は可愛い恋人といれれば幸せかな、えへへ」
 まあ始終エンジェルエンジェル言ってりゃ幸せだと思うレベル。サプライズは起こさせない。
 ……ところで、とらと壱也の欲求とかあえて公開する? しなくていいよね?

「何だろうこれ。目の前でとても悪いことが起ころうとしてるのに自分ではどうすることも出来ない、このもどかしさ……」
 すいませんアウラール君、止めてください頼むから。

「……ところで」
 夜倉は現実から逃げ出した。
 見ていない。マグロヘッドなんて見ていない。翔太がさっき呼んでいたか。あとでご相伴に預かるとしよう。
 いや本当に何も見ていないんだ。
 問題は、なんというかこう……想像以上に多いのだ、一人鍋。
 見たところ、報告書では見ていないリベリスタも大なり小なり散見される以上、アークに来て間もない人間もそこそこ居るのかもしれない。
「……バゼット君」
「何か用か? 雑用なら幾らでも言ってくれれば、やるが」
「いえ、そんな堅苦しいことじゃありません。何人か集めて欲しいのですが。……ええと」
 そんな感じで。
「タダメシと聞いてダッシュでやってきました」
 ただより高いものはないのだが、それはそれこれはこれ。リーゼロット。
「日本の鍋にはネギが欠かせないって聞いたよ」
 ドイツ生まれの自由人、クルト。
「ボク、アークには最近来たばかりなんだけど、食事会をやってくれるなんて気が利いてるよね」
 チョコケーキで窒息。それでも食欲は衰えず。ウィンヘヴン。
「私も、参加するのか?」
 そして、バゼット。
「まあ、見たところ皆さん相応にストイックの様ですから、極端な味にはならないでしょう? 【チーム・ストイック】ってところでどうでしょう」
 適当だった。

「うふうふ……欲求を叶えてくれる鍋なんてステキなの」
「菜々那君、ちょっとエーデルワイス君と鍋やってきてください」
 続いて、夜倉は菜々那をエーデルワイスの元へ誘導。欲求に素直な彼女と表向き無欲を繕うエーデルワイスの相性たるや。
「ワタシ、トッテモ、ムヨク。ゼンゼンゴウヨクジャナイヨー」
「欲望の解放はとっても素晴らしい事だよ?」

 ……数秒後? さあ、どうだろう。

●欲望の味とか、そういうもの。

「ん~、良い匂い。美味しそう……」
 辜月はあえての一人鍋である。
 というのも、彼自身の欲求が至極まともであること、持ち込んだ胃薬の効果など諸々総合的に考えて、楽しそうにしている彼を敢えて混沌に誘うべきではないなあ、とか判断したとかしないとか。
「結構甘めだけど、美味しいですね……きて良かったです」
 幸せをかみしめている彼だが、後で少し頑張ってもらうかも知れない。

「……良し、と。そろそろ大丈夫かな、堅苦しいのは抜きにして早速いただくとしようか」
「大人数で一緒に鍋を作って食べる、なんて……本当に久しぶり」
「……いただきます!」
「鍋を大勢で食べるというのは、初めてですね」
「こうして鍋を囲むってのも良いもんだな」
 拓真の呼びかけに応じた【義心館】のメンバーは、桔梗の提案から鱈の水炊きを囲むことと相成った。
 幸いにして、相応に普通の鍋に仕上がったらしく、全員の雰囲気は一様に明るい。
 こと、冴にとっての「食事」は鍛錬の一部として捉えられている側面が大きかった手前、楽しみを伴うものだという認識がない。
「冴、もっと食えよ? ほら、これも、こっちもだ!」
「……ありがとうございます」
 ジースの溌剌とした雰囲気に流されるままに食事を摂る彼女は、場に漂う暖かな空気に身を浸し、僅かな幸せを感じている、のかも知れない。
 拓真の正面に座る宗一も、ここのところの激戦から解放されたことの安心感もあってか、食事を楽しんでいる様子ではある。
 だが、その根底には拓真に対する対抗心や、守るべきものへの思慕などが渦巻いている。
 そのような感情を少し落ち着ける意味でも、有意義な参加だった……の、だろう。
「細かい部分はさておき、日々を楽しめているのであれば良い事だ。俺も最近は……十分に日常を楽しませて貰っているからな」
「この鍋が怪しい品である事を差し引いても……こういうのは、いいものですね」
 ほのぼのと談笑する拓真と悠月を眺め、桔梗は思う。
(うーん、兄さん……もっとガーッとアプローチしたほうが悠月も喜ぶんじゃないかなぁ? せめてアーンくらいの甲斐性を……)
 そうだね、もうちょっと距離が近くてもいいね。

