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第一回エアカップル選手権

●企画書があらわれた
「皆さん、今回はお願いがあるんですよ」
 アークにて。『黒服』馳辺 四郎(nBNE000206)は集まったリベリスタ達に対してこう切り出した。
 彼がミッション以外でリベリスタと関わることは余り多くない。
 こう見えて四郎はテレビにも出演しているれっきとした芸能人である。二足の草鞋を履く彼は見た目よりは忙しいのだ。
「今回は少々皆さんの協力が必要でして。テレビの企画なんですけどね?」
 そういって彼がリベリスタへと渡した資料。それは企画書であった。
 そこにでかでかと書かれていた企画タイトルは……

『企画 第一回エアカップル選手権 三高平大会企画書』(デデーン!)

「ちょっと、帰らないでくださいよ」
 踵を返したリベリスタ達を呼び止める四郎。
「これはれっきとしたテレビの企画なんですよ。恋人のいない、もしくは恋人のいる人でもいいですが。そんな人達に架空の恋人といちゃいちゃして貰い、それを競う企画なんです」
 誰だこんな企画考えたやつ。
「リベリスタの皆さんは妙に器用ですからね。きっと見事なエアっぷりを披露してくださると思いまして」←こいつです
 つまりこういうことである。
 カメラの前で架空の恋人といちゃいちゃするだけの簡単な仕事です。
 いっそ殺せ。
「というわけで皆さんには是非これに参加して頂きたく思います。審査員は私と伸暁君の両名で行いますので」
『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)もまた芸能界に居る人間である。
 インディーズではあるがカリスマ的ロックバンドであるブラックキャット。テレビに出るには申し分はない布陣だろう。
「では皆さんの奮闘期待してますね。ああ、あとこれ全国放送なんで」
 いっそ殺せ。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年12月21日(水)23:36
●企画書
エアカップル選手権が開催されます。
企画の内容は下記になります。

・全国放送です。
・恋人のいる方もいない方も、架空の恋人相手にらぶらぶっぷりを発揮して下さい。
・審査は馳辺四郎と将門伸暁の両名が行います。
・恋人がいる場合、相手に対していちゃいちゃするのは問題ありません。が、両者参加していない場合名前の描写は避けられます。
・お前は泣いてもいい。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。

●マスターコメント
 なにやら甘い砂糖を吐きそうなシナリオが一部で出ている近今いかがお過ごしでしょうか。
 せっかくなので私も甘い流行に乗ってみようと思い、今回のシナリオになります。
 是非甘い空気を披露してください。

 一人でな!
参加NPC
馳辺 四郎 (nBNE000206)
 
参加NPC
将門 伸暁 (nBNE000006)


■メイン参加者 25人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
覇界闘士
ヘルマン・バルシュミーデ(BNE000166)
スターサジタリー
エナーシア・ガトリング(BNE000422)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
ソードミラージュ
天月・光(BNE000490)
スターサジタリー
ウィリアム・ヘンリー・ボニー(BNE000556)

源兵島 こじり(BNE000630)
ソードミラージュ
戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)
デュランダル
斜堂・影継(BNE000955)
覇界闘士
レイ・マクガイア(BNE001078)
クロスイージス
中村 夢乃(BNE001189)
プロアデプト
イスカリオテ・ディ・カリオストロ(BNE001224)
スターサジタリー
桐月院・七海(BNE001250)
クロスイージス
内薙・智夫(BNE001581)
マグメイガス
イーゼリット・イシュター(BNE001996)
デュランダル
降魔 刃紅郎(BNE002093)
ソードミラージュ
レイライン・エレアニック(BNE002137)
★MVP
スターサジタリー
結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)
ソードミラージュ
津布理 瞑(BNE003104)
インヤンマスター
マリス・S・キュアローブ(BNE003129)
スターサジタリー
黒須 櫂(BNE003252)
スターサジタリー
華蜜恋・T・未璃亜(BNE003274)
クロスイージス
樅山 多美(BNE003276)
デュランダル
ノエル・ファイニング(BNE003301)
   

●序文
 ぼくの彼女は恥ずかしがりや過ぎてさ、モニターから全然出てきてくれないんだ!

