●Bloody Mary 血狂イノ聖母、紅キ月、捧ゲラレル聖者――。断末魔に彩られし賛美歌。鳴り響く崩界の音。 今宵浮かぶべき蒼白なる月は、今や透き通る血の涙で大地を濡らしている。 空気を胎動させ尚響き渡る重苦しき鐘の音は、人の体を以て尚重々しく響き。 響きの音もまた断末魔より編まれたる賛美歌によって彩られる。 この世に公平などという物は無く、日常に響くそれすらも今は残酷なる虚妄の宴。 狂える紅き夜に血祀られることは時として不幸と言えるのだろうか。 ヒトにおいては幸か不幸か、それを語ることすら神においても禁忌肢であることに違いはなく。 今宵の宴は尚も苛烈、そして時として血に染めて尚美しくも映えるがごとし。 この歌劇をご覧の方々にも是非、お付き合い願いたい。紅に染まりし天鵞絨の中の狂想曲へと。 ●The Mortal Sins いかなる宗教者においてもその存在は、有って在らざるべきそれであることに違いはないだろう。 紅を帯びる漆黒の中に尚も鮮やかに浮かび上がるは蝙蝠にも酷似したその黒き翼である。 曲線を描くそのフォルムに映り出される輝きと、そこに反射する精強な肉体の相対を見るにつけ、 この存在に通ずる恐怖を脳が命じていくのがよく分かることだろう。 見慣れることのなき山羊の頭の眼孔には紅の光が灯り、相対する者を乱撃せんと睨む。 何故、その存在はここに存在しうるのか。それは、リベリスタ以外に知る由は与えられることもない。 今宵の歌劇に、それを知らぬ一般の存在は介在の余地を与えられては居ないのだ。 神話に通じる者が少しその姿を見れば、誰もがそう答えるであろう存在――。 それは今、ここに噸現していた。悪魔(デーモン)と呼ばれしその存在は。 この古の存在に魂を吹き込んだのは今宵の宴を計画せし主賓の一人たる牝狐である。 完全なる儀式の完成を求め、その牝狐は己の手駒としてそれを創成し、守護とした。 それを破るべく今宵始まるは、血と魂の輪舞曲。戦士たちの生死をかけた舞曲が、幕を開ける。 ●Broken The Eternal 万華鏡の光によって指し示された暗黒の未来を打破するべく戦列を組む、戦士たちのその下で。 彼らの矛を磨き、時としてそれを導くべく生み出された箱舟の職員たちは揺れていた。 牝狐――いや、塔の魔女たる本人からの裏切り通告。 儀式の実行とその段階における情報がもたらされたのは、まさに急報のタイミングでもあったのだ。 戦力の分割と誘導、そして選択と集中。後方の指揮官達にとっても重い決断となっている。 そんな中で、危機を繰る一人の巫女は、ただ淡々と連絡を行うことに終始していた。 焦っても己の力で変えられることではないのだ。ただ、有力な戦力の取捨選択を行うだけのこと。 そのほうが、彼女にとっても不安を押し隠すに都合が良かったとも言える。 そんなまだ幼子の心を静かに殺し、既に一つの機器の部品の1つとして、彼女は勤めを果たす。 ロッキングチェアをくるりと回し、戦士たちに向きあう巫女は、静かに語り始めたのだった。 「――聞いて。アシュレイの情報とカレイド・システムの感知によって儀式の場所が判明したわ。 決戦の地は神奈川県横浜市。『三ツ池公園』という大きな公園。 この公園に『特異点』が開こうとしているの。今までの崩界の加速は特異点発生の前兆。 万華鏡は儀式当日に大きな穴が開く様とバロックナイトが発生することを観測した。 当然、見逃す訳にはいかない。コレを受けて、アークは総力戦を決断したわ。 三ツ池公園にはジャック側の戦力が配置されており、これに先手を打つ事は不可能。 相手側の精鋭に加え、フィクサードとエリューション等が防衛線を張っている。 住民の避難等は全て手続き済みではあるけれど、敵の層からしても、いきなりの正面作戦は難しい。 作戦としては蝮原一派とセバスチャン等アークの精鋭を南から侵攻させ戦力を陽動。 