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おっぱいがいっぱい団の野望

●おっぱいの奇跡~あるいはとある男の軌跡~
 1999.0813 アールタイプ襲来。通称ナイトメアダウン。
 その未曾有の大災害は、この国から様々な物を奪った。
 金銭、未来、住居、命、希望、思い出、平和、絆。そして何より……

「くっ、何で俺がこんな事に……」
 暗い都市の陰を、擦り切れた衣を身に纏った男はひた走る。
 男は逃亡者だった。11年前のあの日。強大過ぎる敵を前に仲間であったリベリスタ達を見捨てて逃走した。
 その一度の過ちが男の運命を狂わせる。逃げ癖は生来の物。堕ちてしまえば、堕ち切るのは簡単だった。
 幻視と結界を駆使しての空き巣、暴力による恐喝、革醒で得た様々なスキルは
 彼を国家権力の脅威からすら容易く守った。しかしそれも数ヶ月程前までの話。
 常に目立たぬ様、同類に見つからぬ様、世俗の闇に隠れ己の罪から逃げ続けていた彼を、
 日本の治安維持を任された欧州のリベリスタ組織、オルクス・パラストが遂に捕捉したのだ。
 血を吐く様な逃亡生活が始まった。彼らが何処に潜んでいるか分からない。
 10年以上も研鑽を怠った戦闘技術で集団戦を切り抜けられるとはとても思えない。
 逃げるしかない。逃げて、逃げて、逃げ切るしかない。そんな生活が半年も続いた。

 男はここに来て漸く自分が犯した罪の重さを後悔と共に思い知った。
 心を許しあった仲間達を犠牲にしてまで縋った命を11年分も消費して、
 犯罪に手を染めてすら彼は何一つ残す事が出来なかった。残そうとしなかった。
 ただ世を拗ねて、刹那的に生きてきただけだ。男は疲れきっていた。疲れ、果てていた。
「……あの頃は」
 言いかけて噤む。あの頃は良かったと、そう口に出来たらどんなに良かっただろう。
 若き日の自分は輝いていたと、そう胸を張って言えたらどんなに誇らしかっただろう。
 そんな余計な事を考えていた所為だろうか、人も居ない夜の路地で男は転ぶ。
 運も悪くそこは前日の雨で水溜りが出来ていた。泥水を被り、水面に自分の姿が滲んでいる。
 惨めで、無様で、情けない、汚らしい中年。そんな自分と対面した男は引き攣った様に笑う。

 もう、終わりにしよう。
 半年の間に何度か胸を突いたその思いが、かつてないほどの現実感を伴って押し寄せてくる。
 限界だ。結局自分は何者でもなく、何者にもなれない。これ以上逃げてもどうにもならない。
 袋小路だ。逃げて逃げて逃げ続けた男は、ここに来て遂に逃げ場を失った。
 自分を追ってくるのはリベリスタではない。過去の自分だったのだと。
 目を逸らし続けた思考に到ってしまった男は、そうして腰から一本のスティレットを抜く。
 ――すまねえ、説教は向こうで聞くからさ……
 声もなく、その矛先を己が喉へと向ける。刺せば死ぬ。どうしようもなく死ぬ。
 かつて自分が殺してきたフィクサード達の様に。そして誰からも忘れられるのだろう。 
 それが当然の報いである様にすら感じられた。それだけの事を、自分はやって来たのだと――
 しかして彼の頭上にはおっぱいがあった。
 
 何と言う事はない。近所に住む女子大生が夜中に洗濯物を干していたのだ。
 翌日何か予定でもあったのか、その行為の奇矯さはとりあえず置いておく。
 その際に彼女が自身のブラを干しそこね落とした事。それが全ての発端だった。
 まさかそのブラが男に直撃するとは。
 そしてブラを落とした彼女が不精にもお風呂上りで洗濯物等を干しているとは。
 落とした瞬間慌てた為か巻いていたバスタオルがはだけるとは。
 流石にお天道様でも見抜けなかった。今まさに死のうとしていた男には尚更である。
 見上げた男の眼に数秒残った生々しいおっぱいの残影。
 それは男と女子大生の目が合う瞬間まで数秒間続いた。その数秒が――世界を変えた。

