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<クリスマス2011>光と氷上のクリスマス

●告知
『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000018)はリベリスタ達を集めて、笑顔で話し掛けてきた。
「もうすぐクリスマスですね。皆さんは何かご予定ありますか?」
 はて? と首を傾げるリベリスタ達。いったい今回はどんな用件なのだろう。
 もしかして、クリスマスに仕事? 一行の心に嫌な予感が過ぎる。
「あ、違います。違います。今回は仕事の依頼じゃありません」
 慌てて手を振る和泉は、リベリスタ達へとチケットを順に渡していく。
 チケットには『特別招待券――三高平特設スケート場』と書かれてある。
「三高平公園に期間限定のスケートリンクができたんです。
 もし、クリスマスにお時間があるならどうぞ、と思って」
 何でも公園の広場に、クリスマス時期限定でアイススケート場を作ったらしい。
 しかも夜間限定で、周囲もライトアップされるそうだ。
「スケート場だけじゃなくて、夜間には公園中の木々が全てイルミネーションされてるそうです。
 滑るのはちょっと……って方も、ロマンチックなデートを楽しめると思いますよ?」
 イルミネーションで装飾された光る木々をバックに、スケートを楽しむ。
 公園を歩けば柔らかい色取り取りの光が明滅して出迎え、なかなか幻想的な雰囲気を与えてくれるのだとか。
 和泉はどうするのだろう。ふとリベリスタが尋ねてみる。
「私、非番で予定もないから、少しだけ滑りに行こうかと思ってます。こう見えてスケート得意なんです」
 彼女は少しだけ自慢げに小さく笑み、手を振ってその場から去っていった。
 
 受け取ったリベリスタ達は様々な反応を示していた。
 恋人とのデートに使おうとする者。
 これを使って愛の告白しようとする者。
 友達と純然に遊びに行って楽しもうとする者。
 ストイックに一人スケーティングようとする者。
 そして、公園に集まるリア充共を撲滅しようとする者――。
 
 それぞれの思惑が交差した、クリスマスが始まる。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ADM  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年12月31日(土)00:00
 ADM(あだむ)です。クリスマスの全体依頼、舞台は三高平公園です。
 広場に特設スケートリンクがクリスマスの夜間限定で開設されていて、ライトアップされた木々をバックにスケートが楽しめます。
 公園の木々はイルミネーションで飾られ、園内を歩くと天の川の中を進むような幻想的な光景が広がります。
 ライトアップされているので、夜でも光源は不要です。
 
 その中でリベリスタ達は、それぞれのクリスマスの夜を過ごします。
 デートでも、告白にでも、友達同士でも、一人ぼっちでもOK。
 以下のようなシチュエーションプレイが楽しめます。
 
1.周囲の木々の電飾をバックにし、特設スケートリンクで思う存分スケーティング
 スケートリンクの近くには、休憩スペース等もあります。ご自由にご利用ください。
 
2.イルミネーションに飾られた木々の公園で、ロマンチックな雰囲気を楽しむ
 ベンチや散歩道等、公園内の好きな所を利用してもらって構いません。
 
3.スケートや公園デートで楽しむリア充共を、撲滅活動するさびしんボーイ&ガールズ
 ただし、必ず成功するとは限りません(笑)
 
 プレイングの頭に、希望する数字を入れて置いて下さい。
 お相手・ターゲットを指定する際には、名前とIDの指定をお忘れなく。
 和泉は1に少しだけ登場します。絡みたい人はご自由に。
 
