赤い月の夜に訪れた、ジャックとアークの一大決戦。 それは横浜市の三ツ池公園に『閉じない穴』が開き、『バロックナイツ第7位』ジャックが倒れるという結果に終わった。終わった、というのは正しい表現ではない。ここから全てが「始まる」のだ。 そして、『閉じない穴』を擁する三ツ池公園は、上位世界の影響を受けやすい、不安定な場となってしまった。アークとしては、ここから現れる危険なエリューション、アザーバイトを止めなくてはいけない! ●三ツ池公園特別任務 「皆さん、先日の戦いではお疲れ様でした。本来であればもっとゆっくり休んでいただきたいところですが、早速新たな事件が起きてしまいました」 ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達に、『運命オペレーター』天原・和泉(nBNE000024)が申し訳無さそうな顔で事件の発生を告げる。 「今回起こった事件は、それこそ三ツ池公園の戦いに関わるものです。あの戦いのことは、皆さんご存知かと思います」 その言葉に何人かのリベリスタが頷く。まだ戦いからそれ程の時間は経過していない。それぞれ胸の中に思う所はあるのだろう。 「儀式によって開けられた『閉じない穴』。そこから現れたアザーバイトの討伐を、皆さんにお願いします」 スクリーンに現れたのは、まさしく異形の怪物だった。文字通り「異界の魔物」という表現がふさわしい。 毒々しく黒く光沢のある皮膜に包まれた、3mほどの巨大な眼球といった姿をしている。瞳の裏側には触手がうねり、その瞳の下には不気味に牙を生やした口があるのだ。加えて言うなら、触手の先にも眼球がついているものがあり、ぐりぐりと蠢いている。滑稽な姿にも思える一方で、逆におぞましさを感じさせる。 「これが現れたアザーバイト、”邪光(じゃこう)”です。今までに観測されたアザーバイトの中でも、強力な部類に入るでしょう」 ”邪光”というのは、本来の世界で付けられた名前らしい。高く飛行は出来ないが浮遊移動するようだ。巨体にふさわしい耐久力と、噛みつきによる攻撃力。そこまでは想定の範囲内だ。和泉がそう言うからには、それ以上の何かを持っているのだろう。 「はい。”邪光”はその瞳に魔力を宿しています。中心部の巨大な瞳と、触手の先にある瞳それぞれに。そして、この効果は見つめるだけで影響を受けます」 中心部の瞳は特に強力な魔力を秘めており、視界内にいる相手全ての負傷回復を阻害してしまう。この効果に対しては、およそ抵抗は無理と思ってよい。一方、触手の先にある瞳の魔力は遠距離の相手1体にしか効果を及ぼさないし、抵抗の余地は十分にある。そして、触手の数は6本だ。 「触手の持つ魔力に関しては、別途資料に纏めておきます。気をつけていただきたいのですが、”邪光”はこれらの能力と同時に、牙での攻撃を行います。また、見た目によらず、高く邪悪な知性の持ち主です。これが外に出ると、どれ程の被害をもたらすか分かりません。可能な限り、仕留めて下さい」 和泉は表情を引き締め、リベリスタ達を送り出す。世界は大きく揺らいでいる。だからこそ、送り出すフォーチュナ達も強く心を持たなくてはいけない。 「それでは皆さん、気をつけて行ってきてください」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年01月11日(水)22:55 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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まったく、自分もついていないものだ。 まさか、あんな所に階層を繋ぐ『穴』が空いているとは。どんな所に向かわされるのやら。 お、どうやら出口のようだ。 おや、あれは『閉じない穴』じゃないか。何があったかは知らないが……面白そうだ。 うむ、せっかくだから、あの世界に沢山の邪悪をばら撒こう。それはきっと楽しい。 うふっ、うふっ、うふふふふ。 ● 新年明けてまだ間もない日。