●真っ黒な『幽霊』 「ひ、はぁ、はぁ!」 走る。一人の少女がただひたすらに、夜の校内を走る。 「たす、助け、て!」 息を切らし、声を張り上げて彼女は学校二階の渡り廊下を走り続けている。 何故そんな事をしているのか。理由など、簡単だ。 ――追われているのだ。 「なんで、なん、で、こんな事に……!」 軽い気持ちだった。 友達に、最近深夜の学校に出ると噂の『幽霊』を見に行こうと誘われ、承諾したのがそもそもの始まり。そして、決定的な間違い。 ――断るべきだった。来るべきではなかったのだ。 あんなモノが居るとは思わなかった。わざわざ夜の学校に侵入してまで見るようなモノでは無かった。 (……あんなの、幽霊なんかじゃない!) 少女は思う。アレは何だと。 少女は確信する。アレは幽霊なんかではないと。 少女は思い出す。アレは友達を――『喰っていた』と。 「ぁ、か、階段!」 少女の見た先。それは、一階へと通じる階段。 ここを降りる事が出来れば出口はもうすぐそこだ。とにかく外に助けを求めよう。 ――と、そこまで少女が思考をした所で、 「っぁ!?」 少女の後頭部に衝撃が加わった。それは脳震盪を引き起こし、少女の意識を急速に奪う。 失われつつある意識の中で見た最期の光景は、己の後ろに立つ真っ黒な『幽霊』の姿だった。 ●光は無用 「幽霊が実在するかどうかはともかく――エリューション事件だよ。人を食うE・エレメントが四体出現してるみたい」 そう告げるのは『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)だ。淡々とした様子で内容をリベリスタ達へと報告していく。 「真夜中の学校内に出現するのは『影』のE・エレメント。人型・犬型・鳥型・猫型の形を具現化した生物で……悪い事に、全部フェーズ2って事が確認できたよ。犠牲になった人達も出てて、今のところ『行方不明』という形になっているみたい」 「行方不明か……」 行方不明――それは、つまり犠牲になった人達はもう既にこの世にはいないという事なのだろう。重い空気が広がるが、リベリスタ達にはもうひとつ気になる単語があった。 「……影のエレメント?」 「うん、『影』だよ。元々は誰の影であったのかは分からないけどね。……ともかく、そいつらが今は学校内に潜んでいるみたい」 「ちょっと待て。今は、だと?」 よく気付いたね。と、リベリスタ達の反応に前置きしたうえで。 「夜の学校なんて普通は誰も来ないでしょ? それに気付いたら食欲旺盛なE・エレメント達は移動するだろうね。……もっと人の多い所に」 背筋のゾッとする話だ。狂暴な性質を持ち、人を食うことが目的のエリューションが人の多い地点に行ったらどうなるかなど、考えたくもない。 「……それともう一つ注意がある。影のエレメントの特性として、光の多いところだと実体化出来ないの。つまり……」 「分かったぜ! つまり、光を浴びせまくれば良いんだな!?」 「違う。むしろ逆」 自信満々に答えたリベリスタの一人だったが、その自信を打ち砕くかのようにイヴが即答。 先程答えたリベリスタが部屋の隅でのの字を書きながらいじけているが、イヴは意図的に無視した上で言葉を紡ぐ。 「光が多いと実体化出来ない。それはつまり『光が多いと実体化できず、討伐する事が不可能』って事なの」 「え、それってまさか……」 「そう。今回はほとんど暗闇の中で戦ってもらう。まぁ少しくらいの光なら大丈夫だろうけど――結構厳しい戦いになると思うから気を付けてね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:茶零四 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月07日(土)22:05 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●幽霊出現 暗闇がある。 