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KINOTAKE WAR

●それは正に戦争
 その戦いは遥か昔から続いていた。
 何のために行われていたのか? もうその理由を覚えている者はいない。
 いや、必要ないのだ。互いの中にあるのはもはや“敵”に対する憎悪のみ。

 憎い、憎い、憎い……ああ憎い。
 目の前に存在する奴らが憎い。邪魔なのだ我らと似た姿をして何のつもりだ気に入らん。
 故に滅ぼす。貴様らそこで果てるが良い――

 呪詛に近い歪な想いはやがて確固とした形として顕現し、存在そのものを変質させていく。
 優しさ? 愛? なんだそれは犬にでも食わせるが良い。

 見つければ潰す。
 逆らえば潰す。
 煩わしいのだよ。劣等の分際で、我らに楯突くとはいい度胸だ――潰してやる。

 互いが互いを憎み、似通う想いを抱いて闘いは激化する。
 恨・怨・憾。
 心中に残った感情は全てが負の要素。要約すれば、二文字で片がつく。

 ――憎悪――

 要らぬ要らぬ要らぬ理由など要らぬ要らぬ要らぬ。
 憎い憎い憎いだから潰す潰す潰す。
 さぁ消えろ。貴様らの体、何一つとしてこの世に残して成る物か……

 今日も今日とてまた始まる。二つの種族による激突は必至。
 止めれず止まらず止まろうともせず、目の前の敵が消えて無くなるまで続くその潰し合い。
 しかしあぁ一体何の因果か。それとも運命の悪戯か。
 まさに接敵しようとしたその瞬間――彼らは“穴に落ちた”。

●アレだよアレアレ。あの戦争
「諸君、緊急の案件だ。アザーバイドがこの世界に降り立つのを万華鏡が確認した。すぐに現場に急行してもらいたい」
 僅かながら焦った口調で『ただの詐欺師』睦蔵・八雲(nBNE000203)は言葉を紡ぐ。
 それはつまり急を要するのだろうか。リベリスタ達は集中して耳を八雲の言へと傾ける。
「降りてくるアザーバイドは二種。数はおよそ100を超えており、双方ともかなり興奮しているのが確認された。元の世界では何が原因かいがみ合っていたようだが……まさか、別世界に降り立っても気にせず抗争を続けるとはな。相当に根が深いらしい」
「で、俺達はそいつらを討伐すればいいのか?」
 ああ、と八雲は言葉を続け、
「場所はある都市の付近だ。幸いな事に人の集中する場所ではないが……放っておけば間違いなく都市中枢部にまで被害が及ぶ。それは避けたい」
 逆に言えば今なら被害は軽微に。その上で事態を収める事も可能と言う訳だ。
 では後は一体敵とどう戦うべきだろうかと、戦闘の進め方に思考を置き始めたリベリスタ達……だったが、話はまだこれで終わりでは無かった。
「ああそれでだな。敵の姿なのだが――よく聞いてほしい。その姿は此方側の世界におけるある“野菜”の姿に酷似している事が確認された」
 野菜の姿? と首をかしげるリベリスタ達。
 一体どの野菜に似ていると言うのだろうか。トマトか? ニンジンか? いやそれとも――と想像を膨らませているリベリスタに告げられた二つの野菜の名前は、
「一種は“タケノコ”、そしてもう一種は“キノコ”に酷似している事が確認され――」
「ストォォォォ――ップゥ! 待て、待て! それ以上はいけない!」
 なんだろう。どこかで聞いた事のある組み合わせだ。
 いや恐らく気のせいだろう。仮に、仮にだがそうだったとしても、まさか異世界でもいがみ合っている状況があるなんて、そんな事ある筈が無い。――と、そう思いたいが。
「どうかしたのかね諸君。……あぁちなみに私はタケノコの方が好きだが何か?」
「いや好みなんて聞いてないから! ていうかお前、分かって言ってんだろ!」
「さぁて何のことやら? 私はタケノコが好きと言っただけではないかフフフ……」
「こ、この野郎……!」
 明らかに何かを含んだ言い方だがここでキレても仕方ない。それよりも目前の事が大事だ。背後の方では「実は俺キノコの方が……」「んだとテメェ! タケノコ派の俺を敵に回したなコラァ!」という声と共に乱闘が始まった様な気配があるが無視だ無視。コアラが至高だろどう考えても。
「まぁ各々嗜好の違いはあるだろうかひとまずは現場に急行してくれたまえよ――こんな所で乱闘してないで」
 お前の一言が原因で始まったんだろうがぁ――!


