●序 東京都――某ビル。 ここに双子でそっくりの容貌をした幼女が2人入ってきた。 2人はフランス人形の様な顔立ちと、綺麗な金色の髪をしている。 手には大きな鞄を携え、2人はニコニコしながらエレベーターへと乗り込んだ。 彼女達が入っていったのは『北条連合』と看板が掲げられた、暴力団組織の事務所。 「んだぁ? このガキたちゃぁ?」 珍客の到来に、構成員たちも目を丸くする。 子供の年齢は小学生ぐらいだろうか、2人はニコニコした表情のまま手に持っていた鞄を開け、中からマシンガンと大剣を取り出す。 「……んなぁっ!」 激しい銃声と剣舞が絶え間なく続き、油断していた組員達は瞬く間に『虐殺』されていった。 「あっけないなぁ、もうお終りか」 「仕事は無事に済んだから、もうそろそろ帰りましょう?」 「まだまだ殺したりないなぁ」 「大丈夫、明日もまた別のところで沢山殺せるから」 「ルイーズ、返り血が付いてるよ?」 「ねぇ、アンリエット。後で洗いっこしようか?」 「うふふ……」 「あはは……」 ●依頼 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、集まったリベリスタ達に溜息混じりに告げた。 「首都圏のとある暴力団の事務所が、たった2人の幼女達に壊滅され続けてるの」 イブの話によれば、どうやら狙われているのは関東一円に勢力を持つ『北条連合』と呼ばれている広域指定暴力団の末端組織。 幼女達は同じ暴力団、敵対関係にある『晴海組』によって海外から雇われたフィクサードの暗殺者らしい。 「暴力団同士の抗争だけなら、特に私達が動く必要はないのだけれど」 映像を見せ始めるイブ。 深夜、横浜市の一流ホテル『横浜グレートインターナショナルホテル』の最上階で、笑顔で銃を乱射し、笑顔で大剣を奮う幼女達。 『北条連合』の黒ずくめの暗殺者達が幼女を追って銃を乱射し、LKK団と書かれたエンブレムを胸にした男達がそれを阻む。 戦闘は最上階だけに留まらず、下階へと広がっていき、やがてホテル全体を巻き込む大規模な虐殺事件へと発展していく。 双子の『虐殺』は止められず、『復讐』に燃える暗殺者達と、結果的に増長させるLKK団達の『聖戦』によって。 「こうなる前に、双子をホテルから外へ誘導するか。できなければ戦闘前に貴方達で排除して。 そうしない限り、戦闘は必ず起こるから」 ●承前 「「「イエス・アリス。ノー・ロリータ。パニッシュメント・イン・ロリババア!」」」 「ついに、ついに、我々は完璧なアリスを見つけることができた。 横浜グレートインターナショナルホテルに、金髪のアリスを2人確認。 家族と日本旅行に来ているらしく、最上階のスイートルームにご宿泊している。 諸君等のミッションは、アリス達を安全に新たなる我々の下へとお連れすることだ。 いいか、諸君。これは我々の『聖戦』だ。 いかなる手段を持ってしても、我々の手元に、アリスを!」 「「「イエス・アリス。ノー・ロリータ。パニッシュメント・イン・ロリババア!」」」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ADM | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年12月16日(金)21:35 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●邂逅 横浜市、横浜グレートインターナショナルホテル――。 エレベーターで最上階のボタンを押す、アルジェント・スパーダ(BNE003142)。 「何も知らない子供を暗殺者に……か」 今回の対象となる幼女達を相手に、少し戸惑いを感じている表情を見せていた。 視線をアルジェンタに向けた『酔いどれ獣戦車』ディートリッヒ・ファーレンハイト(BNE002610)が肩をすくめる。 「可愛い顔して怖いもんだね」 むしろ無邪気であるが故に残酷なのだろうと彼は口にし、昇っていくエレベーターの階数へと目を移す。 『常世長鳴鶏』鳩山・恵(BNE001451)が定期的に首を軽く振りながら、隣のカトリ・エルヴァスティ(BNE002962)へと話し続けている。 「こんなに幼い内から殺す、殺さないの世界に生きているなんて、なんて可哀想なのであるか……。 