●誰にでも出来る簡単なお仕事です。 「仕事としては、すごく簡単。だけど、多分すごくつらい」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、しばらく目を閉じていた。 これからリベリスタが受ける苦しみを、わずかでもわが身に受けようと天に祈るかのように。 これからリベリスタを過酷な現場に送り出す自分に罰を請うように。 やがて、ゆっくり目を開けると、ぺこりと頭を下げた。 「お願い。あなた達にしか頼めない」 苦しそうに訴える幼女、マジエンジェル。 だが、断る。なんて、言えるわけがなかった。 ●お仕事内容はごみ分別しかるのち焚き火です。 「先日とあるアザーバイドから一般人を保護する案件があって、そっちは問題なく解決したんだけど」 モニターに映し出されたのは、見覚えのある……アークの駐車場だ。 紙が山のように積まれている。 「これ、そのアザーバイド。正確に言うと、アザーバイドが残して言った式神のようなもの。識別名「カードの兵隊」。魔法の産物だから消えると思ってたんだけど、残ってしまった。ちなみに、すでにその次元へのD・ホールは破壊済み」 モニターに、その式神がリベリスタの後を追って、津波のように押し寄せる様子が映し出されている。 「戦闘記録をみてもらえばわかるように、戦闘能力は一定水準を超えていた。ほとんど無力化されてるけど、回収していた一般職員が殴られて怪我をした。まれにまだ動ける個体がいる。まあ、ほとんど駄々っ子パンチの域だけど」 イヴは、きりっと表情を引き締めた。 「物事は、最悪の事態を想定して動くべき。危険がある以上、一般職員には任せられない。それに、けっこうな量だし」 ダンプ? ダンプカーなの? 「ごみ処理場で普通に焼くってのは……」 「実は、そんな簡単な話じゃない。彼らの手足は金属製。つまり……」 「分解して、分別しなくちゃいけないごみ……っ!」 「さらに、紙部分もダンボールくらいには厚い。大きさは、大体成人男性サイズ」 「ある程度裁断しないと、焚き火するとき危険!」 神妙な顔をしてうなずくイヴ。 「今回は、「カードの兵隊」の手足の金属部分を分解、基幹部分を裁断し、焼却。金属部分は、仕方ないから、あとで溶鉱炉で溶かす」 前世紀から、やばそうな金属は溶鉱炉で跡形もなく溶かすのが一番と相場が決まっている。 「そう言う訳で、リベリスタの強靭な肉体に期待する」 結局それかよ。 「ちなみに、今回はこれを貸与する」 平たく言うとくぎ抜き。 「正真正銘、掛け値なし。バール。ようなものじゃなくて、バール」 おお、これが。本物は初めてみた。 「あと、これ。ロータリーカッター。リベリスタなら、手で電話帳を裂けると思うけどね。数が多いから」 ピザカッターのでっかいの。 「とにかく数が尋常ではない。正直、いつ焼き終わるかわからない。焼き終わるまで、作業の中断は認められないから、不眠不休で一生懸命レッツファイヤー」 そんな無表情で言われてもなぁ。 とにかく、全部処理すれば、問題なし。 地球に優しいかどうかはわからないけど、崩界要因の減少にはなるだろう。 「戦闘にはならない。ばかばかしいと思うのもわかる。ストレスがたまると思う。でも大事な仕事」 イヴは、もう一度頭を下げた。 「お願い」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2011年11月25日(金)23:22 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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● 「うむ、ゴミの分別はキチンとしないといけないのである! 正義の味方は地球の環境も守らねばな!」『トリ頭』鳩山・恵(BNE001451)、正しい主張。 「父親としての評価が暴落してしまったので、再上昇を狙うべく参加を志願した。アーク職員に「いたいけな小学生に何をする! この27歳新米パパが!」 