その隙を突いて西門・北門の両方からアークの戦力を送り込む。 そして、今回あなた達は北門から侵攻してもらう。 北側からジャックやシンヤに味方するエリューションの掃討に向かって欲しいの。 あなた達に向かってもらう戦線は、こっち。」 巫女は端的に状況を告げると、オーバーヘッドスクリーンに此度の標的となる黒の存在を示し、 また淡々と状況を告げる。その不安を押し殺すかのような姿は、どこか痛々しくすら見える。 それがまるで嘘ではない事を物語るように、目線はどこか、震えていた。 「作戦目標、『混沌の落とし子』ミスティリオン。 E・ゴーレムの一つで、古からあった悪魔の彫像に魂を吹き込んだ存在。 何故、彼女はコレを選んだのかは定かではないわ。けど、ひとつ言えるのは、器物に宿る念は本物。 その証拠に、周辺の重力を操る力があるの。攻防ともに優れていて、生半可な接近戦では不利。 だから、なにか明確な戦略があったほうがいいわね。 尚、攻撃は物神両用。遠近共に両刀使いだから、油断してたら殺られるわ。 十二分に注意して。最善に最善を重ね、注意に注意を更に重ねて。幸運はそこに宿るから。」 巫女の祈りが響くのは、コレで何度目になるのだろう。 幼子の精神には辛い、死と隣り合わせの命令。その意をまるで汲むかのように。 戦士たちは、歩みを進め始める。 役者は揃い、戦場の幕は今宵、華開く。 戦火の奏でる小夜曲、歌うは血塗れの狂想曲。 最後に立つのは勇者か、悪夢か。 賽は今、投げられた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:Draconian | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年12月21日(水)23:54 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●The Crusaders 破滅をもたらす紅の涙が大地を濡らす時、人の子の紅もまた流れ落ちては大地に消えていく。 光も時としてまた歪み、狂い、光の形を様々に変えては戦場を影法師で彩る。 人の破滅をもたらす紅の月が輝く下で、その戦いは語られること無く静かに幕を開けていた。 敵を討滅さんとする惨劇の雨の中を駆け抜け、ただひたすらに戦線へと足を伸ばす戦士たちの姿。 その中で、ふと漏れるぼやきを聞く者は、居ただろうか。 「しかしまあ、こんな如何にもな像、どっから持ってきたのよ」 呆れるかのような声が思わず闇夜に木霊する。戦線に合流すべく動くその足の上で、 戦士の一人である『女子大生』レナーテ・イーゲル・廻間(BNE001523)の呟きが漏れていた。 呆れる声は戦場の開幕の中に掻き消えて久しい。慌ただしい争いの中、それが聞こえることは稀だ。 乱戦の雑音と歩みの先の黒き惨劇の存在が視界に迫り、開戦の幕を開く刹那の出来事。 彼女が己の獲物たる双璧を構え、戦場の最前線へ躍り出る。 それに呼応する前衛達の中に、人の子の紅が投影されて見えたのは、まごう事無き事実だった。 「お前に込められた怨念の全てを引きずり出してやるよ、この俺がな。」 始まりの煉獄の爪の一撃の先にただあったのは、不沈の覚悟を以って立つ一人の極鋼。 護女神を冠する職を持ち、今宵の決戦においての覚悟を示す、中年の男。 鋼の名は、『気焔万丈』ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)。 幾多の戦場を踏み抜いた極鋼は、それを何も語ることはない。男はそれを背で語る。 敵の獄炎を伴う一撃すらも、まるで意に介することすらせずに。 己の手にある鉄杭を打ち込みながら男はただ、若者に譲る血道を開くことだけを、願った。 その血道を踏み抜き、戦士たちが戦列の上に立つのはそう遅い話でもない。 