                                ――とある無職の惚気

●開会の挨拶
 おりしもその日は晴天に恵まれた。
 肌寒い気温、やや淀みつつも晴れた空、ひたすら眩しい太陽光線!
 格好の環境にて、本日行われるのはテレビ番組の撮影である。
 広い会場には番組スタッフが出入りし、それなりに観客も入っているようだ。
 ウィリアム・ヘンリー・ボニーのように参加せず見物だけに来てるものもいる。
 物見遊山としては絶好のロケーションではあるだろう。

 ここで今より行われるのはエアカップル選手権。
 実在しない彼女相手に愛を囁き、育む大会なのだ! 死にたい!
 しかも全国放送というおまけつきである。一生モノの惨事ですね。
 だが、三高平のリベリスタは決して屈しない。
 例え架空の彼女であろうとも、そこに存在しなくとも。愛を囁くことに躊躇いなどないのだ。多分。
 今ここにいる参加者達はまさに勇者と言っても過言ではないだろう。

 会場の設営が終わり、前説が始まる。
 馳辺四郎と将門伸暁。この両名のパーソナリティーで行われる今回の大会。
 四郎はオカルト特番でしばしばメディアに顔を出し、伸暁はインディーズシーンのカリスマである。華やかな芸能番組において司会をするにはそういった知名度が関係している。

 なんで女子アナいないんだよ!

 閑話休題。
 さて番組のテーマが流れ、前説が行われる。
「さあさあ皆さんこんにちは。第一回エアカップル選手権、始まりますよ!
 彼氏彼女がいないあの人に最高の見えない彼女を自慢して頂くこの大会、いやあ痛々しい!
 司会はお馴染み、霊障ならばお任せの馳辺四郎と」
「テレビの前の子猫ちゃん、待ったかい?
 俺のソウルは今回メロディには載らないが、たまにはこういう出会いも悪くない。
 『ブラックキャット』のボーカルでお馴染み、君達のNOBUだぜ」
「さて、記念すべき第一回は三高平市からお送りいたします。
 未曾有の大災害から復興したこの新しい町、そのバイタリティ溢れる土地には個性的な人物が沢山!」
「空気にすら人格があり、当然人格があれば恋に落ちることもある。
 こいつらは最高にクールなラヴロマンスを見せてくれることを保障するぜ」
「それではさっそく行きましょう。一番の方、どうぞ!」
 四郎と伸暁の前説が行われ、審査が始まる。
 ここからが本当の地獄だ。

●御厨・夏厨斗
「僕のこじりさんはマジ天使!」
 壇上に立った夏厨斗は自らの彼女のことを語り始めた。
 恐ろしいことに彼には実際に彼女がいるのである。エアではあるが、実際の惚気なのだ。
「普段つんつんしてっけど二人の時は超ドロデレ、どこまで甘やかせてくれるのってくらいスイートハニー!」
 幸せいっぱい夢いっぱい。夏厨斗はその全身全霊を持って惚気続ける。
「羽根はないけど僕には見えるんだ、輝く翼! けどそんな姿が他の奴に見られたらマジこじりさんに惚れちゃうんじゃねって心配なんだけどこじりさんの可愛さを世に知らしめたいこの二律背反ジレンマ! まさに青い春――」
 その惚気は止まらない。ぶっちゃけパフォーマンス時間の超過をしている。
 こういう時はどうなるか? 強制執行である。
「って、もっと話させろよ! 特番組めるぐらいの――!」
 黒服に連れ去られていく夏厨斗である。

「あー、実際の彼女いるんですよねぇ」
「恋する少年のハートはどこまでもホット。まさに青春の青いブルーって感じだったぜ」
 四郎と伸暁が講評する。その評価には青が被りまくっていた。

●悠木そあら
「さおりんがどうしても『そあらの俺への思いをみてみたい』とかいうから仕方なく来てやったです」
そう主張するのはどことなくこの場にいるのが釈然としない気分なそあら。
「さっさと終わらせてエアじゃない本物のさおりんがお迎えにきてそのままデートなのです。
 しばらくドライブを楽しんだ後、夜景の見える展望レストランでお食事なのです」
 誰も問うたわけではないのだが一人でドリームに浸るそあら。
「大人の会話と美味しい料理とお酒でほろ酔いになって、そのあとは『スイートルーム予約してあるんだけど』とかで……やだ、恥ずかしいのです」
 彼女の夢は止まらない。そして彼女は気づいていない。すでにカメラが回っていたことに。
 スタッフが声をかけ、そあらを連れて行く。
「あたしまだエアしてないのですよ?」
 だがその姿は、どこまでもエアであった。

「いやー……平常運転ですねぇ」
「彼女はいつも変わらずあんな感じ。沙織も罪な奴だぜ。可哀想なそあらたん」
 ……たん?

