●夢見る乙女じゃいられない 「短期留学生を護衛してください」 その日、なぜかブリーフィングルームではなく広場に集められたリベリスタ達は『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)開口一番を聴いた。 「護衛対象はこちらの世界に対し、非常に友好的な異世界から派遣されたアザーバイドです。彼等はこちらの文化へと強い関心を示し、今回特に関心の強い日本へと体験留学を希望してきました」 成程、話が見えてくる。敵対意識の強いアザーバイドも無数に存在する中、友好的な世界との交流を深めておくことは悪くない。留学と言っても、ようは観光であろう。おそらくは護衛も兼ねたガイドをやれと言うのだ。 「アークはこの申し出を受けましたが、滞在者をひとりにさせるわけにもいきません。そこでリベリスタへの依頼となります。氏の警護をしつつ、こちら側での一日を過ごしてください」 和泉はふと、視線を集まった彼等から横に逸らしてみせる。 「そして肝心の護衛対象ですが、彼女です。どうぞ自己紹介を」 ●夢見る単眼巨人じゃいられない それは、柱だと思っていた。今でもそうであって欲しかったと心が叫んでいた。 大きい、とにかく大きい。見上げねば全容を視認できぬほどに巨大なそれ。筋肉質であり、よく鍛えられたものだとひと目で分かる。分からせてくれる。そして、否が応でもそれが目についた。単眼。顔の中心に座する大きな大きなひとつのめだま。 「サ、サイクロプス……!?」 そう、それは紛れもなくサイクロプスであった。ホモサピエンスの何倍もある巨躯。否応なく心臓が跳ね、全身が強ばっているのを感じる。それは大きく息を吸い込むと、遙か高みからリベリスタ達に宣告した。 「あのね、えっと……おにいちゃん、おねえちゃん達がリベリスタさんなの?」 喉から臓腑が全部飛び出るかと思った。 それはまだ、あどけなさの色濃く残る声。幼いと言っても差し支えがない。目をつぶればそこには十に届くかもわからぬ少女が佇んでいると錯覚してしまいそう。それがこの単眼巨人から流れている。 理解が追いつかない。何をしている。目前には巨大な怪物。精神の静止は間違いなく死に直結する。死神の鎌を妨げろ。思考を諦めるな。これはそうだ、えっとそう。可愛い幼女がこんな姿に変えられているんだ。倒せば元に戻るはず。そうだ。そうに違いない。そうと言ったらそうなんだ。取り出せアクセスファンタズム。身体は剣で出来ている。 「現実を見てください。彼女、サイクロプスのアザーバイド氏が本件の護衛対象です」 和泉の無情にリベリスタ達は泣いた。分かってるよ。だってこれもう三回目なんだもん。何回続くんだよこのパターン。俺だってドラゴン倒してお姫様救う勇者をやりてえんだよ。 彼等の嘆きに気づかず、一つ目の巨人が名乗る。 「あたし、ベルへルミナっていうの!」 畜生、こいつも名前可憐だぞ畜生。あれだって、ガンガンゲイヴとかで良いってお前。そんな無理してそっち路線走んなくていいんだって。 試合終了し切れぬ胸中は黙殺され、ベルへルミナは期待いっぱいの笑顔(という風に妄想しておかないと精神が耐えられない)で声を張った。 「おにいちゃん、おねえちゃん。あたし、魔法少女になりたいの!」 魔法少女とお前とサイクロプス。 ステッキを振り回すよりワンドで大魔法ぶち込まれる方がお似合いな怪物は、ここぞとばかりに夢見るロマン砲をぶっぱなしやがった。 「なお、既に手配は完了しています。恵観区内にて複数のエリューションが発生すると予知出来ました。時間帯が深夜であり、また彼女は幻視を使用する為そうそう心配はないでしょうが。くれぐれも、彼女の正体がバレぬようお願いします」 「お願いします!」 サイクロプスが勢い良く頭を下げた。 