「凛子さんはどんなのが好き? 何か取ろっか?」
「私は構いませんよ、お先に食べてください」
「ころな君は沢山食べて大きくなるんだぞーぅ!」
「桜小路さんおおきにー! ボクいっぱい食べて大きなるー」
「賢者の石の洞窟では、初戦お疲れ様! 次も頑張るんだぞーぅ。何食べる?」
「あ、ありがとうございます。初陣は桜小路さんの助言のおかげでなんとか……」
【ぢごく鍋】、静の獅子奮迅の活躍が映える。
 先輩格である彼ではあれど、その根幹は年齢相応の青年だ。
 周囲との交流を最大限楽しみ、交友関係を広げることはイベントごとではとても有効で。
 正座でしおらしく接している宇宙が何を考えているかは……常は恋人への思慕で頭がいっぱいの彼には、さっぱり。
 ああ、惜しい何このシチュエーションとても惜しい。
「それと桐の鬼ぃぱん。ぱんつはおやつに含まれないんだよ」
 りりす、唐突に桐を罵る。まあ、調理中にさんざ材料扱いされそうになれば確かに、分かる。
「このえろす! さっきから僕を視姦してるけど!
 このえろす! 思春期にもほどがある!」
 すいません、五十一歳目の思春期ってございますでしょうか。

「私は呑めませんがどうぞ」
「ありがとうございます。オレンジジュースでもいかがですか?」
 桐と凛子は互いに酌み交わしながら、ほのぼのとした空気を作っている。
 何ていうか平和だね。

(おしとやかな女性を演じるべく正座をつらぬいてきましたが……足の痺れが……あともう少し……)
 おしとやかアピールに邁進した宇宙だが、流石にぼちぼち限界が訪れていた。
 足の裏とか超しびれてる。やべぇ。
「お姉ちゃんはおとなしね、初めて会う人おるから緊張なん?」
「ころな、私はいつも行儀正しいでしょ? ね、凛子さん」
 宇宙の縋るような目に、しかし凛子も困り顔で返すのみだ。
 面白がって尻尾を振り、ころなは宇宙の足にそれを打ち付ける。
 待っていたのは……まあ、お約束の絶叫ということで。

「お好きな具を取って、お好きなタレで食べてみてくださいね」
「陽斗様、お料理上手なんです、ね……っ」
 フィネと陽斗は、シンプルにしゃぶしゃぶを選択していた。
 というか、殆ど陽斗による提供であるが。
 食卓を囲む楽しみを教えようと考えた彼がもってきた結論が、鍋の楽しさをバリエーション豊かに教えること、というのは、
 なかなか面白い提案であり、実際に奏功しているようでもあり。
 それでも、しゃぶしゃぶに興じるフィネを見守る彼の笑顔は本当に、こう。幸せそうだった。
(あう、笑顔まぶしい……っ。言えません。もう1度着て欲しい、なんて……!)
 で、フィネの脳裏に閃くのは、いつぞやの依頼の陽斗の愛らしい姿。
「フィネさん、どうしました?」
「いえ、何でもありません……から……っ!」
 もう一度見たい愛でたいでも言えない。
 嗚呼畜生、この二人かわいいなぁ。