●ヘルマン・バルシュミーデ
「……あの」
 ぎゅっと強く自らの手を握るヘルマン。目はどこかを泳ぎ、隣にいる(いない)主人を直視しないように。
「わたくしのご主人様ってすごい人なんです」
 ヘルマンは語る。自らの主の素晴らしさを。それと共に増すのは、誇らしさと悲しみ。
 やがて彼は膝から崩れ落ち、はらはらと涙を流す。
「でも、どうしましょう。どうしようもないぐらい貴女が好きです」
 道ならぬ道。主と執事。
 その障壁はとても大きく、乗り越えることも叶わない。だけど。
「ねえ、こんなのおかしい。ごめんなさい、好きなんです。こんなにみっともない俺なのに。
 どうしよう――貴女を愛してしまった」
 その嗚咽は切なく。会場に満ちるはどこまでも深い哀愁。

「二人の間に立ち塞がる主従の壁。これは切ないですねえ、エアですが」
「地位も立場も超えていつかはラヴに至るものさ。それがラヴロマンスってやつだろ?」

●エナーシア・ガトリング
「シンヤ(仮名)さん……貴方がいない聖夜を迎えるとは思わなかったのです」
 エナーシアは空を見上げ独白する。
 いつものスパルタンな彼女はなりを潜め、そこにいるのはただ一人の女子高生(22)。
「もう一緒に手作りしたケーキを食べることも、ホワイトクリスマスを『『『フフ……雪が降ってきましたね』』』と祝うことも」
 彼女が回想するのは手に握り締めた伊達眼鏡の彼。なんか回想の台詞多かったような気がするけれど。
「駅前広場をエクストリームに占拠することも出来ないだなんて信じたくは無いのです」
 どういうこと。
「ですが、シンヤさんは常に最前線に立ち続けたのです。ここで泣いているだけでは駄目ですよね」
 彼女は眼鏡を置き、ステージ上から去っていく。
 その手にはなにか筒状の鉄の塊が握られていた気がするけれど。
 退場しつつ「滅尽滅相、一匹たりとも逃がさないのです」などと物騒なことを呟いていた気もするけれど。きっと気のせい。
 
「いやー、誰でしょうねシンヤさん。さっぱりわかりませんね。謎ですね」
「聖夜ってのは否応なしに気持ちを駆り立てるものさ、エクストリームにね」
 どことなく二人のコメントは白々しかった。

●新田・快
「や、久しぶり。そっちはどう? ……うん、こっちは寒くなってきたよ。もう十二月だしね」
 携帯電話を片手に通話する快。
 精悍な彼は一見しても女性に人気がありそうな雰囲気を漂わせている。
 だが、彼の鉄壁っぷりを知らないものは、三高平には。ましてやリベリスタにはそういない。
「十二月といえば、最初にお前からプレゼント、手編みのマフラーだったよな。
 一生懸命編んでくれたのがわかったから凄く嬉しかったよ」
 ガキの頃から一緒だったもんな、と。だが、そこで彼の表情が曇る。
「ずっと一緒だと思ってたのにな。急な病気で……呆気なかったな」
 彼の通話先は、天国にいる誰か。彼の記憶にだけいる人かもしれない。もしくはいない人かも。
「今は毎日が波乱の連続だけど、仲間も沢山出来た。俺なりに前を向けるようになったってことだと思う」
 彼は決心したように言う。今まで胸に秘めていた言葉を。
「だから今日は、ずっとお前に言えなかったことを言うよ。ずっと好きだった。それから――」
 ありがとう、と。
 繋がっていない通話を切り、快は舞台を去る。残る余韻はやるせなさ。

「別離は新たな道の始まりだって言うぜ。ひとつの決意があいつのフューチャーロードを開いたのかもな」
「実際の出来事かはわからないですけどねぇ」
 真実は彼の中。

●天月・光
「このすらっと長いこのフォルム!」
 光は何かを掲げるようにしてパフォーマンスを行っている。
「緑色のこの葉っぱ! 土の香りに混じって香る甘い香り!」
 いや、これ人じゃない。絶対人じゃない。
「食べちゃいたいほど可愛いやつ! もう食べちゃう!」
 そう叫ぶとひたすら何かを食べるモーションを光は行う。
「ふーっ、えあにんじん最高だ!」
 先生、それカップルじゃありません! エアギター的な何かです!