近くで見ると顔がマジで怖かった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:yakigote | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年12月01日(木)23:48 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●癖のある栗毛 RPGでも終盤以降の怪物。 サイクロプス。ファンタジーの世界では非常にメジャーな部類に入るだろう。ひとつ目の巨人。人間よりも遙かに大きく、雄々しく。その腕力は、種族の格差とはなんたるかを思い知らせてくれる。勇者、英雄。そう呼ばれる種別であれば相対することも不可能ではないのかもしれないが、その例は極めて稀なものである。そんな化物に魔法の力が加わったとしたら。ガタイとマジカルが両方備わり最強に見える。 『蜥蜴の嫁』アナスタシア・カシミィル(BNE000102)から見れば、このサイクロプス娘。ベルへルミナは可愛いものだ。これがお化け、死霊の類であれば恐ろしいと思うかもしれないが。例えモノアイで非常に大きく凄まじい強さを持っていたとしても、中身がこんな夢見る女の子であれば怖がれる筈もない。 『銀の月』アーデルハイト・フォン・シュピーゲル(BNE000497)もまた、彼女を恐れない。むしろ親近感が湧くほどだ。吸血鬼もサイクロプスと同じく、多くの物語では敵対する怪物でしか無いだから。化物。怪物。クリーチャー。そうであるがゆえに、人と共に生きるのが誇らしい。 『消失者』阿野 弐升(BNE001158)は過去の失言に黄昏ていた。次はメイド。そんな言葉を漏らしてしまったのは彼である。あの一言にフラグが経ち、なんやかんやと第三話。そんな筈はないと思いたいのだが。いやしかし。巫女でメイドで魔法少女。溢れるロマン砲に涙が止まらない。嗚呼、運命のなんと残酷なことか。 異層交流ファンタスティックコミュニケーション。最早それが何語として正しいのかもよくわからないが、『メタルフィリア』ステイシー・スペイシー(BNE001776)は楽しそうであるし別にいいのだろう。ベルへルミナの姉、アナスタシアとの記憶はまだ新しい。あれも何かの縁だ。奇跡も魔法もあるんだと叶えてしまおうじゃないか。 「あ、ベルたんって呼んでもいいかしらぁん?」 ステイシーのそれに笑顔で頷こうとしたベルへルミナであったが、『ゲーマー人生』アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)の言葉で困惑することとなる。 「ミナちゃんって呼んでいいかな?」 おろおろする単眼巨人を他所に、アーリィの心境は複雑だ。魔法少女。魔法少女である。まさか自分がこういう衣装を身につける日が来るとは思いもよらぬことではあったが。折角の機会だ、自分も成りきって楽しむとしよう。 異文化に憧れ、せっかくこちらまで来てくれているのだ。歓迎すべきでこそあれ、敵対の意識など持ちようもない。それに、自分にしても出身のそれとは別国の衣装をこうして身につけているのだ。知識を得るには見聞よりも体験。知らぬ文化にしても同じ事だ、普通の事なのだろう。西洋人が浴衣を着るようなものだ。だから多少は似合わないなんてことも当然。そう、普通。なんの不思議もない依頼なのである。先程からぶつぶつと、『月光花』イルゼ・ユングフラウ(BNE002261)はそんなことを繰り返している。 『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)は嘆く。何故こうも次々にオンリーストーン家の姉妹が送り込まれてくるのかと。それだけを聞けば、まるで侵略戦争のそれ。あるものは蜂起し、あるものは放棄するだろう。それでも彼女らのそれは留学であり、観光だ。信頼できるガイドがいるからなのだ。つまるところ、この良好な対層関係にはそこに奮闘した彼の貢献も大きいのである。