「隅っこで一人寂しく鍋を突こう」
 妹からとんでもない欲求を傾けられているとは気付かぬまま、竜一は黙々と一人鍋だった。
「ホントは便所飯したいところだが、便所で鍋はヤバイ」
 当たり前だ。そんな彼が一人鍋をしているメンバーを探すが、笑顔を返してくる辜月ぐらいしか見当たらない。
 一人で歩きまわるメンバーは何名か居るようだが、総じて他の鍋をひやかすのがメインの面々だ。
 一人鍋を目していた面々も、先程夜倉が右に左にまとめていた。
 ……つまり、竜一はガチぼっちだった。
「あれ……なんか、塩味がキツイ気がするな……な、泣いてなんかいないもん!これは、鍋の煙が目に染みただけさ……」
 鍋が煙を噴いてたまるか。
 竜一、寒々しい一人鍋。何故彼女を連れて来なかった!

「月ヶ瀬」
「天乃君じゃないですか。どうしました? まだお富さんのところも空きはあったようですが」
「こういう機会もない、から……感謝、しておこうと思って。鍋も、作った」
 夜倉を唐突に呼び止めた天乃は、調理鍋を取り出して「食べる?」といった様子であった。
 正直な所、「感謝」という感情は予想外だった夜倉である。無茶な依頼を探し当てているという自覚もあるし、彼女の内実を知ったればこそ、無理をさせているという自覚もある。
「趣味とか、聞いていい?」
「え、ええ。主に喫茶店巡りとか、日がな一日読書で時間を潰すこともありますし……そう言えば、天乃君は高校に入ったんでしたか」
「うん。多分、一年はまたやり直しだろうけど……」
「そりゃあ、まあ。あの調子じゃしょうがないでしょうねぇ……」
 流石に窓枠乗り越えて入ってくる(しかも穿いてない)学生をセーフと言える夜倉ではない。
 非常勤がその調子では他の教師なら尚更だ。本当に、年頃の子には自分を大事にして欲しいと思う今日この頃であった。
「……次は、負けない」
 そう小さく告げる彼女に、困ったように笑い返すことで肯定としてみたり、しつつ。
「俺がこの依頼を受けたのは、夜倉と一緒に泣くためかもしんない」
「すいませんアウラール君、わけがわかりません。なんで僕を掴んでるんですか」
「さ、席について。働き盛りですものね、しっかり栄養取らないと。とらのために立派な予見士になれないわよ☆」
「『とらのために』って単語がとても不安で仕方ありませんが!?」
「夜倉さんも一緒にどうぞどうぞ、逃がしません。最近仲いい人いますか? あ、男性で」
「壱也君は自重すべきでしょう! 逃してくださいよ!」
「脳内お兄ちゃんと私、合わせれば欲望が無限大! 覚悟は出来ているか? 私は出来ている!」
「本人来てるんだから、せっかく二人なんだから実物にアピればいいでしょう!」
 アウラールに腕を掴まれたかと思えば、あれよあれよという間に【病み鍋】の面々に引きずり込まれる夜倉。
 っていうか、既に座っている快と悠里は目からハイライトが消えているような気がするが。
「ほぉら、まだまだ沢山あるわよ。それとも、あーんしてあげましょうか?」
「え、ティアリアさん、いや、僕はいいです。いやほんと勘弁してくださいいいいい!」
 倒れそうになっても耳に天使の息。なにこの嗜虐天使マジドS。
「くっはー、わたし、マジ聖母!」
「いやー、このビターライフ、不思議と癖になる味だよね。現実の辛さを紛らわし、イヤー何いれてるのちょっとぉぉぉぉ!?」
 男の娘をエアぺろぺろする小娘に聖母なんて似合わないから。あとマグロヘッドはやめろとあれほど。
「夜倉おじさま、さーめしあがれ♪」
「……僕に何の恨みがあるんですか」
「やですねー、普段からの感謝の気持ちですよ☆ 脳細胞も冴え渡って、フォーチュナ能力にも磨きがかかるはず!
具体的に言うと、アレでアレでアレな不倶戴天アザーバイドの組んずほぐれつアッーな光景も、HDリマスターなステキ解像度で脳天直撃だよ!」
「マスターオブバベルが通用しないような夢想はノーサンキューです」
 夜倉、逃げようとする。アウラールがブロックする。
 それでも逃げようとする。まわりこまれてしまった。
「さよなら夜倉さん。貴方の事は忘れないよ。アデュー」
「悠里くん、こんなところで、フェイト……使わない、ように」
 ずーるずーる。夜倉はきっとくる。病み鍋という井戸の底から。誘いに応じて。