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:茶零四  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年01月14日(土)22:36
 キノコとタケノコ、どちらが好きですか?
 さ、敵の情報です。某あの戦争とはなんの関係もありませんよ! 多分!

【勝利条件】
 アザーバイトが都市中央部に辿りつく前に殲滅。

【戦場】
 ある都市から少し離れた林の中。
 草が覆い茂っており、足場はあまり良くないです。でも逆に言うとそれだけです。
 
 実は今回の依頼では“戦場が移動しつつあります”。正確にはタケノコ・キノコが移動しながら闘っているためです。
 リベリスタ達の介入によって移動をそれなりに食い止める事が出来ますので、なるべく早めに介入するのが吉と思われます。一応、都市部に到着しても中央部到着までは“3ターン”猶予があります。
 ちなみに、都市部では足場は完全に安定します。

【敵情報】
 面倒くさいぐらい数が多いです。双方合わせて100は超えてます。ですがこれ以上増える事は無い上に、両方とも潰し合っていますので実際に100の数を相手にする訳ではありません。

【キノコ種族】
 タケノコ種族と血みどろの戦争を続けてるアザーバイド。防御力に優れる。
 戦争の理由? しらねぇよそんなモン!(キノコA談)
 全長1m程の大きなキノコ。某お菓子に似てる気がしますが、気のせいです。気のせいです!

 使用スキル
・自動再生:1ターンにHP100回復。
・キノコクラッシャー!
 ! までが名前。「キノコクラッシャー」じゃない。「キノコクラッシャー!」
 物近単。全体重を乗せた一撃が相手を襲います。
・キノコシューテイング!
 ! までが名(以下略。
 物遠単。全体重を乗せて遠くの敵へと襲いかかります。

【タケノコ種族】
 キノコ種族と血みどろの戦争を続けてるアザーバイド。攻撃力に優れる。
 戦争の理由? そんな事より戦争だ!(タケノコA談)
 全長1mの大きなタケノコ。某お菓子に似てる気がしますが、気のせいです。気のせいだってば!

 使用スキル
・自動再生:1ターンにHP100回復。
・タケノコスパイラル!
 ! までが名前。「タケノコスパイラル」じゃない「タケノコスパイラル!」
 神近単。激しく回転しながらの一撃は、相手の体を穿ちます。
・タケノコシューテイング!
 ! までが名(以下略。
 神遠単。激しく回転しながら遠くの敵へと襲いかかります。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
ティセ・パルミエ(BNE000151)
デュランダル
四門 零二(BNE001044)
クリミナルスタア
桐咲 翠華(BNE002743)
マグメイガス
リウビア・イルシオン(BNE003100)
スターサジタリー
リィン・インベルグ(BNE003115)
インヤンマスター
高木・京一(BNE003179)
クロスイージス
高藤 奈々子(BNE003304)
ソードミラージュ
佐倉 吹雪(BNE003319)