本日の月は半月。月明かりが周囲を照らすものの、今日の空模様は曇りの様だ。空より降り注ぐ月光が少なくなっている。 「ま、一応閉めとくか」 そんな外の様子を見ながら『黒腕』付喪 モノマ(ID:BNE001658)が体育館のカーテンを閉めて行く。 減少していく光量――それがほとんど0に近くなった時、新たな光が体育館内に生み出された。 「流石にちょっと暗いな……」 声の主は『デイアフタートゥモロー』新田・快(ID:BNE000439)。声と共に手元のビニール袋に包まれた懐中電灯のスイッチを入れれば、淡く光が広がる。 直線的な光の強さは無い物の、その工夫は範囲的に光を広げるのに大いに役立った。照らされた光の周囲には他の仲間も居て、 「今はまだ明るくしとこう。いきなり襲われたらたまった物じゃないしな」 もう一つ灯りが増えた。今度は直線的な光が伸びている。 ツァイン・ウォーレス(ID:BNE001520)だ。右手にはこれまた懐中電灯が握られていて、体育館のあちこちを照らす様に動かす。 まだ“影”が来る様子は無いようだ。 「では……私も今の内に……」 『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(ID:BNE000650)が手を合わせ集中すると、彼女を中心として何かが広がるように空気が一瞬だけ貼り詰める。 ――結界だ。 「神秘は秘匿すべし……ですね」 微笑みながら手を離せば、もう終わったと言う事だろう。 これで外の人間に気付かれる可能性は格段に減った。 「グッジョブですシエル様、後は――壁に頭をぶつけなければ完璧です」 き、気を付けます……。とシエルが言葉を返した相手は『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(ID:BNE001150)。 彼女は馴染みの仲であるシエルに注意を促しながら、周囲を警戒する。準備は大方完了したが、だからと言って不意打ちが無いとは限らない。 皆が慎重に体育館の隅に集合する。ここが最も相手への警戒範囲を狭める事が出来る場所だからだ。 ――と、その時。 「来たようだぜ……」 『深闇を歩む者』鷹司・魁斗(ID:BNE001460)が体育館の中央を睨みながら言葉を呟いた。 視線の先、あるのは唯の暗闇……では無い。蠢く何かが居る。 快がライトを向け“ソレ”を照らせば、 「!!」 誰かが息を呑んだ。 ライトの先、そこには居たのは暗闇の中から這いずり出るように具現化する――四体の“影”。 「皆、来るよ!!」 『食堂の看板娘』衛守 凪沙(ID:BNE001545)の声が飛ぶ。 と、それとほぼ同時。四つの影の視線がリベリスタ達へと向けられ、動きを見せた。 目の前の獲物を捕食せんとする動きを。 ●幽霊は人食い 「――とぉ、いきなりだね!」 『神斬りゼノサイド』神楽坂・斬乃(ID:BNE000072)は向かってくる人型の影に対し、肩に担いでいた己のチェーンソーを振り上げた。 稼働はすでにしている。魁斗の声が聞こえた時から反射的にスイッチを入れていたのだ。 「でも、ま。腕が成るよ!」 笑みを含んだ言葉と共に、向かってくる人型の頭部にチェーンソーを振り下ろした。 激突音が鳴る。しかし、音の発生場所は敵の頭部ではなく右腕だ。ガードの為に腕を交差地点に潜り込ませたのだろう。削る音が響くものの、さほどダメージを受けているようには見られない。 「とりあえず、挨拶代わりだ!」 