●鬼の戯れ 降り積もったばかりの雪の白が、血の赤で染められていく。 子供たちの骸は無残に潰され、または引き裂かれて、もはや人の形すら留めていない。 村中に血の臭いがたちこめる中で、二人の鬼がさも愉快そうに笑う。 鬼――そう、それはまさに“鬼”としか言いようがなかった。 小山のような体。尖った角に、鋭く発達した牙と爪。腰には虎の毛皮を纏い、腕には金棒を携えている。まるで、昔話の絵本から抜け出してきたかのような風貌だった。 鬼たちの笑いは止まらない。力を振るい、人を殺すことが楽しくて仕方がないのだ。 千切れた子供の腕を取り上げ、それを骨ごと噛み砕きながら、一本角の鬼が目を細める。 慌てることはない。自分たちを縛るものは、もう無いのだ。 思うまま殺戮に興じ、血に酔いしれようではないか。 二本角の鬼がその面を邪悪に歪ませ――二人の鬼は、さらに人の姿を求めて歩き出した。 ●急ぎ、殲滅せよ 「非常に危険なアザーバイドが現れました。皆様には、至急、その撃破に向かっていただきたいのです」 アーク本部のブリーフィングルーム。『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)の言葉に、集まったリベリスタのうち一人が首を傾げる。相手がアザーバイドであるなら、その近くにリンク・チャンネル――ディメンションホールがあるはずだ。追い返すのではなく、最初から撃破と決めてかかる理由は何か、と問うリベリスタに、和泉は一拍置いて答えた。 「実は……今回のアザーバイドは、どのリンク・チャンネルを経由して現れたのかが、一切わからないのです」 つまり、ディメンションホールが見当たらないということか。リベリスタの言葉に、和泉が頷く。元の世界に戻す術がないのでは、確かに倒すしかないだろう。 「現れたアザーバイドは、昔話に登場する鬼のような姿をしています。数は二体、いずれも体長三メートルあまり。耐久力と物理攻撃力に関しては、非常に高いレベルを誇ります」 正面のスクリーンに、鬼に似たアザーバイドのデータが映し出される。数は少なくとも、その膂力から放たれる攻撃の威力は決して侮れないだろう。 「現場は岡山県の山中。アザーバイドはここから人里に下り、人々を無差別に殺害しようとしています。――その前に食い止め、撃破してください」 この時期、山には雪も降る。足場は悪いはずなので、その対策も考えねばならないだろう。 「以上です。皆様には至急の対処を要請します」 説明を終えると、和泉は手の中のファイルを閉じ、リベリスタ達に頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:宮橋輝 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年01月23日(月)23:14 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●白き雪原を行く 雪が積もった山道を、八人のリベリスタ達が注意深く進む。 事前に聞いた通り足場はかなり悪いが、平衡感覚に優れたメンバーが多く、また靴などで対策も行われていたため、移動するだけなら深刻な支障はない。この調子なら、敵を待ち伏せるために隠れる時間くらいはあるだろう。 今は雪は止んでおり、視界は悪くない。一面、白に染まった山の斜面を眺めながら、『黒姫』レイチェル・ブラッドストーン(BNE003442)がふと呟きを漏らした。 「――いずこより現れた東洋の鬼、か」 アザーバイドが出現しているにもかかわらず、今回はディメンションホールが見当たらない。どこかに封じられていたものが出てきた、あるいは、それを呼び出した何者かが穴を隠蔽した、ということだろうか。 (ま、気になる事は多いけれど、まずは殲滅しないとね) そう思い直し、レイチェルは目の前の任務に向けて気持ちを切り替えることにした。 「鬼に関する話はいくつか見聞きしたが……ふム」 周囲の雪と同じ色をした白いコートを纏った『レッドキャップ』マリー・ゴールド(BNE002518)が、軽く首を傾げて考えこむ。鬼と呼ばれる者、はたしてどれ程強いのだろうか。隣にいた日無瀬 刻(BNE003435)が、その声を聞き、愉しげに笑った。 「ふふ、今回は素敵な相手と戦うのね。でも、ただの殺戮だなんて芸が無いわね」 独自の思想と倫理観を持つ彼女には、いたずらに力を振るい殺すだけ、という鬼の所業は些か味気ない。痛みに歪む相手を見てこそ楽しいのだと、彼女は思う。 「鬼退治なんぞ、昔話でもあるまいに……少々時代遅れだしとっとと退場してもらわんとな」 ややくたびれたロングコートを風に靡かせ、『燻る灰』御津代 鉅(BNE001657)が、ぶっきらぼうに口を開く。古風なかんじきを足に履いた『星守』神音・武雷(BNE002221)が、太い眉を動かしながら彼に答えた。 「豆投げてもおとなしく帰ってくれなさそうにないしな~。一丁鬼退治といくか!」 山道を歩きながら、『剣を捨てし者』護堂 陽斗(BNE003398)が肩越しに麓を振り返る。人々が平和に暮らす小さな村が、そこにあるはずだった。 「鬼なんて、怖くない。本当に怖いのは、人の命を失うことだから」 使命の重さと、強敵に向かい合う覚悟を胸に刻み付ける。負けられない。決して、負けるわけにはいかない。 「殺すのを楽しむ鬼ですか、絶対に止めないといけませんね」 「被害が出る前に倒してしまいましょう」 雪待 辜月(BNE003382)の言葉に、雪白 桐(BNE000185)が大きく頷きを返す。罪も無い子供たちが無惨に殺されるという、フォーチュナの未来視――それを現実に起こさせないために、リベリスタは戦いに向かう。 ●罠への誘い 武雷の提案で、待ち伏せのポイントには周囲に樹木が多く、特に積雪の厚い場所が選ばれた。鬼たちから見えないように隠れ、通りがかったところを奇襲する狙いである。自らに課せられた役割上、武雷は仲間達から若干離れて配置につき、特に大きな木の幹に身を寄せた。 「しかし、毛皮の上に防寒具着ても寒いなぁ……」 思わずぼやきながら、山頂の方を警戒して集中を行う。優れた視力を持つマリーも、身を隠して鬼たちが来る方向を注視し、彼らを待ち受けていた。 (――バレていてもやる事は変わらん) 鬼が人間を超える五感を持ち、リベリスタ達の潜伏に気付いたとしても、その時はその時で、正面からぶつかるだけだ。木の陰に隠れた辜月が、ひとつ深呼吸して戦いに備える。 自分以外の全員が隠れた場所を確認した後、桐は『幻想纏い』に自らの武器と防具を収納し、独り山道へと戻った。 「鬼が近づいたら自己付与しといてくださいね」 そう言い残し、桐はゆっくりと斜面を昇る。少し歩いたところで、巨大な鬼の姿が彼の視界に映った。一瞬、驚いたように立ち竦み、次いで「ひっ」と声を上げて恐怖に顔を歪ませる。無論、これらは全て演技に過ぎないが――そんなことを知る由もない鬼たちは、絶好の獲物が現れたとばかりに歓声を上げ、彼に向かって突進した。 咄嗟に踵を返し、肩越しに振り返って位置を確かめつつ、桐が仲間の待機する場所へと走る。囮とばれないよう恐怖の表情を顔に浮かべ、時折わざと足をもつれさせながら、彼は二体の鬼を巧みに誘導していった。 殺戮の予感に酔いしれ、下卑た笑みを浮かべる二本角の鬼の前に、ロングコートの人影が割り込む。その足元から、意思を持つ影が大きく伸びていた。 