 
 それでは、楽しいクリスマスを。
参加NPC
 


■メイン参加者 30人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
ホーリーメイガス
霧島 俊介(BNE000082)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ナイトクリーク
斬風 糾華(BNE000390)
スターサジタリー
エナーシア・ガトリング(BNE000422)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
ソードミラージュ
上沢 翔太(BNE000943)
インヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
スターサジタリー
リーゼロット・グランシール(BNE001266)
覇界闘士
付喪 モノマ(BNE001658)
ナイトクリーク
クリス・ハーシェル(BNE001882)
マグメイガス
イーゼリット・イシュター(BNE001996)
マグメイガス
土器 朋彦(BNE002029)
デュランダル
イーリス・イシュター(BNE002051)
デュランダル
降魔 刃紅郎(BNE002093)
ソードミラージュ
レイライン・エレアニック(BNE002137)
スターサジタリー
雑賀 木蓮(BNE002229)
覇界闘士
葛木 猛(BNE002455)
ソードミラージュ
リセリア・フォルン(BNE002511)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
覇界闘士
石黒 鋼児(BNE002630)
デュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
スターサジタリー
雑賀 龍治(BNE002797)
ホーリーメイガス
ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)
ソードミラージュ
津布理 瞑(BNE003104)
ホーリーメイガス
桃谷 七瀬(BNE003125)
スターサジタリー
黒須 櫂(BNE003252)
ナイトクリーク
ニーナ・ドール(BNE003317)
ホーリーメイガス
氷河・凛子(BNE003330)

●円舞曲
 楕円形の氷で出来たスケートリンク。周囲の木々がオレンジとブルーのイルミネーションで彩られた三高平公園。
 夜の帳が降りて、輝くようにライトアップされた氷の舞台は光を反射して滑走者達を光の渦に変えた。
 その傍らで移動店舗を持つ『猛る熱風』土器朋彦(BNE002029)が、スケートリンク場の休憩スペースに『TomorrowCoffee』をオープンさせている。
 用意した移動式電源でヒーターがあり、暖かい飲み物を飲みながら暖を取れる仕様。
「本音を言えば滑りたい所だけど、ま、焙煎にかまけて相棒を掴まえ損ねたからねえ」
 そんな言葉とは裏腹に、カップルや家族連れで朋彦の店は盛況の様子だ。
 熱々で出せるサイフォンを三台並べて、さらりと飲みやすい浅煎りのグァテマラを抽出する姿はソムリエさながらである。
「どうぞ、ごゆっくり」
 彼の微笑みは、来る客たちの誰かを暖かい飲み物以上に頬を染めさせているようだった。
 スケートリンクの組曲は絆を持った者同士、氷上を鮮やかに舞う円舞曲から始まる。
 
『つぶつぶ』津布理瞑(BNE003104)は、非番の合間に来ていた『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)と一緒にスケートを楽しんでいた。
 運動神経が抜群に良い事を武器に、遺憾なくスケート技術を披露する瞑。
(うちのスケートテクは天才といっても過言ではない。全ての美男子、美女子が釘付けになることだろう……)
 瞑はちょっとばかり自信に満ちた笑みを浮かべ、一緒に滑る和泉を見る。
 一方の和泉の動きもなかなかのもの。瞑程ではないにせよ、一緒にスケーティングを楽しめている様子だった。
「いつもサポートしてもらってるからよー、今日くらいはうちと一緒に滑るってのも良いモンなのだぜ」
「ありがとうございます。楽しいですよ」
 瞑の言葉に笑顔を返しながらも、ハイペースで滑り続けて流石に少し疲れたのか、和泉は少し休憩をもらって『TomorrowCoffee』へと入っていく。
 
『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)は久しぶりに来たスケート場で氷河・凛子(BNE003330)に出逢う。
 奇遇ねとエナーシアが声を掛けると、凛子が会釈を返す。
「三高平に来たばかりで相手がいないというなら一緒にどうかしら?」
 エナーシアと同じく一人で来た凛子にとっては一緒に滑る誘いは嬉しいもので、素直に頷きを返した。
 二人はスーツで滑りに来た為に、軽く二、三周滑った所で体が冷えてしまい、『TomorrowCoffee』へ暖を取りに移動する。
 エナーシアが暖かい飲み物を口先で冷ましつつ、露店で買ったパンを凛子に手渡した。
 受け取ったパンと紅茶をつまみながら、凛子はエナーシアと嵐のようなお互いの今までを語り合う。
「理不尽さなら戦場で、嵐なら弾幕の中で抜けて来ました」
 強気な返答を返す凛子に頼もしさを感じて、エナーシアは屈託なく笑った。
「これから度々お世話になりそうね、女医さん」
「私の力でお役に立てるように微力を尽くしますよ」
 エナーシアの笑顔に、にやりと微笑む凛子。
 戦場で紡ぐ事が出来ない絆が、氷の上で繋がれる瞬間だった。
 
