●『赤の世界』超次元ウルトラ会話『お菓子の世界』 「もしもし赤の女王様、私デス『オカシな公爵』デス」 「あら公爵様、お元気ですこと?」 「モチのロンですトモー。この前お話して頂いた『ダイヤのAとハートの7がボトムチャンネルに迷い込んでしまったお話』、とぉっても面白かったデスヨ!」 「貴方からお聴きしていた件のチャンネルにまさかこの私も関わるとは、全く思いもしませんでしたわ」 「イイトコロでしょ」 「えぇ、とっても。」 デスカ?」 「ところで、『くりすます』ってご存知 かしら?」 「オヤ」 「あら」 「ならば話は早いデスネ!」 「嬉しいわ、うふふ。……しかし、私達ではボトムチャンネルのロストコードを引き起こしかねませんよ?」 「ウーン、この前の『はろうぃん』は滞在時間がちょっとだけ、っていう感じでセーフでしたガ……」 「そうだわ。ならばロストコードしない空間を作ってしまえば良いのよ」 「あーナルホド。私とアナタの力を合わせれば朝飯前ですネ」 「そうしましょう、ふふっ」 「楽しみですネ!」 ●『お菓子の世界』超次元ウルトラ会話2『モノクロ戦争の世界』 「ハイもしもし! こちら伍長であります!!」 「オヤ伍長サンこんにちは。私は公爵デス」 「…… はわぁ!? こっ、公爵殿でありますか!? ひゃーー!!」 「エート。大佐サンに代わって頂いてモ?」 「へっ あっ は、ハッ! 了解であります! ……父ちゃ~ん! 公爵殿からまた怪奇電話がぁ~っっ」 「ゲェーーーまたかぁあーー!? ……嫌な予感しかしないんだが……――はい、代わりました大佐であります」 「もしもしコンニチハ大佐サン」 「はい。で、何でありますか」 「キミも憮然として来たネ。単刀直入に言うとボトムチャンネル行きマスヨ」 「え」 「『くりすます』」 「へ?」 「娘サンも一緒ニ」 「ちょ」 「ではまた後デー」 ピッ! プーッ、プーッ…… 「………………。」 「父ちゃーん……どうした……?」 「……父ちゃんまたカオスを垣間見たよ……」 大佐は伍長の頭にポンと手を置いて項垂れた。 ●『お菓子の世界』超次元ウルトラ会話3『ボトムチャンネル』 「もしもしナゴヤさん」 「……文字化け電話番号から着信来たと思えば、やはり貴方でしたかオカシな公爵様。 ってか私の名前覚えててくれたんですね。で、如何致したのですか?」 「詳細はファクシミリで送りマス」 ピッ! プーッ、プーッ…… 「………………。 電 話 の 意 味 は !!?」 ●『ボトムチャンネル』超次元?ウルトラ会話『アーク本部ブリーフィングルーム』 「こんにちは皆々様、メリクリですぞ! あ、『メリクリ』はメリークリスマスを略した俗語であって決して『メルクリィ』のオサレなアレではn…… そこ 審議中モードに入らない」 事務椅子を回してこっちを向くなり。相変わらずの調子で『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)はヤレヤレと肩を竦めてみせた。 「というわけでして」 一間。卓上に置いた紙には奇妙なフォントの文字列が。どうやら件の『アザーバイドから謎の媒体的な何でも有りチート神秘パワーで送られてきたファックス』らしい。 ボットムチャネルさんこうぺゐのリヴェレスタ皆々々サマへ 敬具 くりすますParty観音開き 赤の世界……赫の女王、トラソプ兵士 モノクロ戦争の世界……タヰサ、イ五長 お菓子の世界……オカシなハム爵 赫の女王&私で異空間ツクール カマン ベール 共にくりすますParty敬具あそさわぐ 敬具 オカシなハム爵@ブラックタンドリーティッキン 敬具 「という訳なんですよ」 あぁ、うん。突っ込み所が多すぎて。敬具多いな。 フォーチュナへ視線を向けると、「ザックリ話せば」と説明を始めた。 「前にこのボトムチャンネルと関わりを持ったアザーバイド『オカシな公爵』『赤の女王』がどうやらここでクリスマスパーティをやる気でして。 しかし自分達はボトムチャンネルにとって有害、ならば別の空間を作ってまえという……チート極まりない能力ですな。アザーバイドってホント色々とおっそろしい……。 で、皆々様にはその異空間でアザーバイドの方々――『オカシな公爵』『赤の女王』『トランプ兵士』『大佐』『伍長』と一緒にドンチャン騒ぎをして頂きますぞ! 皆々様が楽しんで頂くとアザーバイドの方々もお喜びになるでしょうな。 なぁに気張らなくっても大丈夫、皆様良い方ばかりです。彼らの詳細についてはそこに過去報告書のコピーを用意しといたんで、宜しかったらお眼通しを」 と、メルクリィが目を遣る卓上には報告書のコピーが積まれている。暇があったら目を通すとしよう、フォーチュナへ視線を戻すと彼は常の薄笑みを浮かべて続けた。 「『オカシな公爵』はたっくさんのお菓子を。『赤の女王』とその兵士達は歌と踊りを。『大佐』達は……ノンビリしているかと。 彼等と語らい合うもよし、友人同士でドンチャンするも良し、一緒にお菓子を食べるも踊るも何でもアリのクリスマスパーティ! 年に一度のパーティです、思いっ切り楽しまなきゃ損ですぞ? そうそう、異空間についてですが、皆々様が元の世界に帰ったら『オカシな公爵』『赤の女王』が『お片付け』して下さるそうなので。 ロストコードやバグホールとかの心配は皆無ですぞー。ありがたいですな!」 サテ。説明を終えたメルクリィが事務椅子から徐に立ち上がった。 「説明は以上です。クリスマスパーティ、思いっ切り楽しみましょうね! ――あ、ついでに私も行きますからね! メリクリのメルクリですぞー!」 さて、楽しいパーティとシャレこもうじゃないか。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年12月27日(火)23:33 |