「おい、そこの腰ぎんちゃくの木偶の坊」 挑発する鉅を見て、鬼の兄弟の弟たる二本角の鬼が不愉快そうに片眉を上げる。その横顔を、武雷の放った十字の光が強かに打った。 怒り狂った鬼の咆哮が山を揺るがす勢いで轟く中、刻が二体の鬼を視界に捉え、自らの生命力を暗黒の瘴気に変換する。 「一筋縄ではいかない相手だろうけど……ま、やるだけの事はやりましょ」 闇のオーラを纏ったレイチェルもまた、彼女に倣った。 「――闇よ、喰らえ!」 二人のダークナイトによる暗黒剣のコンビネーションが、二体の鬼を同時に巻き込んで炸裂する。充分な集中から放たれたその攻撃は鬼たちにダメージを与えるだけでなく、二本角の鬼の運をも奪い取った。 一本角の鬼へと向き直り、『幻想纏い』から自らの装備を召喚する桐の背に、小さな翼が生える。足場の悪い雪原であっても不自由なく動けるよう、陽斗が仲間の全員に与えた加護だった。 「逃げる演技に点数をつけるとしたら何点でしたか?」 まんまと騙された鬼に向け、桐が凛とした表情で言い放つ。 それを屈辱と受け取ったのか、一本角の鬼はたちまち憤怒の表情を浮かべた。 ●熾烈なる打撃戦 怒りに我を失った二本角の鬼が、武雷に強烈な体当たりを食らわせる。 勢いをのせて突っ込んでくる三メートルの巨体は、それ自体が超重の武器に等しい。衝撃で動きを封じられた武雷のもとに、鉅がフォローに走った。 序盤の狙いは二体の鬼を引き離し、一本角の鬼から各個撃破すること。もともと他の仲間達から距離を置いていた武雷に二本角の鬼が向かったことは、全体としてはむしろ好都合とも言える。 (中途半端に戦力を分散して時間をかけるより、一鬼ずつ沈めていく方がいい) 鉅は、なおも怒り冷めやらぬ二本角の鬼を挟んで武雷の反対側に立ち、敵を抑えにかかった。 一方で、マリーと桐は一本角の鬼に相対する。二人は息を合わせ、破壊のエネルギーを込めたそれぞれの武器を大きく振りかぶった。 錆と刃毀れだらけの折れたバスターソードが、マンボウを薄くしたような形の巨大な剣が、一本角の鬼に同時に叩き込まれる。鬼の巨体が宙を舞い、後方へと弾き飛ばされた。 二体の引き離しが成功したのを確認して、刻が背中に生えた小さな翼を羽ばたかせる。低空を滑るようにして二本角の鬼の射程から脱出すると、彼女は最優先目標である一本角の鬼に向けて黒いオーラを放った。続けて、レイチェルが自らの左目に魔のエネルギーを収束させる。 「この眼から逃れられると思った?」 暗黒の衝動を秘めた黒き閃光が、二本、一本角の鬼を貫いた。 二本角の鬼を少数で抑える間、一本角の鬼に火力を集中し、回復役がそれを支える――今のところ、作戦は上手く機能しているに思える。しかし、まだまだ油断はできない。 吹き飛ばした一本角の鬼に接敵した桐に、金棒が振り下ろされる。倒れはしなかったが、彼の全身が、みしりと嫌な音を立てた。 「……っ」 陽斗が詠唱とともに癒しの微風を生み出し、桐の傷を優しく包んで体力を回復させる。続けて辜月が放った神々しい光は、邪気を打ち払って武雷の麻痺を解いた。回復に特化したエキスパートである彼らがいる限り、リベリスタ達を倒すのは容易ではないだろう。 「――ありがとう!」 大声で礼を言い、武雷が己の全身を防御のオーラで包む。彼はそのまま、鉅と二人で二本角の鬼の抑えに回った。 まだ怒ったままの二本角の鬼の動きを読みながら、鉅は敵をその場から移動させないよう、防御に徹する。武雷を狙うとわかっている以上、今のところは攻撃による牽制も必要ないだろう。無理に攻撃を仕掛けて、わざわざ隙を作ることもない。 「随分と厚いな」 破壊の気を込めた土砕掌を一本角の鬼に叩き込みながら、マリーが呟く。肉体のリミッターを外し、己が生命力すら戦闘力へと注ぎ込んでいるというのに、まだ倒れる気配すらない。