惨劇に終止符を打つべく動き出す戦士たちの中、駆ける足をそのままに、想いを馳せる娘。 彼女の名こそ、『消えない火』鳳 朱子(BNE000136 )。今宵の戦列に立つ闘士の一人。 不完全燃焼の薄紅を宿す体は、その焔と紅き空の相対を鮮やかに描き出す。 薄紅の向こうに燃える、意思の炎を青く宿して。娘はただ、そこに立った。 「人の生きる世界にお前らのような奴らの居場所はない……ここから消えろ!」 瞳に燃える消しようのない憎悪の炎。肉に刻まれた癒える事無きその罰を、己の刃に変えて立つ。 深紅の刃より生まれる剣戟の音は、より重く、遠くに響く音叉の音のように感じる、それだった。 戦いは、これより始まろうとしている。それを予期させるが如き、一撃。 積み重ねる一撃は、始まり。そして、終わりへの階を築きあげる胎盤となる。 そして、そこに加わる道化師の嘲りをエッセンスにして、戦いの歯車は更に高速で回りだす。 履行は即効、相手に不吉な夜を与えて尚笑う。その道化師の嘲りの主も、また笑う。 主の名は『ピンクの害獣』ウーニャ・タランテラ(BNE000010)。 嘲りの主も唇に言の葉を乗せ、空気の振動で戦場を花に変えて彩る。 敵の死すらも芸術に変えるグラン・ギニョール。道化師たちは血祀る夜を以て皆笑う。 不幸を不幸に上塗って、更に更に更に戦列は過激さを増していく。 嘲りの衣を羽織った上に更なる剪断の一撃が相手を襲ったのは、刹那の出来事。 マンボウを圧延したかの如きその刃は敵に対しての不幸としてそこに存在し。 また呼応するかのように繰手によって魂を吹き込まれていくのだ。 刃の主こそ、雪白 桐(BNE000185)。消えざる炎と同じ刃を持つ闘士の一人。 戦いをより長きにわたり続けることを最優先とするそのスタンスに、彼女は反抗するかのように。 肉体のタガを外したポテンシャルを生み出す集中から、スラリと雷撃の刃を撃ち放つ。 重力の影響とてないとは言えない。しかし、その刃は過たず相手の肉体を削って進む。 戦いの幕が閉じるその時まで、一瞬たりとて気を抜く事は無い。それは、戦場の不文律が故。 未だ続く戦火の火の粉を刃に乗せて高空より刃が差し迫り、敵を切り裂いては影が戻る。 後衛にてなお舞い踊る剣の女神を見るものは、戦列の中には居たのだろうと。 その刃の手綱を握り、相手を櫛る一撃を以って敵を破らんとする剣の女神。 ――『薄明』東雲 未明(BNE000340)。彼女もまた、刃の繰手の一人。 悲鳴を上げる肉体を繰りながら、美をもって敵を打ち削らんとするその一撃。 「例え宿る念が本物でも、器が割れてしまえばどうしようもないでしょう?」 哂うように口を衝いて出る言葉は、ある種の歌劇者にも似るそれで。 それは集い、狂いて白銀の紅き刃となる。戦いの幕を引かんと呼応し、共鳴するその刃は。 より確かな一撃を求めるかのような、意志を持って――見えた。 黒の咆哮が天空に響く。紅き月に刻まれた己が命令を反芻するかのように。 紅の月に惹かれ、儀式の履行のため生み出されたその存在は、冥府よりの契約を朗々と読み上げる。 その契約は相手の意思を問う事無き絶対の契約。黒き闇より生み出された羊皮紙に、 望むことなき犠牲者の血が黙々とサインを執り行う。 それはわずか数瞬の出来事。その数瞬の後に、悪夢の如き出来事は訪れたのだ。 己の心の闇を引き出し、悪夢の如き事象を体にひき出すその力によって。 燦然たるその悪夢は、消えざる焔の異常より始まった。 喉に血が上がってくる。呼吸器の中に血が入り、苦しさをよりひき出す中で。 更に、毒そのもののジワリジワリとした苦しみが、襲いかかってくるのが分かったのだ。 「カハッ……!」 焔の喉から血が吐き出される。酩酊と混乱の意識が持ち出されるその中で。 紅の戦士は動く余力を振り絞り、恐怖を排除すべきその術式を発動する。 呪いに縛られる者、己の精神の綻びを突かれ、精神自体が破綻をきたす者。 