死して屍拾う者なし。あ、異界のフィアンセ元気っすよ。 貢献者と言えば、『レッツゴー!インヤンマスター』九曜 計都(BNE003026)の姿が見えない。二度三度と当件に関わっている彼女が、今更姿をくらます筈がないのだが。と。そこでリベリスタ達(+サイクロプス)の前に黒い子猫が顔を出した。彼らの輪に自然と入り、次の態勢を待っているようにも見える。まさか、これが代理だとでも言うのだろうか。 時刻は夜。そんなことを言い出しても詩的に纏めるつもりはない。だってこれ、殺人鬼じゃなく単眼魔法少女のお話なんだもん。 ●いつも笑顔 力を溜めるとかされたら次のターンビビる。 「あたしはアナスタシア・カシミィル! ベルへルミナ殿のお姉さんと同じ名前だって聞いたんだケド、やっぱりホント?」 カトブレパスである姉のことを答えているサイクロプスと共に、女性陣が彼女の衣装を整えていく。ピンクのワンピース。やはり魔法少女の定番と言えばこれであろう。恐ろしく不似合いではあったが、そこは内面への関心と自己暗示で誤魔化した。 姉のことを話す時、ベルへルミナはとても楽しそうだ。よほど彼女らのことが好きなのだろう。姉妹で種族が違うなんて疑問はあるものの。なに、異世界であればこちらとは基準も違うはず。本当に、その素直さは微笑ましいものだ。姉妹で和気あいあい……それは小さい頃に怪獣映画で見たものと酷似してはいたが。 「恵観区を守るには、キミの力が必要なんだ、ベルへルミナ! さあ、これで変身して!」 魔法少女に杖は必須のアイテムである。黒猫がマジカルステッキを、弐升が釘バットを、アーデルハイトがハンマーを差し出した。ベルへルミナはどれをとなんて選ばない。両手に構え、口に咥えた。まさかの三刀流。鬼を切り、虎でも狩れるこの構え。おお、神の刃は人の愛。ここに無敵の魔法少女が爆誕。立ち上がれ、気高く舞え。 ●ちょっと舌足らず 初遭遇時はボスかと思った。 ステイシーが変身し、赤い衣装を纏う。基本的なデザインはベルヘルミナのそれを同じだが、こちらは体の線を強調したものだ。夢見るサイクロプスのそれと比べると、扇情的と言うかなんというか、アダルティな感じである。これが魔法戦士クリティカルローズ。おいビデオ回せ、撮影班いねえのか。ちくしょー、今回一般視線なしの夜間依頼だった。 くるりとターンを決めて見せると、ステイシーは魔法少女巨人めがけて治癒の魔法をかける。オートキュアー。効力はリジェネ。即ち自動回復。この肉体で、この装備で、おまけに毎ターンホイミ。嗚呼化物、嗚呼怪物。否、断じて否。これが少女。これが魔法少女、マジカルモノアイの最終形態。マジカルモノアイパンプアップモードである。なんて最初からクライマックス。 「悪の手先め! 魔法少女のチカラ、今こそ見せてあげるよぅ。覚悟するよーにッ!」 アナスタシアがベルヘルミナとは色違いの魔法少女姿でポーズを決める。えっと、御年21歳です。突っ込むなよ。魔法少女ったら魔法少女なんだ。ほらよく見ろ、ご褒美だろアレ。だから黙っとけって。 あ、敵の描写とか無いです今回。こっちのゲストの方が敵より怖いしね。 「アナスタシアおねえちゃん、それは……!?」 サイクロプスがアナスタシアの持つ禍々しい得物に驚愕の声をあげた。なるほど、これは正義のそれとは言いがたい代物だ。さて、なんとか誤魔化すには、 「敵の呪いでこんなコトに……許さない!!」 「呪い!? な、なんて卑怯なの!!」 あっさり信じた。サイクロプスマジ純情。 アーデルハイトが変身する。衣装はベルヘルミナのそれと似ているが、色は黒いものである。サイクロプスと同じく幻視により本来のそれを隠し、幼いものへと変貌させた。便利だな、アクセスファンタズム。何でもありだな、幻視。 ベルヘルミナに群がる敵を蹴散らし、苦闘している風に見せながらもこの魔法少女志望へと心強い言葉をかけた。 