 新しい絆が芽生える事があれば、元あった絆がより強固になる瞬間もある。
『やる気のない男』上沢翔太(BNE000943)は魔法瓶を持参しつつ、親友の『紅蓮の意思』焔優希(BNE002561)と共にスケート場を訪れていた。
 久しぶりのスケートだが雪国生まれの翔太にとっては慣れたものである。
「そういや、優希はそんなに経験ないんだっけ? 良ければ少し俺が教えるよ?」
「翔太は雪国育ちなのだよな。お言葉に甘えて学びたい」
 優希の返答に「ジャンプは無理だけどな」と続けた翔太は滑り出しからゆっくりとスケートを教えた。
 滑らかに滑り出し、ジグザグ進行、スピード落とす時はハの字。
 そんな翔太を真似て優希が同じようにジグザグ走行でスピードを上げ始める。
「ジグザグ走行、いけるぞ! お、おお? うわっ!」
 優希の声を聴き、バックに切り替えて止まった翔太が状況を見ると、優希がコーナーに激突している所だった。
 転んだ優希を翔太が起こして、二人は笑いながら休憩を挟む。
「俺が入れてきたホットコーヒーだ。温まるぜ」
 翔太が淹れてきたコーヒーは格別だ、と優希がコーヒーの温かさに目を伏せ、幸せとはこういうものだったなと思い出した。
 その様子に翔太が優しく笑い、彼らはこんな日常を守りたいと想いを新たにする。
 互いの存在が、絆があって二人はリベリスタとして立ち続けていられるのだから。
 
 掛け替えの無い戦友と日常を共にしたいと願うのは、彼らだけではない。
 途方もない戦場から生還した『影使い』クリス・ハーシェル(BNE001882)もその一人だ。
「くっ、スケートというのは案外難しいな。立つのがやっと……うわっ」
 バランスを崩したクリスを支えて、『百獣百魔の王』降魔刃紅郎(BNE002093)が彼女の手を掴む。
「最初は手すりに捕まるがいい。うむ、翼に頼ろうとしない所は偉いぞ」
 可愛い妹分であるクリスを刃紅郎が撫でて褒めると、クリスは素直に礼を述べた。
「ありがとう、刃紅郎。戦場でも氷上でも、どんな環境でも頼りになる」
 徐々にバランスが取れるようになってきたクリスをエスコートしてリンクの中央へ刃紅郎が誘う。
 クリスがどんなにバランスを崩しそうになっても、刃紅郎がまるで優雅なダンスの一部だと言わんばかりに華麗な脚捌きとダンスで支えた。
 優雅な氷上のダンスに付け入る隙はなく、二人は氷の上を華麗に舞っていく。
 クリスがバランスを崩さなければターンは不可能であったし、刃紅郎が支えなければ優雅な舞にはならなかっただろう。
 戦場で培われた信頼感が、暫しの休息と安寧を二人に齎す。
 氷上でも戦場でも二人にとっては同じ事であるかのようだった。
 
『TomorrowCoffee』でくつろぐ『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105)は、氷上の友達や恋人たちの幸せで楽しそうな顔を眺めていた。
 数々の人たちの笑顔を見られただけでも、亘は今日ここに来た価値があると感じている。
 ふと視線を変えると、和泉が珈琲を両手に抱えてのんびり休憩している様子が見えた。
 せっかくスケートに来たのだから。と、亘はダメ元で声を掛けてみる事に。
「和泉さん、よろしければ貴方の時間を少し自分に頂けないでしょうか?」
「あ、はい。休憩も終わったので、いいですよ」
 いつもの笑顔で優しく答える和泉に、亘は紳士的に先にスケートリンクに上がって手を差し出す。
 最初は優しく緩やかに、慣れてきたら激しく情熱的に円舞曲に合わせて軽やかに滑る2人。
「ふふ、こうして一緒にいられるのは本当に心踊り……温かい気持ちで一杯です。楽しい時間をありがとうございます。和泉さん」
 