 男の頬を熱い何かが流れて、落ちた。神々しさすら感じるその瞬間を忘れない。
 この感動を何に例えよう。それは正しく天啓と呼ぶに相応しい。運命の祝福は彼を見捨てなかった。
 死に瀕した彼を、おっぱいと言う名のドラマが救った。まだ死ぬべきではないとでも言う様に。
 当然のように上がる悲鳴。慌てた男は弁明する暇も無く、慣れた仕草で逃げ出した。
 手に女子大生のブラを持って。

 端から見ればとんだ変態である。

●おっぱいがいっぱい~罪人は乳と踊る~
 “おっぱいがいっぱい団”
 その名称がモニターに表示された瞬間、ブリーフィングルームをブリザードが奔り抜けた。
 集まったリベリスタ達から呼吸の音すらが一瞬消失する。ぐうの音も出ないとはこの事だった。
 あらゆる論理を超越して、他人を黙らせるある種の存在感がそこには在った。
 と言うか難しい年頃の娘にアークは何をやらせているのか。責任者を出せ。具体的には研究開発室の室長とか。
 それはさておき名が体を表し過ぎる、おっぱいがいっぱい団である。
『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が重たい口を開く。
「カルト……だったらまだマシだったんだけど」
 この団体がフィクサードの溜り場になっているみたいなの、と沈痛な声は続いた。
 団体の代表は熟練のフィクサードであり、現状アークに属している一般的なリベリスタ以上の力を持っている。
 その目的はおっぱいを愛でる事。巨であるか、美であるか、微であるか、貧であるかは、この際問わない。
 眺めるだけでも徳が上がるが、触ることが適えば尚良し。困難の達成はその身の霊格を一段上の次元へと引き上げる。
 水着はトップレスを推奨。それ水着ちゃう、ただの半裸や。等という無粋な突っ込みを入れてはいけない。紳士の嗜みである。
 下着はおっぱいの生育を助ける分において推奨。ただし張りのあるおっぱいにブラは不要。と
 基準は一切不明ながら組織の勧誘パンフレットにはこんな文面が続く。

 時に道行く女性の胸に不快な祈りを捧げ、時に女性下着売り場に乱入し、
 強硬派と呼ばれる一部には痴漢まがいの行為に出ている者も居ると言う。
 にも拘らず、この思想に傾倒する人間は絶えず増え続けているらしい。男って馬鹿だ。
「その……この団体が今度新入団員勧誘を目的とした大規模な集会をするみたいなの」
 流石に名前を口にするのは抵抗があったのか、イヴは言葉を濁すと再度モニターを操作する。
 映し出されたのは何処かの教会の様な建物だ。西洋風の建築様式に、けれど門に刻まれた文言が違和感を添える。
 曰く“乳是命”
「……これには一般人に混じって駆け出しのフィクサードも複数参加するみたい。
 彼らはただでさえ犯罪に抵抗の無い危険分子だし、何より変態よ。
 これ以上活動が活発化しても困るし、出来れば一網打尽にしたいんだけど……」

 そこで問題になるのが件の代表だ。こればかりはアークで何とかするしかない。
「敵はその……余り言いたくないけど強敵よ。でも、この男には決定的な弱点があるの」
 ここまでの話を聞いた時点で、リベリスタ達にも大体想像がついていたからだろう。
 続く言葉を予期して、一度緩んだ緊張が舞い戻る。誰か止めろよ的アイコンタクトが飛び交うが、
 強いて言うならば研究開発室の室長とかが居なかった事がこの場にとっての悲劇だった。
「……弱点は――よ。後は皆に任せるわ。この代表を捕縛するか、処理してちょうだい」
 これ以上この話はしていたくない。と言う様に疲れた表情を見せるイヴの後ろのモニターでは
 じーくおっぱい!と言う間の抜けたフレーズが繰り返し繰り返し虚しく響いていた。

