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【寓話】熱病は潮騒に

●踊れ、死の淵で
 逃げた。
 何処までも何処までも、誰も追いつけぬ速度を求めて逃げた。
 追いつかれても、見えなければ意味がない。
 誰も気づかない代わりに、私は誰にも識られないまま、終わりを――
「迎え、ない。迎えたく、ない」
 喘ぐ様に吐き出された声は、確かな質量を持って少女に纏わりついた。
 消えていた姿は再びに世界に顕れ、既に人の形すら忘れたその姿のまま、少女は。
「どこにも行かない、だから、何処かに『行って』」
 左腕を振り上げる。振り下ろす。
 白昼の公園に忽然と現れた『それ』が何かを認識するまもなく、公園を寝床としていた男の首は消し飛んだ。
 転がることも散らばることもなく。
 忽然と、『消えた』。

「どこにもいけないならどこにもいかない、だからどこかにあなたがいって、だからどこかに、誰も彼もが」
 望むべくは一人の世界。異人さんはもういらない。
 少女は狂気を飲み干して、狂気は少女に纏わりついた。

●救え、死の床、その果てで
「この世界の住人である以上、彼女は何処へも逃げられない。いえ、何処へ逃げても、きっと何時かは追いつかれる。――その恐怖、その事実。彼女はリベリスタとの戦いでそれを知ってしまった。自分自身が平穏を得る方法も、です」
 モニタを背にして資料を広げる『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000201)の表情は暗かった。背後に映し出されたのは、恐らくは以前は少女だったもの。今はもう、ヒトですらないもの。
 首があった場所から血を噴き出す人影へ向けて、慮外のサイズに膨張した『それ』の右腕が振るわれる。それ自体が少女の質量と同等と思えるそれは、男を首から一気に覆い、そしてそれ自体を『消し飛ばした』。新たに血痕が増えるでも、肉塊が散るでもない。どこかへ、消したのだ。

「ノーフェイス『雨樹 優姫』、識別名称改め『キャッスリンガー・フライト』。フェーズ3に到達したノーフェイスであり、以前出現した時とは真逆の特性を備えています。『逃避』に割いていたリソースを『自らの領域から相手を消す』ことに割き、結果的に自分が虐げられない何処かを得ようとしている、といったところでしょうか。
 今の能力は、対象の長距離転移。首を先に転移させ、結果死亡させたということでしょう」
 体が後追いするわけですね、と首を竦めて。彼は資料を読み上げる。

「本体は、右腕が自身と同質量まで肥大化し、異形化した以外は表立った変化はありません。ですが、この肉体のせいで以前使用した蹴りは事実上封印された形になります。その代わり、声に込める攻撃力に雷陣の追加効果を獲得し、近距離攻撃力も大幅に上がりました。最悪なことに、近接攻撃を受けた際、一定確率で対象を吹き飛ばす能力も、得たようで……現状、わかっているのはその程度です。それ以上は、解析不能。不測の事態も考えられます」

 攻撃性は圧倒的。能力は未知数。
 それでも彼らは倒さなければならない。

「最大を以て、最善を願います。甘い夢など悪夢だけなんです。終わらせてあげて下さい」
 夢の、終わりを。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:風見鶏  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年01月31日(火)23:14
 優姫リベンジ。
 えらく様変わりしてますが、フェーズ進行のせい。

●成功条件
・ノーフェイスフェーズ3『キャッスリンガー・フライト』撃破
・『自己防衛の写本』回収

●エネミーデータ
『キャッスリンガー・フライト』-フェーズ3。『雨樹 優姫』だったもの。
(『【寓話】異人さんが呼んでいるから』参照)
・キャッスリング:バックフライト(P:近接被弾時、一定確率で攻撃した人間にノックB)
・死逃れの歌(神遠範・雷陣)
・薙ぎ払い(物近単・ダメージ極大・ノックB・麻痺)
・無爪弾(物遠単・猛毒、業火、不運、魅了からランダム1つ)
・EX キャッスリング:リセット→エンド(神遠全:?)
 他、戦闘・非戦スキルは大部分が詳細不明。

