●Alice is Gods 人の生み出した様々な形質において信仰程に悪夢と形容されるものもない。 神の美名に於いてならばその行いの全ては許容され、すべての罪は浄化される。 全ては、狂信がもたらす最高の芸術作品。それは、我らが主のためにそこにある。 彼らの教条はただひたすらに単純だった。それが故に、誰も揺るがせ得ぬ事の無きモノへと変わる。 それを疑う者は既に無く、ただひたすらなファナティシズムと倒錯の末に在る姿のみである。 ――Yes Alice No Lolita. Punishment in Faked Child. それは、すべての男性諸氏ならば一度は抱くであろう劣情であり、 また、神代の世より語り継がれし人の持つ本能の一部分。 純潔を求め、その他一切の不浄をここに抹殺せんとする理想を求めんがための活動と帰結であった。 御旗に掲げるは幼き子供の影。各々が重装に身を包み、対騎兵槍(パイク)を手に戦列に並ぶ。 『我らが聖体に栄光あれ。邪なる仮初の聖体に、死して尚永劫の苦しみを』 朗々と読み上げられる教条は一切の揺ぎ無き信仰の柱。飾られる薔薇窗は信仰の窓にして光。 仮初の幼女(ロリババア)の断末魔に人々は狂喜し、その死を持って更なる己の信仰を確認する。 一糸乱れぬその戦列は、その存在が悪であることそのものすら忘れさせるが如し。 彼らの瞳にはこの先の破滅はけして映ることはない。 ――そう、これはある種のレミングの群れにも似たそれだったのである。 ●Blade of Melnibone 古の英雄譚を紐解けば『それ』に通じる逸話は星の数ほどになるのであろう。 様々な世界を『その剣』は渡り歩き、人の魂と血を啜ってきたことは語るまでもない。 そして、その力が一つの神域に達した時、『その剣』は幾つもの影と光に分かれ、 このバベルの塔にすら強大なる影を産み落とす。人は様々な形で力に酔いしれ、 その力の災いによって己が身を滅ぼした。今、黒き無限の災が、剣の形を以って立つ。 黒耀の光をそこに称え、魔術のそれである事をまごうこと無く暗示する文字が刻まれしその剣。 ふと見れば幅は握りこぶしを2つ合わせたほどは在る。されど、その重さは羽の如く軽く。 人間は『それ』をこの世において破界器と呼び習わし、そしてそれに一つの名を与え畏れた。 ヒトはかくてこれを呼ぶ。――『ナイトフォール』。握りし騎士を堕とす剣、と。 何故にそれはこの世に生まれ、そして秩序によって混沌を与えられたのか。 調和と安寧を与えるためにそこにあるのではなかったか? そんな陳腐な問は今や無意味な物と化し、剣は本来の目的を失うだけの哀れな器物と化している。 その本質を問うのならば『七美徳と七大罪の煮凝り』とでも呼ばれるべきそれは、 新たな主をその騎士団長に静かに定めた。そして、ヒトが強大なる力を得た時。 運命の歯車は残酷なまでに廻り出す。往々にして狂気の表出として。 ――虚空に響く断末魔と共に、仮初の幼女である一人の覚醒者が血と肉塊に変わった。 引き出される内臓はからくも肌色ののたうつ蛇の様相を描き出し、 その魂すらも剣の糧に変じ、消え失せさせるのだ。 本来ならば忌むべき断末魔は最早賛美歌に変わり、聞こえるものは今や、何もない。 鮮血に染められた赤絨毯が美しくも映え、路上に描き出されるがのみである。 ●Blade Breaker 万華の鏡は時としてすべての事象を継ぎ表し、その狂信すらも白日のもとに晒し出す。 その鏡の中で様々に千変万化する事象は、これより生まれ出るであろう悪夢も然りである。 大波が落ち着き今や凪となるその波の上で、鏡に選ばれし巫女は己が務めを果たすのみ。 着る毛布をまとい、ロッキングチェアを回し向き回る巫女の手には、オレンジ色の果実が収まる。 