●刃 「~♪」 新作ゲーム発売日、付近に住む大学生の青年は鼻歌まじりに自転車を飛ばしていた。 そう、発売前から駄作との評価を受け発売自体が危ぶまれた作品『パーフェクト・ニンジャ・ソウル』の発売日だったのだが、ついにゲットする事に成功したのだった。 うきうき気分で自転車を飛ばしていた彼だったが、突如人気の無い夜道のど真ん中に黒づくめの男が立っているのに気がついた。 慌てて急ブレーキをかけるが、間に合わない。 ぶつかる! っと思った瞬間、其処に人影はいなかった。 いや、人影だけではない。カゴの中に入れていたゲームソフトまで無くなっているではないか! そして、黒づくめの男は近くの塀の上に立っていた。 黒装束に黒頭巾。腰には反りの無い短めの刀。間違いなくそれは忍者の姿だった。 いや、NINJAと表記した方がいいのかも知れない。何故なら頭巾から漏れる髪は長い綺麗な銀色。そして、その瞳は透き通るように青かったのだから。 「HAHAHA! シノビの修行は奥が深いデース!」 そして、そのNINJAは彼のゲームソフトを片手に何処かに行ってしまったのだった。 ●心 「そんなわけで忍者が現れた」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は少し鬱陶しそうに髪を掻き上げながら集まったリベリスタ達を見つめる。 もちろん集まったリベリスタ達の顔には困惑しか浮かんでいない。伸暁は軽くため息をつきつつ、事件の詳細を説明し始める。 「今回のターゲットはアーティファクトだ。モノは忍者服。何でも通販で買った忍者服がエリューション化したみたいだな」 唖然としたリベリスタを見、彼は続ける。 「行動基準は、忍者に関連する物を集める事。それだけみたいだ。現状それ以外に被害は無い。ただ、放ってはおけないんで何とかして欲しい」 「倒していいのか?」 その声に伸暁は少し逡巡するが、ゆっくりと頷く。 「基本、ダメージは全部アーティファクトに行く。破壊してもいいし、譲ってもらえるならそれもいいだろう」 そして彼は続ける。 「忍者関連のグッズを持っていれば、向こうからやって来るだろう。因みに、持ち主の名前はリチャード・ロッカク。もちろん偽名だ」 「なんだよ偽名って!」 「いや、どうやら自分がロッカクファミリーの末裔だとか思いこんでいるらしい……六角家ってそもそもなんだ?」 そんな事知る訳ないだろ……そう思いながらも何とかそれを口に出さず、肝心な事を聞く事にする。 「相手の能力は?」 「幻影剣相当の攻撃に、ハイスピード。ソードミラージュのようなモノだな。他にも高くジャンプしたり、速く走ったり、火を吹いたり……」 「最後! 最後結構重要だろ!」 「ん……? ああ、遠距離攻撃で火を吹くらしい。まあ、それぐらいだ。お前たちなら大丈夫だろう、朗報を待っているよ」 うんざりとした表情のリベリスタ達を見つめ、俺の方がうんざりだよと言いたげに伸暁は話を終わらせた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:タカノ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月12日(木)23:20 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●忍務準備 「どうでしたか?」 ちょっとした広場に大きな影が指す。『メタルマスクド・ベビーフェイス』風祭 爽太郎(BNE002187)が、ただ立ち上がっただけだったのだが、巨体の彼が立ち上がるだけでちょっとした日陰ができてしまう。 「……答えは不可。根本から躓いたわね……」 爽太郎の問いに、目の前のセーラー服の少女、『威風凛然』千早 那美(BNE002169)が微かに苛立ちを含めた声で答える。 当初の予定では空き家を借りて忍者屋敷にしようといった計画だったが、空き家の手配、そして改造となると流石に間に合わないと判断されたのだろう。