「いやぁ、色気より食い気。さすがですねぇ」
「エアで人参を表現できたと思うから満足だ。人参最高だ」
 四郎の言葉に対し誇らしげな光。
「食べると言うことは生きること。ノーフード、ノーライフってやつさ」
 そうですか。

●戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫
「エア彼氏キターッ!!」
 いきなり絶叫したのは『エア上手じゃないと寂しくて死んじゃうんだよ! 遊びじゃないんだよ!』と力説していたブレイバー、舞姫である。
「ゴメンなさい、わたし不器用で……恥ずかしいでしょ、外していいよ?」
 さっそく始まっていた。その視線の先には彼氏が居る(いない)。
 彼の首には手編みのマフラーが巻かれている。それが見える。見える人には。
「え、愛情が籠もってるから凄くあったかい? もー、やだ、恥ずかしい!」
 見てるこっちが恥ずかしい。
「貴方の手、あったかい……」
 彼氏に肩を抱かれ、人の温もりがとても心地よい。明らかにそれは自分の腕なのだが。
 やがて舞姫は虚空を見つめ、恥じらいの表情を浮かべ。
 背伸びをして、唇を――そこで緞帳が降りた。終了。

「いやー、レベル高いですね。さすが三高平が誇るがっかり美人の一人です」
「とても王道のカップル。清清しいまでの王道さ。スタンダードオブスタンダードのラヴを見せ付けられた感じだぜ」
 自給自足じゃなければだが。

●斜堂・影継
「ふふ、いつも助かってるぜ」
 影継がステージ上で抜剣している。
 え? 剣?
 彼が言うには古来より剣の達人は皆、剣の声を聞くことが出来たという。
 つまり剣に人格が宿るのは当然である、と。
「ふんっ! ハッ!」
 そのままステージ上で演舞を始める彼。
 いや、彼の目には映っている。自分に向かってくる敵の姿が。
 それらの敵を愛剣を振り回し、次々と切り倒していく。他人には見えないが。
 全ての見えざる敵を倒し、納刀すると同時に……背後のセットが切断され、落下した。
 つまり真剣である。
「あ、ちょ!? え、銃刀法!? いや、模造刀だからあーっ」
 ――即座にスタッフが飛び出してきて彼を舞台袖へと引き摺り下ろし、画面は暗転する。

「今なにか起きましたか?」
「俺のログにはなにもないな」

●レイ・マグガイア
「ようやく来てくれましたね、もう来ないかと思ってましたよ。……冗談だって? そうに決まってるじゃないですか」
 貴方を信じていますから、と。レイは恋人(エア)へと嘯く。
「他の男? ナンパですよ。私のような女の子は珍しいって」
 どうやら待ち合わせの最中にコナをかけられていたらしい。無事こうして待ち合わせに成功したということは、むべなく袖にされた、ということなのだろう。
「私は貴方のような、内面を見てくれる殿方としかお付き合いしません。だから安心してください」
 私には貴方だけですから。それは彼女の相手に対する信頼。もしくはお互いにとっての信頼なのだろう。
「貴方は手を繋ぐのが苦手でしたね。――でも、心はいつも繋がっていますから」
 寂しくなんてありません。
 そして二人は共に歩き去っていく。
 決して表情にも言葉にも、感情なんて見えないけれど。信頼はそんな所で出来ているものではないと。二人の仲は示していた。

「うーん、美しい。信頼関係こそ理想というやつですか?」
「ハートは目に見えないからこそ感じられる。それがとてもハートウォーミングなのさ」

●中村 夢乃
「リア充爆発! リア充爆発! 銃を持て、弾を込めろ! 今こそ奴らの息の根を――あっ、待ってあたしまだ何もしてない!
 わかりました、ちゃんとやりますから!」
 いきなり退場の憂き目に逢いかけた夢乃。この幸せに満ちた空間は彼女にとって何か耐え難い刺激を与え続けていたのだろう。
 エアだけど。

「ねぇ、手を繋いでもいい? ――ひゃっ、冷たい! もう、どうしてこんなになるまで放っておいたの?」
 それはこっちの台詞である。
 それはさておき、夢乃はそっと手を包み込むように握る。
「ふふ、あったかい? じゃあおすそわけしてくれる?」
 そのまま手を頬にあて……一瞬の間の後、ややむっとした表情になる。
 一瞬手が引かれるように動いた芸が細かい。
「やぁよ、離しません。冷たくなんてないですよ、あたしには」
 心が暖かくなりますから、と。ささやかな出来事がお互いを暖める、幸せのひと時なのだと。この空気は示していた。