描き出せばそれは、『非時香果』とも呼ばれたそれである。まぁ、ミカンのことなのだが。 「――暴漢の鎮圧とアーティファクトの『迎撃』に向かって欲しいの。 対象は、LKK団の上級部隊、『十字軍派』ならびにアーティファクト『KnightFall』。 LKK団の方は上級といっても、腕はそんなでもないの。駆け出しに毛が生えた程度。 しかし、問題は彼らが『幼女を狂信している』点と『集団戦法に習熟している』という点にある。 集団戦法は対騎兵槍(パイク)による槍衾戦法(ファランクス)を取る点が最大に厄介。 吹き飛ばして隊列を乱す、状態異常により行動を縛るなど、どうにかしないと近寄れない。 後方部隊からの弓による攻撃も警戒が必要。何がしかの工夫が求められるでしょうね。 そして、それに輪をかけて厄介なのが団長が握るアーティファクト、『ナイトフォール』。 ――知能を持つ剣(インテリジェンスソード)、と呼べばその性質は明らかなのでしょうけれど。 囁きにより持ち主に知識を与え、切った対象の血を喰らって己と持ち主を癒す。 ――そして、このアーティファクトのなにより最悪の点は『自立して行動が行える』点。 危険と有らば主を捨て、己は転移で戦場を離脱することも辞さないの。 故に、アーティファクトの『撃破』はかなり難しい。撃退を目的にして。 おそらく、相応に苦戦を強いられる戦いになる。幸運と、栄光を祈るわ。」 巫女の瞳はその戦いが今までの同名の暴漢の物ではない事を知っている。 相応に練度のある者達が集い、集団の戦法を取るという恐怖は語るべくもないそれだろう。 英雄たちの歩みを見送りながら、巫女はふとした苦悩と安堵を心の底に押し隠す。 どのような戦いになるか、それは皆目見当がつかない。 ――ただ、そこにあるのは五里霧中の中にある『安寧』と言う名の希望のみである。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:Draconian | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年01月30日(月)22:00 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●Are You Lolita Komprex? 幼女を聖体として崇める戦団と、箱舟より来る英雄たちとの衝突は、 白昼の街中において始まった。それは、この悪夢の行軍に対する終止符となる戦いの幕開けである。 結界が幾重にも張り巡らされ、外界と神秘の隔絶が行われるのはそう遅いことではない。 敵たる戦団、その数30。一糸乱れぬ戦いを求む歩みの音はある種の畏怖を纏わせるそれであり、 聖体たる幼女を崇め、それを汚す偽の聖体を抹殺せんと言う狂騒の中にそれはあった。 その狂騒は、後列に位置する一人の幼女の一人たる存在を畏怖させるほどである。 その存在の名は『なのなのお嬢様なの』ルーメリア・ブラン・リュミエール(BNE001611)。 彼女に注がれる目線は愛ゆえに厳しく、また穢れたる存在の一切の否定で満ちていた。 穢れ、不純の否定は一切合財の寛容すらも否定する。その寛容なき視線は、 穢れなき乙女にとっては恐怖以外のそれでしかなかったのだろう。 しかし、それでも前に出なければこの悪夢の行軍が止まらないのはある種の自明。 その恐怖を心の奥へと押さえ込み、非武装で前へと出るその姿に同伴する姿もまた、あるのだ。 幻想纏いに各々の獲物を隠し、共に前に出るその姿。 彼女の名は『吶喊ハルバーダー』小崎・岬(BNE002119)。幼き体を持った前衛の一人である。 