その許可が降りる事はなかった。 「それなら野外で品評会って感じかしら?」 「む、適当にその辺を歩いて誘き出すのではなかったのか?」 『BlessOfFirearm』エナーシア・ガトリング(BNE000422)が確認しようと声を出せば、『鋼鉄の砦』ゲルト・フォン・ハルトマン(BNE001883)がそれに答える。 そう、実は忍者屋敷が無理だった場合の作戦が全体的に統一されていなかったのだった。どうしたものかと逡巡していると。 「ま……そしたら此処でもいいんじゃね?」 『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)が、面倒くさげに地面を指差す。確かに話し合いをしていた高架下ならば物を広げるスペースもある。 「お、確かに。それで行こうぜ」 杏の意見に賛成だとばかりに手を打ち、雪白 音羽(BNE000194)もそれに答えれば。 「ふむ、では準備を手伝おう」 と、『自称騎士娘』天音・ルナ・クォーツ(BNE002212)も作業を手伝おうと動き始める。 とは言え、品評会の準備と言ってもブルーシートを引いて忍者グッズを並べるだけと言った簡易的な物ではあるのだが。 「おい、その紙切れなんだよ!」 「これは忍術書よ。十丈の布を地面につけないように走るとか……」 「うわ、いかにもパチモンクセー!」 「は、どうよこの忍者グッズ。これで引き付けるのは完璧ね」 「つーか、忍者ヌンチャクはまだ解るとして、忍者入学文具セットって何だよ! ツッコミどころしかねぇよ!」 「なるほど……これが忍道………騎士道に繋がる物があるな」 「いや、ねーよ! お前の騎士道ってそれでいいのかよ!」 「貴様! 騎士を愚弄するのか!」 「あなた……忍びを馬鹿にしたわね……」 「ちょっと待て! なんで俺が責められなきゃいけないんだ!?」 ……意外に楽しそうである。 「ともあれ、今は待つのみか」 周りの馬鹿騒ぎには特に流されずハルトマンが口の中の煙をはき出した時、目の前に黒い影がよぎったのが確認できた。 ●忍務開始 「HAHAHA! こんなところにNINJAソウルが溢れてイマース!」 真昼間の高架下に現れた黒装束の外国人。おそらくは件のターゲットで間違いないだろう。こんなのが複数いたらそれはそれで大変だろう。 「ふ、現れたわね!」 ビシっと杏が指を突き付ける。くの一のコスプレをしているのが妙に似合っているが、傍から見れば目の前の外国人とあまり変わらない危なさだ。 「OH! ジャパニーズくの一デスネ! これはNINJAバトルの予感がシマース!」 彼の頭の中では、NINJAが出会ったらバトルをするらしい。 「待って、せっかくだから此処にある好きな物と貴方の素敵な忍者服と交換しましょ?」 その問いに、why? と首を傾げるメリケンNINJAことロッカク氏。 「うむ、そうだ。取引をしないか。この忍者刀とお前の忍者服などどうだ?」 と、忍者刀を差し出しながら、お主もワルよのう。と無表情のまま言うハルトマン。明らかに間違った日本文化だが、相手が相手だけに間違っていないのかも知れない。 「そう、取引よ」 そこに柱の中から音もなく現れた那美が付け加える。くの一の格好二人目の登場である。もし、この場を通りかかる人がいたら、B級の忍者映画の撮影だと勘違いするかも知れない忍者比率だ。 「よーし、わかった!」 首を傾げたままのロッカク氏の態度に、急に杏が大きな声を出して地面をバンっと叩く。 「此処にある忍者グッズとお前の忍者服を交換だぁぁ!」 きょとーん。と言った表現が似合いそうな表情で杏を見つめるロッカク氏。 「まさか貴方忍者のクセに早脱ぎができないの!? 本物の忍者ならそんなことアサメシ前よ!」 「こうよ、手本を見せるわ」 サっと自分の戦闘服の上から着ていた忍び装束を脱ぎさる那美。あっという間に忍び装束を脱ぎさった那美にロッカク氏の称賛の声が漏れる。 「……コツを教えてあげるから、まず脱いでみて?」 