●アーティファクト『自己防衛の写本』
 白紙の絵本の装丁が施されたもの。所有者の防衛機制を呼び覚まして絵本とし、革醒させる。

●戦場
 日中の公園。
 一定時間経った場合、一般人が駆けつける場合があります。被害が拡大する可能性も否定できません。

 夢の終わりを。ご参加お待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
スターサジタリー
エナーシア・ガトリング(BNE000422)
ソードミラージュ
絢堂・霧香(BNE000618)
覇界闘士
鈴宮・慧架(BNE000666)
ソードミラージュ
仁科 孝平(BNE000933)
ホーリーメイガス
月杜・とら(BNE002285)
デュランダル
結城・宗一(BNE002873)
ホーリーメイガス
ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)
ホーリーメイガス
氷河・凛子(BNE003330)

●汝救い手なりや、或いは討ち手なりや
 彼女は人であった。少なくとも、幾許か前までは人の心に人の体に、姿見だけは人として存在していたことだろう。
 それが、今はどうだ。
 肥大化し、既に人のものとは思えないまでに異形と化した右腕。能面のように表情を失った顔。以前よりもきつく喰らいつくように戒めとなった赤い靴。
 完全とは言わないまでも、圧倒的な狂気を孕んだその肉体に、果たして人としての尊厳はありや。

「優姫ちゃ~ん、遊びに来たよ♪」
「……だれ」
 世界を覆った違和感に眉を寄せ、『白詰草の花冠』月杜・とら(BNE002285)の声に応じるのは、ノーフェイスの少女。
 果たして、彼女の「だれ」が何に係ったものなのか。
 或いは自身か。或いはとらか。或いは――彼女の前に現れた者達へか。

「御免なさい、私は貴方を倒さないといけないようです」
 自らの知らないところで起きた戦い、その結末。そのきっかけとなった歪みはなんなのか。
 他者に笑顔を与えるべき立場にある『初代大雪崩落』鈴宮・慧架(BNE000666)にとって、悲しみと狂気に塗れた少女の姿は心を痛めて余りある。
 だが、だからこそ彼女は少女を倒すと決めた。
 狂った運命を散らすことで、少女の全てに報いるために。

(どこかに逃げようとして、逃げられなくて、今は全てを遠ざけてしまう)
 夢と呼ぶには、あまりに悲しく歪んだそれ。
 願いの変遷が逆に自らを傷つける結果となっているのなら、それは幸せには繋がらない。
『禍を斬る剣の道』絢堂・霧香(BNE000618)の神経が悲鳴を上げて加速する。
 彼女を救え、と。救ってみせる、と。自らの意思に刻みこむ。
(悪夢から、解放してあげなきゃ)

「自己防衛とはいえ、行き過ぎた行為はやがて自分自身に跳ね返るものですので」
『宵闇に紛れる狩人』仁科 孝平(BNE000933)の言葉は冷静だった。
 自らの居場所のために他の犠牲を強いることは、決して悪ではないだろう。
 だが、それが人の命を悪戯に消費する好意であれば、それは許されるものではない。

「逃避により自分でなくなることは、悲しい」
 自分でなくなったこと、それすらも恐らくは少女は気づくまい。
 であれば、悼み悲しむことが出来るのは観測し得るリベリスタのみ。
『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)は、それを知った上でここにいる。
 だからこそ、ここで終わらせるという強い意志を秘め、真っ直ぐに相手を見据える。
 彼女の強結界があってこそ、世界はそこを切り離し、淡々と進むのだ。

「……あらあら」
 自らが捕り逃し、再び見える相手の因果に『嗜虐の殺戮天使』ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)は笑いを堪えることができなかった。
 自らの手による精算。その機が巡ってきたのは、きっと偶然などではない。
 意志の力に拠る必然。
 それが、目の前の敵を見据える理由。