と、散々責められたし」 『テクノパティシエ』如月・達哉(BNE001662) 、娘への愛の発露。「リベリスタの娘への接し方」の小冊子を渡されて。 ● アーク所有の駐車場。 トラックから続々と降ろされる大量のダンボールの山を前に、リベリスタ達にはバールとロータリーカッターが配られた。 これから、全長二メートル越、時々暴れる特厚ダンボールから金属部分を分解し、適当な大きさに切った後、焚き火で焼却する作業が待っている。 「カードなんて全部全部解して並べて揃えて晒してやんよっ!」 『枯れ木に花を咲かせましょう』花咲 冬芽(BNE000265)は、しゅっしゅっとファイティングポーズ。 「というのは冗談として……これは本当に大変だねぇ」 「なに、この程度の簡単な仕事、さっさと終わらせてやるのである!ハイスピードでさっさと分別するのである!」 恵は、バールを駆使して金属部分をもぎだした。 「食材は経費で落とすということで一つ。これも参加者を精神汚染から守るためのものだ」 達哉、オート三輪に食材満載で現場入り。 アークの主計と、経費の交渉。 ちなみにアーク規定の一日の食費からはみちょした分は自己負担だから。 ● 「こんだけ人数いればさー、一人くらいサボってもいいと思うんだよォー。積極的にサボるぞ俺は! 働いたら負けだァ! だから完遂するなんて言わないぜ!」 『悪貨』九段下 八郎(BNE003012)、ルーキーにありがちの勘違い。 「なんで私がこんな事……」 『敬虔なる学徒』イーゼリット・イシュター(BNE001996)、訓練されていないリベリスタが言いがちな台詞。 ● 作業に対する具体的なイメージがなかった『敬虔なる学徒』イーゼリットは、着替える必要があった。 アーク提供作業着、ジャージに防寒ジャケットのいでたち。 (簡単かと思いきや……) 現場を見てからは、しばし惨めな気持ち。 アスファルトはひんやりしっとりだし、ダンボールは手を切りそうに分厚いし。軍手はぶかぶかだし。 そう、足元はなんとゴム長靴なのだ! (ふん。やればいいんでしょ。こんなもの、さっさと片付けるから) バールでがつんと叩いて、反動で尻餅。 「もうッ、嫌! 何なのよ!」 ハラハラ見守っていた別働班のお兄さんが、使い方を教えてくれた。 「え、これは、こう使うの? ごめんなさい……初めて使うものだから。もう少し頑張ってみるね」 よいしょ。 「くすくす……こうね? なによ、簡単じゃない。あははっ!」 出来た、イーゼリットが出来た! なんとも、簡単だ。 要領を覚えたら調子に乗って、足にバールぶつけた。 見てる方が、痛ッ!! ゴスロリ服しか着替えありません状態の八郎も似たような格好だ。 (何もしないとほれ、皆に目の敵にされっからな。何気に仕事をしているフリをしつつ如何に手を抜くか……サボり道は険しいぜ) 三下エンジンマックス。 小さなお手手にバールを持ち、金属部分をひっぺがそうとするが、力が入らない様子。 まあ、幼女なら仕方ないかもしれない。 しかし、同じくらいひよひよしたエリス・トワイニング(BNE002382)さんが、ばりばり黙々解体作業できるって事は、どうなのかな? わりと、力いらないんじゃないかな? ねえ、どんな気持ち? あっさりサボりがばれるってどんな気持ち? ズガーン……! 木霊する、猟銃発射音……。 なんか、硝煙くさいですよ、辺りが……. 「この世で働かないで許されるのは、ぬこだけだ……」 『むしろぴよこが本体?』アウラール・オーバル(BNE001406)さん、落ち着いて!? 目が充血しているから。ついでに、言動がヤンでるから! 『ハッピーエンド』鴉魔・終(BNE002283)は、じたばた動く兵隊を抱え上げた。 「王子様の命により、さぼってる子には活きのいいトランプを投げつけちゃうぞ☆」 ビビリセンサー、作動。 ここでサボると、命が危険。 八郎、しぶしぶ働き出した。 『下弦の白』月白 遥(BNE001980)は、がりがり音を立てながら分解作業。 溶鉱炉に放り込む予定の金属部分を回収中。 「尖ってたりすると危ないからね~」 『ニンブルフィンガー』レダ・スティービー(BNE003175)、まずは楽しもうと思った。 (こういう単純作業は嫌いじゃない。勿論押し付けられたら嫌に決まってるけど) 少なくとも今ここにいるのは、レダ、君の意志だよ。肩ポム。 (心を殺してマシーンと化せ。そうすればなんかそのうち気持ち良くなって来る) 脳汁前提!? ワーカホリックは、あなたの心身を著しく損ない、仲間を危険に晒す可能性があります。 一人で悩まず、アーク福利厚生課カウンセリングセクションに、まずは相談してくださいね。 ● 「え、休憩無し? ティータイムもお昼寝タイムもですか?」 『銀の月』アーデルハイト・フォン・シュピーゲル(BNE000497)、絶望の叫び。 「きちんと休まないと精神的に崩壊しそうだから、テントを張って、発狂した人は気絶させてでも休ませるよっ!」 『枯れ木に花を咲かせましょう』花咲 冬芽(BNE000265)、本人が放り込まれる九時間前。 ● アーデルハイトさんは打ちひしがれていた。 (貴族にティータイム無し、吸血鬼にお昼寝タイム無しとは何という苦行でしょう) いえ、適宜休憩をとっていただいて結構なんですよ? ただ、薫り高い紅茶。お茶請けにスコーンにフィンガーサンドイッチ。 ――的休憩はやめてほしいってだけで。 (折角ですから、鍛練に使わせていただきましょう) 傷心の令嬢、羽織っていたマントに異変。 形を失い、影のように蠢き、裾が硬くなり、研ぎ澄まされた刃になる。 踊るような身のこなしで、兵隊の手足を削ぎ落とし、本体を刻んでゆく。 真鍮は地に落ち、紙が地に積もる。 (業が錆び付かぬよう、日々鍛練) 素晴らしい。お嬢様。 そして、アーデルハイトは、ふと足を止める。 彼女を中心にした円周上。 散乱した紙と金属。 拾い集めなくちゃ、次の兵隊が切れないじゃありませんか。 誰が集めるの? きょろきょろ。 またさぼり癖が頭をもたげて、ぼんやりアーデルハイトの「作業」をゴクローサン的傍観していた誰かさんと目が合った。 お嬢様は、よく切れるマントのすそをパタパタさせ、にっこり微笑み、手招きをした。 逃げられる状況ではなかった。 「神産みの逸話曰く、『私はこれから毎日、一日に千人ずつ殺そう』 まさしくバラしてもバラしても新しく生まれてきているかのような勢いですっ!」 バラしてる最中に、千五百搬入されてくるんですね、分かります。 あはは、あははと、冬芽は断続的な笑いが止まらなくなってきている。 朝から始まった作業も、小休止と大休止をはさみながらも、すでにとっぷり日が暮れている。 先は、見えない。 「え、私が発狂したらですか? あはは、そんな切って解してが専門のナイトクリークたる私がそんな簡単に発狂なんて……」 ここまで、冬芽はほぼ休みなくぶっ通しで作業を続けている。 ナイトクリーク魂が、自らに休憩を許さなかったのだ。 「私は無実だーっ! ここから出してくれー!?」 冬芽、自由に向かってダッシュ! しかし。 とある脱走常習者のおかげで、別働班は鍛えられていた。 ゴン、ガン、ゴン! 突進する冬芽の行く手を阻む鉄格子。 激突。 冬芽は、その場に頭を抑えてしゃがみ込んだ。 「……はっ!? あまりの苦行についつい取り乱してしまいました」 いくらでも取り乱してくれていいんだよ。 ちゃんと働いてくれさえすれば。 こけこけとずっと作動音のように聞こえてくる一角。 恵が、鶏冠をへたらせながらも作業を続けていた。 「……ふう。コレだけ分別すればもう大分少なく……」 走らせる視線。 仰角60度。 「全然なってないのである……」 (……私の鶏冠もしんなりしてきたのである……) それでも続く、分離作業。 「……」 (もうダメである……自慢の鶏冠も血の気が引いて真っ白のシナシナなのである……) なんて分かりやすい元気バロメーター! がんばって、仰角45度くらいになって来たよ! 次のトラック、搬入口に来たけど! ● それは、ハートだった。 「戦闘してないんですね……」 今までリベリスタが処理していたのは、でっかい穴が開いていたり、凍ってぶわぶわになっていたり、すでに切り刻まれていたりした、もろに『戦闘廃棄物』だったのだが。 