そんな那美の問いかけにロッカク氏はゆっくりと首を横に振る。何人かが首を傾げていると。 「HAHAHA! 取引などしなくても簡単デース! 此処でユー達を全員倒してコレを奪ってイキマース! SINOBIのロードは険しいのデース!」 駄目か。そう思い何人かが身構える中、爽太郎が一歩前に出て。 「Hey、Mr、Ninja。服を着るだけで身体能力が変わるとか、おかしいと思わないかい?」 突然の爽太郎の言葉に、ロッカク氏の動きが止まる。 「そのコスチュームは、呪いのアイテムなのさ。忍者みたいになれるけど、その分頭がおかしくなるぜ……町の人から物を盗むようになるとかな」 ロッカク氏はしばらく逡巡するが、やがて持っていた忍者刀を構える。 「ユーの話を信じたとしても……ミーはNINJAになれるのなら、それでイイデース」 ●忍務遂行 突然、バンっと音と共に高架下の傍のビニールハウスが吹き飛ぶ。 ビニールハウスの中のタタミの下から『ニンジャブレイカー』十七代目・サシミ(BNE001469)が出てきた音であった。 「お主は所詮ニンジャでござる。忍者にあらず」 腕を組んでマフラーを風になびかせながら、露出度の高い忍び装束を着こんでいるのは忍者としていいのだろうか? きっといいのだろう。 うわ、ビニールハウスの人可哀そうー。とか思いつつ、音羽も距離を取りマナブーストの準備をする。 そんな中、物凄いスピードで距離を詰めようとするロッカク氏。 「これぞ、忍法HAYAGAKENOJYUTUデース!」 周りが反応し切れない内に距離を詰めようとするが……。 「させるか!」 ハイスピードを使用した天音がそれに反応し、サーベルで切りかかる。 サーベルと忍者刀のぶつかる乾いた金属音が高架下に響く。 「本物の忍法を見せてやるでござるよ……忍法、蜘蛛糸縛り!」 天音の攻撃を受け止めた隙にサシミが仕掛けるが、これは華麗にかわされてしまう。ご丁寧にバク転までしてかわすところに、ロッカク氏のNINJA像が伺える。 攻撃をかわし、そのまま柱を背にするロッカク氏だったが。 「見せておいてなんだけど……見たからにはこのまま帰す訳にはいかないわ」 背にしていた柱をすり抜け、那美の攻撃がロッカク氏の背後を狙う。辛うじてそれをしゃがんでかわすが、そこに爽太郎の巨体が迫る。 「プロレス対忍術の異種格闘技戦だ! 勝負!」 そのままくるりと背を向け、ローリングソバットを繰り出すが、如何に爽太郎が巨体とは言えまだ間合いは遠い。だが、風の力をまとったソバットは的確にロッカク氏の体を捉えていた。 「OH!」 だが、一撃で倒されるほど弱い相手ではない。吹き飛ばされた後、くるりと空中で回転をし、着地する。 (思ってたよりは動きが直線的ね) 忍者と言えば暗殺者なのだから、もっと撹乱してくると思ったのだけど。そうこぼしながらエナーシアは観察を続けていた。 (これでこの人数なら攻め手も多い。問題は逃亡時ね……) ある程度の分析を終えると、動きを確認しながらゆっくりと銃口を相手に向ける。 「HAHAHAこれがかわせマスカー?」 近くにいた那美に忍者刀を振るえば、いつの間にかその剣先が無数の刃にと切り替わる。 「くっ……!」 何とか体捌きでかわそうとするが避けきれない。そう那美が思った時、その前に大きな影が差す。 それはハルトマンの姿だった。 ハルトマンがその攻撃に割って入り、全ての剣先を受け止める。 どれが本物か解らないで避けられないなら、全部防いでしまえばいい。単純だが実に効果的な方法だった。 「シット!」 攻撃を防がれ、体勢を整えようとした所に別方向からそれぞれ魔力の弾丸が飛んでくる。一方をかわすが、其処に残り一つが直撃する。それぞれ音羽と杏の物だった。 「行きます! 必殺業炎唐竹割り!」 丁寧に技の名前を叫ぶのもプロレスなのだろうか? 爽太郎が勢いよく飛び出し、手刀を構える。 それに対してロッカク氏は横薙ぎの一閃で迎え打とうとする。これでうかつに踏み込めないだろう。だが、爽太郎は構わず踏み込んで来た。 