●ブレイン・イン・ラヴァー万歳 世の中には常人の理解できない方向に突き抜けている者達がいる。 それは例えば思想であったり、あるいは手先の器用さであったり……とにかく、何か一点に特化した者は居るのだ。 戦争の達人は英雄とも言われ、殺人者としての達人は伝説とも呼ばれるように。 そしてここに居る者達もまた――ある一点に特化した者達だった。 『いやあああ! 誰か助けてぇ――!』 「うるせぇ! 静かにしやがれ!」 薄暗い倉庫の中。そこにいたのはいかにも柄の悪そうな三人の男だった。 下卑た笑みを携え、目の前の存在へと舐め回すかのように視線を向けている。 彼らが何を企んでいるのか、問うまでも無く明白であった。そう―― 『らめぇ……! 6時間も丁寧に水に浸されたら完全に水切りされちゃう! 餅つきされちゃう――!』 「へへへ、ウブな餅じゃああるめぇし、これが初めての餅つきって訳じゃあるめぇ!」 ――餅つきの準備だった。女性の声? ブレイン・イン・ラヴァーによる妄想ですよ! 彼らはフィクサード。ただし“お餅フェチ”という誰得属性を持った集まりでもある。新年を迎え、餅の時期に成った為にハッスルしているのだ。脳内が。 彼らの目の前に存在するは大量の餅。元となるもち米からスーパーで売られているような四角い餅まで大量に選り取り見取りだ。その数たるや倉庫スペースの半分を占めている。何してんのコイツら。 『そ、そんな……私餅つきされた経験なんて――ひゃうッ!?』 「随分とカチコチなもち米じゃねぇか……今からこの米を俺達の手によってモチモチと美味しく調教出来るなんて最高だぜ!」 「し、辛抱できん……! おい早くこの杵で突かせろ! 餅つきってのは臼の中にあるおもちたんを突くのが醍醐味だろうが! ああ、おもちたんかわいいよハァハァハァハァ……うっ!」 おい馬鹿止めろ。何がとは言わないがナニを。 『ふぇぇ……やめてよう……もち米に戻りたいよぉ……』 「うへへへへ……! 泣き叫んでも無駄だぜおもちたん! お前ももうすぐあっちの仲間入りになる運命だからなぁ!」 と、泣き叫ぶはおろか喋ってすらいない餅を相手に倉庫の一角を指差す男。病気である。 まぁそれはもう手遅れなのでさておき、倉庫の隅では何やら良い匂いがしていた。――醤油だ。 餅を焼いているのだろう。いわゆる焼き餅。餅の使い道としてはポピュラーな方ではなかろうか。ともあれそちらでもまた女性の声が聞こえる。脳内に。 『やぁぁ! 加熱による水蒸気で膨らんじゃうよぉ! 水蒸気ちゃん暴れちゃだめえぇぇぇ! デンプンが化学反応起こして広がっちゃうッ! 元に戻れなくなるぅぅう!』 「お、おもちたんハァハァ……安心してね直ぐに僕特性のお醤油に漬けてあげるからね……! 十年掛けて研究し、自家製の小麦と大豆を使ったオリジナル醤油“受け取って僕の十年。汗と汗と汗の醤油in 2012”を……!」 『いやあああ! その十年、もう少しマトモな方向に注いでぇ――! ていうかそれ汗じゃないの――!』 熱により膨らむ餅。その様子に興奮する男が一人。……病人しかいない。 傍から見ると餅相手に気持ち悪い笑顔でブツブツと話しかけている状態だ。何も知らない人が見たら通報するレベルである。神秘を知っている人が見ても余裕で通報するレベルだが。 さてしかし一応、かなり甘めに見て、さらに百歩譲れば――この状態、平和である。 ただ少し妄想癖の強い連中が餅に欲情しているだけだ。何も問題ない。うん、問題…………無い。 そう、何も問題は無かったのだ――運命が碌でも無いタイミングで悪戯しなければ。 「な、なんだこれは!?」 「おもちたんが……際限なく広がっている!?」 膨らむ餅。それが、止まらないのだ。 異変に気付いた時にはもう遅い。