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●始まるよエックスマス 迎えに来たよ、遠い所から。 扉の向こうは異空間。 さぁおいで、一緒に騒ごう。 ●スーパーお菓子タイム 赤、煌めく世界。大量のお菓子。幻想的。銘々に騒ぎだす。 「ロストコード起きない別空間作れるなんて桁違いだよ。そんなスキルが自分にもあれば救える命もあるのになあ」 賑々しい会場、疾風は驚きつつ半ば呆然。 「感謝!!! よし、これだけ大声で叫んどけば大丈夫だと思うお。たぶん」 お呼ばれされたんだからちゃんと御挨拶、『これだけ人がいるとなんかめんどくなるお』という訳でガッツリはちゃんと皆へ挨拶を済まし、嬉々として公爵が作り出したグロ菓子の方へ。 「もうイベントごとの風物詩ですね。何かスゲェ増えてますし……しかも異空間まで創造するとは」 マジチート。サンタコスのルカはジンジャークッキーを手に目的の方へ。 「素敵な空間……」 うさみみに手作りのスイーツデコのアクセ、ゴスロリパンクな衣装に身を包んだ櫂も呆然、見渡す赤い不思議空間にただ見蕩れていた。 キラキラ、赤い光。大きなツリー。トランプ兵が奏でる陽気な音楽。本当はこんなファンタジーなものが好きだ何て言えない。恥ずかしいから。 手に取った触手の集合体の様なドピンクのお菓子をもぐもぐ。 「あぁ、幸せってこのことなんだわ……」 たぶん。なんて付け加えるその表情は、至福そのもの。 「こいつがお菓子の世界の菓子か」 甘味好きとしては見逃せないと吹雪も異界のお菓子を手に早速一口。 「こ、これは……うーまーいーぞー! なんだこの濃厚なのにすっきりとした後味、そしてこんな見た目なのに滑らかな舌触り!」 次の一口が止まらない。舌が脳が体が魂が喜ぶ至福の味。 世界にはまだこんなに凄い菓子があったとは、日本中の菓子を食べていい気になってた自分もまだまだだという事らしい。『お菓子の世界』はダテじゃない。 「これは、流石に公爵様、卓越したデザインのお菓子ですわ……現実世界のパティシエとてこれ程のセンス溢れるお菓子を作れる職人はそう居りませんわ」 感嘆、料理を嗜む者として公爵のお菓子に興味津々であったミルフィは目を丸く、それらを絶賛。 「まァ、私は自世界でもトップクラスですからネ!」 ドヤ顔の公爵、瞑はご挨拶しながらおねだりを。 「ごきげんよう公爵様。今日はうち、お菓子を食べに来たのですが、折角なので世界一美味しいお菓子が食べたいのです。出したてほやほやのお菓子、頂けませんか?」 「ヨシAkasha-Chronikイチのお菓子を差し上げまショウ」 パチン、鳴る指、瞑の手の上に――名状し難き、こう、頑張っても文章じゃお伝えできないレベルの凄まじいお菓子が。 「…… !」 あまりもの美味しさに気を失ったのは言うまでも無い。 おやまぁ、首を傾げる公爵へ終が後ろから抱きっ。 「メリークリスマース☆ 今回もお招きありがとー♪」 再会の喜び。差し出す洋梨のシャルロットケーキ。 「こっちはクリスマスプレゼント☆」 更に差し出したのは手作り銀スプーン。柄の部分は伯爵の帽子を模り、スプーンの掬う部分には伯爵のシルエットが刻まれた精巧なものだ。 本当はフォークにしたかったが難しくて断念&銀食器制作は初めて、頑張って仕上げたつもりだが……見遣る公爵の笑顔にそんな不安もブッ飛んだ。 「前のパーティーでお世話になりました。あれ以来貴方のファンになってしまって……またお手製のお菓子を頂けないでしょうか?」 亘も公爵へご挨拶、快く指パッチン。躊躇わず食べれば新世界への扉が開かれる。 「……」 (感動中) 「は!? なんか別次元に飛んでいきかけた」 おかえり亘君。 「あ、それと神の味を知ったあの後、公爵さんのお菓子をリスペクトするべく色々とじっけ……いや、お菓子を作ってみたんです」 ちゃんと味見をしたし身体に害はないですよ?用意したのは煙が出てる青色の星型物体、興味を示した公爵へ亘は苦笑を浮かべる。 「あの美味しさには未だ届いてません。でも、届かない、出来ないと諦めたら何も始まりませんしチャレンジし再現するべく挑戦してみました」 「フフ、次に会った時にはモット美味しくなっているのかと思うト待ち遠しいネ」 その一部始終にモルぐるみの凪沙は興味深くへぇと頷いた。お約束の宴会、いつもどおりのお菓子、どうにかして再現したいお菓子。あたしが探してる味に一番近いんだよね。 「公爵さんもこんにちは~。また食べさせてもらうね」 モルぐるみをカワイイと言う公爵に礼を述べながら凪沙は公爵菓子を一口、あぁもう本当に美味しい。 「ねぇ公爵さん、ボトムチャンネルで作っても大丈夫な食材ってない?」 「このチャンネルに迷い込んだアザーバイドを使えば何とかなるかもデス」 サラッとエゲツナイ。 「またお目にかかることができて光栄です。クリスマスを楽しんで頂ければ幸いです」 ルカはお菓子をもぐもぐ。 「これが有名な『ぐろいけどそんなにグロくないだけどほんのちょっとグロくておいしいお菓子』略してぐ菓子……いや、今考えたんだけだお?」 ガッツリも頂きますを。 「うまぁぁっぃっ」 そこから少しだけ離れた所。 「夏栖斗、早くいくのだ」 異世界からのお客人に兄が無礼を働いたらいけない。この兄はお調子者すぎるのだ、雷音は繋いだ夏栖斗の手を引っ張った。迷子になったら困るのだ。 「異空間なんてはじめてだ、ドキドキするな!」 なんて先を見、頬を染める彼の可愛い妹姫さまははしゃいじゃって、もう。 「どうしたの? 嬉しそうじゃん」 必死にはしゃぎたいのを我慢してるのが可愛い。引かれる手を握り返しそう思う夏栖斗の悪戯っぽい声に雷音は「違う」とすぐさま否定の言葉を。 「周囲を注意しないといけないからドキドキだ」 「はいはい、そういうことにしとくよ」 そうして公爵の目の前、少女は胸のドキドキを抑えながらお辞儀を、「うっす!お招きサンキュ!」なんて無礼をした兄の足には踏み付けを。 「お菓子をいただけるときいたのだ」 「ヨシ、メリークリスマス!」 ぱちん。現れたお菓子。雷音は大喜びの笑顔、夏栖斗はビックリ蒼い顔。 