●KINOTAKE WAR
 戦端は既に開かれていた。
 雄叫びが聞こえ、争いを求める声がそこかしこから響き渡る。世界が変わっても関係無い。ただ踏みつぶすだけだ。
 憎悪の嵐を糧にして二つの種族が激突する――その現場にて、
『――!』
 筍達の足元から炎が巻き上がった。
 呑み込む動きだ。複数の筍が身を焼かれ焼き筍……もとい、その身を激しく焦がせば、
「アーハッハッハ! 燃えよ筍! 加勢するわよ茸衆!」
 上だ。木々の間から、飛び降りてきた存在が居る。
『ぺーぱーまじしゃん』リウビア・イルシオン(BNE003100)だ。激しい着地音と共に、戦場の真っただ中に彼女は現れた。そう――
「大丈夫、目を見るだけで分かるわ! リウと貴方達は違う存在だけれども……心に秘める“物”は同じよ!」
 ――茸ハットを身につけて! 某お菓子に似ているデザインの様な気がするが多分気の所為だろう。うん。というかまさかこの為にわざわざ用意したのだろうか。彼女の茸に対する思い入れの一端たるや凄まじい……!
「うむ。諸君らにとっては微力だろうが……故あって助太刀させてもらう! 共に行かん! 茸のや――」
 言葉の途中。『闇狩人』四門 零二(BNE001044)は突如として咳払いを一つ。危ない危ない。色んな意味でこれ以上は危ない!
 全身に闘気を漲らせ改めて気合いを入れ直す。その手には茸型のお菓子が掲げられていて。
「――じゃない、茸を愛する者達よ! 共に行こう! 茸に勝利を!」
「はいはい。こんな戦い……さっさと終わらせるわよ?」
 恩師の使用していたナイフを携え、『銀猫危機一髪』桐咲 翠華(BNE002743)もまた、茸側の後方より姿を現した。狙うは前面、筍である。さりとて彼女の心は茸にあらず。むしろ、
 ……ま、どうでもいいけど私はむしろ茸よりもキ○トカ――
 CUT。ウエハースにチョコレートが塗られたお菓子を思い浮かべただけだが念のために途中でCUT。あれ、でもCUT出来て無い? ともあれ、
「茸を愛する者、高藤とその仲間……憎き筍どもを粉砕すべく……」
 声が聞こえる。これはいわゆる口上だ。戦の前に述べられる己が意思。己が決意、己が進むべき道をハッキリとさせるために紡ぐ言葉。
 意味は一つ。筍滅すべし。茸に栄光を。
「義によってッ助太刀させてもらうッ! 筍、覚悟ォ!」
『似非侠客』高藤 奈々子(BNE003304)――ここに推参。
 異世界言語スキルを持つ彼女の言は茸達の耳……耳? に抵抗無く受け入れられた。その結果から導き出される茸達の結論は、ただ一つ。
 ――あぁこの者達は志同じくする同志なのだな。
 と言う事だ。そも、茸達の敵は筍である。似たような姿をした、似て非なる種族。茸達はそんな彼らだからこそ気に入らないのだ。ならば人は関係無い。邪魔をするなら別だが、協力してくれるのならばどうでも良い。
 とにかく筍だ。筍滅ぶべし。筍死ぬべし。パサパサしてんだよお前ら。
 さらなる憎悪と共に、人の力を得た茸は進軍する。だが、
「ちょ――っと待ったぁ!」
 進軍した茸の一つが――宙高く、殴り飛ばされた。
 落下する茸。その巨体が地に音を響かせ倒れる原因となったのは『おこたから出ると死んじゃう』ティセ・パルミエ(BNE000151)の一撃だ。先の四人と違い、彼女は筍側に立っていて、
「敵は茸! 義は茸にあらず、筍にありッ!」
 彼らとは真逆の言葉を口にした。救うべきは茸では無く筍と。
「あぁ全く……負けてられないよね。茸とか筍とか言う話で――さっ!」
 その上で続く言葉は『大人な子供』リィン・インベルグ(BNE003115)。掛け声と共に矢を放ち、茸の体を穿たんとする狙いだ。光を纏い、光弾と化した矢は固まる茸群を残らず捉えて、
『Ooooooo――!』
 炸裂した。茸の絶叫が林に響き渡り、倒れ伏して大地を舐める。
「異世界でも忙しい連中だな。ま、俺は筍派なんで茸の連中には悪いが……」
『(自称)愛と自由の探求者』佐倉 吹雪(BNE003319)が行く。右の足を踏み込み、リィンの攻撃で倒れた茸が立ちあがろうとする動きに合わせ、己がナイフを茸の柄に差し込み、
「砕けろ茸!」
 咆哮一閃。ナイフを支点とし、茸の巨体を強引に持ち上げれば、即座に蹴りを叩き込んだ。
 傘と柄の境界線から、茸がその言葉通りに砕け散る。
「……流石菌糸類。木に寄生していないと生きてはいけない存在なだけはありますね――実に、脆い」
 その様子を見た『子煩悩パパ』高木・京一(BNE003179)は守護結界の魔法陣の残滓を残しながら、茸の挑発となる言葉を重ねる。一時的とはいえ茸派の者達と敵対するような事になるが、
 ……仕事は割り切りが大事、ですね。
 心中で区切りはしっかりと付けている。個人の感情と公的な役割は別であると、そう言う事だろう。
 ともあれ、だ。筍陣営も自身達にとっての味方が現れた事を把握したらしい。彼らもまた、茸同様に人に興味は無い。如何にして茸を潰すか、それこそが一番重要だからだ。
 茸死すべし。茸滅ぶべし。食べにくいんだよお前らと呪詛を唱えている程に。
 もっともリベリスタ達は茸、筍に分かれて各々本気で味方している訳ではない。あくまでも作戦だ。まともに100を超える数にぶつかれば単純に考えても12.5:1の戦力差。かなり厳しいと言わざるを得ない。だからこそ潜り込こみ、戦力の消耗をコントロールして漁夫の利を狙おうと言う訳だ。
 危険な策ではある。普通ならば成功する確率は低かっただろう。
 だがこの種族達の憎悪、並大抵の物では無い。