フィクサード達はその身を餅の膜に包まれ、身動きが取れなくなっている。 「……お」 お? 「おもちたんの膜あったかいよっぉおおおハァハァハァウッ!」 ……最後まで病人であった。 ●餅は喉に詰まらないように気を付けて食べてね 「……」 額を押さえてないで何か喋れよ『ただの詐欺師』睦蔵・八雲(nBNE000203)。 「…………餅が覚醒して暴走するらしいから行ってこい諸君……」 え、説明それだけ!? |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:茶零四 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年01月20日(金)23:32 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●お、おもちたん……! 世界には知らなくて良い真実が存在する。 知らない方が幸せであると、そんな事も間違いなくあるのだ。 それは神秘も例外ではない。いやむしろ“神秘を知らない方が幸せである”と言える。幸せな日常を歩むのに、世界に迫る脅威など知る必要は無いのだから。 その点リベリスタ達は“知った者”であり“知ってしまった者”として“知り続ける”事を選んだ存在だ。いかなる神秘であろうとも、立ち向かい、そして“知り尽くす”。それを許容した者達である。 ……だが、 それでも、それでも私は、『レーテイア』彩歌・D・ヴェイル(BNE000877)は―― 「こんな世界など……知りたくは無かった……!」 「そ、そう思うなら攻撃の手を止めて――! 気糸の的確な痛みが、痛みが快感に変わるぅ――! おもちたんの体がブルブル震えて、ああ行っちゃう、イッちゃう――うッ!」 やかましい。そのまま逝け変態フィクサード共。 ●こ れ は 酷 い ここは倉庫内。彩花の放つ気糸連射音は既に何発目か。 本来ピンポイントに連射性質は無いのだが、己の攻撃体勢が整う度に即時射撃を行っているのである意味連射しているに等しい。スキルマジ掛けである。後悔など無い。さっさと逝け――! 「まったく、餅が覚醒するとか色々終わってんな――ま、さっさとE・モチは潰すかね」 そして、連打するのは彩花だけでは無い。翼を用いて空を舞う緋塚・陽子(BNE003359)もだ。味方の邪魔にならないよう低空飛行しつつ、黒きオーラを餅に叩き込んで行く。頭がどこにあるのか知らないが、とにかく叩き込んで行く。頭に。 「うっふっふー! 餅肌リベリスタ、略しておもちすたの私登場ッ! お餅は美味しいですが、おもちたんはここで討伐させてもらいますよー! では……」 後方。『ミックス』ユウ・バスタード(BNE003137)だ。 自前の小銃Missionary&Doggyをおもちたんに構え、引き金を絞り上げれば、 「十六連射、お餅フィーバ――!」 声と共に銃撃を開始した。放たれし魔弾がおもちたんの体を穿ち、その身を削って行く。時折、おもちたんに取り込まれているフィクサード達に当たって、悲鳴が聞こえているような気がするが気にしない気にしない――ガス欠になるまでぶち込んでやろう。 「さてでは――現実化ったなどとハイテンションになって思い浮かべている連中に……少々、教育してやろうか」 飛びだす影は『七教授の弟子』ツヴァイフロント・V・シュリーフェン(BNE000883)。彼女は用意していた日本酒を口に含み、靴と斧に吹き掛ける。そして即座に行く。 斧を右手に走り、踏み込んで幻惑をも伴い――薙いだ。 「あ、ああおもちたんが――! おもちたんの餅が削られて、おもちたんがコンパクトに! く、くそう! おもちたん可愛いな! もっとやってくださいお願いします!」 