「ってなにこれ? えぐくない? たべんの?」 踏んどいた。 「イテテ……しかたねえなあ」 それでは一緒に頂きます。ドギツいクリスマスカラーのもこもこお菓子。 「おお! ほんとに絶品」 「ふむ、その、失礼を承知でいうのだが、このもこもこにお顔をかいたらかわいくなるのじゃないだろうか?」 「任せなサイ」 指パッチン、現れたチューブがサラサラ様々な絵を描いてゆく。奇麗、凄い、美味しい……でも雷音は騒ぎたくなる気持ちは我慢して、それでも羽がぱたぱた。 (素直になればいいのにな) 兄は苦笑を浮かべ、不器用な妹の頬に付いたお菓子を指ですくってぱくり。そっちもおいしいね、と。 ●りとてと 「もっともってこいなのだー!」 「はぁ。全く姉さんは」 ドカ食いテトラ、呆れるリトラ。 (何か可愛い子達がいるー! うわ、うわあ、双子かしらそっくりな姿でしっぽふりふりお耳ピコピコ……お話してみたいっ!) という欲望に身を任せて真歩路は姉妹へ。 「初めまして、幸村真歩路です。アナタ達は?」 「テトラなのだー! こっちがリトラなのだテトラのいも-となのだ」 「そういう感じ」 「あら、よく見たら購買の子? 小さいのにいつも店番偉いわねー」 「小さくないのだ、テトラ15なのだ」 「あたしも同い年。姉さんとは双子だから」 「え、15歳? 嘘っ! 年上っ!?」 「うそじゃないのだー!」 (気安く可愛いとか言えない!?) 加齢停止した人も珍しくないとは聞いてたけどそんなばかな。三高平おそるべし。 それから談笑で盛り上がる少女達へディートリッヒが「うーす」とやって来る。 「ハチャメチャなパーティーだな、おい。テトラとリトラはここでも変わらねーな」 リトラの溜息。「とりあえず一緒に食うとするか」と彼は笑いかけた。 「こっちの料理も上手いから、食ってみるか?」 楽しい時間。そんな最中に真歩路はタッパーに心臓っぽいお菓子を詰める。何してるのだーと訊くテトラへ、 「うん、お供え用」 (そう言えば伍長のサンタ服、赤なんだな) ディートリッヒの視線の先にはサンタ服の伍長。 ●ドンチャン モノクロ戦争の世界の二人はクリスマスを良く理解していないらしい。 「よかろう、剣姫イセリアの名に賭けて、真のクリスマスとは何かを伝授しようではないか!!」 ブロウ・ヒュムネを抜き放ちイセリアは立つ。誰彼構わず巻き込んで。 「さあ酒だ! 飲め! めしだくえくえ! さあ肉だ!! ターキーだチキンだ! ビーフにポーク! グラスを持て! シャンパンの蓋は、剣で斬り飛ばせ! 注がねば溢れるばかりだぞ! さあ! 異界の者達よ仲間達よ! 飲むのだ! はは! 笑え騒げ!」 豪快、豪放、ドンチャン騒ぎ。 ONとOFF、メリとハリ。それがこの社会の仕組みというもの。 (祝えることは祝うものだ。もったいないだろう?) こんな騒ぎは常に出来る事ではない。笑顔の中で、仲間の中で、思うのだ。 (あんなことの後だ。毒抜きというか、な) 今年は尚更だ。 (クリスマスを祝う、か、そんな事は考えもしなかったよ) この面子だと自分の顔も地味な部類になってしまう。瞳は友好的なアザーバイドなら親睦を深めておいて損はあるまい、と世間話と食事を楽しむ――フリをして、他のチャンネルの情勢やニュースなどを訊いてみた。 が。 公爵「第Ω層G1界のお菓子は美味しいデスヨ!」 大佐「ちゃんねる……というものは、沢山あるのか?」 女王「何が来ようと貴方達なら大丈夫よ」 こんな調子。 「メリクリィ! 765さんプレゼント下さい」 「任10堂で我慢なさい」 ルカに笑顔を向けたメルクリィ、 「なごやーん。なごやーん。まだ肩は無事かお? 無事だったらこれをどうぞだお」 そこへガッツリが二枚の紙を差し出す。 『ペキン塗ったくり直後』 「これで大丈夫だお」 「今日も今日とて嫌な予感しかしませんがありがとうございますね!」 肩に二枚の注意用紙。傍らで少し恥じらいながら櫂が「メリークリスマス」と機械男に呼びかける。彼そっくりの手作りフェルト人形(真空管の部分は内臓のライトでピカピカ光る仕様&関節部分が動く無駄にハイクオリティ)を差し出して。 受け取ってもらえるかな。そう思った直後、感謝の言葉と高い高ーい。 「Breaaaaaaaaak!!! フィッァァァアアアアア!!」 「ぶれええくふぃあああ」 輝くアレな閃光はノアノアによるもの。ルカルカと一緒に伍長の前で例のアレ。 「はわー! 毎回色んな意味で凄くなっているのであります!」 「へっへー! よしマキちゃん、今回はこれ、やるよ」 そう言って伍長に渡すのはTHE☆Big首領のストラップ。大事なダチから貰ったモンと同じモンだぜ、と口角と吊り上げた。 そんな例のダチさんは。 「はい、あ~ん」 多美特製大きなハート型のチョコレートケーキ(よく見ると表面に無数のキスマークが)を彼女の手で一口ずつ。 「美味しいですな!」 ニコニコ笑うメルクリィ。高鳴る多美の心。 初めてブリーフィングルームであなたを見た時から好きになってしまったの。 クルン、と椅子を回して振り返る、そして私を見てにっこり微笑む爽やかな笑顔。 その映像が、目を閉じると何度も何度も再生されるんです。まるで壊れたレコーダーみたいに…… 「全部、食べて下さいね」 彼の口元に付いていたチョコを、そっと指で拭って舐めながら。 (本当は直接なm……そんな事できません!) セルフ赤面、顔を両手に埋めて。 どうしましたー?ケーキをもさもさ食べているメルクリィの穏やかな眼差し。 それは『子供』を見守る慈しみの目―― 頑張れ、恋する乙女超頑張れ。 ●赤の人達1 赤の女王の前、ミルフィを連れたアリスは空色のエプロンドレスのスカートの両裾をちょんと摘んでご挨拶。 「赤の女王様方にはお初にお目にかかります。えっと、お話を聞きまして、僭越ながら、私の手作りですが……女王様にお気に入り頂けるかどうかですけど、宜しければ♪」 差し出したのはクリスマス風に着飾った可愛いトランプ兵のぬいぐるみ、ヴェールの奥で笑んだ女王は長く細い手で彼女の髪を優しく撫でた。