腹筋に食い込む刃を感じながらも、躊躇わずに炎を宿した手刀を肩口に食い込ませる。 「……知っていますか? プロレスラーは相手の攻撃を避けちゃいけないんですよ」 肩口を抑えて一度高くジャンプしたロッカク氏を的確に撃つ銃弾。 まるで飛び上がるのを予測していたようにエナーシアは其処に銃口を構えていただけだった。 何とか着地をし、間髪入れずに口から炎を吐くロッカク氏。 巨大な炎が天音の体を飲み込むが……彼女はそれでも其処に立っていた。 「ロッカク殿の忍道に関する覚悟の方は理解した……ならば、今度はわたしの騎士道を見せる時!」 そして、サーベルをひゅんと鳴らせば生まれるは無数の刃。 先ほどのお返しとばかりにサーベルを振るえば。避けきれず体に無数の傷を作って行く。 そこに素早く動く小さな影。 「そろそろニンジャの真似事は満足したでござるか? 忍法、不可知の術!」 そして、大きな巻物を広げるサシミ。 見上げれば、其処にサシミの姿は無かった。いつの間にかロッカク氏の真横に現れ、後頭部に打撃を与える。ぐらりと彼がよろめくのを見ると彼女は再び距離を取る。 それでも無言で刃を走らせるが、その攻撃はまたもハルトマンの体で受け止められてしまう。 内心彼も効かないわけではない。だが、そんな事は表に出さず、彼は口を開く。 「……この程度の攻撃で俺を倒すのは不可能だ。諦めてその服を渡すんだな」 「……!」 何かロッカク氏が叫ぼうとしたその時、その横を那美が駆け抜ける。慌てて回避行動を取ろうとするが。 「遅いわ」 駆け抜けざまにラッシュを食らい、その場で片膝をつくロッカク氏。 「そうそう、アタシこういのうだったら出来るのよっ」 その上を低空飛行で浮かんでいた杏が右手をスッと上に上げる。すると、そこには大きな電流が流れ始める。 「RAIJINNOJYUTSU!」 明らかに片言な日本語で杏が右腕を振るえば、大きな電流がロッカク氏の体を打ちつけ……そして、彼の忍者服が四散したのだった。 ●忍務終了 「ロッカク殿、見事な忍道でした。私も見習う事が多くありますね」 「本当か! 本当にそう思ってるのか!?」 天音が一礼をもってロッカク氏に声をかければ、間髪入れずに音羽が突っ込む。言われた天音は、何を言ってるのですかアタナは。的な目で音羽を見返すが、音羽はそれに気がついていない。 ちなみに当のロッカク氏は褌一丁の姿でぶっ倒れている。そう、ジャパニーズフンドシである。 「……それにしても、これどうしましょうか?」 ややどうでもよさそうにエナーシアが口を開くが、これとは言わずもがな、ロッカク氏の事であろう。 「アーク本部に連絡してもいいですし、民間団体に連絡してもいいでしょうし……」 そう言えば決めてませんでしたね。そんな文章を顔に出しながら爽太郎が腕を組む。もっとも彼の顔の変化は普通の人より解り難いのだが。 「流石にこのままでは不憫でござるな」 そう言いながら高架下のビニールハウスの中にあった毛布をかけるサシミ。うわ、その毛布何か色々住んでそうじゃね? 的な表情で音羽が見るがすぐに見なかった事にする。 「しかしだ」 懐から出した物を口に咥え、ハルトマンは呟く。 「アーティファクトというやつはなんともやっかいなものだな」 「そうですね……私もそう思います」 ハルトマンの呟きに返すように天音も呟く。アーティファクトの生み出す戦闘力は確かに本物だったのは確かだった。 皆が思い思いに動く中、杏は一人で倒れたロッカク氏を見下ろしていた。その手には派手なデザインの服があった。 ヒーローショウなどで使われそうな派手なスーツの忍者版と言ったところだろうか。それを握りしめ、こう一人呟いていた。 「大人しくこのヒーロースーツに着替えていればよかったものを……」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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