世間的には正月と言って、まだのんびりとしていても良い頃だろう。10人のリベリスタは三ツ池公園に集まった。まだ冷たい風が吹く季節とは言え、これが行楽のためであったらどれだけ良かったか。 まだ1月と経っていない、あの赤い月の夜。『バロックナイツ第7位』ジャックとの戦いの結果、三ツ池公園は空間としてとても不安定な場所となってしまった。現在向かっているのは、そこから現れる邪悪なアザーバイト、”邪光”を倒すためなのだ。 「……まだあの戦いは終わりきっては居ないんですね。まったく、新年早々仕事が多くて結構な事で。では、速やかに排除しましょう」 『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネット(BNE002439)が皮肉を込めた口調で呟く。そのクールな顔にはうっすらと怒りが滲み出ている。 「全く次から次へとお正月返上状態だよ。まあ愚痴っても仕方ないね。」 『いつも元気な』ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)も苦笑でレイチェルに応じる。異界から来る相手にとっては、こちらの都合などおかまいなしだ。であれば、少しでも早く解決して、平和なお正月の時間を確保するしかあるまい。 その言葉に、手元の苦無の様子を確認していた『燻る灰』御津代・鉅(BNE001657)は肩を竦める。よれよれなコートを着込んでするその仕草は妙に似合っていた。 「まったく、歓迎する気もない客に対して玄関が開かれたままというのは厄介なことだな。狙ったように面倒な客人ばかりが遊びに来る」 「それにしても、穴からヤバいのが来るってのは聞いてたが……またえらいのが現れやがったな」 和泉から受けた説明を思い出す『蒼き炎』葛木・猛(BNE002455)。まだ情報でしか知らない敵の姿を想像し、身体を震わせる。だが、その少年の表情に笑みが浮かんでいるのは見逃せない。心のどこかで強敵との戦いを楽しみにしているのだ。 「昔、ゲームで似たような姿の敵を見たことがありますが……凶悪な相手である事に変わりはありません、力を尽くして挑むとしましょう」 物語がときとして真実を言い当てることは、神秘の世界において珍しいことでは無い。あるいはどこかで伝わった神秘の知識が形を変えて紛れ込んでしまったのか。何にせよ、そこで敵を侮ったりしない、源・カイ(BNE000446)の考え方は全く以って正しいと言えよう。 そんな話をしていると、先行して偵察をしていた『ディレイポイズン』倶利伽羅・おろち(BNE000382)と『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)が戻ってくる。今までショットガンを構えて、警戒度を最大にまで高めていたエナーシアは、仲間の姿を見てほぅとため息をつく。彼女らは今の三ツ池公園を安全な場所とみなしてはいない。フォーチュナからの情報に無かったとは言え、先の戦いで取りこぼしたエリューション、新たに現れるアザーバイト、そして余計な闖入者。何が現れるのか分からないのだ。警戒しすぎて警戒しすぎることはあるまい。 「結界も張っておいたわ。これで余計な子猫ちゃんが紛れ込むことはないわねん」 艶やかに笑うおろちだが、その目は笑っていない。ターゲットである”邪光”の特殊能力に警戒して、対策は取ってある。だが、相手にそれを乗り越える”何か”がある可能性を否定しきれない以上、安心などは出来ない。 「助かるぜ。それじゃあ、そろそろ奴もご到着の時間だ」 愛用の斧、グレイヴディガーを取り出す『悪夢と歩む者』ランディ・益母(BNE001403)。 その精悍な顔に浮かぶのは、憂い。悔しさと言っても良いだろうか? あの赤い月の夜、アシュレイと対峙しながら、むざむざ逃してしまった責。それを果たすためにも、退く訳には行かない。 と、その時だ。 レイチェルの耳がびくんと震える。アザーバイトの発する、邪悪な気配を感じ取ったのだ。 お互いに顔を見合わせるリベリスタ達。 