有難う、と。 「今日は一緒に楽しみましょう?」 女王の指示で踊り歌いだすトランプ達、彼等と手を繋いでアリスははしゃぎ、ミルフィは愛刀【牙兎】で華麗な剣技や演舞を披露。 (小さい頃に童話で読んだ、おとぎの世界みたいです……♪) 「女王様はじめまして~。もしかして赤以外の色があるこの世界ってカラフル?」 楽しげな宴を見ながら話しかける凪沙、女王は「そうかもしれないわね」と微笑んだ。 愉快な音楽と笑い声の中、先日女王と会った大和がやって来る。あの時と同様の赤い赤い服で。 お久しぶりです。お元気でしたか。挨拶を済ませ、振り返って見た方向。二枚のトランプ。 「大和様、お久し振りっす!」 「おー、おヒサおヒサ」 ダイヤのA、ハートの7。二人は大和の手を取り引っ張った。踊りの輪へと。 「他の方々のことも紹介してもらえるかしら?」 「んー。ダイヤのKはドスケベでスペードのJはドスケベ俺もドスケベ」 「ドスケベばっかり!?」 「冗談でさァ」 笑う。笑顔。一緒に歌って踊りながら。 (今宵限りのこの宴。心一杯楽しみましょう!) 輝く笑顔にエレオノーラはうっそりと目を細める。トランプ達と目が合えば手を振って、音楽の中、唇の動きで言の葉を。 お久しぶり、もう迷子になってない? 「なななってねーヨ!」 「以下同文でっす!」 ムキに返しちゃって。大和とも軽く挨拶を交わし、そして視線を戻した先には赤の女王。 「先日以来ですね女王様。素敵なパーティに、お招きありがとう」 「うふ、来てくれて嬉しいわ」 「お友達を紹介したいのだけれど、」 と、エレオノーラの傍らにはティアリアの姿。ハロウィンで着たハートの女王の衣装。 「ごきげんよう、赤の女王。一度お会いしたいと思っていたわ」 「素敵な衣装ね。嬉しいわ、宜しくね」 挨拶も程々に、今宵は宴。手元には公爵の絶品菓子。上物のワイン。 「ふふ、この良き出会いに乾杯しましょう」 「色々あったけれど、今日はお祝いしなきゃね。飲むわよー」 掲げる葡萄酒。奇なる出会いに談笑も大きな花が咲く。 「もしよければ『赤の世界』の事、教えて下さいません?」 「わたくしも『赤の世界』に興味が有るわ。良かったら教えていただけないかしら」 「赤の世界は私自身、とも言えるかしら。あれは私が押し広げて創り上げた世界なの」 「ふふ、やはり『その首を刎ねよ』とか言うのかしら?」 「言ってみましょうか?」 冗談な笑み。遠慮しておくわ、とティアリアはころころ笑った。そのまま続ける。 「わたくし、アナタとお友達になりたいわ。またお会いできるかしら?」 「あら。貴方を友人だと思っていたのは私だけだったのかしら? ……勿論、また会いましょうね」 ●団地1 サンタコスの二人。真独楽と伍長は手を取り合って再会にはしゃいだ。 「伍長、また会えたな! 元気だった?」 「うむ! マコも元気そうで何よりだ」 「えへへ、今日は住んでる所でよく遊ぶお友達と一緒。紹介するね!」 振り返った真独楽が笑顔で示した先。いつもより気合いを入れてデコレーションしたマスク。チョコレイトの様な斧を掲げて、ゑる夢の声が響いた。 「大きな戦いも終わった所。楽しみましょうね★」 マスクの奥からでも分かるゑる夢の笑顔、三高平団地の面々の笑顔。 「まこちゃん、ミーノだんちに住んでないけど誘ってくれてありがとうなの~」 「真独楽、誘ってくれてありがとう」 ミーノは真独楽にむぎゅっと抱き付き、レンもはにかみながら笑みを浮かべる。 「お、メルクリィメリークリスマしゅ……言い難いわ!」 「知りませんよ!」 メルクリィに逆ギレていたレイラインも視線を戻し、真独楽を手招き。なぁに、傍に来た彼へレイラインが手渡したのは―― 「真独楽に似合いそうな赤い手袋があったのでクリスマスプレゼントじゃ♪」 誘ってくれた感謝の気持ちを込めて。 「え、いいのっ?」 「なぁに、こんな楽しい場に誘ってくれたお礼じゃ。礼などいらんぞよ! メリークリスマスなのじゃ♪」 「ありがとうだぞーっ」 思わず彼女に抱き付いて。 さぁ始めようドンチャン騒ぎ。今日は一緒に楽しもう。 「ここにあるお菓子……これは食用、なんだよな? こ、これ全部食べられるのか!?」 「コケー! たくさんのおかしなのである! おいしs……。なんであろう、見た目がなんかこう禍々しいのである……」 「極上と噂のアノ人のお菓子を食べねバ……だガ、この色と形はとってモ……何と言うかダイエット向きなのダ……」 異界のお菓子に戸惑うレン、恵、カイ。「いやしかし、見た目より中身!きっと味は美味しいはずなのである」「だが今日はダイエットではないのダ」なんて尻込みする彼らへ、真独楽は目を閉じさせて順番に「あーん」と食べさせるチームプレイ。 「見た目はアレだけど超おいしいから……それさえクリアしたらダイジョブ!」 なんて言いながらもトラウマになりそうな図を写メで撮影。 「コケ! このお菓子は美味しいのである! これは貴殿も一口食べてみるといいのである!」 「う、う、うま~なのダなのダなのダ~!!」 一口食べれば天国至福。次々進んでいく。 レシピはなんだろう?悠里は興味深げに手に取ったお菓子を眺め、 「おいしぃぃぃぃぃぃぃぃっ! ねぇねぇ、これおいしいよぉ♪ もうあれだよねぇ太っちゃうとか気にしてたら損かもぉ」 愛華はがぶがぶ青いゼリー的な物に夢中、 「このツリーや机もお菓子なのか? ……おお。美味しい。再生した!」 疾風も不思議体験に目を丸く。 一方でウラジミールはほどほどに食事を楽しみながら酒をお供に大佐と軍事や兵器の話を、由利子ははしゃぐ子供達を優しい眼差しと笑顔で見守り、 「食べて食べて大きくなって アークビルより大きく育てよ?」 火車も穏やかな笑顔を浮かべてミーノや真独楽ら年下の子供達を肩車。しかしお菓子に噎せた悠里の姿には大爆笑。 「甘いものは別バラって言うガ、また料理が食べたくなったのダ。チキン食べるのダ」 「チキンうまいのじゃ♪」 櫂とレイラインの視線の先には鳩山さん。 