「小さな小さな幸せ、リトルハッピー。心を暖めるそれは些細な日常に転がっているものさ」
「彼女の場合だとこう、温まると言うと。焚き火をガンガン炊いて皆さんが温まるでっかい缶を想像しますけどね?」
 四郎はあくまで失礼である。

●イスカリオテ・ディ・カリオストロ
 会場に突如穏やかなクラシックが流れ始める。
 スポットライトが真上より照らされ、そこにイスカリオテは立っていた。
 観客を一瞥すると彼は居住まいを正し、語りかける。その場所に麗しい彼女が立っているかのように。
「人の思いはよく花に喩えられます」
 芽吹き、蕾を付け花開き、果を実らせ、そして枯れる。それに寂しさを感じるか、と彼は問う。
「ええ、ですが私はそうは思いません」
 否定の言葉とは裏腹に寂しげに彼は目を伏せる。
「花の美しさは一瞬の価値、たとえばそう、今こうして貴女がいて、私がいる」
 この一時は掛け替えがない。そしてどれほど切なく狂おしく望もうとも、今と言う時は戻らず永遠ではないと。
 少しの沈黙。それは思索か、思いを紡ぐ言葉を作る間か。
「だからこそ、私は貴女を愛しいという奇跡に巡り合えたのです」
 彼はそのまま、カメラへと一礼し。優雅に舞台を降りていった。

「いやぁ、さすが神父。詩人ですねえ」
「ポエティック&アーティスティック。同じ分野の立場として俺も負けてはいられないな」
 伸暁さん。貴方の分野は明らかに神父とは違います。

●桐月院・七海
「貴女とこうして逢うのも二度目ですね。今年も薔薇を持ってきたよ」
 スーツに身を包み、花束を持った七海。その瓶底眼鏡の奥の目は定かではない。
「君は赤い薔薇が好きだって言ってたけど……これはこれで、綺麗だろ?」
 花を供え、彼は他愛のない話を続ける。だが、やがて目を伏せて搾り出すように呟く。
「……貴女との思い出が褪せることはないけれど、君の声を聞きたくて堪らないんだ」
 男の嫉妬と同じく、自らの未練も醜いのだろうかと。彼は韜晦し、頭を振った。
 自らを卑下することは、彼女に対しても失礼なのだろうと彼は、思う。
「君の妹にはまだ嫌われてるし、前に会った時は大変だったんだ。――今日はもう帰るよ」
 もっと居たい未練を振り切り、彼は踵を返す。
 ――おやすみ、と。いつも通りのように挨拶を残して。

「悲劇によって別れた彼女って案外多いんですかねえ」
「悲しみは人生のアクセント。それが人生に深みとインテレストをもたらすのさ」

●内薙・智夫
「智美・ナイチンゲールっていいます! まだアイドルの卵なんですけど……よろしくお願いしますっ。りゅんりゅん♪」
 うわぁ。
 可愛らしいドレスに身を包んだ彼女はぶっちゃけ彼。童顔で女顔の智夫には異常に似合っている。
 なお、その視線は明らかに伸暁のほうを向いている。なにこれこわい。
「彼とはたまに会えるだけなんですけど、ハロウィンの時も『俺のTrickがお前をTreatにする』って情熱的に囁いてくれてー……その後は言えないんですけど。きゃっ」
 顔を真っ赤に染めて隠す智夫。一体何が彼をここまで駆り立てるのか。
「でも彼、プレイボーイだから……この前も……」
 スキャンダラスなことを言いまくる智夫。だがぐっと拳を握り、カメラへと目線を向ける。
「でも、負けません。そんな私の歌、聴いてください。タイトルは『血死のファンレター』」
 イントロがかかり、緞帳が下りた。終了。