「――やべぇ、今ちょっとガチでドン引きしてしまったんだが、どうしよう。不殺の精神解除した方が良いのかなこれ!?」 「フ、フツくん! 耐えて耐えて――! 向こうは既狂済みなんだから、乗せられちゃダメ――!」 思いっきりトチ狂ったフィクサードの発言に『てるてる坊主』焦燥院 フツ(BNE001054)は一瞬だけ本気出した方がいいのかと迷ったが『白詰草の花冠』月杜・とら(BNE002285)の言葉に、思い留まった。 うん、向こうは既狂済みなのだ。危ない危ない向こうの言葉に乗せられる所だった。式神の鴉撃ちだす程度にして、ちゃちゃっと倒してしまおう。まぁその前に守護の結界を展開するのが先だが。 「餅は非常食として最高って感じなんすけどね……特にあたいとしては砂糖醤油にきなこにゴマに……お、おふふぅよだれが――」 そして『コンビニ店員』坂崎 夢子(BNE003404)は眼前のおもちたんに対し、餅の様々な食べ方を想像していた。 砂糖醤油・きなこ・ゴマ……いずれも絶品である。餅パネェ。 しかしその一瞬の思考は隙となり、おもちたんは見逃さなかった。――とりもちが彼女にむかって放たれれば、直撃する。あえて擬音に表せば“べちょり”という音を立てて、 「ぬ、ぬわああこれは何すか、とりもちすか?! 生温かいけど食べれますか!? 食べれますよね!? 食べますよ――!」 あふぅ、あたい……こんな感覚初めて……と、さらに夢子は口走り、若干パニックになっている様な気がしないでもない。が、ひとまずとりもちを食べるのは止めておこう。一応成分的には食べられるのかもしれないが、食用では無い。と言うか、何故フィサード達はとりもちを持ち込んできているのだろうか。とりもちは餅では(以下略。 ともあれ、夢子に付いたとりもちは彼女が食べる前にとらが邪気を祓う光を放ち排除した。危ない危ないもう少しで新たな性癖が生まれていたかもしれない。おもちたん凄い。 「成程……これが、おもちたんと言う訳ね――嗚呼なんて哀れなフィクサード達。無機物に対してしか欲情しないだなんて」 でもね、大丈夫よ。と戦場に舞い降りた『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932) は言葉を続ける。ただし、その、なんというか、彼女の服装は―― 「貴方達は心がビョーキなだけなの。そう、ちょっと明後日の方向に視点が向いてるだけ。海より深いわたしの愛で必ず救ってあげるわ! なぜならわたしは――エンジェルだから!」 ――ビキニのエンジェル。一月真冬の倉庫の中に降臨した瞬間だった。 ●エンジェ――ルッ! 舞姫は身体に熱がともるのを感じていた。 一月の寒さなんて知らない。むしろそんな寒風如きに負ける筈が無い。アイドルは最強です。 自慢の餅肌を全力で晒しつつ、ポーズを取るのも忘れない。身をくねらせ、ポニーテールで纏められた金の髪を優しくかきあげれば、 ……くっはー、わたしってばマジエンジェル! と、思考する。フィクサード達の治癒など簡単だ。餅に対して魅力を感じているのならば、それ以上の魅力を自身が放てばいいのだ。何、考えて見れば実に簡単な事であった。 そして、視線が集中すればするほどさらに燃える。気分は既に常夏。寒くは無い。むしろ熱い。これなら行ける。なんだかよく分からないがそんな気がする……! 「さぁ、おもちたんの事なんて直ぐに忘れさせてあげるぜ……!」 「あ、すみません我々人の体では萌えなくて――後ちょっと痴女は普通にお断りかなとも思いますので、あの、その、何と言いますか……御免なさい」 エンジェルは天使の微笑みで剣撃を叩き込んだ。 ●おーもちたーん わあっ、というフィサクード達の悲鳴が響くが無視。