そんな人型にツァインが蛍光塗料をぶちまけ、続く形で斬乃もカラーボールを投げつける。動きの止まった人型はかわす事が出来ず、人型に追従していた犬と猫にも僅かに付着する形となった。 だが、空を飛ぶ鳥には残念ながら当たらなかったようだ。鳥は、一度高く飛翔すると、 「――ガ、ギェ!」 鳴き声だろうか。非常に醜悪な声を洩らしながら、一気に降下を行う。 狙いは後衛。目に付いた、己と同じような翼を持つ者――シエルだ。 「くっ……!」 対するシエルは防御の体勢。腕を畳み、衝撃に備えようと。 したが、 「おぉっとぉ。僕がいる限り」 一息。 「お姫様には手を出させないよ!」 間に入り、攻撃を代わりに受けたのは『イケメンヴァンパイア』御厨・夏栖斗(ID:BNE000004)。鳥の降下をまともに受けるも――見事に、鳥の攻撃を防ぎきった。 次いで、 「皆、聞いて! 奴らの弱点は頭部だよ! それを狙って!」 凪沙の声だ。彼女の眼は四つの影全てを捉え、観察するようにその眼を滑らせている。 同時に彼女の脳に流れ込んでくるのは情報。影達の能力・弱点部位が感覚として凪沙の脳の中に入り込み、 「ふむ、成程。ならば話は簡単ですね――頭部を狙うとしましょうか」 今度は後方で銃声が鳴り響く。 オートマチックの銃を構えたモニカが銃口を鳥へと向けていたのだ。正確な射撃による銃弾は鳥の頭部へと一直線に向かうが、頭を僅かに穿つに終わった。 「……少し外しましたか。流石にこの暗闇では当てにくいですね……」 「見づれぇからもうちょっと明るい色にしろって感じだよなぁ。全くようっ!」 モノマが脚を跳ね上げる。半円を描くような軌道を取る蹴りの道筋だ。 そして直後に起こるは空気の圧縮――かまいたちの現象の前兆であるそれは上空へと向かって放たれた物で、 「ガ、ギッ!?」 鳥が呻くような声を。 どうやら翼に命中したのか、動きが不安定になっている。重なるダメージから逃れようと、少しでも飛翔を試みるが。 「流石によくかわす奴だ……だがなぁ」 地を蹴る音。続く言葉は、鳥を仕留めようとする言葉で、 「オレにはお前達の姿は丸見えだぜ?」 上昇する鳥の首筋から頭部にかけて一枚のカードが突き刺さる。――魁斗だ。 己の魔力を込めて作りだしたカードを鳥に向かって投げつけたのだろう。暗闇でも色をはっきりと認識できる目を持つ彼は、正確にカードを相手へと叩きこんだ。 鳥が力無く地上へと落下する。 「鳥は倒れたか……!」 前衛として、猫の攻撃を防ぎ続けていた快が鳥の脱落を確認すれば前に向き直した。 威嚇するように尾を逆立てる猫の影――それに向けて快は武器を構え、 「おぉっ!」 膂力を一点に集中させて、猫へと振るう。溜めた勢いを持って猫の頭部へと襲いかかり、一撃で沈めようと。 「フ、シュ、アァ――!」 だが猫の動きが一瞬早く回避行動を取らせた。数歩後ろへと飛び下がった猫は体勢を整え、逆に快へと襲いかかる。 「……ですが、そう簡単には行かせません……!」 シエルが言葉を紡ぐ。いや、よく聞けばそれは言葉と言うよりも詠唱だった。 吐息と言うに近い微風が体育館内に流れる。流れの行き先は快へと向かい、彼の受けた傷を癒していく。 ――のとどちらが早かっただろうか。 「う、ぐっぁ!」 人型の攻撃を耐えていた斬乃の口から苦痛の声が漏れたのは。 斬乃はチェーンソーを盾にして人型の攻撃を弾く。が、単純ではあるが強力な攻撃をいくつも受け、体力的な限界を迎えつつある状態だ。 そして一瞬の隙をついて人型の影が斬乃の肋骨部分に思いっきり歯を立てた。――食い千切るつもりだ。 骨が軋み、ヒビの入っていく音が一瞬の内に周囲に響く。 ……のだが、骨が砕けそうな音に混じって、声が一つ呟かれた。 