体力には自信のある彼女の同伴は、ある種ルーメリアにとって心の支えとなり、 ひとつの呼びかけへの力添えとなったことは語るまでもない。 武器、防具すら纏わぬ普段の姿そのままに、彼女たちの呼びかけが戦列に投げられる。 「おにーさん達、どこいくの? 駄目だよー、また悪いことしてるんでしょう? そんなの、ルメが許さないの! ここから先に進みたかったらルメを倒してみろーなの!」 幼女を愛する者たちの中にざわめきが起こる。 こうかは ばつぐんだ。 いたいけな乙女を傷つける心情は彼らにはない。幼女に紛れ、見せかける存在が嫌いなだけなのだ。 戦列には統率を求める声や信条を優先するべしとのさまざまな怒号や声が飛び交う。 それにさらに一撃を加える意思を持った声が、小崎の口唇を震わせる形を以って、吐き出された。 「馬鹿なことは止めるんだよー。 ロリババアなんているわけ無いだろ―、ファンタジーやメルヘンじゃないんだから―」 しかし、この呼びかけにおいては効果を発するということはない。 何故ならば、彼らにおいては審幼眼(ほんものをみきわめるめ)の持ち主である。 見ればまごう事なくわかるそれをいないと断じる事ほど難しいことはないのだ。 戦列の乱れは混乱を引き起こしてはいたが、それは団長におけるひとつの演説において統率を取り戻す。 「――揺らいではならぬ! 揺らいではならぬ! 我等が教条を忘れたか! 確固として存在し、穢れたる『その存在を滅すること』が我等が意義であることは語るまでもない! 問おう! 我等が教条は何か! そして、取るべき行動は何であるかを! その上で命ず! 『聖体たるかの者等を殺すな! 捕らえよ!』」 号令がひとつ下ればその命令は震雷の如く駆け巡り、部隊に安息と調和を取り戻させる。 返される号令は完全に息の整った元の部隊の声に変わり、一つの返答を以って混乱を収めるのだ。 『我らが聖体に栄光あれ。邪なる仮初の聖体に、死して尚永劫の苦しみを! ――Yes Alice No Lolita. Punishment in Faked Child!』 完全に統率を取り戻した揺ぎ無き兵隊たちは戦列を完全に組みなおし、 一斉に2名の穢れ無きその存在を捕らえるべく動き出す。 弱小なれども30対2。どのように思考を捕らえたとしても圧倒的危機と思われた、その時。 その目論見は、ひとつの形となって戦場に顕現するのである。 「させるかよっ!」 完全なる装甲の鎧(パーフェクトガード)が襲い来る魔の手を乱撃と共に押し返す。 弱小なる手先の数名が押し返され、集団に驚愕が広がるのがよくわかるのだ。 姿を見ればそれは使い込まれた西洋甲冑を纏い、西洋の剣をスラリと抜き放つ中世の英雄。 英雄の名は――ツァイン・ウォーレス(BNE001520)。 長頸王に反逆せしもう一人のブレイブハート、ウィリアム公の影を継ぐ者である。 装甲はすでに光を纏い、多少の攻撃ならば用意に打ち返すほどの硬度と強さを兼ね備え、 まさしく英雄のそれを示すがごとき姿をそこに示す。 正面より討って返すは30体の総軍勢。ひとたび干戈を交えるならば、完全なる安全は保障されまい。 しかし、彼にはその不安を打ち消す秘策がある。それは、仲間と結ばれし運命の絆。 定めを共にする仲間との固き絆がそこにはあったがゆえに。もはや不安視するべきものもない。 その隣に沿うように立つ影が、二つあったように見えたのは虚像のそれでは決してない。 「……やれるだけやろうぜ。 戦えるのも、俺たちの特権だしよ。」 一歩前に出て横に立つ男の歩みと共に出るその声は、ただひたむきに前に向く。 声の主の性質を問うならば、『朴訥』との言葉が一番似合うのかもしれない。 