すぐさまに体勢を整えると、それから程無くして、「それ」が現れた。 ● リベリスタ達皆が有する、フェイト。それは世界異分子であるリベリスタ達が、世界に受け入れられたことを示す。それだけでなく、ときとして運命すら捻じ曲げる、凄まじい力を発揮するものだ。 そして、今日。リベリスタ達は、自分達がフェイトを得たことを感謝することになる。 極寒の地に投げ出された中で、救出され、温かい暖を取れたというのが、近い表現であろう。それ程までに、アザーバイト”邪光”が発する魔力は強力なものであった。もし、ただの人であったのなら、この魔力の瞳に睨まれただけで、命を失っていたかも知れない。命を損なうまでは行かずとも、身動きは敵わなかっただろう。 そんな相手だからこそ、ここから逃がすわけにはいかない。 レイチェルの瞳が赤く輝く。自身の集中力を高めたのだ。”邪光”の恐ろしさは、その魔眼の力にある。それを見抜けなくては、敗北は必然だ。 その答えを聞くことも無く、カイは猛然と”邪光”への距離を詰める。これ程の強敵であるならば、重要なのは一手一手の積み重ね。それをカイは良く知っている。 その足元では影が伸び上がり、まるで意志を持っているかのように蠢いている。 そんな彼らの姿を見て、目玉の怪物は楽しそうに笑う。 そう、笑ったのだ。このような姿の怪物が笑う姿など、こんなにもユーモラスに、そして、醜く笑うなど、誰も想像しなかった。その嗤いはいたぶれる獲物を見つけたことに向けられたのだと、リベリスタ達は悟った。 そして、”邪光は”近づいてきたカイの身体に、その鋭い牙を突き立てる。 「クッ」 「きゃっ」 ウェスティアも軽く悲鳴を上げると、口から血を吐く。 これも”邪光”の瞳の魔力なのだろう。牙の鋭さも思っていた以上だ。 だが、そこでリベリスタ達に恐怖が浮かぶより早く、銃声が鳴り響く。 「迷い込んだ先で好き勝手に振舞おうとか随分な余裕なのね。覚えておいた方がいいわ邪眼の暴君さん、傲慢は常に破滅の一歩手前に現れるということを」 触手の1つに弾丸が食い込む。銃を撃ったのはエナーシアだ。一切の躊躇も無く、目玉を狙う彼女の瞳には、微塵も恐怖は無い。それに続いて、鉅は苦無を取り出すと、矢継ぎ早に触手に投げつける。すると、触手の1つが動きを鈍らせる。 「やはり、厄介か……。ならば、そこから落とさせてもらうぞ」 鉅が呟いたのは、動きを鈍らせた触手が、刺さっていた苦無を振り落とし、再び元気に蠢き始めたからだ。話に聞く、治癒の魔力を持つ瞳のせいだろう。 「積極的に使ったのは失策じゃないかしら? これで3つねん」 額から脂汗を流しながら、おろちが呟く。彼女が蛇の視線で探ったのは、”邪光”の視線の動き。誰に何が起き、どの瞳がどう動いたかを注意深く探れば、おのずと瞳の魔力の特定は叶う。もっとも、並みの知覚では困難と言わざるを得ない荒業だが。 「いえ、これで4つです」 淡々と告げるレイチェル。おろちは不敵な笑みを返す。 そして、それだけ分かれば、反撃を行うには十分な数だ。リベリスタ達は一気に攻撃を開始する。 「偶然来た相手に好き放題されるわけにいかないしね」 ウェスティアの手から血が零れ落ちる。それは少しずつ集まっていき、黒鎖となる。そして、出来上がった黒鎖は、”邪光”の五体を引き裂くべく、向かっていく。 これぞ、『葬操曲・黒』 マグメイガスのスキルにあっても強力なものの1つだ。 「グルォォォォォォオォォォッ!!」 “邪光”が苦しみの悲鳴を上げる。 その隙に回復を受けるカイ。幸いにして、ある程度の距離を取ると視線の魔力も弱くなるようだ。『嗜虐の殺戮天使』ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)が与えた鎧は、光とともにカイの傷を癒していく。ティアリアはひそやかにアザーバイトの醜悪な姿に心躍らせていたが、すべての者がそのように思うわけでも無い。 「悪趣味なんだよ、千切れろ!」 その向こうで、”邪光”に向かって斧を振るう。凄まじい剣風は、打撃となって邪悪なアザーバイトを襲う。だが、その程度では”邪光”は倒れない。