「ところで、鶏肉料理はないであるか?」 アンタの事だよ鳩山さん。 「おかし作り! がんばるのっ。おかしがつくれるよーになればミーノのやぼーにいっぽぜんしんなの~」 得意気に笑いながらミーノは真独楽を連れて由利子の下へ。手には火車に肩車して貰い頑張って取った例のお菓子。 「なんだか凄い形の御菓子ばかりだけれど……」 由利子へ差し出されたお菓子、訝しみながら一口食べればあら美味しい! 「そうね……外見は再現できそうだし、しっかり味を覚えていかなきゃ」 笑顔。 にこ、にこ、にこ、周りは笑顔で一杯。 「ほゎ~たのしいの~おいしいの~」 そしてなんだかとってもあったかいの。 しかし後日、由利子の殺人料理と異界のセンスが合わさり、三高平団地のおやつの時間に阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されるのは別のお話である。 ●758と! 高速で走って来る白。 「メルクリ~ィ、さんっ! わっ!」 手を伸ばしても届かないけど、背後から精一杯背伸びしてルアが驚かせてみればメルクリィは目を丸くして振り返った。 「あぁルア様! ビックリしましたぞー。メリクリ!」 「えへへ~! メリークリスマスなの~!」 きゃっきゃと周りを回る回る。それから正面で止まれば、手渡すのはプレゼント。 「あのね、メルクリィさんにクリスマスプレゼントを持ってきたのっ! はいっ! どうぞなの!」 それはウサギ柄の毛糸リストバンド。手首の部分が寒そうで……そこを暖めるリストバンド。 「メルクリィさんメタルフレームだから、冬の寒さは厳しいんじゃないかって。手袋だとお仕事の邪魔になるかもだから、リストバンドにしてみたの! 可愛いウサギ柄なの♪」 見上げる彼は満面の笑み。 「ありがとうですぞー♪」 2mは優に超える高い高い。ぐるんぐるん。それにキャッキャと喜んで。 「なんか……小学校の……遠足の……引率の……先生みたい」 ルアを下ろしたメルクリィへ、エリスが見上げつつそんな事を。 メリークリスマスと掛けられた言葉に一つ頷き、スッと差し出したのは皿に盛られた蛍光色で七色に彩られた三角錐に似た形状の物体。紅茶が入ったカップ付き。 「折角だから……オカシな公爵の……デコレーションケーキを……食べて。さっき……食べたから……味は……保証する」 いつも大変そうだから。 「食べて……元気になって」 「フフ、いつもありがとうですぞエリス様」 お礼にぎゅーっとハグ、機械男が食べる様をじぃっと見守って。 しかし食べ終えるのを確認したらどこかにふらふらと。 その華奢な背を見送ったメルクリィへ呼びかけたのは竜一と快。手招きして隣に座らせ、 「守護神だけならば平穏に終わる事もあっただろうが……そうはさせるか! メルクリィスマス! まあ、飲め飲め! 無礼講だ!」 「俺は普通に酒を酌み交わしたいだけなんだけどね……メルクリィクリスマス名古屋さん! さあ、クリスマスだ、飲もう!」 竜一の手には白ワイン、快の手には赤ワイン。 「ぐぐっとやっちゃってください」 「俺は未成年なので飲まないよ! 炭酸飲料飲むだけだ」 そんな笑顔の裏には。 (見てみたいじゃないか、名古屋さんが酔っ払ったらどうなるか!) (飲むより飲ませるのが好き。さらにいえば、酔って迂闊な発言をするのを聞くのが好き。逃がさないぜ!) ありがとうですぞーなんて悠長な彼にガンガン飲ませる。無駄に洗練された無駄の無い無駄な連携。 しかし……アレ?酔わない? 竜一とメルクリィの勧めで「どっちが勝つかのチキンレースだ!飲んじゃうよ!」と自分も飲みながら快は思う。 そして気付かなかった。竜一の興味が守護神にも向けられていた事に。 (酔うとどうなんのかね、二人とも) 飲ませまくって飲ませまくって。 で。 「どうして竜一に彼女が居て、俺には居ないんだろうなあ。畜生!」 ダメダメな感じに泣き言を言い出す僕等の守護神。 「アッハッハー生きてるだけでボロモーケですぞですぞ千堂様と結婚するといいです快様はイケメソなのでアレのDTが守護神のナイアガラがバックスタブですよぉぉぉハハハハハ韮崎市万歳」 すげぇ上機嫌で快の背中をばしばし叩くフォーチュナさん。 「ハッ!? 飲ませたのはいいが、もしか、酔っ払いたちの世話をするのも俺の役目!? は、はかられたー!」 今頃気づいた竜一君。 「未成年の飲酒は感心できんな?」 そんな彼に後ろから飛び付き抱きついたのはユーヌ、そのままキュッと……抱き締めるかと思いきや竜一を締め落とし。 「む。ホントに落ちるとは……情けないな?」 まぁ仕方ないので膝枕ぐらいはしてやろう。 (お菓子しかないってのが残念だけどまぁ、クリスマスだしそんなもんかね) それから奴は相変わらず人気で集られているな、と。 「うっす、名古屋のニーサン。メリクリ」 瀬恋は見繕ったお菓子を差し入れに。いつも食べ物のイベントを開催してくれるからありがたい。 「日頃世話になってるからお菓子やるよ。アタシが用意したんじゃないけど」 言いながら肩のアンテナにドーナツを掛け掛け。 「瀬恋様ー! メリクリですぞーアハハハーいつもありがとうございますねぇー任務お疲れ様ですぞ最近どうですかメリークリスマスですぞフハハー」 なんかすげぇ上機嫌だ。高い高いに何とも言えない気分になりながら思う。 「そう言えば古賀のニーサンがいないとこで名古屋のニーサンと会うのは初めてだね、別にいつも古賀のニーサンとべったりって訳じゃないけど、たまたまそうなってるね」 「ん? 一回だけ源一郎様無しでブリーフィングルームのアレが、モドキの確か……あ、そうそう源一郎様源一郎様。ちょっと会って来ますんでメリークリスマスですぞアケオメ」 「ほんとアンタどうしたんだ」 ●兎と鴉 赤を基調にしたワンピース。いつもより頑張っておしゃれ。 正面には挨拶を済ませた赤の女王とオカシな公爵。隣には大切な人。黒いタキシードもビシっと決まっていて、いつもと違う格好で新鮮だ。 