● ガキィンッ! ドガガガガ!! 「……ちょ! 誰ですかあんた!! 人の家で!!」 「余の顔を見忘れたか……!」 「いや! 誰だか知らないし!!」 とある偏狭の地の民家。 家主が物音に目が覚めて来てみたら、あらまビックリ。 見た目武士の人が家の中を荒し荒し荒し荒し。もう惨劇状態だった。 「てか、なんでこんなとこに武士がいんだ!!」 と叫んだのが最期か。 武士っぽい人の足元から影が伸びて伸びて人型を形成する。 それが鋭利な刃物を持ってじりじりと家主を追い詰めた。 「成敗!」 その言葉がトリガー。家主は綺麗に切り刻まれた。 「上様、また城下に足を伸ばしてたんですか!!」 「ふむ、まだ未知の世界……この目で見たくてな」 はっはっはっは―― ● 「――皆様、こんにちは。年末年始、休まず年中無休で頑張りましょう。杏里も応援していますからね!」 という訳でお仕事です。 「所謂、アザーバイドです。その世界では偉いお方なのでしょうね。失礼な事があると迷わず切り捨てられるみたいですよ」 モニターに映し出されたのは煌びやかな……煌びやかな武士。 その名も将軍。部下からは上様、と呼ばれていた。 「夜中に度々、こちらの世界を徘徊しては民家へ押し入り、物色しまくった後、帰るという感じです」 迷惑極まりない上様。 ついでに人切り捨てるとかしちゃうもんだから、もうお帰り頂こうか。 「早急かつ迅速にパパッと処理しちゃいましょう。ご報告、お待ちしていますね」 杏里はにこっと笑ってリベリスタを見送った。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年01月09日(月)22:50 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●お昼のあれです 時は戦国。権力の頂点に座する将軍は、天下無双の……という訳では無く、アザーバイドです。 「ふむ、摩訶不思議な世界よのう……」 凄く目立つ。というか目立たない方が可笑しい。 明らか存在している時代を間違えている将軍様が閑静な住宅街を歩いていた。 「これは……石?」 と言いつつ、家の塀をトントンと叩いてみたり、蹴ってみたり。力も普通に一般以上なので簡単にひびが入っていく。 そして何よりも銃刀法違反。 その腰に刺さっている物はどう見ても刀。 その場を通る人々は誰一人『危ない人』には近づかなかった。それは幸運ではあった。 まさか、そんな、腰に本物の刀があるだなんて、誰が思うだろうか。 平和な日本(表舞台は)。そんなこと、ある訳が無い。 まさか、そんなことあるわけが無い。 すらりと取り出した刀。所謂、抜刀状態。 ちょっとその塀、切りたくなったのだろう。キラリと光るそれを振りかぶらんとしたその時。 「そ、その顔は……!?」 『錆天大聖』関 狄龍(BNE002760)が、体勢をやや後ろへ傾け、あたかも驚いた! というポーズをしながら目を見開く。 「……ふむ、どうした」 将軍は刀を振りかぶるのを止め、狄龍をじっくりと見た。 「う……う……う……」 「う?」 「上様ァアアー!!!!? お見それしましたァーッ!!」 「な、なんだってー」 力いっぱいに狄龍は叫んだ。辺りにビリビリとその声が響く。 『人間失格』紅涙・りりす(BNE001018)もそれに合わせて相槌をうってみたものの、あんまり乗り気では無く。偉い人は好きでは無い。それがなんであろうとも。だから最低限の抵抗はしつつ精一杯の行動なのだろう。 そして同時に足を折り、頭を地面へ近づけ、所謂これこそジパング名物DOGEZA!! 『十字架の弾丸』黒須 櫂(BNE003252)もつられて地面に顔を近づける。 