 氷の魔法は、『銃火の猟犬』リーゼロット・グランシール(BNE001266)の頑なな心にも煌めきを与えていた。
「スケートですか、これから氷上で戦闘する事もあるかもしれませんしね」
 訓練の一環としてスケートの感覚を取り戻しにきたリーゼロットは気楽に足を動かす。
 彼女の平衡感覚は常人離れしているせいか、体重を上手く乗せて誰かにぶつかる事もなく氷上を滑っていく。
 そんなリーゼロットの脇を高速で滑り込んでいくのが『あほの子』イーリス・イシュター(BNE002051)だ。
「氷のゆーしゃ! けんざん!」
 そう言った傍から派手に転んだイーリスは、近くに居たリーゼロットを見ながら涙を滲ませて痛みに堪えているようだった。
「ざせつは、べつに、これはちがうのです、みすなのです。かっぱのさるすべりなのです」
 何を言っているか正しく理解出来なかったが、イーリスが大丈夫なのだという事だけを汲み取って、彼女は静かに頷いた。
「乗り越えるのです! まだ! 滑り続けるのです! どおーーん!!」
 子供らしい言葉で、楽しそうにまたはしゃぎ始めたイーリスを見送り、リーゼロットはひとつため息を就く。
「特に楽しい、とも思いませんが悪くは無いですね」
 リーゼロットも氷上の幸せが紡ぐ光の魔法にあてられたのかもしれない。
 氷と光が紡ぐ円舞曲はまだまだ繋がっていく。
 
●夜想曲
 円舞曲から曲調は変わり、今度は滑走する妖精と騎士達の為の夜想曲(ノクターン)へ。
 2人だけの甘い夜の世界は、クリスマスに溶け合い華麗なる調和を奏でていく。
 スケート場をみやって、『TomorrowCoffee』で特別にココアを作ってもらった『敬虔なる学徒』イーゼリット・イシュター(BNE001996)がくすくすと微笑む。
「やけにロマンチックな装飾に、愛を囁きあう恋人達。つがいの鳥達みたいね」
 海外では恋人たちよりも家族で過ごすクリスマスが大半を占める為、このようなクリスマス風景は彼女に取って珍しいのだろう。
  
 スケートリンクで待ち合わせをしていた『高校生イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)は『告死の蝶』斬風糾華(BNE000390)のいつも通りなひらひらの多いシルエットを見て、心配そうに視線を向ける。
「そんな格好で大丈夫?」
「ま、なんとかなるでしょ」
 何かある時は誘った自分がなんとかすればいい、そう夏栖斗は考えて糾華と手を取り合って氷上を滑り出す。
 糾華が氷上を滑走する姿は、蝶の羽飾りやふんわりとしたドレスと相俟って氷上に一輪の花を咲かせる。
(あれ?! あざっちゃん、スケート初めてっていってなかった?)
「あざっちゃん、マジで氷上の妖精みたい! 超かわいい!」
 興奮した様子で目を輝かせる夏栖斗の言葉に、糾華は褒められ慣れてない為か、呆れ声で顔をそらして横目で見やる。
「いや、ちょっと褒めすぎ……もぉ」
 呆れながらも満更でもないといった表情がそこには浮かぶ。
 そんな糾華に優しく微笑んで、夏栖斗は改めて手を差し出した。
「んじゃ、妖精姫さん、不肖の僕がエスコートしていいかな」
 エスコートする手をちらりと見てから取って、糾華も照れているのが相手に悟られないように彼女は微笑み返した。
「それじゃ、一緒に踊りましょ? お願いするわ、ナイト様?」
 麗しい姫君のエスコートはナイトの役目。
 こんな可愛い妖精を一人にしたら悪い蜘蛛が襲いかねないからね、と夏栖斗は心で呟いて小さな妖精姫と騎士は手を取り合って氷上を踊る。
 
 その横では『エア肉食系』レイライン・エレアニック(BNE002137)が卓越した反射神経と平衡感覚で、氷上を滑走していく。
 レイラインの華麗な滑りを見て『メッシュ・フローネル』霧島俊介(BNE000082)が愕然とした様子で滑り始めた。
「は!? 何で滑れてんの!?」
 初めてのスケートにとは思えない程楽しく滑走して、二人はいつもより調子をあげているようだ。
「楽しいのぅ、テンション上がって来たのじゃ!」
「おい、レインライン! トリプルアクセルやろーぜ!」
 テレビで見たフィギュアスケートを思い描いて、俊介が集中しながら通常ではありえない高さへ回転して周囲の視線を集める。
 俊介の言葉にレイラインも負けじと自らの加速を高めていく。
「にゃふふ♪ そんなもの楽勝じゃ! ……ソードエアリアル!」
 トリプルどころか前人未到のダブルスで行うフィフスアクセルを二人が舞い――顔面から急降下する。
 最早、転ぶというレベルではない。
 着地の事を全く考えていない二人の高速跳躍は、有り得ない高さから、氷上へ墜落した。
「にゃ!? にゃぎゃーーーーーぁ!!」
「ぎゃおおおおおおおおお!!」
 人類未達のフィフスアクセルは、顔面から氷にぶつかったまま氷上を滑ったせいで新しい見世物のように周囲から拍手が沸き起こる。
 