隙を見て目に雪を投げてやろうとも考えていたが、下手な動きを見せれば、こちらが思わぬ痛手を被りかねなかった。 ならば、敵の注意をこちらに集中させるまで。彼女は「かかってこい」と言わんばかりに、指をくいくいと動かした。 マリーと連携し、互いの動きに気を配りながら、桐が背の翼を羽ばたかせる。理想は互いの隙を埋め合い、互いが攻撃しやすい位置取りを行うこと――彼は近くに生えていた木を蹴りつけると、空中から一本角の鬼の死角を狙った。自らの身に電撃を纏い、ダメージも顧みずに武器を振り下ろす。彼と一本角の鬼を中心に、激しく火花が散った。 刻が、レイチェルが、黒いオーラを収束して一本角の鬼へと放つ。直後、一本角の鬼が、腹の底から咆哮し、両の腕で金棒を大きく振り回した。 暴風が、白い粉雪を巻き上げてリベリスタ達を強く打ち据え、吹き飛ばす。それを喰らいながら、辛うじてその場に留まることができたのは、木を背にして吹き飛ばされる距離を最小限に抑えた桐と、盾を正面に翳して凌ぎきった陽斗の二人だけだった。 兄の大技に勢い付いたか、弟である二本角の鬼も鋭い爪を振るい、自らの前に立つ者を同時に薙ぎ払う。辛うじて暴風の影響を受けなかった鉅と武雷を爪の一撃が穿ち、癒しを拒む呪いを与えた。 しかし――当然、このままにしておくリベリスタ達ではない。 武雷が光を放ち、自分と鉅の呪いを消し去る。続いて陽斗の響かせた福音が仲間の傷を塞ぎ、それでも回復しきれない分は、魔力を強力に循環させる辜月の生み出した癒しの風が補った。 「まだ力は覚束ないけれど、戦線を支える為に、倒れるわけにはいかない」 「一人だけ、のほほんと寝られる神経はしてませんしね?」 頼もしき回復手たちは、そう言って視線を交わし合った。 ●暴力を越える意志 「やってくれるわね……でもここからが本番よ」 レイチェルが打ち付けた肩を押さえながら、空中をふわりと舞う。一見してそれとはわからない彼女の義眼から、黒いオーラが一本角の鬼を目掛けて撃ち出された。 「まだよ、まだやれるっ!」 敵の強さを肌で感じながらも、彼女は己を叱咤するように声を張り上げる。一方で、刻は薄い笑みを浮かべ、己の痛みをおぞましき呪いへと捏ね上げていた。術者が傷つくほど破壊力を増すこの技は、刻が受けた痛みを何倍にもして、一本角の鬼へと叩き込む。 効果的な攻撃を行うため、彼女は自らのダメージが深刻になるまでは回復を受けない覚悟だった。最大の火力をもって敵に当たる事こそ、自分に出来る最大の貢献と考えていたし、何よりも――。 「私の痛みを相手に押し付けるのが実に楽しくて仕方ないわ」 紫色の長い髪が縁取る刻の美しい顔が、残酷な微笑で彩られた。 「強いな。ハハ」 雪の中から立ち上がったマリーが、緑の瞳を輝かせて一本角の鬼を見る。吹き飛ばされた際にぶつけた額から血が滲んでいたが、それで怯むような彼女ではない。自らの血に塗れるほど闘争心は高まり、より苛烈になっていく性質である。 再び鬼との距離を詰めたマリーは、掌打を叩き込み、そこから休むことなく攻め続けた。拳を合わせることで、敵の力を、その威圧感を、ダイレクトに感じる。 ああ、こいつは強い。 (――いかん、にやけてしまう) 額を赤く染めながら、マリーは不敵に笑んだ。 ずっと怒りに我を忘れていた二本角の鬼の瞳に、ここで正気の光が戻る。多対一で攻め込まれる兄を視界に映し、その援護に向かおうとするも、鉅と武雷に行く手を阻まれて動けない。二本角の鬼は爪を激しく振るって彼らを打ち倒そうとしたが、陽斗や辜月の手厚い回復に支えられた二人は揺るぎもしない。 そして――ここで戦況は大きく動く。生命力を削ることも厭わず、全身に電を纏った桐の一撃が、とうとう一本角の鬼を討ち果たしたのだ。