「これ明らかに名指しですよね?」
「俺のソウルワードが子猫達をパッショネートに惑わせる。才能ってのは罪なものだよな」
 それでいいんですか。

●イーゼリット・イシュター
 Q.なんか神秘探求同盟の人多くないですか?
 A.大体こいつのせい。

「……あの人、素敵な人なんでしょうね。だって……貴方が好きなんでしょう?」
 隣にいる(いない)人物に語りかけるイーゼリット。
 二人の目線の先にはとても素敵なあの女性がいて。
「ねぇ、嘘ついて。今ここで……好きだって言って? お願い。言ってくれないとこのまま離してあげないから」
 縋りつくイーゼリット。
 言葉だけでいい、嘘でいい。嘘をつくだけなら誰も困らないというのに。
「――どうしてダメなの?」
 それは誰よりも彼女自身がわかっているというのに。
「いいの、わかってる。貴方ってそういう人だから。――帰って! もう帰ってよ!」
 そのまま目を伏せ、黙り込むイーゼリット。やがてぼそりと呟く。
「……ごめんなさい」
 彼女は走り去る。その場に耐え切れないかのように。

「いやあ、直前まで出たくないって大騒ぎしてた人には見えないですねぇ。自分でエントリーしたのに」
「いくらでも幸せをイメージすればいいのにソローなイメージ。ややこしいメンタリティをしているじゃないの」
 というか、なんで横恋慕なの?

●降魔 刃紅郎
 そこは戦場であった。
 刃紅郎の腹部は槍に貫かれており、血は止め処なく溢れ続ける。
「くく……まさか王たる我が他者を庇ってこの様とはな」
 え、なにこれ。
 どうやら彼は少女と共に囲まれているらしい。命を狙う兵の群れに。
「取り乱すな……! 今は戦の只中、眼前の敵を見据えよ!」
 戦友たる二人は立ち向かう。槍を引き抜き、凄まじい威圧感を発し王は叫ぶ。
「さあ来るがいい。一騎当千の我等二人、貴様等雑兵の百や二百で討てると思うなよ!」

 されど多勢に無勢。
 いつしか王は地に付し、少女の膝にて最後の時を迎える。
「泣く奴がおるか。……お前の涙は戦の傷以上に我には堪えるぞ」
 あくまで自らの心配をする少女の悲しみこそが、今の彼にとっては重きもの。
「また生き残ったのだな、二人で。
 ……だが今回は些か疲れた。今は暫し……このまま……で」
 王は天へと還る。
 乱世は未だ続き、少女の辿る道行もまた、重い。

「戦いは悲劇を生むが時に愛情も生む。されどもラヴ&ピースといきたいもんだね」
「というか、あの膝枕まさか腹筋だけで上体持ち上げ続けてるんですかね?」

●レイライン・エレニアック
(あの人は気に入ってくれるかのう)
 いつもと違い、めかし込んだ彼女。
 普段は動きやすい服装だけれど、今日に限っては裾の長いスカート。
 サイドテールは解き、アクセサリー。精一杯めかし込んだ、特別な今日。
 募る不安、人目が気になる。おかしなところがあっただろうか。ああ、彼が来てしまう。
「こんばんわ……きょ、今日は冷える、ね……」
 どもってしまう。緊張が体の動きを悪くし、恥ずかしさから涙腺が緩む。だが――
「え……いつものわらわがいい?」
 一気に緊張が解れ、笑顔が弾ける。自然体が一番いいと、彼は言ってくれたから。
「ならばわらわをちゃんとエスコートするんじゃぞ? さ、どこへ連れて行ってくれるのかのう?」
 二人の今日は始まったばかり。いつも通りだけど、ちょっと特別な一日が始まる。

「ギャップ萌えというやつですかね?」
「人は普段と違うことにサプライズを感じるのさ。それもまた恋のアクセントってやつだね」

●結城・ハマリエル・虎美
 そこには一脚の椅子があった。
 そこは虎美の特等席。兄の膝の上、彼女だけの特別な場所。
「やだ、いい所なんだから首筋ぺろぺろしないでよ、くすぐったいー。もう私もペロペロしちゃうんだから」
 向き直るように座りなおし、抱きつくように寄りかかる。
 熟練の妹たる虎美にとって、そこに兄がいないことなど些細な問題。そのままくんくんと匂いを嗅ぐように鼻を動かす。
「んふ、お兄ちゃんの匂い……」
 うっとりとした表情。だが、一瞬でその表情は鋭いものに変わる。
「あの女の匂いがする! 私に隠れて浮気ってどういうこと!?」
 だがそれも束の間。すぐにいつもどおりの甘えた表情になる虎美。
「やだ、冗談だってば。そんなに焦らないでよ。お兄ちゃんは私を裏切らないもんねー」
 甘えた声を出す虎美だが、思い出したようにポケットからあるものを取り出す。
 それは婚姻届。夫婦の絆を法的に証明する書類。
「あ、そうだ。これにサイン……え、いいの? お兄ちゃん大好き! ずっと一緒だよ、お兄ちゃん……」
 スピード成婚である。その目は光がなく、どこか病んだ目をしている気がした。