その所為だろうか、いつもよりもドキドキするのは。 「うさ子さん、お手をどうぞ」 ヴィンセントの声にうさ子はハッと我に返る。差し出された手にそっと手を。あったかい手。握ってみると、握り返される。 人前で踊るのは少し恥ずかしいけど、彼と一緒ならきっと大丈夫。 ヴィンセントのリードに任せて、ふわり。赤い宙へ。赤い中へ。輝く中へ。 女王の目配せで始まる音楽。しっとり、ジャズのリズム。 それに乗って、空の中で、飛行しながらのダンスはちょっと足元が覚束ないから、彼に捕まって身体を支え。彼もしっかり彼女の手を握って。 「飛行するのは初めて、ですよね。もしうさ子さんに翼があれば、きっと僕より上手に飛べるようになれますね」 「そうかもね」 でも自分も飛べたらきっとこんな風な事には――なんて思う。飛べたらとべたで素敵かもしれないが、今も、とっても、素敵だから。 赤い兎と黒い鴉は踊る。踊る。 リズムに空の中。赤の中。二人を包む赤い雪の中。 彼女の赤いワンピースが赤い瞳に映えてよく似合う。いつもと違う格好で……その所為か、いつもより綺麗に見えるのは。胸が高鳴るのは。どうしても彼女とくっつきたくなったなったのは。 でもそんなやっぱり何だか小恥ずかしくって、赤くなってそうな顔を見られたくなくって、振り付けの振りをしてお姫様だっこ。 零距離で聞こえる互いの鼓動にもっとドキドキしながら。 素敵な時間。でもパーティーは楽しまなくては。皆楽しいのが一番だ。 二人のダンスに見蕩れていたトランプの兵にも声をかけて、悪戯な笑みを浮かべて、少々強引に踊りながら巻き込んで。 一緒に踊る 一緒に回る 回る 回る 回る。 ●黒ミリタリー 「大佐~、伍長~。元気だった? 白の軍が変な作戦とか仕掛けてこなかった?」 凪沙と和気藹々、黒軍の二人。 そこへ走ってやってきたのはサンタ服のツァインだった。 「大佐~! お変わりないようで、メリークリスマスです!」 「やっぱり探してたか。大佐と伍長は初めまして。ツァインから話聞いて一度お会いしたかったんだ」 少し遅れて翔太も参上、敬礼を。 「俺はコイツの親友で上沢翔太。アークに所属している学生の学校制服で失礼するよ」 「黒軍の大佐だ。ツァイン君には世話になっている。宜しく頼む」 「伍長であります! 宜しくお願い致しますであります!」 敬礼を返す二人、そんな二人に奥さんの分も含めてノートとペンをプレゼント。 「日記用に、またあれば持って来て披露も良いかと」 「フム、次は彼女も来れたらよいのだが」 「母ちゃ……上官殿はお忙しいのであります!」 そう答えた伍長はふと視線に気付きそちらに目を遣った。頬を染めたツァインがいる。 「伍長殿は……その、とても良くお似合いで……」 「そうかそうか」 あっれーいつの間にか目の前に伍長パパンがいるぞ。 「ハッ――?」 「我が娘に色目を使う者は破壊あるのみ!!」 お約束のロケット断罪パンチ。 「またかお前はー!」 翔太も高速多角蹴りで援護。 錐揉み大回転でぶっとんで逝ったツァインは哀れツリーの天辺でお星様になりましたとさ☆ それを見遣って視線を戻し、りりすは黒軍の二人へ笑いかける。 「こんな短い間に再会するなんて、運命の赤い糸とかつながっているのかね。さ、伍長くん。僕の胸に飛び込んで来るとイイよ。まぁ、来ないなら、僕の方から行くけどね」 「はわー! また出たー!」 「おいおい人をバケモンみたいに。半分バケモンだけどさ。まぁ夜は長いんだ。さぁ、再会を喜ぼうじゃないか」 取り敢えず抱き締める――りりすの中性的で幼い見た目に「娘にお友達が出来て良かった」と大佐も断罪パンチは不必要と見ているらしい――フリをして、伍長にマフラーを巻いてあげ。 「コッチは寒いだろう。帽子にあわせてみたんだけど。君にあげるよ。クリスマスだからね」 「……!」 マフラーを見る。りりすを見る。微笑ましい表情の父を見る。りりすを見る。ちょっとまごつく。それから、 「――っ。」 りりすをぎゅーっと。 そこへ爽やかに咲逢子が敬礼と共に。 「メリークリスマスであります! 大佐! 伍長! また会えて、嬉しいです!」 「はわーー!!」 慌てて飛び退く。笑う大人二人、ハテナの咲逢子、顔を真っ赤に伍長。 「大佐、今日は伍長と一緒に遊んでも宜しいでしょうか? あの、折角なので友達同士で遊ぼうかと思ったので……」 「ハイッ喜んでであります咲逢子少尉殿ーッ!」 「だそうだ。遊んでやってくれ」 苦笑の大佐、伍長は早足で咲逢子について行く。 「しかし公爵は凄いな!」 二人でお菓子の前、一緒に談笑。 「こっちの世界の年頃の娘は、こうやってお菓子を食べながら集まってお喋りするものなのだぞ!」 「成程……! しかし公爵殿のお菓子は非常に美味であります」 「私は、大佐や伍長とまた会えて嬉しい限りだぞ! 我侭を言うと、また次が会ったらいいな、って思う。そしたら私はまた必ず来る!」 お菓子を頬張っていた伍長が顔を上げた。徐々に緩まり、笑んで――ハイ!と。 一方、やっとこさ帰還したツァインは大佐達へプレゼントを。大佐には黒い十字架が描かれた金属製ライター、伍長には黒いクマのヌイグルミ。伍長には後で渡しといて下さい、と。 続けてサンタのアルバイトで編み出した新技を披露。会場の真ん中辺りに移動し、神経を集中させ――全ての力を出し切る! 「いきますよぉ~! サンタッ……クロォォーースッ!!」 煌めくクロスジハード(Xmasバージョン)。明滅する赤と緑と黄の光が会場を彩る! わぁっと湧く会場、拍手に口笛。りりすも緩い笑みで見守りながら、しかし瞳に戦意を宿して大佐へと。 「さて、そんじゃ大佐、今日もヤろうか」 「っくく、言うと思ったよ」 「僕に勝ったら、ちゅーしてあげるよ」 「おいおいそれだけは勘弁してくれ。銃殺どころじゃ済まなくなる――私の妻は黒軍の総帥なのだから」 そういや、伍長君のおかーさんて、どんな人なんかね。何か大佐より階級が上なイメージあるけれど。 そう思っていたりりすの謎が解けた瞬間。 ●赤の人達 前と同じ真っ赤な恰好。迷子にならないよう、あひるとシュプリメはぎゅっと手を繋いで、女王達の前へ。 同時にスカートの裾を摘まんで御挨拶すれば、久しぶりねと女王は二人の髪を優しく撫でた。 「ダイヤのA! ハートの7! いらっしゃい。お客様よ」 女王が呼べば、二人はスッ飛んで来た。嬉々とはしゃいであひるとシュプリメに抱き付いて。 「わ、わ……! あのね、あひる、お礼が言いたくって……二人のお陰で、助かったわ。あの時は、助けてくれてありがとう……!」 「格好よかったわ、あの時の貴方たち。……私からも、ありがと」 ぎゅーっと返し、ほっぺにちゅ。 微笑ましい光景。ユーヌも女王達に挨拶を。 (赤すぎる衣装はアレだと思っていたが、クリスマスには丁度良いな。サンタの女王にも見えてくる) 明日になれば季節外れな気分な見た目だが、今日にはとても似合ってる。喋ると首を刎ねられるかもしれないので心の中で。 次いでこっちに気付いた例のトランプ達へ。 「似たようなのが多くて判りにくいな? 微妙に没個性だし」 「俺以外は皆ドスケベでっせ」 「先輩は嘘吐きっす」 「はは。まぁ、トランプが不揃いにならなくて良かったな、足りないと据わりが悪い。しかし、吹けば飛ぶような兵隊で大丈夫なんだろうか?」 「飛びませんっす!」 「数で勝負するンで」 「そうかそうか」 くすくす笑って、手を引かれる。あひるとシュプリメも一緒に、踊りましょうと。 (踊りは上手じゃないけれど……) わんつーわんつー。はにかみ笑いを浮かべて、シュプリメは踊る。皆と踊る。 ●758と!2 踊って疲れてちょっと休憩。 「ね、この机、食べられるんだって……! 端っこ、ちょっと食べてみよっか…!」 「あ、あひるさん、そんな、はしたないわ……!」 いくら甘いもの好きのシュプリメも机は、と躊躇する。しかしその前であひるが机を一切れ、一口。 「ん、甘くて……おいし……! シュプリメも、どう?」 「貴方って、意外とチャレンジャーなのね……」 肩を竦めながらも自分も一口、至福の味。 「えっ。美味しい……! なんだか、不思議ね。ふふっ」 微笑ましいその一方で。 「然し何時も隅の方に居るな、慎ましいと評するべきか、それとも我と同じく楽しむ皆を見る方が良いか?」 源一郎は隣にやって来たメルクリィへ視線を向けた。 「えー? はいー。皆々様の幸せが私のガソリンですぞー」 そうか、と頷く。やけに上機嫌な予言師はずっとへらへら周りを見守っている……また開いた間。静かな時間を共有するのも悪くない、が、折角の宴だ。楽しまねばと思うのだが、正直なところどの様に誘い遊べば良いか悩んでいて。されど、悩んでいても仕方あるまい。 「メルクリィ、共に踊ってくれぬか」 「勿論ー構いませんぞー」 手を引くつもりが手を引かれて、上機嫌にもふもふ頭を撫でくり回されながら。踊りの経験はないが如何にかなろう。そう思いながら。 そして『今日位は何時もより素直な心持で言おう』と思いながら。 「メリークリスマスメルクリィ。今後共に、宜しく願う」 ステップを踏む最中、軽くハグを入れて、笑んだ。 「こちらこそ」 抱き返されて、 「これからもずっと一緒に居て下さいね! 大好きですぞ源一郎様ー♪」 高い高ーーい。 ●758と!惨 で、酔いが醒めた訳だ。 色々やってもた気がする。メルクリィがボーっと座っていたそこへ、 「てばさきーきたぞー」 「ぞー」 駆けて来たアンダーテイカー姉妹。前後からドフッと角タックルでボディを挟み込む。 「どーん」 「ゴフッ!」 「どうした、名古屋、顔が固まってるぜ? まあ、分かるよ? 魔王分かる。山羊の脚力は世界一ィィィィイイ!」 パリーン。 「ゴフッ!!?」 どさっ。 「いえーい。また、つまらぬものを割ってしまったわ」 血をダクダク流して倒れたロボを余所にハイタッチ。 「はいはいお怪我ですねぶれいくふあー」 「またひどい目にあったのね。いたいのいたいのとんでいけよ? ぶれいくふぃあああ」 「お、ルカはやさしいなーねーちょんお前が優しく育って嬉しいぜ。んじゃーしょーがねーな僕も人肌脱ぐぜ!」 脱衣と共に輝く『聖なる』光。 割れた破片をセロテープで何とかしながら立ち上がるメルクリィに手を貸して、ノアノアはその頬にぶっちゅー!(´3`) ルカルカは持って来た公爵菓子をその口元に押し付ける。 「毒見よ、テバサキ」 「……!?」 押し付けすぎで喋れない。方や魔王がちゅっちゅちゅっちゅ。一旦姉妹の角を掴んで引き剥がして、一先ず嚥下。 「ハイ、美味しいですぞルカルカ様」 「おいしいの? ならルカもたべるの」 もぐもぐ。 ごっくん。 「おいしい。ねーちょんも」 押し付け押し付け。一緒にもぐもぐ。それからメルクリィにちゅっちゅするねーちょんにおねだり。 「ルカもちゅっちゅ」 「ルカも? 全く甘えん坊だなあハハハ、愛いやつめ」 ほっぺちゅー! 仲良い事は良い事だ。 微笑ましく見守るメルクリィ。その一方で公爵とエーデルワイス。 「公爵、超おひさですよ!」 前回のお礼と、それからお誘い。 「今回は歌って踊って食べて飲んで笑ってヒャッハーしましょう。百曲程、お相手をお願いできませんか?」 「喜んでデスー」 「ではまずは音楽を……」 見遣るメルクリィの肩。目が合った。 「さぁ、メルクリィ。ロマンでカオスでグーテンアーベントな曲をプリーズ――あ、逃げやがった!」 意外と速くてちょっと腹立つ。 代わりにトランプ達の音楽、公爵とお菓子と一緒にダンシング。ヤバいなぁ公爵の世界楽しそう。 「公爵、短期留学できないでしょうか? もっと楽しみたいのですよー」 ンン~?と小首を傾げる公爵。返事をしたのは赤の女王――テレパシー。 『フフ、それだけは止めておきなさい。確かに『お菓子の世界』は素敵な世界……争いや死という概念が無いのですから。 誰も憎み合わない。誰も悲しまない。誰も傷つない。そんな事の存在すら知らない。 楽園――楽園すぎるからこそ二度と帰れなくなってしまうでしょう。