一見すれば、美形でそのようには見えぬ男ではあるが、戦装の姿と手に持つ獲物がそれを語る。 男の名は『咆え猛る紅き牙』結城・宗一(BNE002873)。鋼を以って敵を討つ者の一人である。 正面に見える壮観なまでの恐怖に対し、なんら恐れることも無く、男は寄ってそこに立つ。 戦略の上は多くて二手。そこさえ凌げば希望は十全と見えるのだ。 それさえわかっているのなら、後は恐れることは無い。 さらに、そこに立つもう一人の影の存在も、見えているのだから。 「予知を受けて罫を出せば『三風こう』。 傾国の美女に入られて居るとの罫が出ていたな。 これを見る限り、的占。 ――まさしく、何とかに刃物とはこのことだ。」 うら若き女の姿は見る限りは術者と思わせるにはいささか早い。 しかし、その魔力はまさしく陰陽道を扱いし術者のそれである。扱うものが違うだけのことだ。 大極これ両義を生じ、両義これ四象を生ず。大極より四象を生ず者、これ導師也。 陰陽を扱いし導師の名はハイディ・アレンス(BNE000603)。両義より極を生ず黒翼の天使の一柱である。 彼女の手にはのたうつ蛇がすでに握られ、敵の血を啜らんとするその牙はすでに飢えを見せている。 その飢えを満たすことができるのは繰手たる彼女の手腕のみであることは語るまでもまた、無く。 そして、その裏に暗躍する狂気と知への探求の存在を誰が知るだろう。 知への探求という衝動を共にし、更に深遠なる魔術を求めて共に纏うは『星の銀輪』。 魔術師達の血盟(クラン)長たるその存在を知るものは数多く、抱える魔術師の数も数多い。 血盟の名を『神秘探求同盟』、血盟長たる者の名を語れば魔術師達の門下たる。 彼の者の名こそ『原罪の蛇』イスカリオテ・ディ・カリオストロ(BNE001224 )。 笑顔の仮面の下に潜みし知への狂気を知るものは数少ない。 その矛先はもはや此度の師団の中に無く、長たる存在の持つ黒の魔剣一つに視線は絞られる。 魔剣の叡智を我が手中に。それは彼の者において至高なる願いに今や変わっていた。 その願いすらも冷笑に伏す乙女の存在も、その隣にはまた見えるのだ。 哀れなる十字軍に冷酷なる死と言う名の慈悲を下すのは正しき選択であることと知る一人の娘。 幼体なる体に永き時を刻みし偽聖体たるその体にロリータを纏いて立つ、一人の魔術師。 ――『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)。黒の魔術を繰りし西洋魔術師の一人である。 西洋の黒の魔術は魔を紡ぎて暗黒によって暗黒を制するのが真髄たるそれ。 暗黒の魔術の真髄を秘めたるその笑顔は、嗜虐のそれにも似るもので。 目線の先に立つ軍団の殺気を一新に帯びる黒の幻想は癒し手の補助手を連れ、 不敵な笑みを浮かべるのだ。殺せるものならば殺してみるがいい、と。 綺羅びやかなる前衛の柱。そこに加わる4人目の姿を鑑みれば、 先ほどの日常を感じさせる姿はもはや片鱗たりとてない。 肩に乗る禍々しき黒の槍斧は冬の空に有るまじき蠍の心臓。 大火を指し示す大いなる守護星はここに顕現し、黒の禍々しき姿を持って禍を制する。 今、4つの柱はここに立ち揃い、王の万軍すらも乱撃のもとに打ち崩す戦団となる。 戦団と戦団のぶつかり合い。この偉大なる戦いに幕を切って落とすのは、 七布施・三千(BNE000346)の握る一つの魔具であったことは、語られざる世界の真実たるのだろう。 クロスジハードと翼の加護が交錯する時。両極なる戦団はここに干戈を交えるのだ。 はるか天に投げられたるAlea jacta est――。賽は今、投げられた。 ●Cross The Blood River 投げられた賽は如何なる定めを示すのか。