そんな事よりおもちたんだ。 「ふーむ……しかしこれは別に、物理系に強いと言う訳ではなさそうだな」 斧を振るい、餅を切り刻んでいたツヴァイフロントが気付く。 餅の体であるが故に物理攻撃に強いのでは――と推測していたのだが、どうもそう言う訳ではなさそうだ。少しばかり武器が通りにくいような感覚はあるが、“攻撃”を妨げる程の物では無い。 「というか本当になんなのこの餅の攻撃。いつもなら無効化できる手段あるけど、今回はソレが無いからちょっと心細いし……」 一方で彩花。本来なら彼女は餅の呪縛を無効化できる精神無効を所有していた。が、今はそれを所有していない。何故なのか? その理由は唯一つ。 麻痺無効を活性化する事を――強いられているんだッ!(訳:分かりません) まぁ分からぬ事は置いといて、閑話休題。それにしてもこの餅、怒らない。彩花の気糸による攻撃ならば怒りを誘う事が期待できるのだが――何故か怒らない。 「うーん考えてる事も読めないし、感情とか、そういうのが乏しいのかな?」 とらがおもちたんの考えを読もうとリーディングを試みるが、読めない。少なくともこの存在は思考をしていないのだろう。思考していたらお餅フェチの連中をどう思っていたのだろうか――そんな事も考えついて、 「あ、そーだ! なら代わりにお兄さん達の思考を読んでみ――」 フィクサード達に意識を集中させた、その瞬間。 ――おもちたんハァハァハァ暖かいハァハァハァ……! 「…………ぃ」 彼らの思考がとらに流れ込んで来た。それらの全て、欲情に包まれていて、 ――おもちたぁああああんおーもちたーん! ハァハァハァハァハァ! 「……い、いやあああああ”! こ、こ、この、こ、こぉ、このブタ野郎――ッ!」 若干涙目になりながらとらは思考読み取りをカット。次いで即座に全力全開の“光”を放つ。 それは厳然たる意志。今先程のとらの心境の全てを注ぎこんだ光。神気閃光の輝きがおもちたん及び全てのフィクサードを等しく包み込んだ。おもちた――ん! 「ん、大分おもちたんも小さくなってきたな――とッ!?」 陽子だ。光がおもちたんを包み、その身を焦がしたその時。今度は彼女が包まれた。 光にでは無い――餅にだ。 「――ッ、ベトベトしやがって……あ、髪に引っ付くな! 後が面倒なんだよ!」 逃れられない。餅に包みこまれその身は勿論、羽まで覆われた。武器を動かすことすらままならない状況だ。 “攻撃”を妨げる程の抵抗は無いおもちたんの体だが、それはあくまで“攻撃”の話。その中で“動く”となると話が別だ。囚われた様に体は動かず、硬直する。お餅フェチのフィクサード達なら喜ぶ状況だろうが、 ……生憎オレは特殊性癖持ちの変態じゃね――! と、思考した所でなんとなしに視線を傾けた先。 「いや~ん♪ お餅がべたべたして取れないーうふふ、餅肌に餅が絡みついて餅が餅肌と混ざり合わさって――つまり私最強ね! やだ素敵ッ!」 「マジすか最強すか! ちなみに私も餅肌なんすけど私も絡みあえば最強が二つでより最強っすか!? 数学パネッス!」 なんかカオスになっていた。舞姫もどうやらおもちたんの優しく包み込む攻撃に巻き込まれたようだが、何故か嬉しそうだ。ビキニで地面を這いずる形となっているのにどうしてあそこまで笑顔なんだろうか。謎だ。あれか、エンジェルだからか! そして夢子も餅肌カミングアウト。タッパを出しているがまさかおもちたんの餅を回収するつもりなのか。待て待てもう少し待って! ステーイ! 「まぁ俺がいるから直ぐに解除できるんだけどな」 直後、フツより邪気を祓う光が発せられれば、陽子と舞姫を包んでいた餅が溶けて消えた――ブレイクフェザーだ。 そもそもブレイクフェザー持ちが二人いる時点でBSなど即解除可能だ。つまり、おもちたん涙目である。