地響きとともに、鬼の巨体が雪原に沈む。 残る敵は、たった一体。ここまで敵の抑えと防御に徹してきた鉅が、好機と見て攻勢に転じた。彼の放つ黒い影のようなオーラが、二本角の頭部を強く打ち据える。 「手伝うわよ」 レイチェルと刻の魔閃光が、相次いで二本角の鬼を撃つ。彼女らを睨む鬼に向けて、武雷が再び十字の光を放った。 「お前の相手はおれだぜ!」 またも怒りに染まった二本角の鬼が、渾身の体当たりを武雷にぶつける。並みのリベリスタであれば倒れていたかもしれないが、メンバー中でも屈指の耐久力を誇る彼は、その一撃にも耐え切った。衝撃に痺れる武雷に、辜月の放つ神々しい光が降り注ぐ。 「おとぎ話の鬼みたいに、陽気にお酒飲んでいてくれれば接しやすかったんですけど……」 なおも荒れ狂う二本角の鬼を見据え、陽斗が真っ直ぐな口調で言った。 「行かせない。銀世界に覆われた真っ白な村を、血で染めさせるわけには、いきません」 必ず止めるという決意が、彼の呼んだ癒しの風にのって武雷へと届く。駆けつけたマリーの掌打が、桐の雷撃を纏う一撃が、二本角の鬼を打った。 仲間の攻撃により鬼がよろめいた一瞬の隙を突き、鉅が黒のオーラを鋭く伸ばす。 破壊の力を秘めた漆黒の影が、二本角の鬼の眉間を貫き――それが、止めの一撃となった。 ●悪意の源は 二体の鬼が倒れ、山道は元の静寂を取り戻していた。 「モモタロウとやらはこれを無数に切り捨てたと聞くが……そいつともやってみたいもんだな」 倒した鬼たちを眺めつつ、マリーがそんな一言を口にする。どうやら、彼女が知る『鬼に関する話』のひとつは昔話であるらしい。 「お疲れ様でした」 仲間たちを労う桐の視界に、空から雪がちらちらと舞い降りるのが映った。さっきまで晴れていたというのに、山の天気は変わりやすいということだろうか。 「戦い疲れた身を、雪の中に晒すわけにはいきませんから」 陽斗が、そう言って全員の傷を癒して回る。 ありがたく回復を受けていた武雷が、ふと疑問の声を上げた。 「しかし伝統行事とはいえ、この鬼どもどっからきたんだろな~」 節分にしても、時期としては若干早い気がする。彼の言葉に、辜月も軽く首を傾げた。 「浮かれて暴れ回ってるようですが、ゲートの向こうで何か鬱憤でも溜まっていたんでしょうか?」 ここまで黙っていた鉅が、しかし、と口を開く。 「ディメンションホールが不明というのがどうにも不気味だ。まさか、元からこちらにいたのか……? ますます昔話だな」 一同が考えこむ中で、刻が全員に向けて言った。 「それなら、探してみれば良いのじゃない?」 皆から視線を向けられ、本当は放置したいのだけれど、お給料を貰う以上は一応お仕事はこなさないとね、と口にする。 「だって、伝説の『正義の味方』の縁の地なのでしょう? 岡山県」 「――そうね。穴を見つけられるとは思わないけど、何か手掛かりでもあるかもしれない」 レイチェルもその意見に同意したため、一行は雪が酷くなる前にと、早めに探索を済ませることにした。鬼の足跡を辿り、山道のさらに奥へと進む。 やがて、鬼のものと思われる足跡が途切れた。 ディメンションホールは、やはりどこにも見当たらない。 しかし、その周辺には奇妙な気配が漂っていた。言うなれば、神秘がもたらした歪みの残滓――といった感じだろうか。 それが何を意味するのかは、リベリスタ達にはまだわからない。 静かに降り積もる白い雪が、ただ、鬼たちの足跡を覆い隠していった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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