 リベリスタ達の前に立ち塞がる恐るべき敵、おっぱいがいっぱい団。
 紛れも無くただの変態である。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:弓月 蒼  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年05月15日(日)22:39
 3度目まして。シリアス・ダーク系STを目指してます弓月 蒼です。おっぱい恐い。
 とある悪の組織の野望を叩き潰す。と言う熱い展開に心を惹かれた皆様いらっしゃいませ。
 敵は強大ですが、皆様ならばきっと勝利を掴んでくれると信じております。
 ネタ?何の話かは分かりかねますが以下詳細となります。

●依頼成功条件
 おっぱいがいっぱい団代表の捕縛、または討伐

●おっぱいがいっぱい団代表
 男。独身。変態紳士。元リベリスタのフィクサード。デュランダル。
 年齢は33歳。生来の逃げ癖が抜けない中年。得意な事は妄想を膨らませる事。
 おっぱいを心から崇拝しておりおっぱいに対する造詣も深い一流のおっぱいソムリエです。
 おっぱいがいっぱい団を発足してより血の滲む様な努力の結果、一定のカリスマ性と
 人心掌握術、おっぱいに関する様々な知識を身に付けました。座右の銘はおっぱいに貴賎は無い。
 戦闘スタイルは連撃系デュランダルとでも言うべき変り種ですが、経験豊富な強敵です。
 弱点はおっぱい。執着し過ぎ、語り過ぎる。だが偽乳、てめーは駄目だ。

●おっぱいがいっぱい団代表の能力
 非情にタフな上に、運に左右されますがそこそこの確率でダブルアクションを繰り出して来ます。
 また、形勢が不利と見るや躊躇無く逃走しにかかります。

・ダブルアクションLv2:Pスキル。D.Actが上昇します。
・二刀流:Pスキル。武器を二つ装備する事が可能になります。通常攻撃に連属性が付与されます。
・精神無効:Pスキル。精神的にとても安定しています。不吉、不運、混乱、怒りに影響を受けません。
・おっぱい宣言:Aスキル。神遠全。おっぱいについて熱く語ります。【状態異常】混乱
・爆乳戦気:Aスキル。補助。全身に破壊的な闘気を漲らせ、攻撃能力を向上させます。
・バーストラッシュ:Aスキル。物近単。輝くオーラを纏って対象一体の胸部に眼にも止まらぬ連撃を加えます。【状態異常】ショック【追加効果】不殺、連撃

●おっぱいがいっぱい団大勧誘会場
 窓に防弾用の強化ガラスの張られた西洋建築。
 大広間、控え室、キッチン、トイレで構成されており、裏口があります。
 大広間の広さは大きめの会議室程度。その他敷地内に庭、倉庫有り。
 駆け出し(Lv1相当)のフィクサードが3名、一般人の団員が5名程詰めています。
 彼らの眼前で代表を討伐しようとした場合、フィクサード達は攻撃を仕掛けてくるでしょう。
 クラスは不明ながら全員が前衛型、使用するスキルは各クラスの基本スキル2種です。

●戦闘予定地点
 すぐさま現地へ向かえば開場前に大勧誘会場に到着する事が出来ます。
 この場合代表の所在は不明。開場後であれば控え室に居ると思われます。
 また、開場後は勧誘されて来た一般人が不特定多数入場して来ます。大半が男です。
 一般人とは言え多少恐い目にあった位ならアークが揉み消してくれます。
 こんな恥ずかしい集会に出ていたなんて、普通ちょっと広言出来ません。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
アナスタシア・カシミィル(BNE000102)
覇界闘士
ティセ・パルミエ(BNE000151)
マグメイガス
高原 恵梨香(BNE000234)
デュランダル
源兵島 こじり(BNE000630)
ホーリーメイガス
秋月・瞳(BNE001876)
デュランダル
アイシア・レヴィナス(BNE002307)
スターサジタリー
エルフリーデ・ヴォルフ(BNE002334)
ホーリーメイガス
エリス・トワイニング(BNE002382)