歪む視界をふと伸ばせば、苦悶を受けるのは彼女だけではないのは知れたからこその一手。 戦士たちの絶叫と、苦悶の声が木霊する。その苦悶を鎮め、希望の階を繋がなければ、先はないのだ。 希望の階をつなぎ、安堵の溜息が混ざる中、その目まぐるしいダイナミズムを打ち破る為、 一人の戦士が重き歩みをより進め前に出る。けして止まぬ歩みを前に、前に、前に。 「ボク一人じゃない……! 仲間がいる限り、勇者は絶対に負けないのです!」 重力網の影響で体が重い。身に纏う鎧の重みに加え、それは己の動きを殺す。 しかし、その苦しみの先にしか勝利の印はありえ無いということをその英雄は知っていた。 英雄の名は『勇者を目指す少女』真雁 光(BNE002532 )。 光を纏い、少女は今一人の英雄としてその戦地の最前線へと立ち上がる。 勇者、かく在るべしとの像に背かぬ姿であるため、そして己が矜持のために。 その上で、渾身の力を以て放つ、殴打にも似た深く、抉り出すが如き一撃。 そこには、間違いなき英雄の姿が、あった。 その背を見守るが如き位置、若き獅子の姿を見たのは何時の事になるのだろう。 戦い慣れざる一人の戦士は、熟練の戦士の背を見て全てを学ばんと動き出す。 それは、いかなる英雄とても辿った道であり、栄光に進むべき第一歩以外にほかならぬ。 若き獅子――『菊屋』雪之夜 菊次(BNE003285)は、己が無力を抱きながらも、 心に氷の心を抱いて、焦りを殺して手を進む。いかなる英雄にも於ける、50の手習いの事始め。 それは、確実な一撃として、道化師の嘲りを打ち込んでいくこと。 その力は未だ水滴であるが、岩を穿つかの如き確実な一撃として敵を櫛る。 獅子が、より強き姿として戦場に立つ日はそう遠くない。そう思わせる姿が、そこにある。 戦いはまだ、終わらない。終劇とするには、速すぎる。 ●End of All Doom 戦場はより混迷を深め、戦いの歯車は狂うこと無く回り続ける。 その歯車と共に恐るべき魔力の輪も、同時に転輪のごとく永遠に回り続ける。 悪夢の輪が完全に破壊されるその時が来るかどうかは、戦士たちの手腕と運命に全てが架かるのだ。 運命が賽を振り、実力がこれと勝負する。それは、因果律すら歪め得る定命の戦い。 その戦いの最中、一つの動きがそこにあったことが知れるのは、起こる前の数瞬の出来事。 強制契約のほぼ数瞬後、それが起きる寸前の違和感が知れたのは、とっさの機転の他にない。 黒が契約を朗々と読み上げる、その羊皮紙が一枚多いのだ。 それは、一つの契約の終わりを告げる葬送の音であったことは間違いがない。 「……様子がおかしいわ。 来る!」 紅色の害獣よりの警戒の声が、闇夜に木霊する。呼応するように、ブレイクフィアーが飛んだ。 闇の先に有るのは契約の満了。時が止まればそれは一つの慈悲であったであろうにと。 そう、目を伏せざるを得ない恐怖の光景が、そこにある。 契約の時、ここに来たれり! 暗黒の舞踏、悪疫に記されし魂の契約をここに満了せん! 汝が望まざるとて、我が望みはここに満たされ、全ては永劫の恐怖に回帰されるべし! 朗々と読み上げる契約の構文と、彼らの目の前で破られた一枚の羊皮紙。 それを合言葉にするかのように、体に絡みつく幾つもの悪疫のそれが一瞬にして牙を剥く。 肉体からは生命力が抜け落ちる感覚が伝わり、暗黒の死が肉を飲み込まんと視界を歪ませる。 苦悶を通り越した絶叫が、紅き月に木霊し、その絶叫で織り成されるは惨劇の宴である。 肉は腐り、骨は溶ける。精神は蝕まれ、臓腑はただ痛みを伝える肉の塊と化し。 神経は最早痛覚を通り越しここに立つ事を許すということはない。 絶望の二文字のみをここに示して、その黒はただひたすらに笑いを浮かべ続けるのだ。 黒き混沌の契約は正しく混沌と悪夢を示し、英雄たちの夢すら砕く。 これまでか、そう思った。