それはモニカの声で、彼女の声は非常に冷静であり―― 「モニカびーむ。で、あります」 の、言葉と同時。斬乃に噛みつく人型に対して光と痛烈な銃弾が一発、浴びせられた。 ●大攻勢 「ガ、ガガガッ!?」 人型の影はいきなり来た背中への衝撃と光に対し、思わずのけぞる形となった。 斬乃から離れ、衝撃が来た方向に視線を向ければ自らに光が向けられていて。 「……やはり、光を集中させるのは避けた方が良いですね。消しますか」 スイッチを切る軽い音が鳴れば、光の線が一つ消える。 僅かにだが戻る暗闇。人型も攻撃を受けた事を理解したのか改めてリベリスタ達、特に負傷した斬乃の方へと向き直るが、 「こっちなのダ!」 向けた視線の先、『ラテン系カラフル鳥』カイ・ル・リース(ID:BNE002059)が立ちはだかる様に割り込んだ。 その一瞬、人型の動きが停止する。突然のカイの動きに戸惑ったのだろうか。ともあれこれはチャンスだ。 「今の内に他の敵をっ!」 犬型の影の攻勢を押さえていたツァインが思わず叫ぶ。彼らの予定では、次に潰すのは猫だ。 手の空いている者の視線が一気に猫型の影に向く。 「今度は当てる!」 右手に懐中電灯を持つ快が再び力を一点に集中させる。 自らが狙われている気配に気付いた猫は一旦距離を取ろうと後ろに再び跳躍する――が、 「この蹴り――ここでは逃げられないよ!」 跳躍した先を狙って凪沙が蹴りを繰り出した。その蹴撃は最初にモノマが放った物と同じ物で、猫に向かってかまいたちを発生させる。 「ガギッ!?」 回避するために跳んだ先で攻撃に当たる。あまりに突然の出来事に猫は状況を理解する力が追いつかない。 「この怪談は物騒すぎる。だからこの怪談は――」 猫に言葉が放たれる。声の主は快だ。 いつの間にか猫の直ぐ目前にまで接近していて、さらには武器を振りあげた状態であり、 「ここで、終わらせるっ!」 決意に近い声と共に振り下ろされる武器。 溜めに溜めた膂力を利用したその一撃は、猫に向かって全力で振り下ろされた。激しい激突音と共に影がまた一つ終わりを迎える。 「鳥、猫と来たら次は……!」 モノマが地を蹴り、目標の敵へと向かう。敵は後二体。カイが相手をしている人型と、 「犬だ!」 防戦に徹していたツァインが言葉を放ち、武器を改めて構えなおした。防御の構えから、攻撃の構えへとだ。 「やってくれたな……倍返しだっ!」 言葉と共に放つ攻撃。犬の足を狙い、力を込めて薙ぎ払う形で剣を振るう。 「グ、ル、ルゥ!」 対して犬も行動した。ツァインの薙ぎ払いに対して上に跳ぶ事によって攻撃をやり過ごしたのだ。そして再び脚が地面に着いたと同時に今度は前進を試みる。 口を大きく開き、黒い牙を晒しながらツァインの腕に噛みつく――寸前に。 「チッ!」 と、ぶっきらぼうな声を放ちつつも、魁斗がツァインをかばうために前に躍り出る。 腕に鋭い痛みが走る――この犬も先程同様に食い千切ろうとしているのだろう。だがそうはいかない。 「――斬り裂けぇ!」 魁斗の腕に噛みついている犬を振り落とすため、モノマが脚で半円を描く。暗視を持たない彼にとって、視界は最悪だ。だが、最初にぶちまけた蛍光塗料はまだ有効であり確かな目印として残っていた。 「まだまだぁ――!」 モノマの攻撃に続く形でツァインも再び攻撃を放つ。 二方向から同時に来るソレに対し、犬はどうしようもない。思いっきり腕に噛みついてしまったが故に、腕から離れるのにも時間が一瞬だが余計に掛ってしまうからだ。 「じゃあな。犬野郎――とっとと逝けや」 噛まれている魁斗は痛みを堪えながらも勝利宣言を行う。 その宣言は僅か一秒後に宣言では無く、事実となった。犬の首が切り落とされたからである。 これで、後は一体。だが皆消耗が中々に激しい。