●開場前~緊急事態発生~
「なあ、あれ……」「ああ、ちょっと確認取ってくる」
「代表の知り合いか? 腕章位着けて来いよな」「腕章着けてるじゃないですか?」
「えっ?」「えっ?」
「あとあの獣耳何だ、コスプレか?」「え? 獣耳?」
『えっ?』
 一般スタッフ2人と彼、駆け出しフィクサードの計3人がこの日の見回り担当だった。
 開場準備は整っているかチェックシートを片手に会場内を見て回る。その最中目にした光景は、一言で言うと異様である。
 女性が2人、開場前にも関わらず自信満々に敷地内に踏み込んで来ている。
 正門では最も新規の団員がパンフレットを並べていた筈で、それをスルーして入ってきたと言う事は恐らく関係者なのだろう。
 が、関係者である事を示す腕章も無ければ、何か片方はコスプレじみた耳を生やしている。更には全く見覚えが無い。
 ここは大問題である。おっぱいがいっぱい団は男性が大半である。女性団員は元より希少。
 その彼らが見覚えがないと言うことは……あれは代表の女か。畜生あのオヤジ上手くやりやがって。
 思考が沸騰し掛けるも、どうも一般スタッフと意見が食い違う。まさかと思って見返すが、やはり腕章は無い。獣耳は有る。
 ジジ……電波を受信したトランシーバーが籠った音を立てる。確認に行った団員が到着したのだろう。耳元に当て受信、代表からの連絡だ。
 これで疑問が氷解する。かと思いきや、現実は非情である。当たって欲しくない予測ほど良く当たる。
 “その2人を捕獲せよ。特に獣耳の女は絶対に逃がすな。それは我々の敵である”

「あのっ、この集会で儀式を受ければ美しい胸になれると聞いたんですけど」
 え?何その超魔術。と思ったかどうか、振り返った男を見上げるのは小柄な影。整った風貌に……少々不足気味の胸。
 瞳には何故か冷めた様な色合いを滲ませていた物の、開場前に先行して入ってきてしまった入団希望者の様子。
 とりあえず正門に案内しようとにこやかさを作り微笑んだ男に彼女――『ネメシスの熾火』高原 恵梨香(BNE000234)の勘違いを装った発言が被せられる。
「私にも素質があるか、確認して欲しいんです」
 素質?何の?と男の笑顔が軽く引き攣る。当然と言うべきかこんな団に所属する以上はその過半数は女性関係に不自由している。
 であればこそ、例えばその発言に何か不穏当な想像をしてしまったとしても、男の事ばかりを責める訳にはいかないだろう。
 哀しいかな、砂漠では一滴の水にオアシスを連想するのである。日照りの大地に潤いは酷と言う物。
「でも、人目につくのは恥ずかしいから……」
 出来れば人目に付かないところで。そう続ける少女を上から下まで一瞥するも、一部不足な部分はあれ文句無しの美少女。
 女慣れしていない身であれば舞い上がる。その言動が例え不自然極まりなくとも、もしかして俺誘われてる!?
 と言う一抹の希望を抱かずにはいられないのが男である。美人局や色仕掛け、結婚詐欺は無くなりそうも無い。
「え、えっと……ああ、じゃ調べるんで向こうの倉庫に行こうか」
 そんな事を言いながら思わず両手をズボンで拭う。何を調べるつもりだとは聞く無かれ、これもおっぱいがいっぱい団員の運命。
 しかしそこをジジ……と言う異音が邪魔をする。何かと思い携帯したトランシーバーを耳に当てれば聞こえてきたのは代表の声。