結界はあるものの、家に帰るためにその道を行かねばならない人は居るようだ。周辺を歩く人々が更に遠くなるのを感じた。 すごーく長い数秒が経った。 遠くから聞こえるのは、アスファルトの上で蹄が踊る音。 現れたのは馬に乗った、アーク所属リベリスタの我等が王。『百獣百魔の王』降魔 刃紅郎(BNE002093)だった。 辺りの空気は王のものなのだろう、十分に吸い上げ、鍛え上げられた腹筋で思い切り叫ぶ。 「王の御前である! 良い子は皆速やかに家へ帰れ!」 どこからツッコミをいれよう。畏怖と注目を集めたが、辺りはしんっと静かになった。 「ふむ、お主、この世界の将軍か?」 伝わった様です。 刃紅郎は己の完璧な姿と回りの反応だけで、口から名乗らずとも気づかせるというのは成功した様だった。 「なれば、余とそちは同等の存在」 遠回しに、DOGEZAしなくていいよという事です。 刃紅郎は当然という顔で満足する。ワールドイズマインを彼に与えたのは大変な波瀾の予感がした。 「も、申し上げますー!!」 『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネット(BNE002439)が勢いよく走ってくる。 将軍と王を見た瞬間、ハッとしながら足を折り、DOGEZAした。 「苦しゅうない、表を上げい」 「うむ、どうしたレイチェル」 将軍と紅刃郎の意気投合に、ついレイチェルがツッコミたくなったが抑える。 「は、はい、あちらに狼藉者が……!」 演技としても、できるだけ焦り、慌てて、必死さを装う。 「それはいけない、すぐに余が成敗してやろう」 すぐにのってきた将軍。いささか、正義感は強い方らしい。だけど無礼があると切るのでもはや自己中心的なのは否めない。 案内しろ、と歩き出す将軍。 レイチェルができるだけ、頭を下にしながら足元を懐中電灯で照らした。 それを少し離れた場所から『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)が見ていた。少々個人的な事情のタイミングがずれてしまっている出来事があった氷璃。それに関しては杏里が土下座していました。 夜路を進んでいく。将軍御一行のお通りだ。 向かうは人気のない場所へ。 合流場所はもう仲間が探してくれている。 ところで、そろそろ刃紅郎の馬にツッコミは無いのだろうか……とても、シュールです。 ●斬るのは手下です 来たのは近くにある空き地だった。 ちょっと前までは人が住んでいたのか、家の取り壊し最中で少々瓦礫が足につく。 「ふむ、此処か?」 「は、はい、此処……ですね」 たぶん、と心の中で付け足す。レイチェルが『レッドキャップ』マリー・ゴールド(BNE002518)に言われて指定されたのはこの場所だった。既に結界もあるようで、間違っていることは無い。 「わーお! 将軍だー! すごーい! 本物?」 「!?」 無邪気にも家の影から飛び出してきたのは『Trompe-l'?il』歪 ぐるぐ(BNE000001)だった。 自慢の羽で低空飛行しつつも、将軍の回りをこれでもかと飛ぶ。 驚いた将軍、何よりその羽は見たことがない。斬り落とそうと考えたのか、ぐるぐのすぐ傍を刃が掠っていった。 「山吹色のお菓子とか食べるの?」 と質問しつつも、すらりと刃をかわす。いたって真剣で真面目に不真面目。それがぐるぐルール。 同じように影からマリーが出てくる。 「ああ、来ていたのか」 狼藉者的な行動がいまいちよくわからず、仲間にナチュラルに声をかける。 するとマリーの目線が厳しくなる。将軍の目……では無くその上。 「頭に筆ついてるぞオッサン」 「ろ、ろ、狼藉者がァ……!」 「ここは私の領地だが」 適当に言葉を発し、挑発すれば相手はすんなりと乗ってくる。