 俊介とレイラインが拍手を貰っている傍を通り過ぎたのは、『BlackBlackFist』付喪モノマ(BNE001658)だ。
 別段得意にしているわけではないが、運動神経のいい彼はそれなりに滑ることが出来ている。
 大怪我をしている誰かたちを見て、モノマは『超監督』羽柴壱也(BNE002639)の手を握った。
「ほら、危なっかしいから握っとけ」
 その手の熱量を自分の手に受け止めた壱也は、嬉しそうにモノマへ笑いかける。
「は、はいっ! えへへ……っ!」
 ライトアップされた木々とモノマの滑る横顔に見惚れて、壱也が他の滑走者とぶつかりそうになった。
 モノマの腕が強く壱也を引く。すかさず抱きとめて接触を躱させると、仕方がないという表情でモノマは壱也の頭を撫でた。
「しっかり、回り見ねぇと危ねぇぞ」
「う、ごめんなさい、ありがとうございますっ」
 叱られているのに、彼女の頬は暖かな手で撫でられた頭より、繋いだ手よりも熱量を帯びる。
(先輩、ちょっとだけならぎゅっとしてもいいよね?)
 抱きとめられた腕が背中に回っているままで、モノマの胸へ彼女はすがりつく。
 疲れたならコーヒーショップで休もうとモノマに提案され、壱也は素直に頷いた。
 鼓動の音が近く聞こえる今日はなんて暖かいのだろう――氷上の冷たさに満たされる中、騎士と姫の繋いだ手はまだ熱量を失わない。
 
 多彩な滑走者が氷上を滑る中、『アルブ・フロアレ』草臥木蓮(BNE002229)はまだリンク上へ上がれないでいた。
 必死に靴紐を格闘しては一個飛ばしで掛け違い、上手く出来たかと思えば蝶々結びは縦方向で弛んだままだ。
 見かねて『錆びた銃』雑賀龍治(BNE002797)が木蓮の靴紐を解いてきつく結びなおす。
「……全く、この作法は滑る腕に関係ないはずなんだがな」
「しゅ、手芸は得意なんだけどな」
 しっかりと結べたブーツを確認してリンクへ上がった木蓮は、照れ隠しのようにはしゃいだ。
「こりゃ楽しいぜ、龍治も早く来いよー!」
 少しずつ範囲を広げていく龍治とは対照的に、広範囲を滑る木蓮は勢い余って尻餅をつく。
 強がる彼女を気遣って、何も聞かずに龍治が近付く。木蓮が龍治の肩を掴んで上目に見上げた。
「……記憶の消去をお願いするぞ」
「保障しないが」
 休憩を挟さもうとリンクの壁に背を預けた二人が、氷に反射するイルミネーションを見詰める。
「今日は付き合ってくれてありがとなっ」
 楽しい姿が見られて何よりだと、龍治は彼女の後ろ肩に手を回す。
 木蓮が彼の胸に頭を預けるようにして、ぎゅっと掴まり小さく呟く。
「大好きだぜ、龍治」
「……言われずとも、分かっている」
 目を伏せる彼女を抱きしめて、小声で囁く龍治。無邪気なお姫様に、騎士の言葉は心地好く浸透した。
 