「な、侵入者!?」
 その声を聞いていた恵梨香が僅かに身を硬くするも、それには気付かない男。
 慌てた様に周囲を見回し、心底悔しそうに眉を寄せたが、それでも団体が組織である以上は上の指示には従わざるを得ない。
「悪いお嬢さん、お兄さんこれからちょっと仕事なんだわ」
 本当に悪い、とむしろ当人こそが残念の極みと言う風に手を立てると、呼び止める暇もあればこそ踵を返し駆け去って行く。
 駆け出しとは言え仮にも革醒を経ただけある、と言えようか。遠くちくしょぉー! とか聞こえたのは気の所為にしておく。
 とはいえ幸いな事もある。ここに来てようやく、恵梨香は自分達が何か予期せぬ事態に陥った事を悟った。
 明らかに後手に回っている。直感するも慌てる気持ちは表に出さない様に、しかし迅速に携帯を取り出し待機中の仲間達へと電話をかける。
「何かまずい事になってるみたいです、いつでも仕掛けられる様にしておいて下さい。詳細が掴めたら連絡します」
 その発言が終わるか終わらないかと言ったタイミングで、鳴り響いたのは複数の銃声。事態は転がる。車輪の如く。

●開場間近~じーくおっぱい!~
 じーくおっぱい! じーくおっぱい! じ―――くおっぱい! 耳を劈く間の抜けたフレーズにまず心が折れそうになる。
 だがその環境の劣悪さを横に置いておいたとしても尚、2人は苦戦していた。理由は単純である。多勢に無勢だからだ。
「地に頭を擦りつける様に、跪け!」
 暴力的な響きで放たれる『毒絶彼女』源兵島 こじり(BNE000630)のショットガンの一撃を、
 大きな盾を持ったクロスイージスのフィクサードがガードする。その最中に間合いを詰めてくるのはナイトクリークのフィクサードだ。
 これを『エーデルワイス』エルフリーデ・ヴォルフ(BNE002334)が牽制する。
「ああもう、全く優雅じゃないわねっ!」
 弾を消費して距離を稼ぐだけ、それは酷くエルフリーデの美観を損ねる行為では有った物の前衛が不足している現状では是非も無い。
 それでも2対2であれば押し切れただろう戦況を引っ繰り返したのは遅れてきた3人目、篭手を着けた覇界闘士のフィクサードだ。
 業炎撃と斬風脚、距離を詰めても離しても合わせて来るこの男の所為で徐々に押し込まれて来ている。
「じーくおっぱいっっっ!」
 あとその3人目は何故か到着した瞬間から半泣きだった。何か嫌な事でもあったらしい。それが何かは誰にも分からない。
 間違いなく言えるのは、彼の放ってくる蹴りから放たれるかまいたちは厄介だ、と言うことくらい。
 代表は未だ影も形も見せていない。けれど実力差を人数比で埋められた結果、彼女達は3重のおっぱいコールに埋没しようとしていた。

 “――燃え尽きなさい”
 切り裂く様に聞こえた声は何処からともなく。ちり……と走ったのは極小の火花。けれどその焦点へと召喚された魔炎は、
 声も音も大気も何もかも、周囲のフィクサード3人ごと完全に捉え飲み込み昇華する。其はネメシスの熾火。焔の大華、フレアバースト。
 立ち上る紅蓮が視界を染め、大仰な二つ名からは連想し得ない小柄な少女の影絵を映す。
「……どうにか……間に合ったみたい」
「大立ち回りだな……こうなっては仕方ない、援護する」
 続く声に目線を向ければ、こじりとエルフリーデ、2人を包むのは穏やかな癒しの光。
 皮肉にも幻視を用いず私服であったが為におっぱいがいっぱい団の捕捉を逃れていた恵梨香から連絡を貰い、即座に戦闘準備が整ったのは2名。
 真っ先に正門に並んでいた『ナイトビジョン』秋月・瞳(BNE001876)と彼女と共に配下を捜索する予定だったアリスっぽいメイド服の少女、
 エリス・トワイニング(BNE002382)。攻め手3人に対し癒し手2人、ジリ貧をひっくり返すには十分過ぎる程の回復の厚さ。
 援軍としてこれ以上心強い物は無い。こじりがショットガンを構え直し、エルフリーデが自動拳銃をリロードする。
 炎が止み、視界が戻った頃には戦況は一変していた。今度はフィクサードが押され始める。
 勝負を賭け攻めに出たナイトクリークの男のブラックジャックを耐え切った、こじりのオーララッシュが遂にクロスイージスを吹き飛ばす。
 エルフリーデのスターライトシュートで残り2人が纏めて射抜かれる。そこに駄目押しで叩き込まれる恵梨香のフレアバースト。
 真昼の空に熱波の華が2度咲き乱れ、ナイトクリークの男が膝を付く。
 この連撃を耐え切った覇界闘士が蹴りからかまいたちを放ち、最も経験の浅そうなエリスのアリス風メイド服に切り傷を残すも、
 与えたダメージは余さず瞳の天使の息と、エリス自身の天使の歌が癒してしまう。
 さにあらん。駆け出しの攻撃力では二重に構える回復の壁は貫けない。そしてフィクサードらに回復の手段は無い。
 であれば例え時間がかかろうと残りは消化試合の様な物だ。更にはフィクサード側は援軍も望めない。