「大丈夫、貴女は私が守ります」 「かっこいい……」 その声に憧れにも似た眼差しを向けるサイクロプス。これだ、これなのだ。わざわざ異世界のテレビ電波を受信してまで毎週欠かさずモニターを眺めた夢の世界はこれなのだ。 そんな中でもアーデルハイトは周囲を警戒する。夜間とはいえ、結界があるとはいえ、万が一があるかもしれない。一般人には彼女がまぎれもない魔法少女に見えるのだろうが、彼女は本来その何十倍も大きいのだから。 「ええと……イエスロリータ、ノータッチ。ですよ?」 日本文化詳しいなドイツ人。 この歳でひらひらの魔法少女スタイル。悩みはしたものの、イルゼは結界も張っているのだから味方以外には見られまいと自分に言い聞かせた。皆で渡ればなんとやら。ちなみにこちらは御年23歳。大丈夫、いけるいけるって。寧ろ無理した感が逆にグッとくるし。なあ皆! おっと、誰か来たようだ。 閑話休題。イルゼは仲間の変身、登場に合わせて守護結界を施していく。地面に陣が浮かび、リベリスタ及びサイクロプスをライトアップ。ようは演出だ。三刀流でひらひらピンク衣装の単眼巨人が照らしだされた姿はそれはもう邪神像以外のなにものでもなかったが。スルーだ。スルーしろ。気にし始めたら自分の存在意義あたりに疑問を持ちかねない。 これは普通これが普通イージーな依頼心にも身体にも優しいイージーな依頼。目を閉じて、深呼吸。 「てらとん☆ぱんち!!」 サイクロプスの必殺マジカルパワーが炸裂する。それは轟音と共にアスファルトを抉り、敵エリューションを粉微塵にし、その場所に月かと見紛う程のクレーターを生成した。おそるべし、マジカルモノアイの魔法攻撃。断じて筋力などではない。なお、この地形変動は後でアーク職員がなんとかする。もちろん薄給だ。裏方マジお疲れ様っス。 「うん、なんていうか……わたし達要らなそう……?」 呆然とした顔つきで、アーリィが呟いた。これなんてベルヘルミナ無双。 なお、彼女の衣装は銀色である。吸血鬼であることも鑑みてか、名前はブラッドシルバーだ。絶望的にネーミングセンスがない。誰かどうにかしてあげて。 とりあえず普段通り、回復役に回るとしよう。リジェネってるからまるで問題ないとはいえ、攻撃のほとんどがベルヘルミナに集中している以上、やっておいて損はないだろう。しかし今の自分は魔法少女。こういう時もそれらしく言ったほうが良いのだろうか。 「エンジェルブレス!」 壊滅的にセンスがない。お母さんちょっと涙出てきた。 魔法少女。魔法少女である。昨今、この手のもので男性陣が活躍する機会はめっきり減ってしまったように感じる。では、これに参戦してしまった男は一体どうすればいいというのか。簡単なことである。現在にないのなら、過去に戻ればいい。 「「謎の助っ人マスクオブアーク、夜の闇を切り裂きただいま参上!」」 赤いタキシードと白いタキシードの二人が颯爽と現れ、同時に名乗りをあげた。シルクハットにファントムマスク。髪型そのまま声色変えず。なんかどっかで見たことのある二人だが、まるで正体は不明である。嗚呼、一体誰なんだマスクオブアーク。 マスクオブアークとマスクオブアークは同時に飛び、ベルヘルミナを囲むように降り立った。マスクオブアークとマスクオブアークは全く同じタイミングでもう大丈夫だとサイクロプスに声をかけると、マスクオブアークは前へ、マスクオブアークは後へと武器を構え……ああもうややこしい。もうあれな。赤マー君と白マー君な。 赤マー君が前へ飛び出し、白マー君はベルへルミナをサポートする。でもなんだ、サポートって何すりゃいいんだ。あれか、転んだところを支えるとかか。そういや大きい方のお姉ちゃんよく転んだよね。はい、じゃあまあ、がんばれ? 「うおおおお!?」 敵の攻撃に足を取られ、転倒しかけたマジカルモノアイを白マー君が両腕で支えている。この姿、もしも一般人が見ていたら優しくお姫様抱っこしているように見えただろう。