 恨・怨・憾。

 それで心の全てを塗りつぶされている程度には。だからこそ潜り込みは成功したのだ。リベリスタ達の事など、“些事”であると思われているから。重要なのは唯一つ。“敵”の殲滅のみ。
 三者三様の思惑はそれぞれに、闘いはさらなる激化の様相を見せていた――

 ……でもこの戦いどうシリアスに見ても茸筍戦そ(以下略)

●KINOKO――!
「数が多いとあんまり狙う必要が無くていいね。堕ちろ茸!」
 光弾。再び放つリィンの技だ。纏まった茸集団を狙い、彼は攻撃を集中させていく。
 あちこちで茸と筍の闘いが展開されている為、乱戦状態に成っている場所もあるが、それでも筍茸筍茸筍茸……と見渡す限りアザーバイドだらけ。その中から纏まっている群を見つけるのはそう困難な事では無かった。
「本当、的が多いから当てるのは簡単よね。茸も筍も私から見たら同じ様な物だし……多ければ良いってわけじゃない事――教えてあげるわ」
 さらにそこ。リィンの矢には当たらぬ様にナイフを放るは翠華だ。右手に握るナイフを左肩の辺りから前方へ、円弧の形を描いて複数投擲する。意識を集中させ、蜂の様な鋭さを持って投げ放たれたそれらは風をも切り裂いて筍達の柄を切り裂いた。
『――!』
 しかし茸の負傷を筍は見逃さない。己が全身をバネにして、茸に突進する――タケノコスパイラル! だ。激しい回転を茸の柄に捻じり込めば、茸が四散する。そう、それはまるでお菓子のクラッカーが砕けたかのように!
「だが甘いッ! 甘い甘い甘いぞ筍! まるでミルクチョコとビターチョコを二層重ねにしたかのような甘さだぞ筍諸君――!」
 零二だ。茸を破砕し、優越感に浸った筍に全身のエネルギーを溜めての剣撃。大上段からの振り下ろしとなった一撃は筍の体を真っ二つに切り裂いた。まるでチョコとクッキーが砕かれたかのような音を残して!
「フフ残念だったわね……里ならともかく山の領域たるこの地で筍が勝てる道理は無いわ! サクッとした触感に加えて持ちやすさすらある茸の勝利は最初から決まっていたのよ!」
「その通り! 手で持ち食べる事の出来る茸と比べて地に立つしか能の無い筍……チョコに変な粉掛ってるし、運送途中に壊・れ・て・るんじゃないのー? 闘う前から負けてる筍と違って、茸の方が格別に美味しいのは確定的に明らかッ! さっさと山から出て里に帰るがいいわ――!」
 奈々子にリウビアが筍への明確な挑発と共にさらに続いた。別にここは山でも里でも無くただの林なのだが、そこいらは彼女らも承知の上だろう。それよりも明らかに目の前の茸筍ではなく別の茸筍に向けて言っている気がするが、まぁ気のせいだ!
 激しい銃弾が筍を撃ち抜き、炎が吹き荒れる。その、隣で。
「はああああ!? 何言ってるのですか! 茸とか上と下がすーぐもげるじゃないですか! 筍の方が売上高大きいらしーし! 味の面で上だし何一つ負けてませんよ――! ていうか……」
 行く。ティセは反論しつつ、茸の至近へと接近して、
「茸って…… キ モ イ よね――!」
『Oo――!?』
 思わず茸が声を張り上げたがティセに意味は分からない。故、炎を纏った一撃を無慈悲に相手へと叩き込んだ。――すると、先に吹雪が攻撃した時と同じく、傘と柄の境界線から茸そのものが砕け散る。成程これはまさしく“もげた”状態だ。実際こんな風に割れるよね!
「しっかしこれは……数自体は順調に減ってると見て良いのかね?」
 幻惑を生み出し、茸へ翻弄を誘いながら吹雪は呟いた。
 数。彼の目から確認できる範囲での話だが――確実に、減っている様に見える。
 だが熱気は依然として変わらずだ。いや、むしろ激しくなっている。もし彼らに目があればその色は赤色だった事だろう。うん、どこぞの蟲ではないが。
「なんとか都市部到着までに殲滅したいところですが……ま、今は一体一体確実に潰して行きましょうか!」
 符を用いて作りだされた鴉を京一は勢い良く飛ばす。複数攻撃スキルを持たぬが故に、彼は各個の確実な撃破を望んでいるのだ。茸を啄ばむように攻撃する鴉はまるで捕食者の様にも見えて――
『OOOOO――!』
 その時だった。茸が天高く、吠えた。
 今のが一体何だったのか。正確に理解する事が出来たのは彼らの言語が理解できる奈々子だけで、
「来るわよ……! 皆、構えて!」
 言った直後。茸達が一斉に敵へと向かって動き出した。
 茸達の――総攻撃だ。