 恋人たちを見て、心に秘めた想いを強く握る『蒼き炎』葛木猛(BNE002455)は、リンクの隅で『蒼銀』リセリア・フォルン(BNE002511)に滑り方を教えていた。
「氷上を滑るように……どんな感覚なんでしょう?」
 言った傍から、リセリアがバランスを崩して支えようとする猛の胸に掴まる。
「っとぉ?! 危ねっ、大丈夫か?」
 猛が引き寄せて抱き締める様に立ち上がらせると、その離されない腕にリセリアは困惑を覚えた。
「……なぁ、リセリア。一つ、伝えたい事があるんだ」
 そう言って、猛はリセリアの身体が倒れぬようにゆっくりと離す。溢れるように猛の唇から想いが零れる。
「俺さ、リセリアの事が好きだ。一人の女の子として」
「それって……え、と」
 戦いの中に身を置く二人の未来が、絶対とは限らない。だから、猛は実直に好意をリセリアに伝えた。
 その気持ちが理解できないリセリアではないからこそ、彼女は戸惑うのだ。
「……いきなり過ぎますよ、葛木さん」
 告白を理解して頬を染めるリセリアに、いつも通りの笑顔を猛が浮かべる。
「明日は絶対じゃない。だから……ん、そんだけ」
 スケートを再開しようと彼の手が誘う。その手を取って、彼女は自分の心に問うた。
(私は、どう思っているのだろう)
 今まで考えた事もない特別な言葉に、氷上で彼女の心は光のように乱反射する――。
 
 初めてのスケートに不安を覚えつつも、『黒鋼』石黒鋼児(BNE002630)は友人に誘われた事が嬉しそうだった。
「……実はスケートした事ねぇんだよ」
 それに同意を示した『十字架の弾丸』黒須櫂(BNE003252)が頷く。
「スケートリンクに行くのって初めて」
 一周してみようという櫂の提案を飲んで、鋼児と櫂はシンプルに滑っていた。
 人の多さに余所見をしていた櫂が転びかけて、鋼児の袖を掴んでしまう。
「ご、ごめんなさい」
 櫂が謝ると、二人は休憩しようと暖かい飲み物を購入した。
 湯気に揺れるイルミネーションを見て櫂が素直に感動する。
「今まで何かを見て感動する余裕なんか無かったから……」
 その言葉に、鋼児も自分の想いを吐露する。
「……俺はこんな顔だからよ、今までダチなんてほとんどいなかったんだよな」
 以前いた中学でも浮いていた彼に、鋼児が気に食わないと絡んでくる者ばかりだった事を思い出す。
 櫂を見て、素直に楽しいと思える表情を見せた鋼児が笑う。
「だからかもしんねぇ、三高平に来てからは楽しい」
 鋼児の笑顔を見て櫂が思わず口元を弛める。恥かしそうに櫂が袖口で誤魔化すと、改めて笑いかけた。
「私も一緒だよ、楽しい」
 彼女の笑顔は、鋼児の過去に合ったわだかまりを溶かしていく。
 優しさが光るイルミネーションのように繋がりあう――彼らの優しい夜はまだ始まったばかり。
 
 小さなお姫様をエスコートする騎士は、『七つ歌』桃谷七瀬(BNE003125)だ。
 スケートをしたことが無いというニーナ・ドール(BNE003317)の靴紐を七瀬がしっかりと結び直す。
「ありがと、七瀬。ニーナにも、スケートできるかな?」
 リンクに恐々立つニーナへ、七瀬が優しく手を取って滑り方を教える。
「大丈夫だよ、そうそう、その調子だよぉ~」
「七瀬、すごいね」
 丁寧に距離を保って滑る七瀬にニーナから憧憬の眼差しが送られる。
 にこにこと笑顔を絶やさない七瀬のお陰で、ニーナの緊張も大分ほぐれてきたようだった。
 ふと七瀬が周囲確認の為に視線を逸らすと、鋼児と櫂が一緒に滑っている所を目撃する。
(鋼児君、頑張れっ)
 それに気を取られて足元をぐらつかせた七瀬が、咄嗟にニーナの手を離して尻餅をつく。
 急に手を離されたニーナが、転んだ七瀬の頭をそっと撫でた。
「大丈夫…?」
「あわわ! ごめんね。大丈夫?!」
 エスコートするつもりで怪我をさせてはいないかと心配した七瀬が立ち上がる。
 そんな七瀬の優しさに、ニーナは天使のような微笑みで答えた。
「ニーナは平気、守ってもらったから」
 ニーナが無事である事を確認して、七瀬はほっと胸をなでおろす。
 お姫様は優しい騎士様の手によって、騎士様は小さなお姫様の微笑みによって守られていたのかもしれない。
  