しかし、現実は吊り天井を支える危機一髪シーンに近い。 悲鳴をあげる筋肉に叱咤しながら、それでも魔法少女に激励を飛ばす。 「君はどうして魔法少女になりたいと思った? 強くなりたいと、そう願った奥底には何が……誰がいる……そうか、だったらそれが君の魔法の源だ。その魔力を、想いを……思いっきりぶちかませ!」 なんかいいこと言っている。でもその奥底って多分サンドウォームとかカトブレパスとかじゃないかな。 戦隊モノでもそうだが、魔法少女モノでも追加戦士がいるのは常套を通り越して最早王道である。そんな時、割と因縁があったりなかったりするのだがまあそれはさておき。 「恵観区とお腹の健康を守る正義の魔法少女、ミルキー☆ラクトバチルス! あなたのハートもかもしちゃうゾ☆」 これまでベルヘルミナの肩で助言をしていくれていた黒猫は消え去り、代わり新たな魔法少女がそこに現れた。そう、君が口に咥えているマジカルステッキをくれた黒猫の正体。それは君と同じ魔法少女だったんだよ! な、なんだってー。 ●幼女 最近は、これが出てくれば物語終盤だと脳が思い込む。 大魔法。それにはチャージがいるものだ。ならばそれまで持ち堪えるのがリベリスタの役目というもの。 白マー君が身体を張って敵を食い止め、漏れた何体かはイルゼと赤マー君の封印魔法で閉じ込めた。今こそ絶好の時。 「さあ、相手の足は止めました。魔法をパワーに!」 「俺の事は良い、構わず撃て!!」 いいですとも! 「お姉様たちの残した、シスターズクリスタルを使う時よ!」 ミルキー☆ラクトバチルスが水晶玉を空にかざし、マジカルモノアイが詠唱する。 「貴石に眠る愛の力……きらめき羽ばたけ、オンリーストーンパワー!」 煙を上げ、光り輝き、翼を生やしながら彼女は飛んだ。それは光輪を纏った必殺の一撃。ぶっちゃけ体当たり。彼女の高さであればそれはまさしく、 「いっけぇええ、てらとん☆ふらいんぐぼでぃぷれぇえええす!!」 巨体が舞う。敵を逃さぬ大面積。圧倒的超質量。十二分の重力加速。それらを補う魔法の力を信じ、彼女は必殺の一撃で敵の全てを粉砕した。白マー君ごと。ミルキー☆ラクトバチルスごと! お前ら、ほんとネタでフェイト使うの以下略。 後日談。 ひとつの戦いが終わっても、リベリスタの日常は変わらない。色々合った気もするが、それでも世界は脅威から救われた。ベルヘルミナ殿の大切な、き・ね・ん、なんて。アナスタシアが巨大単眼顔面の真横で写真撮るのにビビッた何人かを無理やり引っ張ったり。まあすったもんだありはしたが、それでも無事にお別れを済ませたのだ。 一緒に戦った仲間。それが例え自分達とはかけ離れた存在であっても、やっぱりお別れは少し寂しかった。しんみりするのが嫌だったから、笑顔で送り出したものだけど。 そういえば、戦闘中は一体どこにいたのか。男ふたりがお姉ちゃんたちと仲良くな、とか。他のおねえさん方にもよろしく、とか。そんなことを言っていた。なんだろう、妙に気にかかる。 引っかかるものを感じながらも、ブリーフィングルームのドアを開けて。そこで異様なものを見た。 パッと見は人のそれに近い。大きさも、自分達よりは高いものの、人のそれとしては十分に許容範囲内だ。しかし、その大きな角。溢れる魔力。絶対的なパワー。見るともなく感じる威厳。格。否応なしに自分とはまるで違う存在だと教えられる。 「だ、大魔王……!?」 それはリベリスタ達に気づくと、大人びた、されど清楚さを残す声を出した。 「私、マリアンヌと申します。あの、私……コミケに行ってみたいんです!」 コミケとお前と大魔王。 次回最終話。今年の冬は大魔王がやってくる。さあ、我が腕の中で息絶えるがよい。 了。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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