底知れぬ耐久力に、無尽蔵の魔力。これこそが、鋭い牙よりも、魔力の瞳よりも強力な”邪光”の武器なのだ。 「だったら、纏めて焼き尽くしてやるさ、行くぜぇ──!」 雄叫びとともに猛は炎を纏った拳を放つ。だが、その一撃は最優先である回復の魔力を持つ瞳に届かず、”邪光”の身体を焼くに留まった。 その時、”邪光”の瞳に怒りが宿る。あえて平易な言葉に置き換えるなら、「イラッとした」といった風情だろうか? 自分の身体を炎に包んだ少年に視線を向けると、大きく口を開く。猛はかわそうとするが、足元が妙に鈍っている。そして、アザーバイトは苛立ちを晴らすべく、牙を振るった。 「これも必要な一手……です」 カイの身体がどさっと崩れ落ちた。 ● 「ルルルルルルルルルゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」 “邪光”が、雄叫びを上げる。何の意味を持つのか等、分からない。だが、リベリスタ達は感じていた。これは快哉の雄叫びだ。人の世界を踏み躙ることに、一切の呵責を覚えない魔王の、喜びの声なのだと。 “邪光”は喜びのままに魔力と牙を振るう。その度に、誰かが傷ついていった。 この雄叫びを聞いて、絶望するのは致し方無いだろう。それ程の相手なのだ。 この牙を前にして、諦めることに罪は無い。そうすれば、存外に見逃してくれるのかも知れない。 だが、ウェスティアの心には、ふつふつと怒りが湧いていた。感情を表に出すのでは無い。内側でふつふつと、マグマのように。こいつにだけは負けてはいけない、負けられないと、今決めた。 「上位の存在だからって私達を見下さない事だよ。犠牲を出してまで皆で守ったんだから……好き勝手させる訳にはいかないんだよ」 それは魔王の傲慢への怒りなのだろうか。それとも、三ツ池公園の戦いで散っていった命への悲しみなのか。どちらでもいい! 目の前の化け物を倒す力になるのならば。 ウェスティアは、手から伸びる黒鎖を束ね、思い切り”邪光”に叩き付ける。 「目玉野郎だか、触手野郎だか分らんが……こんな訳の解らん奴に負けて堪るかよ!」 猛の心に炎が灯る。それは青い炎。熱こそ低いが、炎の中で最も輝きを放つ炎だ。 「ギリギリでの戦いが俺の本分、ってなぁ……行くぜ、目玉野郎!」 猛の炎の拳が、再び“邪光”の身を灼いていく。追い詰められた時に本分を発揮する。それが、葛木猛という少年なのだ。 そして、魔王が疎ましげに、自らの傷を癒すべく瞳の魔力を振るおうとした時、先ほど猛毒の魔力に冒された鉅はそれより早く動いていた。 「手荒いもてなしで迎えることになるが……これに懲りて後が続かないようにしてくれ」 “邪光”の身体に登り、いつの間にやら触手を取り押さえている。そして、鉅は苦無を瞳に抉りこむように突き刺した。 「ギャアアァァァァァァァァアアアァアッ!!」 一際大きな悲鳴を上げる”邪光”。そして、すぐさま距離を取ろうとする鉅。だが、今度はそれは赦されなかった。怒れる暴君は、彼を振り落とし、力任せに大地へと叩き付けた。 落ちた鉅は動きを止める。だが、この傷を与えれば、こちらの回復が困難で、相手の回復がほぼ無尽蔵であるこの状況を覆せる。もうここまで来たら、退くわけになど行かない。だからこそ、”邪光”も必死になる。先手を打って射撃役のエナーシアを虚弱の邪眼を放ち、攻撃する対象には猛毒と圧倒の魔眼を放つ。これは諦めた方の敗北する、心の戦いだ。 「奴の瞳の魔力は全て分りました。後は確実に落としていくだけです」 淡々とした言葉と共に、レイチェルは聖なる光を放ち、”邪光”を怯ませる。さらに、瞳の位置を仲間に伝え、着々と勝利への足固めを進めていく。 そんなリベリスタ達の動きに、”邪光”は恐怖を感じ始める。何故、この生き物達は自分に歯向かうのだろうか? そこまでして立ち向かう意志はどこから湧いてくるのか? そして、その恐怖は数瞬後、アザーバイトの全身を駆け抜けた。 「容易く倒れたら、前衛やってる意味がないんですよ……」 気が付くと、”邪光”の身体に気糸が絡み付いている。