しかし、彼らは忘れていたのだ。己が運命を従える存在であるということを。 宿命はその絶望を許すということはなく、希望と言う名のそれを以って、勇士の体を立ち上がらせる。 「ここで倒れるわけにはいかないの。 それに……契約は踏み倒すものよ、ね?」 「誰が魂をくれてやると言った……!」 「カカカカッ!倒れていられるか。すでに俺は俺に科した契約ってのがあるのさ。 二重契約なんざルール違反だろう?」 「ここでない場所で他の皆も皆の為にがんばってるんです、負けるわけにはいきません」 「ふふ。まだ倒れる訳にはいかないもの。 活劇の英雄は、立ち上がる物よね?」 「こんな場所で倒れている場合じゃないってのよ! 」 「勇者は……! 強敵相手でも絶対に退かないのです!」 「地獄なら、既に見て来た……。貴様を斃して私は強くなる――! 」 極鋼の快活な笑い、若き獅子の咆哮、道化の繰手の嘲笑、闘士の確固たる意思。 焔の燃える怒り、英雄の持つ魂の意思、双璧の覚悟、剣の女神の微笑。 それらがすべてここにあるのは運命を従える英雄譚を綴る資格を持つが故の事。 そして、『悪夢の運命に叛逆する存在』であるがゆえにヒトはかれらをRebellistaと呼ぶ。 その各々の感情こそは、全ての希望の階を繋ぐがための鍵となり、悪夢を打ち滅ぼさんためにあるのだ。 「さて、あの気に食わない魔女の置き土産にもそろそろ退場してもらうとしましょうか」 双璧の覚悟を決めた一つの言葉が空を震わせ、それを鍵として反攻が、ここに始まる。 ――『願わくば、この夜が開けるまで誰一人欠けることなく』。道化の繰手の本心のそれを、 ここに具現させるべく。始まりの光は、十字架となって悪夢のそれに刻まれたのだ。 それを受けての一瞬の隙が生まれ、それを見逃すこと無く行動が始まる。 「魂はやれないけど、願いは叶えてもらうぞ、悪魔。 ――お前は消えろ。お前は消えろ。お前は消えろ!」 「おとなしく・・・闇に還れ!!S・フィニッシャー!!!」 焔の戦士が閃光を纏う剣で悪夢を打ち破るべくその剣をふるい、乱撃の下に敵を櫛る時。 そこに呼応するように、極鋼も重打の一撃を重ねあわせ、敵の生命そのものに楔を打ち込む。 後列に位置する、刃の女神もこの隙に呼応するように、一撃を更に重ねあわせ、 さらにそこに闘士の不退転の決意を持った刃が重なる。そして、そこに英雄の光刃が重なり。 個々が持つすべての希望を一撃のもとに重ね合わせ、ひとつの希望のタペストリを織り成した。 それが希望の階につながる最高の鍵となることは、ヒトがそれを綴っている限り明らかだ。 それが聖剣となることは言わずと知れ、黒き災いの体は、脆き音と共に沈み、 動き出すということは二度と無いのだった。後に耳に付く、重くどす黒い絶叫と咆哮を残して。 ●Mercy on The Moon 破滅をもたらす紅の涙は大地を濡らし、人の子の紅もまた流れ落ちては大地に消えていく。 光も時としてまた歪み、狂い、光の形を様々に変えては戦場を影法師で彩る。 それは今でも変わらない。未だ予断を許されるという状況に、我々は立つことを許されていない。 しかし、その悲しみにも似た状況の中にも、希望は未だ差し込んでいる。 この世に不可避があるのなら。それが故に可避とされることもある。 それが世の常、いかなる時にも歪めえぬ因果律にすら似た定め。 それをまた知るが故、葉巻を燻らせれつつも、次の戦いへと繰りゆく姿をまた見送る。 極鋼のその姿は、父性を感じさせるそれに、似ていたのかもしれない。 希望はまだ終わらない。この先へ進む者たちへ、幸あれと。月もまた、笑って見えた。 ――Fin |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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