ふぇぇ。 『――!』 しかしそう簡単に倒れる訳にはいかないと、おもちたんが倉庫の奥、大量の持ち置き場へと身を伸ばす。体を回復させようと言う訳だ。餅が、餅があれば、おもちたんはまだ後十年は闘え、 「そーはいきません! ここでその餅、食べさせて頂きます!」 る、訳も無い。おもちたんの手……手? が倉庫奥に伸びきる前にユウの一撃がおもちたんの体中心を大きく穿った。 突き抜けた魔弾の跡が再生しない。――限界を迎えたのだ。おもちたんの再生速度を上回り、餅で出来た体が崩れて行く。一個の生命体として、体を維持できない。 「あ、ああ! おもちたんが、我々のおもちたんが――!」 お餅フェチ達の悲痛な叫びが倉庫内に響き渡ると同時。おもちたんの体が完全に崩れ落ち、フィクサード達を踏みつぶした。 「ギャアアアアア――!!」 ――E・モチ:おもちたん、撃破完了。 ●\ お も ち / 「貴様らの敗因を教えてやる。脳内恋人に頼り過ぎなのだよ、いいか? 餅は無洗米では粘りが弱い。つまり天然美また餅米といえば佐賀と北海道産冬強いが夏の暑さに弱いギャップがいいのだ(中略)そもそも餅の名は白玉粉を使う物に多かったから加工は一のステイタス、例えば梅田矯菓は明治40年の著書で鶯餅などと共に今坂餅も挙げているメリケン粉を加える物もあり洋風なものの最近ではタイ米に5%混ぜる事で国産米と親和するとの研究もあり外国かぶれだがそれは国を守る為の知識そんな野性的なエリート攻が身体を焼く熱に耐えきれず兄弟と過ち(合体)を犯す状況に萌えるのだ。安直に女を襲う妄想に耽るなど餅を愛する者ではないのだよこの愚か者たちめが!(ドヤァ……」 と言う訳でドヤ顔のツヴァイフロントがお餅フェチ達に説教くれている現在。倉庫内のお餅はリベリスタ達が回収しており倉庫の片隅にて、 「はっはっは。いや七輪をわざわざ持って来た甲斐があったぜ。餅ってのはこうやって焼いて食うのが醍醐味だよなぁ」 「き、貴様ら――! それは我々の集めたおもちたんだぞ――! 返せ! 返せと言っているではないでしょうかお願いします返して下さい!」 フツが七輪を利用して餅を焼いている。一方でその眼前、ロープで完全に拘束されているフィクサード達が居た。動けないように念入りに縛られていて、目の前で行われるNTRを止める事が出来ない。 「返してって言われてもねー……だって、おもちたんが言ってるんだもん。フィクサードのお兄さん達に食べられるよりも――とらに食べて欲しいって☆」 醤油に漬けてとらは一口。勿論醤油は新しい物である。フィクサード達が使って居た物など怪しくて仕方ない。故に捨てた。 「さーて、それじゃあおこわも作ろうかな。おにぎりとかにしたら美味しそう!」 「な、何ぃ!? おこわだと!? 馬鹿な、それはおもちたんの為に揃えたのだ! ならば、それらの行く先は餅であるべきだろうが!」 「ふーん、そうなんだー☆」 どうやら相手はお餅原理主義者の様であるので、とらは容赦なくおこわ調理台へと材料を放りこんだ。貴様ぁ――! という声が聞こえた気がするがきっと幻聴だろう。うん。 『――OK、ときにお前らモチツケ』 声がした。誰だ、と周囲を見渡す先。声が発せられた場所は―― 「お……おもちたん……!?」 七輪の上だ。これは幻聴では無い。餅から声が発せられている。 なんだこれはどういう事だとフィクサード達が混乱する中、その餅から言葉が続く。 『お餅……夢子さんになら、食べられてもいいかな……』 「おおぅ、マジすか! よーしそれじゃあ折角だから砂糖醤油につけて食べてみるっすよ!」 フィクサード達の混乱が続く中、夢子は気にせず焼かれた餅を醤油に漬けて、口に放る。 まず感じたのは醤油の味。