その先にいるのは、先ほど倒れたはずのカイだった。彼の意志と、フェイトは、ここで倒れることを良しとしなかったのだ。ギリギリ後ろに引き下がった彼を、『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)の詠唱が癒す。彼女はあんなB級ホラーには、とっとと引導を渡してやれと後ろで毒づいている。 そして、アザーバイトが後ずさりした時、銃声が鳴り響き、猛毒の魔力を持つ瞳を弾き飛ばした。 「瞳って的と似ているわよね。つい狙ってしまうわ」 事も無げに呟くエナーシア。いつの間にやら、”邪光”の背後に回っている。加えて言うと、自由に蠢く瞳の中から、ターゲットを確実に打ち抜くなど、誰にでもできることでは無い。 そして、この弾丸が勝敗を決めた。 “邪光”は攻撃と防御を奪われた。もちろん、それが全てでは無いが、ゆっくりと差は縮まっていく。恐怖を知った魔王と、闘志を胸に追いすがるリベリスタ。どちらが上かは、問われるまでも無い。 とりあえず、殺せそうなものからと手当たり次第に噛み付く”邪光”。だが、その攻撃は決定打足りえない。そして、今こそ攻撃と見切ったおろちは、自らの怪我も顧ず、軽やかに、そして踊るように、アザーバイトを切り刻んでいく。 「アナタもバケモノだけど、死んでも死なないアタシ達もバケモノだから、さ」 血と化け物がくるくると踊り狂う。 「まだまだ一緒にオドるわよん」 楽しげなおろちと違って、”邪光”は苦しそうに呻くしかない。なればせめて逃げるしかないのだろうが、それは遅きに失した。目の前には斧を背負った巨漢が、いや魔王にとっての死の使いがいた。 「仕舞いだ……弾けろッ!」 ランディの全身に巡った闘気が、グレイヴディガーに集まっていく。 そして、大きく振りかぶると、巨大な眼球目掛けてそれを叩き付ける。 「ギャァァァァァァァアアアアァァァァァァァッ!!!」 それが、やぶ睨みの魔王が上げる、断末魔の悲鳴だった。 ● 「やれやれ……厄介ごとが多過ぎる……」 ぼそっと呟いた鉅は、地面に倒れ伏したまま、煙草を吸う。スキルを持ってしても治らない大怪我を負っている以上、好きな煙草を呑む以外に出来ることなど無いではないか。 同じく、ウェスティアも座り込んで一息ついている。園内が危険な場所であることには変わりないが、それだけの激戦であった。そんな時に甘いものは正義、とばかりに菓子を口にしている。 「厄介な能力だったな、ここで仕留められてほっとしたぜ」 精も根も尽き果てた、とばかりにランディはため息をつく。おろちはその様子に笑みを浮かべる。ここで仕留められたから良かったようなものの、万一取り逃がしていたら、あの能力も相俟って大きな被害をもたらしていたはずだ。いや、人に留まらず、ノウフェイスすらも操り得る能力だ。それ以上におぞましい何かが起こっていたことは想像に難くない。 「ちゃんと能力を封じることが出来たから、かしらねん。そうでなかったら、どうなっていたやら」 「まぁ、招かれざる客にはきっちりお帰り願ったってことで、良しとしておこうぜ」 猛は疲れた身体をほぐすべく、ストレッチをしている。一方、エナーシアは周辺の警戒に余念が無い。何かいやな予感が拭えないというのもあるが、増援でも現れたらたまらない。 「今後もこんな凶悪な敵がやって来るのでしょうけど、気負わずに乗り越えていきたいものです」 機械の部位を露にして、新たに決意を浮かべるカイ。”邪光”のようなものもこの世界の中には沢山いるのだろう。であれば、このような戦いを何度も潜り抜けなくてはいけないのだ。 「ともあれ、この場は帰りましょうか、皆さん」 冷静に皆へ促すレイチェル。いやな予感は拭えないが、これ以上この場に留まる理由も無い。 こうして、リベリスタ達は帰路につく。これからの休息の時間が少しでも長いことを祈りながら……。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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