「ぅょ~おなべ1しゅるいより全部たべてみたいの~」
 食べざかり育ち盛り系リベリスタ・ミーノ。食欲は人一倍で、楽しみたい気持ちも人一倍だ。
 だからこそ、そういう発想にたどり着いたのは当然といえるだろう。
「\なづけてミーノお鍋おすそわけで全部たべちゃうぞだいさくせーん/」
 ……長いな。
「ウッス。もし良かったら、こっちで一緒に食べねえかい」
「ありがとなの~♪ ぱく。……!!!!」
「美味しく食べてくれて嬉しいねえ! おかわりならあるから食べていきなっ!」
 富子の石狩鍋を食べては全身で喜びを表現し、ひたすらに食べ。
「……香夏子ちゃんの欲望恐るべし……なの」
「ぅょ~おかわり……ちょーだい?」
 何故か微妙にカレー味になった【なのはな荘】の鍋に舌鼓を打ち。
「ミーノちゃんも遠慮しないで?」
「……きゅぅぅぅぅ」
 見事にオチを拾っていく。
「ともすると私の料理より酷いぞ、これは……」
 その傍ら、黙々と闇鍋を食べるアルトリア。
 無理するんじゃない、直ちに富子さんとこに行くんだ。

「つか俺は鍋の内容しらねぇで参加なんだよ、マジで。というわけで夜倉、あんたも来い!」
「……地獄に仏でしょうかねえ」
 出来上がった鍋を写真に収めている翔太に声をかけられ、ほうほうの体で歩いてきた夜倉は力なく笑った、ように思われた。包帯だしな。
「そういや夜倉とこうやって落ち着いて話すのって夏の福利厚生以来? っていうか、何故それで食える」
「まあ、概ねそれくらいでしょうか。しばらくぶりで。……三高平のマスク着用者は大体食べられるんじゃないでしょうかね。このまま」
「どんな構造してるんだよ……」
「っていうか、随分甘いですね……この鍋」
 まあ全力LOVEだしな。

「うンまァぁああああい!なんつーんすかこの!ドクダミとチョコのハーモニーつーんすかぁ!?」
「いっぱいたべてあと一週間は食べなくてもいきていけるようにするの」
「デザートはねーちょんの駄肉とルカちゃんの脇肉」
「あ、やぐらねーちょんのおっぱいなべたべる?」
「……この淫乱ピンクは何を言ってるんでしょうね」
 ついぽろっと暴言が出てしまう程度の混沌。ピンク三人寄ればいんらん。

「ぇと……ご無事ですか?」
「お大事に」
 辜月と凛子が手分けして闇鍋被害者へ胃薬を配っていく。……効くかどうかはともかく。

「豆腐……あっ、これ食べ頃、ですよ」
「ほ、ほひいいへふ」
 照れ隠しに盛られたフィネからの豆腐。鍋から直接。
 ワンクッションなど生ぬるい。食べきらねば男がすたる。
 ……火傷に気をつけような?

「うむ、美味しいな。感謝だ」
 アルトリアも、何とか美味しい鍋にありつけたらしい。よかったよかった。

 ……ところで。
 隅のほうで女性二名が倒れていたとか居ないとかあったけど、気のせいだろうか?

 なにはともあれ、鍋は大盛況の中終了した、とか。

「また企画しましょうかねえ。今度は外野で」
 相変わらずだった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 鍋の魔力ぱねぇ。