自分が子供の頃は日々外を走り回り、虫を追いかけ、秘密基地を作り……」 『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネット(BNE002439)は話し込む恵に苦笑しつつ、他へと向き直った。 「皆と交流できればきっと良い風に変われるはずです」 双子の境遇は確かに悲惨なものだが、アーク内のリベリスタ達の中では稀に同じ様な存在もいる。 もしかしたら、考え方を変えるきっかけにもなるかもしれないと、彼女は考えていた。 まだ見ぬ双子に早く逢いたいという感情が表に出ている『積木崩し』館霧罪姫(BNE003007)。 「何だか仲良くなれそうなの」 双子と共通点の多い彼女にとって、友達ができる大切な機会と捉えているようだった。 やがて最上階に着いた一行は、スイートルームのドアをノックする。 「はーい?」 扉越しに幼女の返事が帰ってきたが、扉が開く気配はない。 罪姫が微笑み浮かべて挨拶を送る。 「始めまして、ルイーズ、アンリエット。私罪姫さんよ。貴方達をスカウトに来たの」 「スカウトですって、アンリエット」 「あたし達をスカウトねぇ……うふふ」 向こうの全く同じ声質の2人。少し興味深げな反応に、罪姫はそのまま言葉を続けた。 「最近貴女達が殺した人の親分さんがね、何か怒ってるみたいなの」 「そうだろうね、あはは」 「だってまだまだ殺したりないですもの」 それは当然だとばかりに笑う双子。 「別に貴女達は困らないと思うけど、私達が面倒なのね」 「あら、どうして?」 罪姫は自分達がアークという組織にいるリベリスタで、今回訪れた経緯を簡単に説明する。 「だから貴女達をスカウトしたいの。今の雇い主さんを売ってね」 「そうなんだ。殺しはできるの?」 「アークでの殺しは、楽しいのよ。お友達も出来るし、皆が褒めてくれるの」 「お友達? 褒めてくれるのね。それじゃあ沢山殺せるのね♪」 「勿論、裏切ったら殺すけど、2人位強ければ大丈夫よね」 「この世界は、殺すか殺されるかしかないわ」 聞いている一行には、何かがおかしいと感じる会話だ。 幼女たちの会話は殺人行為に対し、まるで楽しい何かの遊びのような感覚で話し合っていたからだろう。 「お友達になるかどうかは、まず会ってお話しないとね」 双子が笑うように罪姫に告げ、言葉が止む。 次の瞬間、ガチャリと鍵が開く音がした。 「お友達になれるか試してあげる。いらっしゃい」 ●誘導 ――ホテル前の路地。 「「「イエス・アリス。ノー・ロリータ。パニッシュメント・イン・ロリババア!」」」 ホテル前で右手をビシィッと敬礼して掛け声を出すLKK団のフィクサード達。 そこへ『突撃だぜ子ちゃん』ラヴィアン・リファール(BNE002787)と『普通の女の子』華蜜恋・T・未璃亜(BNE003274)が現れる。 「……隊長! 素敵な幼女達が此方に来るであります!」 「何ぃっ?」 幼女を崇拝する彼等にとって、その一瞬は何よりも変え難き時間。 彼等の双眸はラヴィアンの金髪と愛らしい容貌に恍惚の表情を浮かべる。 近づいた彼女は挨拶を彼等に送る。 「私はアークのリベリスタです」 「ぬぉ! なんと!! アリス(幼女)な上にリベリスタ!!」 LKK団に小波が起こる。今まで幾多のアリス獲得を阻んできたアーク機構。 今回もアリス獲得に動く彼等への試練として、このような幼女を送りつけられては迂闊に手が出せない。 「このホテルは間もなく戦場になり、罪も無い一般の人々がたくさん犠牲になってしまうそうです」 「我々にとって、アリス獲得は『聖戦』なのであります! その為には犠牲も……」 反論しようとする団員に、涙を流す仕草をするラヴィアン。 「誰にも死んで欲しくないんです。それに、貴方達を人殺しになんてさせたくない。 きっと、本当はとても優しい人達だから……」 ズキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!! 何処かの漫画の様な擬音と共に、LKK団員の何人かがその言葉で腰砕けになっていく。 しかしラヴィアンの嘘泣きに気づき、首を傾げたフィクサードもいた。 「いや、マイフェア・アリス。嘘の涙で男を騙すのは……」 「ひどい……私は本当のことを言ってるだけなのに……えぐっ」 ますます嘘泣きを強調するラヴィアン、すごい目で言いかけたフィクサードを睨む団員達。 