「別に悪いとは言わないが……誰も助けてくれる人は居なかったのか?」
『咆え猛る紅き牙』結城・宗一(BNE002873)の疑問は、尤もだったのかもしれない。
 拒絶に至るほどの逃避の念を。
 最後の一線を超えるほどに追い詰められた彼女の悲哀を、誰か助けはしなかったのかと。
 だが、『助ける』、その理由の根幹に悪意があれば、少女は容易に悪意に靡く。
 ――分かっている。分かっていても、考えたくはない思慮だ。

「『おにいさん』が救ってくれた。行き止まりに居た私を導いてくれた。だから私は、私自身の為に生きることで報いるしかない」
「目に見えるモノ、手の届くモノを全て退けたって、それでも独りには成れないのだわ」
 そんな彼女の決意を真正面から否定したのは、『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)だった。
 自分自身のために、目の前全てに報いを与える少女の在り方は、決して彼女を一人にはしないだろう。
 巡り巡って、彼女と世界により深い不幸を、より重い慟哭を与えるだけにすぎない。
「北京で蝶が羽ばたけば紐育で嵐が起こる、何処迄も繋がっている世界なのだから」
 小さく皮肉を付け加え、エナーシアは相手を視界に収め、内心で舌打ちする。
 相手の意思、能力、その深奥を見極めんとエネミースキャンを向け、明らかになったのは彼女の慮外の戦闘力。
 だが、それでもその最後の一線は理解出来ない。思索を向けるには至らない。

 戦場はただ、静かに。
 魂を変節させた少女へと、リベリスタ達はその想いを叩きつけるため、動く。

●幕間1
 どうしてこうなったんだろうね、と少女は問うた。
 きみを世界がきらったからさ、と青年は応じた。
 世界にきらわれてはいきていけないよ、と少女。
 世界を嫌ってしまえばいいじゃないか、と青年。
 不幸も呪いも願いも全部受け止めてあげよう。君には物語をあげよう。
 そんな――そんな、とても呪われた言葉を。
 祝福の銃弾を放つ少女は、聞いた気がしたのだ。

●呪いを叫ぶ歌声
 より疾く、より強く、より尊き癒しを、立ち回りを求め、リベリスタ達は自らの位階を揚げる。
 だが、そんな猶予を由としないノーフェイスとの戦闘に於いて、慧架の判断は素早かった。
 戦闘をより正確に行うための技術をして、自らが磨き築いた一撃を、真っ先に叩きつける。
「ぎ……っ」
「……っく」
 ひしゃげるような声に弾かれるように、拳を放った姿勢のままに彼女は大きく退いた。
 否、圧倒的な拒絶感に押しやられたというのが正しいか。ともあれ、自らの意思ではない。
 退くことを第一に持ってきていたとはいえ、タイミングをずらされる感覚は溜ったものではない。

「――倒さなきゃ」
 繰り返し、自分の思考に刷り込むように霧香は言葉を繰り返す。刃を自らの速度に乗せ、その行動を縛り付けようと踏み込んでいく。
 さきの一撃で動きの鈍ったノーフェイスには、それを避ける術など無く。その動きは、瞬く間に封じられた。
「出足は上等、といったところなのだわ」
 斬撃に重ねるようにして、エナーシアの散弾銃が火を噴き、豪腕の付け根に食い込んでいく。
 少女の目に、痛みからくる怯えが垣間見える。人であった痕が垣間見える。
 引きちぎれるか? 否。まだ早く。
 倒せるか? ――未知数だ。

「俺は、冷たいんだろうな」
 宗一の刃に、死の圧力が込められる。リベリスタとして、埒外の破壊力。
 生はかなノーフェイスなら一撃のもとに切り伏せるであろうそれがただ一直線に少女めがけて振り下ろされた。
 その身を砕いた、慣れぬ感触。しかし快哉を叫ぶことが出来ぬ反動。弾かれた身に舌打ちし、再びに距離を詰めようと右足に力を込めた。