「怖」
「怖」
 マジで怖。

●津布理 瞑
「恋の告白はミュージカル! 悲しいアナタへの恋のソプラノ! 今なら出来るスーパーラブ! SayYou!」
 賑やかな音楽と共にステージに躍り出、歌い踊る瞑。
 まさにミュージカル。
「私あなたの事好きだったの」
「マジかよ」
 一人二役。歌いながら男と女、両者を演じる器用な真似をする。
「付き合ってください!」
「付き合ったらいいじゃん!」
 二役じゃなかった。もっといる、これ。
「さすがに瞑はねーわ」
「ショック!」
 自爆である。
「テイク2!」
 マジで?

「すけべしようや」
「いやぁん!」
 剛速球である。エアなのに。
「やめろ! 俺の瞑に手を出すな!」
 その瞬間、躊躇いなく緞帳が下りた。

「一人何役ですか? 器用ですねぇ」
「音楽ってのは相手のハートにソウルを届けるもっとも有効な手段なのさ」
 使い方を間違えてる気がします。

●マリス・S・キュアローブ
「もう、このひとったら朝に弱い人ですね。起きてください起きてください」
 そこにいる誰かを起こすマリス。
「さ、顔洗って寝ぼけた目しゃっきりさせてください。コーヒー淹れておきましたから」
 それは日常。そこはかとなく普通の家庭の一描写。
「ご飯食べたら歯磨きして。ハンカチとティッシュ、ちゃんと持ちましたか?」
 甲斐甲斐しく世話を焼くマリス。穏やかな朝の風景。
「返事は『はい』でしょ? 結婚もしてないのになんで夫婦みたいな事しないといけないんですか。私だって仕事あるんです、ありがとうくらい言ったらどうですか?」
 同棲だった。結婚の一歩手前、だがある意味最も蜜月といえるかもしれないその期間。
「お弁当持ちました? ――ほーら、忘れっぽい! って……へ?」
 ふくれ面をしていたマリスが突然きょとんとした顔になり、急激に顔を赤く染めていく。
 照れた様子は先ほどまでのきびきびとした彼女のイメージを溶かしていく。
「い、いきなり『愛してる』なんて反則です! 反則です! も、もう! 笑わないでください!」
 追い出すように彼を送り出したマリスは立ち尽くし。思い出したように微笑んだ。
「……えへへ」
 それは幸せな日常のワンシーン。切り取られた愛情の一ページ。

「甘酸っぱいですねえ」
「青春、それは君がみた光。この一時は掛け替えのないメモリーとなり、いつか人生を支える時がくるだろうさ」

●黒須 櫂
「お弁当作ってきたの。食べて。はい、あーん」
 いつものように作ってきたお弁当。ちょっと背の高い、ジャージ姿の彼に食べさせてあげようと櫂はあーんと差し出す。
 今日は彼の大好きなハンバーグ。
「美味しい? ……よかった」
 安堵と幸せで櫂の表情が綻ぶ。それは決して他人には見せない、彼の為だけの笑顔。
 彼の食べる姿を見ると母性本能がくすぐられる。多幸感が彼女を支配する。
「次のデートも作っていくわ。遊園地? 公園? うん、課金し……その日は空けておくわ」
 おい、今なんつった。
「次のデートも楽しみ」
 楽しそうなのでいいのかもしれないが。彼女に見えているその彼氏の姿は……
 今彼女が熱中している、ネットゲームの彼氏の姿をしていた。

「IT世代ってやつですかね?」
「外に出て遊ばないといい大人にはなれないぜ? 尤も、相手がゲームでも一緒にデートで外にいけばそこはドリームランドの完成さ」
 別に問題ないらしい。