●奇想曲
 夜想曲に乗せてスケートを滑るお姫様と騎士たちを見て、イーゼリットは興味深そうにまた微笑んだ。
「こういうの。嫌いじゃないから」
 朋彦からお供のココアをもう一杯特別にと受け取り、彼女は片隅での騒ぎへと注意を移す。
 氷の上で絆を結ぶ者たちが居れば、それを妬む者もいる。
 そんな撲滅の撲滅による撲滅の為の奇想曲(カプリッチョ)が、スケートリンクの片隅から広がる。
 
『原初の混沌』結城竜一(BNE000210)は声を大にしていた。
「諸君、同志諸君、我が同胞よ! 再びこの時が来た! 決戦の時だ!」
 大義名分を叫びながら、ドス黒いオーラを纏いリンクで踊る者たちを睨み付けている。
 そんな恋人の竜一を斜に見ながら、『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)と『嗜虐の殺戮天使』ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064)は状況が整ったと頷きあった。
 カップルの手つなぎを引き離そうと試みる竜一の足へ、ユーヌがバランスを崩した振りで高速の足払いをかけ足止めを食らわす。
「さぁ、盛大に転ぶと良い」
 ぼそりとユーヌが呟いた言葉も聞こえぬまま、竜一は明後日の方向へ滑り込んでいく。
「正しき志の元、正しき道へと導くのだーーー!」
 竜一が滑り込んだ場所で、転倒したカップルが唇の接触事故を起こす。
 撲滅するはずが、甘い雰囲気演出に一役買ってしまったのを見て、ユーヌが竜一に囁きかける。
「ねえ、どんな気持ちだ?」
 竜一が逃げようともがく様を満足げに見つめたユーヌに、ティアリアがさらっと足払いを掛けて転倒させた。
 今度は竜一とユーヌが唇の接触事故を起こしてしまう。
「ふふっ、敵を欺くにはまず味方からよ♪」
 敵はリア充撲滅組だけでは無かったのだと彼女は颯爽と転ばせた恋人たちから離れる。
 ユーヌと竜一の抗議も聞こえない振りで、ティアリアは『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)を見つける。
「あれに見えるは、守護神こと快ね。和泉に声を掛けるつもりかしら」
 そんな美味しい事はさせてやらないとばかりに、悪戯な笑みを浮かべて一直線にアタックを仕掛ける。
 マフラーに手袋、ダウンジャケットで完全防寒をしていた快が和泉に声を掛けようとした瞬間にティアリアの足払いを食らい、思い切り転倒してしまう。
 咄嗟の判断で、快が一緒に倒れるティアリアの下敷きになると、悪戯を仕掛けた筈のティアリアもバツが悪そうにさっと身を起こした。
「ごめん、周りを見てなかった。怪我、無い?」
 身を起こした快にそう謝られて、悪戯で転倒させたとは言いにくくなったティアリアは、適当に大丈夫だと返答する。
「お詫びに何か温かい飲み物買ってくるよ」
 優しく微笑んで快がコーヒーを買いに行くと、ティアリアはその場を動けなくなっていた。
「悔しがる様を見届けてあげるつもりだったのに」
 コーヒーを買ってきた快が手を振って近づいてくる。
 それ以上の悪戯も出来ないまま、和泉に声を掛けられなかった快と悪戯に成功したはずのティアリアは、ユーヌと竜一に追いかけられながら楽しい一日を送ったのだった。
 
 光と氷上のクリスマス――。
 イルミネーションの幻想的な輝きが人々に笑顔を、氷上の組曲が幸せを運ぶ。
 終わらぬ夜にひと時の休息を得て、彼等はまた明日から新たなストーリーへと旅立つのだ。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 ADM(あだむ)です。『<クリスマス2011>光と氷のクリスマス』をお届けします。
 全体シナリオということで、ちょっと厚めに頑張ってみました。
 皆様の如何でしたでしょうか。良ければご感想を聞かせてください。
 今年はこれで最後となります。また来年も皆様お付き合い頂いたら幸いです。 
 
 
 それでは、良いお年を――。