運び込まれてきたカードの兵隊は、まるでまっさら。 もしリベリスタ達が関連資料に目を通していたなら、「エネルギーを共有していたアザーバイドとのリンクが切れたために活動停止した」という経緯を知ることができただろうが。 むくり……。 リベリスタ達のテンションに触発されたのか、カードの兵隊が起動する。 アスファルトの上、小隊規模が起き上がる。 そこへ、無数の気糸が襲い掛かる。 搬入時に傷んだ部分だけに、執拗かつ精密に叩き込まれているのだ。 ショルダーキーボードを手に駆け込んでくる達哉。 襲い掛かってくるカードの兵隊の動きを読みきり、死角から飛び蹴り、楽器で殴り倒す。 きゃー。戦うシェフ、かっこいー。 ご飯係だけって訳じゃなかったんだね、達哉さ~ん! とどめの、思考の奔流大爆発! 頭の中身、大流出! 「家族のために、パパは今日も頑張ってるからな!」 うわぁい。 頭の中は娘のことでいっぱいだー!! アーデルハイトお嬢様は、兵隊を噛んだ。 その場に居合わせたものは、お嬢様が何をなさっているか分からなかった。 かぷっ。 紙が水分を失って、表面が毛羽立っていく。 吸い取っている。 著しく大事な何かを吸い取っている。 「戦いと在らば、敵が腐乱死体だろうと亡霊だろうと機械だろうと喰らい付かなければならないのです」 お嬢様、戦場に於ける雑食宣言。 「それが例え、紙であろうとも」 お嬢様の足元には、もはや紙とは言えない、ばさばさになった植物繊維の塊が落ちた。 「手間かけさせないでよねー」 遥は、くしゃっと両手でプレスした。 え? まさかの素手攻撃? (スターサジタリー? メタルフレームだからいいでしょ?) 八郎も連射で手足をもぎ取って遊んでる、弱いものには強い三下スピリット大爆発。 「あ」 撃ち損ない。 きゅるるるる……と、金属の足があさっての方向に飛んで行く。 とってくるんだよ。 なんかあったら大変だから。 レダは、待望の脳汁放出フィーバー中、ボコテンとパンチを受けた。 「んぁ? ……いでっ! てめこのやろ、おとなしく裁断されろって!」 べりべり、ばりばり。 イーゼリットは踏んづけてた兵隊がむくりと起き上がったのに、目がまんまる。 「な、なによ、脅かさないでよ!! あなたがその気なら聴かせてあげるっ、魔曲……ッ!」 踏んでた足、引っ張られてこけた。 数瞬後、結合された魔曲で、兵隊は粉も残せぬほど粉砕された。 後頭部打ちながら、呪文を唱えたイーゼリットに、皆さん惜しみない拍手を。 ● 「燃えろー燃えつきろー」 遥、焚き火番。棒で、芋を焚き火に押し込みつつ。 「ははは、燃えろ燃えろー! 全てを焼き尽くせー!」 レダ、同じく焚き火番。焼けた芋を掻きだしつつ。 ● 手足はもいだ。あとは、切り刻みながら焼くだけだ。 そういう訳で、点火。 ファイヤー!! きっちり戦闘記録が録画されている事を確認し、娘名義での閲覧予約の手続きもしてホクホクの達哉が、すっかりなじんだ竈野戦仕様を設置した。 「調理を始めるぞ。燃料は敵の残骸。テクノパティシエ如月のクッキング劇場開幕」 ショルダーキーボードにアンプをつなぎ、音楽を流すことも忘れない。 学習能力が高いイーゼリットは、ロータリーカッターを手にとった。 「それなら、これはこう使えばいいんでしょ?」 うん。合ってる。 切れてる。切れてるよ、イーゼリット。 ちゃんと作業出来てるよ! 別働班のお兄さん、柱の陰から君の作業を見守ってるよ。 「あははっ!! ねえ、これって愉快じゃない? 痛ッ!!」 指、指には気をつけてぇぇっ!? で、切られた紙束をひよひよと火の上に撒かされている八郎。 ダラダラ休みながらやってもいいんだぜ、煙にいぶされてスモークチキンになるだけだがなぁ! というか、八郎のためなのだ。 火の向こうでは、『錆天大聖』関 狄龍(BNE002760)が待っている。 あれのそばに行くくらいなら、紙燃やしてた方がいいと思わないか? 「ってなンだよー八郎ー、逃げンなよー♪ 後サボったらお前、俺が実在アニキになっちまうぜェ?」 違う。兄貴は、違う! 