貴方は貴方の世界で最高の幸せを見付けなさい』 ●VS大佐 開けた所。大佐と対峙したりりす、更に三人。 「楽しまれている中、いきなり失礼します。今後の為にも守りたい人がいるので少しでも経験を積んでおきたいのです、手合わせお願いできませんか?」 初めてのアザーバイド。対人対獣戦闘ばかりのリーゼロットには色々と結構な驚きだ。パイルシューターを手に持つ。 「後学の為! 軍人の精神を叩きこんで頂きたいですっ。一手ご教授頂きたいです」 「たいさ!! おたのみもーすのです! そのむね! おかりしたいのです!!」 イーリスもヒンメルン・レーヴェを構え、未來はガントレットを搗ち合わせ、りりすも愛憎殺戮エゴイズムを構えた。 「良し――良し良し。いいぞ、来い。まとめて来い。かかって来い!」 大佐も武器を開き、自己強化する彼等を真っ向から見据える。 「ゆーしゃスーパーイーリスなのです!! 握手なのです!!! いざ! いくのです!」 一礼、の、次の瞬間。 一斉に飛びかかる、振り上げる、引き金を引く! 多分一蹴でしょうけど――未來はりりすと超速で渡り合う大佐を見据える。姿を目で追う事すら出来ないけれど。 勝てないことは分かっているのです――イーリスは稲妻を纏った天獅子を振り上げる。信じている。自分より強い相手に挑む時、見えるものがある事を。 「ひっさつの! くりすます! イーリス・ドライバーなのです!!!」 大佐から放たれた凄まじい弾幕を突っ切って。こぶしとこぶしでつくるゆうじょう!それが!くりすますなのです!! 何度立ち向かっても何度立ち向かっても転がされてしまう。それでもその数だけ立ち上がって。 「うぐぐ、うそなのです。つぎは!うけるのです!!」 拳で頬を拭う。仲間と共に何度でも。 この戦いの中から――何か、何かを絶対に、掴む! ●血まみれ姫よ永遠に 「ユーリ! 今度一緒にこれ作ろう、お菓子の家。小さいのでいい」 お菓子の家ではしゃぐレン。まだまだ子供だね、なんて悠里は微笑ましい気持ちになった。だが、 「作ったら、花子にも食べてもらうんだ」 レンの言葉にハッとする。 楽しんでいるけれど――心の奥底では、誰もが。 先の戦いで団地の仲間が亡くなった。それは弓弦の尊敬する人の母親で。いつもにこにこと優しくて。 「花子も、一緒に来たかった」 「……寂しいな」 俯くレンの肩を抱える真独楽の目にも、涙。 みんなあの人に懐いていたから……由利子は思う。これからももっと、私がしっかりしなくちゃいけないわよね。 「『思い出つくんなきゃね』ってな事言ってたっけな。悲しんで貰えるってのは、そりゃあ悲しんでる連中の『良い思い出』ってヤツに含まれてるって事だ」 二人の子の傍にしゃがみ、火車はその頭をわしわしと撫で。 視線は彼方――遥か、彼方。 「見事だった その内行くからそっちゃで元気にやっててくれ。お疲れ立花……またな」 「一緒に過ごせて、すっごく楽しかったよ」 「その在り方を忘れたりしません」 目を閉じる。彼女はここには居ないけれど、いつも自分達と一緒に居る。 だからこそ――いっぱい楽しむのだ。皆で一緒に食べて話して、笑って泣いて、また笑って。これからも。 彼女だってそれを一番望んでいる筈だ。誰よりも優しくって、誰よりも強い、自慢の『仲間』だから。 「僕達は幸せになるんだ。それが生き残った僕達が出来る恩返しなんだから」 悠里は泣きそうになるのをぐっとこらえ、笑顔を。 「メリークリスマス! みんな今日もこれからもずっと楽しんでいこう!」 彼女は居た。確かに『居た』のだ。 変わらぬ笑顔で、いつまでも。 「こんな日が永く永く続きますように」 未來は八百万の神様にお祈りを。ゑる夢は公爵のお菓子を手で包んでそっと空に捧げた。 弓弦が捧げた小さな鈴が鳴る。 幸せを呼びますように、と。 ●しっとり 「よう大佐。メリークリスマス、だ」 戦い疲れて大の字の仲間達から少し離れた位置。楽しげな様子の大佐へ、武臣が声をかけた。 「めりー……?」 「こっちの世界じゃ、今日はこう挨拶すんのさ」 成程、と頷いた彼へ差し出すのはとっておきのウィスキー。一緒に呑もう、と。返事はニヤリと。 「奥サンはまた留守番かい?」 酌み交わしつつ、大佐の過去の戦いや、家族の悩み、オトコの悩みをこっそり色々話しながら。 「総帥だからな……そう自由な時間が無いのだ。私は異次元特別調査隊隊長なので楽に来れるのだが」 因みに隊員は私と娘だけだ。なんて付け加え。 「そっちはどうだ」 「まぁ、ボチボチだ――少し前にデカい戦いがあった」 「そうか。だろうな、また一段と成長したように見える」 これからも頑張れよ。その言葉に薄く笑んで、彼に自分が良く飲むジャパンウィスキーと……長靴入りメンソール系の煙草の詰め合わせ(奥さん用)、長靴入りお菓子の詰め合わせ(伍長用)。 「いいのか?」 「クリスマスだからよ……まぁ細かいこたぁいいや」 「ならば武臣にもこれをやろう。めりーくりすますだ」 渡されたのは煙草。彼曰く上物の煙草らしいが黒軍の味覚センスを省みれば甚だ怪しいものだ。が、有難く頂く。 「異世界のヤツとでもわかりあえる。きっと、他の世界にもよ、一緒に旨い酒呑めるヤツいるってよ……アンタらと出会ってそう思ったんだ」 また会う日まで、お互い達者でやろう。 ●ハッピークリスマス 楽しかった宴もお開き。 今日はお終い。けれど、きっとまたいつか。 扉をくぐりながら笑顔で手を振って、手を振って。 そして扉が閉じる。煙の様に掻き消える。 そこはいつもの三高平――冷たい夜の風に吐く息は白い。 「楽しい時間だった」 ウラジミールは吐息の消えた彼方を見遣り、負ぶっている寝てしまった者を背負い直す。 さぁ帰ろう。 また明日がやって来る。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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