●TAKENOKO――!
「くっ――攻撃が激しくなってきたね!」
「茸の攻勢……勝負を掛けてきたのかな……!?」
 ティセにリィンが茸達の攻撃の波を辛くも捌く。全身で突っ込んでくる茸達の一撃を躱し、受け止め、決して倒れるのだけは避け続けた。
 ……とはいえ中々厳しい事に成ってきたねこれは……!
 リィンは思考する。足場の問題は動きやすい運動靴を履いて何とかなっているが――都市部への接近が止められない。出来うる事なら都市部とは真逆の方向へ誘導したいところだったが、
「流石に進行を遅らせる程度が限界って所だな……と、危ねッ!」
 遠方より突如として跳ねてきた茸を、吹雪は反射的に盾で弾いた。
 都市部以外への誘導。成功すれば時間制限が無くなるが――前述したように初期の戦力差は12.5:1。リベリスタ勢を12倍も上回る数とそれらが闘う戦場をコントロールし、都市部への接近を防ごうと言うのは、流石に無茶があった。リベリスタ達の介入によってある程度留める事は出来ているが、それが限界。
「それにしても戦況はどうやら茸側が優勢みたいだね……くやしいっ!」
 ティセだ。速度を生かして戦場を駆け巡っていた彼女の言う通り、戦況は茸優勢。
 理由としてはリベリスタの存在がやはり大きい。特に、茸リベリスタ側に範囲攻撃持ちが多いのも重要な理由だろう。自動再生を上回り、範囲攻撃を集中させれば数は素早く減り続ける。茸の数が若干多いが、もはや双方合わせても数は30~40程度となっていた。
「都市部に近くなっています……機を見て双方一斉に攻撃を開始するタイミングを――」
 そして京一が視線を向けた先、そこには守るべき都市が近付いていた。
 まだ少しばかり距離はあるが、戦闘開始時よりも大分近くなっている。そろそろ殲滅の機会を見極めねば――そう思った、その時に、
「――ぐぅ!?」
 背に凄まじい圧力が加えられた。――茸だ。
 乱戦に紛れて背後に回った一撃は京一の身に重くのしかかる。筍の味方するなら死ぬべしと、茸は全力で押し潰しに来ていた。
 俗に言うこれがキノコクラッシャー! である。
「全く……生物界の序列において、下の存在が下克上を狙って攻撃するなど、お腹が痛いです――ねッ!」
 しかし倒れない。否、倒れる筈の運命を押しのけたのだ。京一は左手に符を携え、身を捻らせる。
 茸が正面に映った。攻撃を受けた背側の脇腹が悲鳴を挙げるが、知った事では無い。故に、即座に符術を叩き込む。ゼロ距離と言っていい超至近距離にて鴉が生成され――茸の身を喰い破った。
 さらに、それだけでは無い。
「気は進まないけど……そろそろ頃合いなのね」
 引き金を絞り上げる音と共に、奈々子が銃弾を放った。
 しかし狙いは筍では無い――茸だ。接近し、傘の根元にしっかりと撃ち込めば、茸が例の如くの形で砕け散る。
 裏切ったのか貴様――と茸達は慌てた様子でリベリスタ達を敵と認識するが、もう遅い。
「裏切り? 勘違いしては駄目よ。私達はね――」
 翠華は不敵な笑みを携えて、無情にも先程まで味方していた茸達に、告げた。
「最初から、貴方達の敵なのよ」
 言い終わると同時に無数のナイフがアザーバイドの区別無く、降り注いだ。
 茸も筍ももはやこの段階に至っては関係無い。この世界を守るため都市に近付けさせる訳にはいかないのだ。
「うぉぉおおおお! 今こそ引導を渡してくれる! 茸でも筍でも無い。至高は遥か昔より唯一つ、あるふぉT000000だぁ――!」
 O(オー)じゃない。0(ゼロ)です。何も 問題は 無い!
 心の底からの雄叫びを発し、零二は幻影と共に行く。
 残存のアザーバイド達を削り、至高の一品はお前らでは無いと刻みつける。
「同志が倒れるのは悲しいけれど……仕方ないね!」
 そして筍側として立っていたリィンもまた、筍をも敵として捉え、矢を放つ。
 純粋な筍派である彼にとっては同志を討つのには涙が流れるが……これって、戦争なのよね。
「御免なさいねマッシュ。貴方にも帰りを待つ家族が居たのかもしれない……」
 涙を流すのはリィンだけでは無い。倒れた茸を前にリウビアもいた。
 キノコハットを深く被り目を伏せて――しかしその一瞬の後に近くに存在していた茸集団に炎を展開。纏めて焼き払って、
「だ が 死 ぬ が い い。
 貴君らには二階級特進の上、シリウス勲章が与えられるわ。貴方達と闘えた事は光栄に思う。筍ニ慈悲アレ、茸ニ栄光アレ」
 正に阿鼻叫喚。この状況で、茸と筍が協力し合いリベリスタに集中攻撃を掛ければ逆転は可能だったかもしれない。
 だがその手段は取られなかった。リベリスタに対する抵抗は散発的で、効果は非常に薄い。
 あまりにも強すぎる憎悪。
 それがあったから彼らはリベリスタの潜り込みをどうとも思わなかった。重要なのは己と似た姿をした“敵”だから。
 彼らにとってリベリスタ達は眼中にない。故に潜り込みは成功し、故に彼らは今敗北する。
『OOOOO――!!』
 憎しみに満ちた悲しい叫びが――都市到着寸前の道脇にて、完全に途絶えるのだった。