敵の攻撃を受け持っていた前衛組は特にだ。 「故に……」 シエルの声が響く。紡がれる言葉は詠唱であり、歌でもあった。 何かに呼びかけるかのような言葉の羅列――それは、傷付いた者達の疲労を癒していく。 「私の命が続く限り……皆様への癒しの祈りは意地でも止めません……!」 「そうだね……もう少し、なんだから……!」 暗闇に近い空間に、立つ影がある。 先程負傷した斬乃だ。噛まれた肋骨部分からは出血も始まっているが、無理やりに片手で押さえチェーンソーを担ぎあげて人型の影を見据えている。 「さーあ……さくっとやっちゃおうか!」 「では、援護します!」 弾倉を入れ替える音と共に、モニカが銃口を跳ね上げて弱点である頭部を狙い引き金を絞り上げる。 射撃音。 その音を皮切りとして斬乃が影へと接近を行う。身を低くし、チェーンソーを肩に担いで跳ぶように脚で地を蹴り上げる。 「ガ――ケケケッ――!」 人型が右腕を振り上げながら笑う。いや、笑っているのかすら定かではないが、そのように感じ取れる“声”を発した。 人型の顔の頬をモニカの銃弾が抉り取る。だが止まらない。向かってくる斬乃に対し、右腕をただ力任せに振り下ろす。 「影は影に――」 故にかわせる。ただ振り下ろしただけの拳など怖くは無い。かわした。 体勢を低くしていた斬乃は右足を人型のすぐ斜め前に置き、そこを支点として体を持ちあげる。 「怪談は怪談に――」 肩に担いだチェーンソーを振るい、人型の顔にぶち当てた。 そして左足はそのまま影の背後付近へと通過させ体重をそこに乗せれば思いっきりチェーンソーを―― 「――帰って!」 振り抜いた。 影は頭部を斬り裂かれ、そのまま数度の痙攣の後、床に勢い良く倒れこむ。 ――今宵、ここに人食いの影は潰えた。 ●影は動かず 影達はその後、風船が破裂したかのような音を鳴らし消滅して行った。 これで、この学校に人食いの影が出る事は無くなるだろう。体育館の外に出てみれば、空はいつの間にか晴れていて半月がしっかりと見えていた。 「あー……疲れた、厄介な相手だったぜ」 「本当に……疲れたな……」 体育館から出るとツァインと快は床に座り込んだ。 緊張が解けて、疲労が出てきたのだろう。他の面々も一様に疲れた顔をしている。 「すまん! 俺はもう我慢できねぇっ! 帰って一服するぜっ! おつかれっ! またなっ!!」 「俺もちょっと一服してくるかねぇ……体育館じゃ吸えなかったしな」 モノマは校門に向かって走り抜け、それに続く形で魁斗も傷口を庇いながら校門へ向かう。 疲れはあるだろうが、我慢していた物があったのだろう。学校内で吸わなかったのはよく耐えたというべきだろうか―― 「私達も帰りましょうか。ある程度回復したとはいえ、負傷者も居る訳だし」 凪沙は周囲に視線を巡らせながら提案する。 「そうでありますね。斬乃様、大丈夫ですか?」 「うん、私は平気だよ。……骨折れてる事を除けば」 苦笑いをしながら斬乃は傷口を押さえている。シエルの詠唱により僅かながら回復してはいるようだが、やはり完全には回復していないようで。 撤収を始めたリベリスタ達。そんな中、シエルは一旦立ち止り、ふと思い出したように影を見ながら跳び跳ねると、 「……私の影は、動きませんね……」 影の動かぬ事に安堵し、軽く微笑みを見せる。 言葉は続く。先行くリベリスタ達の背中を見据え、早走りで追いかけながら、 「……これからも、宜しくお願いしますね」 呟くように、影へと向けて。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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