「男だか女だか分かんねえくせにやめろ近づくな! お前苦手なんだよォーさっさと脱落しろよォーうわーん!」 八郎は27歳です。大人です。いぢめじゃないよ。 (大体半分過ぎた辺りからが地獄の始まりかね) レダは、即興で作った適当ソングを口ずさみつつ、裁断された兵隊を次々火に叩っ込んだ。 まだまだ、終わりそうになかった。 ● リベリスタ達が、朝日を浴びながら、無言で口を動かしている。 朝ごはんは、カルボナーラです。 「あ、もうこんな時間。苦手科目の小テストあるんだよね。ごめん、オレ帰るね☆」 終、時計を見てそう言って、がっこに向かってダッシュ。 学生特権!? 「みんなが無事お仕事完遂してくれると信じて……!」 うるせー! テストがんばれよ、こん畜生! 「誰かの役に立てるって素晴らしいよな、頑張ろう!」 なんか、アウラール、いつに増して、言動があれじゃない? 「何か気分いい。頭までフワフワして、すげー幸せな感じ。熱出して寝込んでたのが、嘘みたーい……」 メディーーーーーーック!! 病欠しろよ、そういう時は! 「俺達の為に倒してもらったのに、後始末しなきゃ……」 詳しい事は『王子様は要らない』報告書参照! ばたっ!! 病人、搬出。 働き手が二人減った心の隙間は焼き芋で埋めましょう。 「私、このお仕事が終わったら、紅茶と焼いたお芋で作ったスイートポテトをいただきます」 アーデルハイト、パティシェにおねだり。というか、その場の雰囲気で全員分達哉が作ること決定事項。 正気を保つため自閉モードだったイーゼリットにわずかに反応が。 「アーデルハイトさんと一緒に頂こうかな……もう少し、頑張ってみるね」 芋と単純作業で結ばれるお嬢様の連帯感。 「おなかいっぱい……」 口元についた芋をぬぐいながら、エリス、休憩用テントでコロンと横になる。 エリスさん、これから作業ですよ? 「もう……食べられない」 お約束だ! ● 「美味しそうな匂いが漂って来たら流石にマシーンでは居られない」 「私も焼き鳥を持ってきたのである! 焼いて食べるのである!」 「美味しくできましたー!!」 「俺がサボった分は真面目なリベリスタ様が埋めてくれる」 「コツコツと頑張る。出来ないことは悔しいし、許せないから」 「つぶれちゃえーぐしゃー」 「いざ打ち込んでしまえば、だんだん楽しくなってくるかもしれない」 「ラクして報酬だけ頂くのがチンピラ流よォ!」 「え?私? ははは、またまたご冗談を」 「報酬はアニキに奪われて少女服の購入資金にされるよ! 」 「はあ……はあ……」 「最後の食事のみカレー+ナン」 「え、カレーは焼くものだよね?」 「たまには、こういうのも良いかもしれない」 「それは、黄金の国日本が生んだ黄金色の素晴らしいお菓子」 「飯ができたぞー!!」 「私が焼き鳥になるのである! コケエエエ!」 「なんだこれけむいよあついよめんどくせぇよ」 「火に当りすぎて遠赤外線で中までじっくりコンガリになりませんようになのである」 「もう暫く力仕事はコリゴリなの。私は大体文化系なのよ」 「汗かいちゃった。柄でもないのに」 ● アーデルハイトは、途切れそうになる意識を繋ぎ止め、崩れそうになる体勢を持ち直し、最後の一体を斬り裂いて焚き火に投げ込んだ。 完全遂行。 後には、煙で目の周りを真っ赤にしたリベリスタと、大量の灰が残った。 レダはうめいた。 「お疲れ……流石にシャワー浴びて帰りてぇな」 「ふ、ふん。別に。楽しくなんか――ううん。少しだけね」 イーゼリットは、ほんの少し笑みを浮かべた。 「これで娘の評価も上がっただろう。また呼ぶがいい」 達哉は、疲れた体に鞭打って、竈の解体にかかる。 打ち上げは、身なりを正してから予告通り、お嬢様主催のティータイム。 「ああ、この時の為に生きているのですね……」 アーデルハイトは、微笑んだ。 スイートポテトは、ほんのりアザーバイドの気配がした。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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