 ――いや、果たしてそれは本当に“そう”か?何かを忘れてはいないか。
 フィクサードとは己の欲望の為に力を振るう者。リベリスタは秩序の為に力を振るう者。ここには明確な格差がある。
 多くの一般市民はリベリスタにとっては頭を悩ませる障害であり、フィクサードにとっては、体の良い壁に過ぎないのだ。
 “特殊法人OI団大勧誘会――開場です”
 正門にせっちされた場内放送用スピーカーから流れたのはそんなフレーズ。ぱらぱらと入ってくる一般人を目の当たりにして、
 彼女らは固まったが、フィクサード達はほくそ笑んだ。戦意の消えないナイトクリーク、そして未だ健在の覇界闘士。
 2人と睨み合いながら、リベリスタ達の頬を冷たい汗が伝う。

●開場後~消えないこだま~
 大衆がざわめく。それはそうだろう、少女らと大の男が血を流しながら争っていれば誰もが慌て、混乱する。
 これで逃げ切れたなら良し、逃げ切れなかった場合は……同胞であり同志でもある彼らには悪いが、見捨てざるを得ない。
 開場放送を終え、一息吐いた中年の男――おっぱいがいっぱい団代表は開けっ放しにしておいた控え室の扉を見つめる。
 そこには影。恐らくは表で乱闘を演じている少女らの仲間なのだろう。どれも甲乙つけがたいおっぱいを実らせた3人の女性が佇んでいた。
 中でも特筆すべきたわわな果実を揺らしながら異国人らしき女性、『蜥蜴の嫁』アナスタシア・カシミィル(BNE000102)が進み出る。
「こんなステキなトコがあるなんて初めて知ったんだよぅ、是非あたしも入団させてほしいな!
 ……なんて、流石に通じないよねぃ」
 困った様に笑う仕草に直感する。なるほど、下着は無しと。一品である、異存は無い。顎髭をさすりながら大いに頷く。
「残念だお嬢さん。君のおっぱいッ! は実に見事。であればこそ私の理想が理解されなかった事こそを痛恨であると言わざる得ない」
 芝居がかった仕草で涙を拭う代表。互いの立場を理解しあったからには自然高まる一触即発の空気。
 けれど『おこたから出ると死んじゃう』ティセ・パルミエ(BNE000151)が絶妙のタイミングで場を取り持つ。
「女の子が入団するメリットってなんですか? AカップからHカップまでの8種類から1つ選ぶとしたらどれが好き?」
 言いながらも後ろ手ではしっかり控え室の扉を閉め、ロックを掛けている。この場面では値千金、中学生並の外見でも強かさは十分である。
「世の中には、おっぱいにコンプレックスを抱く女性が星の数ほどにも居る」
 代表の語りが始まった。が、そんな事は正直どうでも良い。最後尾の『特異点』アイシア・レヴィナス(BNE002307)が
 ブロードソードを幻想纏いから顕現し、アナスタシアがガントレットを身に着ける。だが代表、それを目の当たりにしても語りを止める事は無い。
「しかしどうだろう。サッカーと野球に優劣が有るかね、文系と理系に善悪を問うだろうか、背が低ければ可愛らしく背が高ければ凛々しい。
 白人の肌は肌理細やかであり、黒人の肌は瑞々しい。皆違って皆良い、誰もが持ち得、誰もが持ち得ない物を比較するなどナンセンスだ!」