「……それにしても醜く変わったものね。異人さんはどうしたのかしら?」
「異人さんはあなた達が奪ったの。だから私はひとりでも強くなきゃいけない。だから、もういらない。私には私が居る」
 ティアリアの声に応じるその声は、低く冷たい。一度見えた相手のことは、誰より彼女が理解している。
 安易な挑発の心算ではないのだろう。それでも、やはりその憎悪はティアリアへ向けて鋭く放たれる。
「貴方の相手は僕です。その歌、封じさせてもらいましょうか」
 速度を増した孝平の刃が、喉元へと喰らいつく。精度は確かに高かったはずだ。だが、技術に頼らぬ一点集中はその不利が如実に現れる。
 距離を置いていなければ危なかった、そう彼が判断するより早く。少女はその身の戒めを強引に振りほどき、右腕を振り上げた。

「倒さなけ、れば」
「いいから、喋らないで! とらが癒すから!」
 タイミングは、最悪だった。距離をコントロールし、自らの支配下におこうとした慧架の判断を、しかし僅かな踏み込みでキャッスリンガーは狂わせた。
 離れたはずの距離、逃れたはずの脅威をして、しかし追いすがった右腕の一撃。指先が腹部にのめり込み、在り得ぬ深さまでその肉をひしゃげさせたその感覚。
 とらと凛子の渾身の治癒と、ティアリアが編み上げる聖なる鎧を以てして、癒しきるのがやっとの圧力。

「十分な散開はできないと思うけど、出来るだけ距離を取って戦うしかないのだわ……!」
 腕の付け根をしつこく打ち据え、その能力をそぎ落とす。腕を千切るには至らないまでも、繰り返されたエナーシアの一点集中は確かに、少女にその腕の使用を躊躇わせるほどには傷を深めていたと言える。回復手段のないそれにとって、肉体の損耗は最悪の不利益だ。
 霧香の刃もまた、基本に忠実に、願いに誠実に繰り返された。相手の動きに制限を加える速力の一撃は、その距離を突き放されこそすれ、幾度に及んで動きに制限を加え、猶予を与えた。
 命を削って突き進む宗一の一撃を、神聖術師がカバーする。既に何度崩れ落ちてもおかしくないほどの消耗をして、彼はそれでも倒れない。
 非情であって誠実であれ。情なき結論であろうとも、救うべきは己の仲間。全てを受け止め、救ってみせると、傲慢であることを誇り行く。

「なんで、私は何度も何度も世界に嫌われ続けるの? もう、そんなのは嫌なのに!」
 ぼろぼろになった少女の口から、絶望と絶叫がテンポと音階を名付けられ生み出される。死を逃れんとするためにその動きを縛る歌。
 重々しい雷撃が周囲を包み、尽くリベリスタを痛めつける。

 慧架が、そして孝平がその雷撃の果てで膝を衝く。だが、孝平は倒れない。そのままでは倒れられない。運命を糧に勝利のために、その歌を封じんと立ち上がる。
 全身全霊の回復と、魂を削る全力攻撃。
 魂を込めた全力が、彼らの想いを引き写さないわけがない。死力を尽くしたやり取りが、少女に響かぬ訳はない。
「……だって、それだって、私は幸せになんて」
 嗚呼、なれないのだろうと。
 絶望はリベリスタの心、その深奥を打ち据えた。

●Her terror makes baddest QUEEN
 どこにもいけない、きっとどこにもかえれない。
 ここでしぬの? ここでいきるの? だれもちかづかないばしょで、しぬまでいきつづけるというの?
 アナタノセカイとワタシノセカイ。運命の連接と悪夢の連鎖。
 故に振り上げた、豪腕の右と異なる異形の左。世界を喰らう正真正銘の異端。