それを知るものはモイライ以外に居ない。 規則正しく並び進む軍団に向けられた命令。それは轟と響き渡り、的確なる指揮として伝わる。 「弓兵! 先行射撃構えよ! 偽聖体抹殺のためならば手法を選んではならぬ! 聖体たる存在に対しては保護を目的として捕縛に当たれ!」 下された冷酷なる判断と的確なる指示は軍勢に精密なる行動を可能とする。 黒の刃のささやく万能なる智慧と己の戦歴がすべてを語ることは彼としても承知。 放たれた矢の雨を一身に受けながら、戦列の勇士たちは押し返されまいと気魄を持ってこれに当たる。 「行かせる訳には…いかねぇんだよぉーッ!」 古の騎士が咆哮する。その体に何重にも渡る刃を受けて尚、立ち続けるのは意志の力。 首筋や四股の関節を撃ち貫き、そして目に時として掠める穂先の乱撃を耐え忍ぶのは苦行だ。 たとえ弱き存在だったとて、何十にも渡る鏃と穂先の乱撃を受ければ巨像も堪ることはない。 それは他の面子とて同じ事。肉を砕き、骨を割く苦行の果てにあるのは栄光への階と信じるが故。 陰陽を繰る存在においても幾度と無く振りかかる死に対し、治癒の魔力で命脈をつなぐ薄氷を踏み。 地獄の如き耐久戦をここに叩かい抜かんとするのだ。 黒の魔術師たちは前衛の健闘を以って魔陣を展開し始めた。マナを高めるマントラが唱えられ、 並行して念入りな詠唱と膨大なるマナの糸が紡がれる。全ては希望と安寧のために。 そして、不可能を可能とする魔術は起動の体制を整える。その最中。 知を求める蛇は黒の刃に干渉を試みていた。深淵を覗き、黒の悪夢を我が手中に据えるべき思念を紡ぐ。 その姿は、ある種の魔神の如き様相にすら見えて。 (“御初に御目にかかります、私、蛇のイスカリオテと申します” “単刀直入に申します。貴方の主には私こそが相応しい”) 黒の刃に対するその言葉は猫を撫でるかのようなごますり声だ。 それを知ってか知らずか、返される思念は嘲りを含むそれであることは言うまでもない。 (愚かなる魔術師”風情”が私を扱うだと? 冗談にも大概にしたらどうだ、蛇よ。) 黒の刃の思念の波はひとつの言葉としてまた伝わり、一つの返答を形成し脳に伝わる。 その紡がれる言の葉に対する一つの答えは兼ね予想の範疇のものであり。 蛇はまた思念を持って刃に向けて『語る』のだ。 (“神秘の「知識」の担い手として、私を凌駕する者はそう居ない” “御疑いになられるは当然。ではそれを示してみせましょう” ) 蛇の返答を持って一時打ち切られるその思念波は、熱戦の波に掻き消え。 熱闘の中に一時身を置く黒の神父は、構成された魔術を解き放つ。 始まりは天を打ち砕くが如き黒の鎖より始まった。幾重にも放たれたその魔術は一つの蠱毒。 それは瞬く間に数を巻き込み、陣形そのものの前提を根底から返していく。 すかさず飛んだ軍団の癒しの術も、全てを癒すには叶わない。 そこに重ねられたのは第二の魔術である神気閃光。 神々の光が悪しき軍団を焼き払い、進んでいくその工程の中。 開かれた道は一直線にその騎士団長へと続いているのがよく理解できた。 軍団の中にも癒しの術を持つものがいくつか居る。復帰と共に乱撃するその攻撃を癒すのは、 エリスを筆頭とした癒し手の御業。立ち所に癒えるその傷は、敵にとっての絶望へと変じていく。 それは敵を打ち砕く鍵となる一撃だった。天秤が傾くきっかけは瞬時のそれだ。 爆砕戦気、リミットオフをそれぞれ纏う乱撃の英雄たちが敵を梳れば、 まとめて幾つもの敵は傅いていく。断末魔の代わりに幼女万歳との声を残して。 全滅間近という怜悧なる現実というのはヒトを軽々と刺し貫く。 その中で、黒の蛇が一瞬で肉薄した時。その惨劇は起こった。 振るわれた黒の刃がブランクカードで受け止められ、蛇が会話を試みる。