●戦争終結……って、あれ?
「ふぅー……ようやく終わったみたいだな……」
 肩で息をしながらも、重傷と言える傷はギリギリ無い吹雪。
 周囲には大量の茸筍の死骸……もとい残骸が転げているが今更気にしない。その内土に返るだろう。
「もう少し彼らが話を聞いてくれれば別の展開もあったのかもしれないけど……言っても詮無き事ね。リウさん、帰りにお菓子でも買って帰りましょうか」
「お、良いね――! 勿論買うのはアレだよね?」
 茸派閥たる奈々子とリウビア。帰りに買うのが何なのか、大体予想が付く。茸と言えば、アレしかない。
「あいたたた……ああそう言えばペットボトルとお菓子を買って来てましてね――皆さんどうですか?」
 負傷した脇腹を押え、京一は予め用意していたお菓子を配り始めた。それは茸と筍が表に描かれた某なんとかかんとか――商品名は秘密である!
「フ、フフフ……茸派の方々とは帰還した後、ゆっくりと話しあう必要がありそうだね……!」
「ひょっとすると帰ってから第二ラウンド開始かもしれませんね。ここでの戦争は終わりましたけど……私たちのKINOTAKE WARはまだまだ続くのです!」
 リィンにティセ。筍派たる二人は何か闘志を燃やしていた。
「この調子じゃ、今度は赤い狐と緑の狸の大群がやってきそうね。…………あれ? もしかして今のフラグかしら……?」
 そんな様子を見て呟くは翠華。何気なく発した言葉は何やらフラグのようだったが、どうなるのだろうか。茸と筍が来たのだ。本当に来襲しそうで何やら怖い。
「ハッハッハ。しかし、なんだか懐かしいな……。私が子供の頃、あれらが一つのお皿に同居していた姿に……随分とワクワクしたものだよ」
 いつの日だったか。零二は昔の己を思い出し、目を閉じる。茸と筍、それらがお皿の中に仲良く纏まっていた様子を思い起こしながら。
 なにはともあれ、第一次KINOTAKE WARは――ここに、終焉を迎えたのだ。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 はい、お疲れ様でした! 
 KINOTAKE WAR。ここに終戦です! でも異世界だとまだまだ続いてます。機会があればまた来るかもしれません。

 途中途中シリアスになったりギャグになったりと二転・三転しましたが結果はこのように成りました。もう少しギャグに走りたかった……のはともかく、“潜り込む”という戦術は中々に良かったと思います。彼らの心中は憎悪で染まってるので、リベリスタ眼中にないです。よって潜り込むのは容易い事でした。

 茸と筍。両方美味しいですよね。あなたはどっちが好きですか?