なんだこの扱いやすいおっさん。 その瞬間 頭 が た か ぁ い ! その声は真空波か何かか。辺りにビリビリを爆音が響いた。 その声を聞いた、いや、身体に受けたリベリスタの身体が重くなるのを感じた。 怯まずりりすがハイスピードを身体に纏った瞬間に、刃紅郎の獅子王「煌」から疾風居合切りが放たれる。 王という字にも色々あり、「王」「皇」。そして何よりも尊い王が「煌」。 王の中の王とも言える字を宿した大剣を軽く振り回し、放たれた真空波が将軍を襲った。 だが将軍も将軍。その大ダメージでさえ、なんのそのといった涼しい顔で受けた。 「お櫂は……お慕い申しておりました」 少しその頬を桃色に染め、告白しつつも手に持つのは拳銃。刃紅郎に続き、櫂のスターライトシュートが放たれていった。 それはギリギリのところで当たらなかった、ついでに思いも届かない。いや、届かない方が身のためですよね。 その頃、狄龍は一人考えていた。 本来の将軍。あの朝のテレビでよくやっているアレ。 あの将軍は峰打ちだから本当に切っている訳では無い。 「だから悪人斬るのはいつも手下なんだよなぁー」 つまり。 「だから、なんでもかんでも斬っちまうあんたは偽物だァー!!」 畏れ多くも狄龍はピンポイントを将軍の刃へと当てる。立派な反逆だ。 「とんだ茶番ね」 集中に集中を重ねた四色の魔光が煌めく。 氷璃の手から放たれたそれが、見事に将軍の行動を縛ってみせた。 「今宵はいい月だねぇ」 素早く、りりすが将軍へソニックエッジを叩き込む。 いつもの服装と違い、将軍に合わせて、少し控えめだが立派着物。ただし中は水着。 着物が揺れながらも、死角から襲い、風の様に舞っていく。 それ続いてレイチェルがトラップネストを放とうとした。だが惜しくも一歩早く将軍が先に動く。 「ふむ、余に戦いを挑むか」 ――その愚かさ、分からせてやろうぞ!! であえーであえー。 召喚されたのは、将軍と同じ様な姿をした、三人の影っている将軍。つまり、影将軍。増えるというのは厄介なものだ。 「NINJAだと…!」 うんちょっと違うかな。マリーの目はキラキラしていた。 「……隙を作ります、狙ってください」 臨機応変に動けるレイチェルの手から眩い光り――神気閃光が溢れ出した。 それは綺麗に将軍『達』を射抜いていく。 影将軍が三人同時に飛び出す。 一人は抜刀した刃でマリーを貫く。 一人は咆哮し、リベリスタの行動を鈍らせた。 一人は……踊っていた。 「きゃっきゃ! きゃっきゃ!!」 一緒に腰をふりふり、くるくる回り、ぐるぐが一緒に踊りだした。なんだろうこの和む空間。 特にリベリスタ達へは効果は無い様だが、本体を含めた四人の将軍の攻撃力がぐーんと上がった。 ● 増える影はリベリスタ達の手を煩わせていた。 狄龍が頭の中で思い浮かぶ某番組では、普通敵キャラが多くて将軍がそれに立ち向かう。 しかし、目の前のそれは違う。 大量の影に立ち向かう将軍ならまだしも、大量の影を従えた将軍。 「なんか立場逆じゃねぇ?」 ふとそう思った狄龍。やたら目の端につく踊っている将軍にイラっとしてきた。 殺さないように調整はしてみたものの、数が多い。既に8人の影が目の前を彷徨いていた。 「ひーふーみ……少し、面倒になってきましたね」 「ああ、やりがいがあるよ」 構わずレイチェルが神気閃光を放ち、巻き込んでいき、その光りを背で感じながらりりすが飛び出していく。 りりすが狙うのはあくまで本物の一人だけ。 還付無きまでに叩き潰してお帰りいただく。それを曲げる気も、毛頭無い。 最速で放たれたソニックエッジに手応えを感じながらも、影将軍の攻撃をかわしていった。 「ハハハ……面白い、面白いぞSAMURAI!!」 フェイトの光りに包まれつつも、マリーが立ち上がる。