「え、嘘。なんか、俺、悪者すか??」 正に邪悪ロリ、此処に極まれり。 すっかり騙されて、さり気なくハンカチを渡す隊長。顔は真っ赤である。 「マイフェア・アリス。我々はこのホテルのアリス達に用があるのだよ。 君がそこまで言うのならば、他の者をどうこうしようとまでするつもりは……」 「本当ですか? 実は双子も、彼女達を狙うフィクサードも、ある公園に現れるはずなんです」 ラヴィアンの説明にLKK団達の顔色が変わる。 「何と! 我等のアリス達がフィクサード共に? これは直ぐに助け出さなくては!!」 彼等はいきり立って、アリスを護る宣言を口にし、ラヴィアン達の先導で公園へと向かう。 ――ロビー前。 周囲を窺いながら打ち合わせする『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)と『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)の姿があった。 ウラジミールの視線がロビーの方へと姿を現した黒尽くめの男達を視界に入れる。 「自分が右手を頬にあげたら頼む……では、任務を開始する」 頷くエナーシアがロビーへと消え、ウラジミールが黒尽くめの男達へと近づく。 視線を向けて警戒する男たちに向け、両手を挙げて他意が無い事を示して問い掛ける。 「北条連合の者かね?」 アークの紋章を提示して名乗った彼に、男達は肯定して返す。 彼等任侠の世界にもアーク機構の名は広く知れ渡っているのだ。 「我々アークとしては、このホテルで双子と戦ってもらっては困る。 その為、現在別働隊が既にホテルから誘導を行っている所だ」 誘導場所の情報を条件に一般人は巻き込まないで戦ってくれないかという提案に、「少し待て」と男達が携帯を取り出して連絡を始める。 それを確認たウラジミールは、無言で右の頬に手を当てた。 するとエナーシアが、合図を受けてロビーから駆けつけて来る。 「双子が逃走、公園に向かったわ!」 少し驚いた表情を見せ、エナーシアへと向くウラジミール。 「直ぐに向かおう……来るかね?」 彼は相談している男達へと再度尋ねた。 「……案内しろ」 携帯で仲間へ移動の指示を出しつつ、エナーシアの先導に着いて行く男達。 ウラジミールは一行の後ろで自身のアクセスファンタズムに一言「向かった」とだけ告げる。 その声は公園と向かっているラヴィアンに届けられていた。 ●試験 ――最上階、スイートルーム。 ドアが開き一行が廊下に踏み込もうとしたその時。 レイチェルとディートリッヒの直感が危険を知らせ、反射的に飛びずさる。 「危ない!」 レイチェルの声に反応する前に、アルジェンタも後退しようとするが、それよりも早く幾多の烈火の矢が降り注ぐ。 炎の矢はその場にいて飛びずさった者達にまで襲いかかり、その身体を激しく焦がした。 玄関先の通路の向こう側で銃を構え、笑顔で一行を見つめるアンリエット。 「直ぐ死んでしまうお友達は、いらないから」 ドアの前で一早く反応し、気糸を放つレイチェル。 「相性は良いはず、先手を取って直撃させ続けられれば……!」 絡めとられたアンリエットの動きが沈黙し、その前に立ちはだかるようにしてルイーズが立った。 「だから此処で試してあげるよ。お友達になる為の試験」 ルイーズは大剣を大きく奮うと、廊下に旋風が巻き起こってリベリスタ達を襲う。 立て続けに集中した攻撃を喰らい、カトリがその場に崩れ落ちる。 多少の遅れはあったものの、罪姫は真っ直ぐルイーズへと駆けた。 「お友達になれるって、わくわくするわ」 歓喜の表情で玄関から続く通路の端にいたルイーズを襲い、彼女の牙がその血を吸い始める。 ディートリッヒが自身の闘気を爆発させ、その後ろから恵が跳躍し、レイピアを頭上から振り下ろす。 「こんな…殺伐とした事より、もっと楽しい事はあるのである! 貴殿らはまだお若いのだ、もっと色んな楽しい事を知るべきである!」 恵の言葉に、ルイーズは笑顔のまま答えた。 「楽しいよ? だってこの世界は殺すか、殺されるかしかないんですもの」 アルジェンタは仁義を切るようにして、自己の内の力を底上げしていく。 (それこそアークは常に人手不足な位、強敵の討伐依頼があると思うんだがな……) だが双子の望んでいるものは『殺す事』だろう。