その次手の時。 (“私の神秘が、貴方の主を下したならば” “我が元へ来たれ、メルニボネの魔剣よ” ) 思念を告げるその波が刃に伝わった時のことだ。刃がニヤリと笑った、気がした。 剣が一瞬揺らいだか、と思った次の瞬間。その本性は、一瞬にしてむき出しのそれとなる。 目にもとまる事無き瞬間の出来事だ。その瞬間の間に、神父は肉片へと変じていた。 音速剣とでも呼ぶのだろうか。それとも、何らかの未知の力なのだろうか。――否。 それは、魔性を帯びるがゆえの瞬殺劇。蛇は頭蓋を切り刻まれ、四股を落とされ、内蔵を砕かれた。 しかし、それは定めが故に死を許されることはない。――許されるなら、慈悲であったやもしれぬ。 運命の力で舞い戻った蛇が見たものは、混沌の顕現たる姿であった。剣は吠え、叫ぶ。 「ahhhhhhhhhhh riiiiiiiiooooooooooooch!!!!!! 愚かなり、ボトムのヒト共! 我が混沌たる存在を扱えるとでも思うか! ヒトなる存在は我が器物! この愚かなる男の末路を以って思い知るがいい!」 魂を喰らい、肉を喰らい。幾多の血を啜りしその魔剣は、 男を軽々と使い捨てる。それは、己の魔力を引き出すがための器物でしか無いがゆえに。 それを察知し、言葉に紡ぐのは各々の面々だ。 「あら、白状ね。その子、貴方を見捨てる心算よ?」 「見捨てられたくなければ、確りと握っていなさい」 怜悧な言葉が現実たるそれを紡ぎ出し、刺し貫くその中で。 またいくつかの言葉が重ねられ、一つの現実を織り成していく。 「逃がしませんよ」 「力に溺れ、力に狂い、力に乱れ」 「これも人の業。故に、貴方の知は原罪の蛇にこそ相応しい」 (“その神秘を、私に貸しなさい”) 黒き蛇が言葉を紡ぐ。その言葉は知識を求め、狂った先にある白痴の領域へ。 そこに重ねられた熱き言葉は、古き騎士の口唇より放たれて尚響くそれである。 「主を置いて戦場を去る?テメェそれでも剣か、農具にも劣る!恥を知れッ!」 それは怒りゆえのそれなのだろうか。それとも、己の倫理による物か。 それを知る由は誰もない。しかし、そこに立つのは英雄としての矜持があるがゆえである。 続く言葉はさらなる理解と怒りを載せて、より確実な言葉として。 「確かに知を得たお前になら主を選ぶ権利があるんだろう。でもその前にお前は『剣』なんだ。 汚名を雪げよKnightFall!」 紡がれる言葉は剣に届くかすら知れぬそれである。しかし、言葉に紡ぐということは、 そこに確固たる意思があるがゆえに起こる事象。それを知るか知らざるかは定かではない。 光と共に掻き消えるその黒き剣の姿より想起されるべき言葉は他にない。 しかし、運命に愛されし英雄たちはひとつの直感を以ってこの現実を迎え入れているのだろう。 近い未来にそれと必ずや刃を交えることとなるのであろうという直感と共に。 騎士団長が倒れ、地へと安息の旅路を歩む時。 その直感はまごう事無き現実であるのだと全てのリベリスタは直感していた。 ●Letter of The Peace 平穏は戻り、悪夢の騎士団は潰えた。今は街の平穏がそこにはあり、 血なまぐさい戦闘行動があったことすら一切地に伏せられて知る由もない。 しかし、その平穏の中には混沌たるヒトの心があることは揺ぎなき現実である。 その混沌たる存在を捨て切ることが出来る存在でない以上、 この平穏とて仮初のそれでしかないのやも、知れない。 Fin |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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