 狙いは読めない物の、予定通りに3人が3様に取り囲む。代表の語りは終わらない。
 ふんふんと聞いているのは質問者のティセだけながら、手にはばっちりガントレットを身に着けている。代表の語りは終わらない。
「君の質問に答えよう。我が団にコンプレックスなどという物は介入する余地すらない。おっぱいは神聖にして不可侵。
 優劣は無く貴賎も無い。故にいずれも素晴らしい。小は大を兼ねないが、大もまた小を兼ねない。
 それぞれにそれぞれの良さがある。故に誰もが己が胸を誇るのだ、じーくおっぱいと!げふっ」
 余りに語りが長かったので試しに放ってみたアナスタシアの業炎拳が代表にクリーンヒットする。まさかのノーガードだった。本物だ。
 続いて距離を詰めたアイシアのオーララッシュが何かを言おうとした代表の脇腹をさっくりと抉り血飛沫が舞う。
 しかし、代表はまるで平然と立ちあがる。何事も無かったかの様に。口元に笑みすら浮かんでいるのは何事か。
「きゃあっ!?」
 高い悲鳴は突然上がった。上げた方からすれば完璧な不意打ちだ。良い一撃を受けて思わず一歩後ろへ下がる。
「え、え!?」
 けれど不意を打った側からすれば更にわけが分からない。何より何で自分がこんな事をしているのかが分からない。
 強いて言うなら代表の言葉に何らかであれ感じ入る所が有ったのが問題だったとでも言うのか、ティセは見事に混乱していた。
 先の無駄に長い演説。これこそは代表の得た超常の力、おっぱい宣言である。
「ちょ、敵はあっちだよぅ!?」
 アナスタシアが慌てた様に声を上げるも、それより問題は代表だ。両手に構えたスティレット。
 鋭い眼光が突然の不利を強いられた憐れな子羊達を射抜く。そこは熟練の重み。そして何より――男はデュランダルなのである。
 おっぱい! の鬨の声響く爆乳戦気、そしてダブルアクションより放たれるバーストラッシュは、
 胸部限定で大ダメージを、極力跡を残さないように丁寧且つ満遍なく与えた。当然刃物である為上着など風前の灯である。
「あれっ、あれ!?」
 一方演説で混乱したティセは 中々治らない。時折代表にも攻撃を仕掛ける物の室内比は1:2、どうしても味方への攻撃が増えていく。
 アイシアも吸血で以って何とか戦線を維持しようと奮戦するが、度々繰り返される連撃と、
 執拗な胸部への責め苦に遂に耐えかね、防御用短剣を手放し胸元を隠す。彼女もまた、リベリスタである以前に18歳の乙女である。
 そうして更に数分、最後の砦として立ち塞がったアナスタシアが膝を付く。ダメージ的にも満身創痍、限界まで粘った結果である。
「お嬢さん方、君達は良く頑張った。しかしそのおっぱい力では、私には……届かない」
 混乱したまま昏倒させられたティセの精神的な安否もさる事ながら、実的被害よりメンタル面での被害たるや甚大である。
 ばたんと閉じる控え室の扉。去り行く代表の後姿を眺めながら、アナスタシアの意識も闇へと落ちていく。

 駆け出しフィクサード3名こそ捕縛し得るも、かくしてまんまと代表は逃げ果せる。 
 今日も何処かでじーくおっぱい。こだまは、消えない。
 

■シナリオ結果■
失敗
■あとがき■
参加者の皆様はお疲れ様でした。STの弓月蒼です。
この様な結末に到りましたが、如何でしたでしょうか。

幻視は優秀なスキルですが、フィクサードと一般人が一緒に居る場合その限りとは言えません。
結果フィクサードは捕らえる事に成功しました。されど全てはトカゲの尻尾切りの如く。
代表が健在である限りはまた何時の日か、この間の抜けたフレーズを耳にする事が
あるかもしれません、無いかもしれません。

この度は御参加ありがとうございます。またの機会にお会い致しましょう。