となると、話は変わってくる。 双子にとって有効的な言葉を熟考するアルジェンタ。 レイチェルはアンリエットを更に気糸で縛ろうとするが、それよりも早く沈黙から回復した幼女が動き出した。 再度、業火を帯びた矢が一行を貫いていく。 「これ位で、死なないでね? お友達への道は険しいのよ?」 アンリエットとルイーズは、残忍に笑う。 ●決戦 ――深夜の公園。 LKK団と幼女達は、既にこの公園に到着していた。 「双子も、彼女たちを狙うフィクサードも、この場所にやってくるはずです」 人払いを済ませたラヴィアン達はトイレに行きたい旨を告げ、LKK団達から離れていく。 そこへ追ってきた北条連合の男達が現れ、公園を確認するとそれぞれ散会を始める。 ウラジミールが幼女達がトイレに入ったのを確認して、黒尽くめの男達に指示した。 「件の双子と接触をはかっていた者達だ!」 その言葉に任侠達が反応して、素早く散会を始めていく。 やがてトイレの方から男の声が響いた。 「双子を発見したぞ!」 ウラジミールとエナーシアが顔を合わせる。 ラヴィアン達がトイレから公園を脱出しようとするより早く、任侠達は公園を数で包囲していたのだった。 黒尽くめ達はトイレを囲み、ラヴィアン達へと銃撃を浴びせる。 しかも、全員が狙い済ました一撃で殺す構え。 双子と勘違いされたラヴィアンは、慌ててトイレ内の壁を盾に逃げ込む。 だが銃撃を立て続けに受けた未璃亜が倒れ、その場で迎撃することを余儀なくされていた。 ラヴィアンはもう一人を庇うように壁際へと寄せ、向こう側の黒尽くめへと魔炎を浴びせる。 「俺のターン! うりゃりゃー!」 爆炎が黒尽くめ達を襲い、彼等の突撃を止めた。 そこへ救援に駆けつけたLKK団と戦闘を始める任侠達。 「マイフェア・アリス。今の内に脱出を!」 2人に叫ぶ隊長。例えアークの手の者であっても、彼等にとってアリスを見殺しにする事はできなかったのだ。 そこで戦闘している反対側からも銃声が響き、黒尽くめ達が対応に向かう。 数が減ったことを確認し、気絶した仲間を抱えて、脱出するラヴィアン。 「助かりました。皆ありがとう」 猫を被った彼女の優しい言葉に、俄然闘志を燃やすLKK団。 手傷を負いつつも脱出してきたラヴィアン達と、銃声で陽動を仕掛けたウラジミール達が合流する。 「こちらは任務完了だ。後は……」 ホテルの方角に視線を向けつつ、公園から遠ざかるウラジミール達。 公園内では、LKK団と北条連合の決戦が続いている。 だが双子もホテルにいたリベリスタ達も、最後まで公園に姿を現す事はなかった。 ●敗北 ――最上階、スイートルーム。 「ダンディでカッコイイ私がこの程度で膝をつく訳に……は…………」 遂に恵とアルジェンタまでが、ルイーズの大剣の剣風を受けて沈んだ。 アンリエットの連続して放つ業火の矢がリベリスタ達の体力を激減させ、そこをルイーズの大剣に狙われ撃破されていく。 頭数が揃っていればまだしも、この人数で双子相手に戦うのは厳し過ぎた。 レイチェルは気絶こそ免れたが、最早身体の自由は利かない。 「これ程までとは……」 罪姫も既にアンリエットの業火とルイーズの大剣によって深手を負わされていた。 「私、2人と友達になりたいわ。友達はね、殺し合わないのよ……」 必死で追いすがろうとする彼女だったが、もう身体を動かすことができない。 「残念だけど、お友達にはなれないわ。力不足ですもの」 血に塗れた姿とは裏腹に屈託のない笑顔のルイーズは、倒れた罪姫を見下したように見つめる。 アンリエットの顔もまた無邪気な表情のままだった。 「そうね、ルイーズ。この仕事が終わって、もう一度会えたらまた考えるわ」 2人の赤い天使は、それぞれ可笑しそうに笑い出す。 「せっかく戦ったのに、まだ誰も殺してなかったわ。アンリエット、行きましょう」 「あたし達とお友達になりたいみたいだから、あなた達は殺さないであげるわね」 ルイーズとアンリエットはそれぞれの荷物を手に、笑顔でスイートルームを後にした。 リベリスタ達は双子を止められず、その凶行は続く。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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