「優姫ちゃんてば、かわいそう~! もう行くとこも帰るとこもないんでしょ?
 だから、優姫ちゃんの未来をとらに頂戴♪」
 そんな現実を叩きつけるように、己を的にかけるように、とらはキャッスリンガー……否、『雨樹優姫』を挑発する。
 受け止めると決めた。競り勝つと決めた。彼女の闇を自らの愛で照らすと決めた。
 だから、その表向きの天真爛漫さが憎く眩しく。
「居場所がない人なんていない。居場所を放棄したモノの悲しさはよく知っている」
 自らの居場所を棄て、何処でもない『其処』に居場所を得た凛子の言葉は、その真を捉えて余りある。
 だからこそ、今その殺意の前に身を晒す愚を犯さない。癒し切る、護り抜く。勝利して帰る、と宣言した。
 その同情が殊更憎い。失っても得た相手の声がどこまでも遠い。
「ただ一人だけの世界など寂しいものですよ」
 何度も何度も何度も何度も、孝平の刃が空を裂いて宙を舞う。一撃、また一撃とその命を削っていく。
 寂しくてもそうしなければ。少女はただそれだけを願う。
「必ず、ここで終わらせる!」
 ちりと裂ける肌、焦げ付く運命にムチを打って霧香の刃は禍を断つ。
 おわれないんだよ、と。薄く笑った少女の声が、その耳朶を打った、気がした。

 エナーシアは銃の反動に合わせるように、その身を引いた。万分の一に賭けるために、距離を置いた。だが、背にぶつかったパイロンが、行動限界を暗に告げる。
 避けきれぬ。逃げ切れぬ。凛子とて既にその状態の異常さに気付いていた。
 彼我の距離を完全にするには、その戦場は余りに狭く。
 振り下ろされた悪夢の腕は、誰を狙うでもなく誰を奪うでもなく、ただ静かに、遊技盤の如き音を立てる。

「――愚か、ね」
 キャッスリンガーの真正面、限界まで距離を開いていたはずの自分がゼロ距離まで肉薄している事実にティアリアが気付いたのは、
 状況判断を最優先に思考に滑りこませたその判断力があってこそだった。
 だが、判断を終えた頃には全て遅すぎた。逃げる暇も護る暇もなく、襲い来る衝撃に歯を食いしばる以外にない。

 仲間を庇おうと動いた宗一も。
 距離を取って対応しようとしたエナーシアも、凛子も。
 既に、『キャッスリング』の痕にある。
 動かぬ王をたった一度入城させるその一手。
 全てを歪めた少女の『絶望』と『希望』のキャッスリング。
 だが、それは少女自身にも強い反動を強いたのか。はたまた、動けぬ制約か。
 ティアリアをはじき飛ばしたその動きから、縛り上げられたように動かない。
 ばらばらと散弾が溢れる音と、右腕が千切れ落ちる音は同時だった、故に。

 全ては、その一瞬の扱いだ。
 助けなければ、いや――撤退を。
(許せない……許せないよ、そんなの)
 喉奥から搾り出す様に、霧香の呻きが反響する。
 戦場は、既に戦場ではなく。
 少女は、正しく。選択を誤ったのだ。
 何もかも。
●幕間2
「――はは」
 かの戦場より遥か遠く。嘲るように囀るように、男の笑いが空気に溶ける。
 バックパックを背負ったその姿は、真っ当な人生を歩んでいないそれであると分かる。
 伸ばし放題の髪に、端正でありながら僅かに脂の浮いた肌。
 普通なら誰も近づこうとしない彼には、しかし少年が付き従う。
「いや、想像以上の収穫だった。彼女には何ら期待していなかったのだけどね、僕は」
「……おにいちゃん?」
「ああ、わかっている。分かっているとも。君の不幸を、君の願いを、僕が奪ってあげよう。僕が叶えてあげよう。
 だから、君には『物語』を」
 男の声は糖蜜のように甘い響きで少年の耳朶に滑りこむ。
 この世界に、救いはまだない。

■シナリオ結果■
失敗
■あとがき■
 お疲れ様でした。
 NORMALだったら或いは、と思います。
 ですが、或いは、やもしかしたら、は結果の前には無用です。
 リプレイと各々のプレイング、得た結果を照らしあわせればお分かりいただけることでしょう。

 再戦はいずれ必ず。
 それでは、またの機会に。