その目は変わらずキラキラしている。 だが、こちらも負ける訳にはいかない。 振りかぶる大剣に力を込めて、影を切り裂いていく。 「上様とはつゆ知らず……! ご無礼をお許しください」 マリーによってできた道から櫂が走り出す。 お淑やかに振舞っていたが、牙を剥いて将軍の肩を噛みちぎっていく。 これもひとつの愛の形、なんちゃって。 肩から血を流しつつも、将軍の刃は止まらない。 「さっさと終わらせるわ」 将軍の剣をその身で受けながらも、氷璃は仲間を巻き込まない範囲で炎を放つ。影将軍を飲み込み、本体も綺麗に飲み込んでいく。 「ほう、何もないところから火が出る世界なのか」 「……違うけど」 将軍、ちょっと感心してた。どこぞの世界のアザーバイド。違う世界のものは珍しすぎる。でもその認識、ちょっと違う。氷璃が呆れていた。 炎が消え去ったのを見ながらマリーが踊っていた影将軍の一人へ容赦無くギガクラッシュを放とうとした。 「ふむ、忍者もこの程度なのだな」 剣が影を斬るとその瞬間消えていく。あっけないその終わりにマリーは息を吐いた。 狄龍が放ったピンポイントが影将軍を射抜いて消えていく。 すると刃紅郎が動き出した。 剣を雄々しく持ち、将軍を見る。 「まだやると申すか」 将軍はの体力はまだまだ健全。 どこにそんな力があるのか定かでは無いが、将軍の名は伊達では無いというのか。 だが、刃紅郎は戦おうとする訳では無く、ただその場に座り込んだ。 今この世界は崩壊の危機にさらされている。此処でなにか不祥事をおかし、更に別世界からの反感を買う訳にはいかない。 その行動は世界のためだが、運命に嫌われようとも構わない。 刃紅郎――この世界の王。 「これを以って今回の一件を収めてもらいたい」 目の前の将軍も、暴君であれ暗君では無い、そう信じて。 剣は己の腹を切り裂いた――。 ● 刃紅郎のその行動は将軍の目を丸くさせた。 そう、それはまさしく――SEPPUKU!!! 「おお、素晴らしいな」 マリーもそれに見惚れていた。いや、助けるべきなんだろうけど。 近くでぐるぐもきゃっきゃとはしゃいでいる。やたら嬉しいのか、目の前でまさかそんなものが見られるだなんて。 「おお、おおおお!」 将軍は感無量。その場に立ち尽くし、震えていた。 この世界はなんと素晴らしいものなのだろうか。此処までして戦いを逃れたいなどと。 フェイトを燃やす王の行動は将軍の心を動かした。 ――戦いはやめよう。 リベリスタ達が接戦していた影が風と共に綺麗に消えていく。 「お主達の世界とは仲良くやっていけそ「とんだ……茶番ね」 将軍、油断したのが最大の過失か。 完全なる隙を見せた将軍にりりすの刃が、氷璃の炎が、レイチェルの光りが―― 数の暴挙に将軍のお命が危ない。 「また……つまらない相手を虐めてしまったわ」 「いやあ、いいもん着てるねぇ」 リベリスタによって将軍はもはや会った時の華やかさを失っていた。 氷璃により髷は着られ、りりすにより身ぐるみ剥がされ……もうやめたげてよぉ! 「いつでもウェルカムと言いたいところ……だが」 すかさずマリーが軽々しく将軍を持ち上げて茂みの中の穴へと放り投げた。 「この恋は叶う事はないと知っています……」 櫂が少し悲しそうにD・ホールを見つめていたが、すぐにさようなら。 リベリスタがそれを塞げば、そちらとの道は閉ざされる。 お騒がせな将軍のお話は、これにてオシマイ。 向こうの世界で、大騒ぎが起きたことは言うまでも無い。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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