●華蜜恋・T・未璃亜
「私のこと、『恋人』だと思ってくれてるんっすか? いつも綺麗なお姉さんに見とれてるじゃないっすか」
 どこか拗ねたように問い詰める未璃亜。
「今だってほら。大きな胸がお好きなようで」
 そういって会場にいるちょっと胸囲格差の勝利者である女性を指差した。他人を指差しちゃいけません。
「私みたいなガキなんて……この前なんて人前で紹介するとき『妹』って」
 積もりに積もった不満が爆発したのか、ひたすら問い詰める未璃亜。
「言い訳は聞きたくな……んむっ!?」
 突如唇を口付けで塞がれる挙動をし、言葉を中断する未璃亜。
「ちょ、何するっすか! このロリコン……んむぅ!」
 再び言葉を塞がれる。っていうか器用ですね、それ。
 やがて照れたような表情で抱きしめられる挙動をする未璃亜。恥ずかしそうな表情で、おとなしくなりやや文句を垂れた。
「む、むぅ……その胸ちょっと分けて欲しいっす」
 はい? 胸?
「え? 今のは嫁ですよ? ロリとショタが好きだけど大きな胸も好きなお姉様っす」
 ……随分と博愛主義な嫁ですね。

「というかあの中断パントマイム凄いですね」
「愛にボーダーはない。あるのはパッション、ただそれだけさ」

●樅山 多美
 ぶらぶらと多美は歩く。
 隣には憧れの生徒会長。初デートだけど、なんで誘われたかわからない。
 単なる暇潰し? わからない。でもこうして街を歩いているだけで多美は幸せを感じていた。
(本当は手を握りたい。出来たら腕を組んだり。でも……)
 彼女には勇気が足りない。とても言い出したり出来ないのだ。
 だから、そっと握った。彼の裾を、はぐれないように。それがせめてもの自己主張。
 赤くなってるかもしれない顔を心配して。見られるのが恥ずかしくて、思わず無口になるのも仕方のないこと。
 その時、ショーウィンドウにあるペンダントが目に入る。
「可愛い……」
 思わず口に出る。その雪の結晶の形をしたペンダント。ちょっとだけ欲しかったけれど。
 やがて帰る時間が近づき、ちょっとした後悔が多美には生まれる。退屈させたかな。もう誘ってもらえないかも。
 その時だった。
「これ、君にぴったりだと思って」
 彼が差し出したその包み。中身はさっきの雪のペンダント。
 思わず多美は彼の胸に飛び込んだ。幸福感に包まれて。

「甘酸っぱいですねえ」
「ティーンズらしいドリームに溢れたシチュエーション。いいじゃない」

●ノエル・ファイニング
「ふふ、まさかあなたとこんな形で再会するなんて思いませんでした」
 テーブル越しにノエルは微笑む。
「どうしてそのような顔をするのですか? あなたはその道を選んだ。私はこちらを選んだ。
 ――それはどうしようもない事なのです」
 お互いの信念がぶつかり合う。
 譲れないものはある。ならばそれをぶつけ合わせることも必然である。
「……何も仰らないでください。私はあなたを愛しています。愛してしまいました! ――しかし、それでも」
 見過ごすわけにはいかないのです、と。彼女は強い決意を持って相手を見つめる。
 さあ、始まる。確固たる信念を持つ者同士のぶつかり合いが。
 たとえ愛し合っていても。それは決して曲がることはない。
 卓上にあるものは、複数枚のカード。
「この後ですか? ポーカーで勝負ですよ? 現代ですものね」
 ――勝負の形には色々ある。
 ましてやここは法治国家であった。

「平和な解決法ですねえ」
「運命はカードの導きのままに、とかいうとクールじゃねえ?」

●エンディング
「さて、今回の企画いかがだったでしょうか」
「どいつもこいつも自分なりの最高のパートナーを見せてくれたんじゃないか? ムーディな一時だったじゃないの」
 四郎と伸暁が締めの挨拶を行う。
 三高平の屈強な精鋭達は四郎の期待通り、最高のエアっぷりを発揮してくれた。
 一部放送が怪しいものもあったが、概ねこの企画は成功といえるだろう。
「少子化が叫ばれるこの時代ですが、皆さんの心にもきっと自分だけのエアパートナーが存在するはずです。それを恥じることはありません。是非とも磨き上げ、最高の一生を過ごしていきましょう!」
「それがお前達のモチベーションとなるならこれ以上ないことさ。パーフェクトな人生を歩んでくれ」「それでは今回はここまで! 皆様御機嫌よう! 次回の予定はありません!」
 色々と放送的に危険な絵面があったので。
 何より次回以降は三高平以外の場所でやることとなるだろう。
 何故ならばこれは三高平大会だったのだから。

 というか全員半端ネェ。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
●あとがき
 大変遅くなりました。

 というわけでエアカップル選手権、公開です。
 内容は……うん。読んだほうがわかるかと。アクつええ。

 MVPは彼女に。
 だって怖かったんだもん。