香ばしい味わいと、砂糖の甘さが舌の中で広がり、餅を噛めば柔らかい感触が存分に味わえた。 「んー美味しいっす! あれ、どうしたんすかフィクサードさん? あたいの口の中で餅が屈辱されてるのがそんなに気にかかるんすかー?」 「馬鹿な……我々のおもちたんがあのような言葉を吐く筈が……! 貴様らおもちたんに何をした――!?」 「何をしたって、さぁて? 特に何もしてないんじゃないかな?」 フィクサードの焦りが活発化する中、陽子はツヴァイフロントの持ち込んだ日本酒を楽しみながらリアクションを悠々と窺っている。 何をしたか。それを一言で表すならば――式神使役だ。 餅を対象に彼らを操り、まるでリベリスタ達に望まれて食べられているかのような行動をさせている。それらを操る黒幕はフツ。フィクサード達に気取られない様に気を付けながらしっかりと演技を続けて行く。 『えー、マジ脳内嫁!?』 『脳内嫁が許されるのは小学生までだよねー』 『キモーイ』 『キャハハハハハ』 「ぐ、ぐっぅぅぅ……! だがこの程度の口撃など、おもちたんからの愛だと思えば……!」 耐える。受ける口撃全てをおもちたんからの愛と無理やり捉え、現実逃避を行っているのだ。 だがその行動を見越していたかのように餅は言葉を繋ぐ。 『へぇ……そう言うの(妄想)が好きなんだ……』 見下し。見下し口調である。妄想に逃げ込んだフィクサード達を、現実の餅が見下しているのだ。 何故逃げる。目の前の餅から目をそらして、何故妄想の餅に逃げるのかと。まるで糾弾するかのような物言いで、 「動くと撃つ」 『私に構わず逃げて!』 「そうはいかない、大切な人質だし」 そのタイミングで繰り広げられる寸劇があった。彩花だ。 七輪の上に並べられた餅の一つに、オートマチックピストルの形をした――ライターを向けている。寸劇の進みによって七輪火力をアップ。最終的にピストルライターで止めの火を放ち、焼き餅を完成させた。後は醤油に海苔を付ければパーフェクトだ。 ……ここ二十年で完全に日本文化に毒された気がするわ。 二十年も慣れれば立派に日本人である。類義語:手遅れ。 『というかお前らキモイんだよ……俺は、男だっつ――の!』 「な、何――!? 男の子だとぉ――!? ……許せるッ!」 駄目だこっちはもっと手遅れだった。おもちだったら男の子でも良いらしい。お餅フェチ、恐るべし。 「あーら? まだおもちたんハァハァ言ってます? わたしの魅力に気付けないとは……これは本格的に病気の様です。手術して、脳内嫁を抉りだ……取りだす必要がありそうですね! 物理的に!」 ビキニ姿のまま刀を取りだす舞姫。物理的にとはどういう意味なのかは【お察し下さい】 「ふむ、お餅にジャムというのも中々行けますね……この発想は無かった!」 ユウはツヴァイフロントに誘われ、餅にジャムを付けて試食中であった。合うんだろうか。 ともあれ、ユウはいくつかのお餅inタッパーを取りだし、フィクサード達の前に置く。それは、彼女なりの優しさであり、 「どうせアークに連行されたらお餅を食べれなくなるかもしれませんし……一口だけ貴方達にも食べさせてあげます。さぁ! どれでも好きなのを選ぶが良いよい! よーい! よ――い!」 「あ、有難き幸せ――!」 セルフ残響音を用いれば、お餅フェチが一斉に涙してユウに感謝の言葉を述べる。そんなに餅が好きかお前ら。 さてしかし、餅の時期は終わる。次に餅が日本で騒がれるのはまた来年となるだろう。 あけまして、おめでとうございましたもちもち。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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