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<賢者の石・争奪>100人いる!

●ショウタイム
「やっぱパネェっすよ、シンヤさん」
 繁華街。その場所は一軒のクラブハウス。
 店内では複数の男達が酒を交わしながら、DJの奏でるサウンドに耳を傾ける。
 時には楽しみ、時には歓談し。熱気に溢れた空間がそこにはあった。
 その中の一団、熱く語る者達がいる。彼らの話題は一人の人物についての話題であった。
 後宮・シンヤ。今、日本のリベリスタやフィクサードの間で最も話題となっている人物。
 だが、彼らはまた別の繋がりからシンヤのことを噂していた。
「ホストの頃からあの人はハンパなかったよなぁ。キラキラと誰よりも輝いてた」
 一人の男はそう言って、懐かしむような目を虚空へと向けた。
 彼はホスト上がりの男である。彼だけではない。彼と話をする連中も皆一様に同じ、ホスト出身者。そして現役当時のシンヤを知る者達だった。
「スゲェ輝きみたいなものがあってさ。今の仕事に鞍替えしてからも、なにか黒い輝き見たいな感じでさ。目が離せないし……ああなりたいよ」
 彼らに共通するのは、憧れ。現役から今に至るまで、シンヤの全てに憧れているのだ。
 その為にシンヤについていこうと接触を持ち、わずかながらの力を得、今こうしてつるんでいる。
 その時、店内の喧騒にかき消されかけつつも、微かに耳へと電子音が届いた。
 携帯の着信音を受信し、男の一人が立ち上がりホールの外へと歩きつつ通話ボタンを押す。
「あ、シンヤさんちっす。……ええ、はい。賢者の石? 俺達で? ……はい」
 噂の人物からの連絡だった。
 通話する男は緊張感を漂わせながらも、彼からの頼みを受けるということで僅かながら興奮の色を伺わせる表情をしていた。
「実力が……はい。大丈夫です。数集めますから。任せてくださいよ、他ならぬシンヤさんの頼みじゃないっすか」
 通話が終わり、男は席へと戻る。
 事情を説明された男達は一様に頷き、同時に席を立ち店を離れた。
 尊敬する男の為に彼らは向かう。賢者の石を手に入れるために。
 そんな彼らが共通するは、圧倒的なまでのシンヤへのリスペクトと、外見。
 白いスーツに赤いシャツ。髪は特徴的に逆立てられ、伊達眼鏡がお洒落を主張する。
 シンヤに指示された目的の場所に向かうは、ざっと百人。個々は決して強くない。だが彼らには数がある。
 「「「フフ……楽しくなってきましたよ」」」
 複数人が同時に呟いた。
 力がないならば、数で攻める。一人の男への尊敬と敬愛でつくられた絆は、並の絆を凌駕する。
 そんな彼らの外見は、そこはかとなくシンヤを意識したものだった。

●ブリーフィングルーム
「さてはて、面倒なことですねえ」
 ブリーフィングルームに辿り着いたリベリスタが見たのは、珍しく早くから待機していた『黒服』馳辺 四郎(nBNE000206)の姿。
 彼はどこか困ったような態度を浮かべながら、リベリスタ達の到着を待っていた。
 最も現在アーク内部は皆が慌しい様子を見せている。普段は適当な態度を見せる彼であっても例外ではないのだろう。
「ああ、皆さんお待ちしていましたよ。いや、少々面倒なことがわかりましてね」
 四郎はさっそく話を始める。今回はそれだけ状況が差し迫っているということなのだろう。
「先日、皆さんの協力で貴重な情報を入手するに至りましてね。どうも魔女達の目論見に関わるもののようなのですが」
 彼が語るには、先日とある調査にて発見した物。そして以前に『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)がアシュレイより聞いた話。それらを統合した結果判明したことがあるのだ。
 魔術儀式。この世界に巨大な穴を開けるという目的。それは崩界を一気に推し進めることであり、到底アークとしては看過すること叶わない企みだった。
「それで、ですね。この賢者の石と呼ばれるものなのですが、どうやら複数に発生する模様で。これをどうやら狙ってるようなのですよね、あちらは」
 錬金術の秘奥と言われる賢者の石。それは手にするものに力を与えると言われるものだ。
 それは相手が手にすれば、その企みにおいて優位になる可能性が高いと目測されている。
「で、ですね。逆に言えばそれを確保すればこちらも楽になるかもしれないじゃないですか?」
 一石二鳥。相手の企みを邪魔しつつアークの戦力の増強を行う。都合のいい話ではあるが、理に適っている。
「いやあ、私こういうの大好きですよ? 相手の邪魔しつつ自分も得するってね、丸得感が最高じゃないですか?」
 いつものようにへらへらとした態度の四郎。だが、それは彼らバロックナイツ及びシンヤの一派との争奪戦になるということも意味している。
「そこで皆さんには是非とも確保に向かって欲しいのですよ。これ、その一箇所なのですけどね?」
 そう言った四郎は資料をリベリスタ達へと配った。
 そこに記述されている情報に目を通したリベリスタ達は――絶句する。
 推定されるエネミーの数、フィクサードなんと百人。
「彼らは個々の能力はまったくたいしたことありません。恐らく単体なら駆け出しのリベリスタでも余裕で対処できるでしょう」
 だが、彼らには数がある。一人では難しくとも、力をあわせる事で相手に隙を作り、いつかは致命傷を与えることが出来る。
「相手の性質はシンヤに対して崇拝に近い感情を持っています。一つの目的に向かう彼らの力は団結力と、シンヤの為に命も捨てる覚悟。
 美しいですねえ、力を合わせて強いものに立ち向かい勝利を得ようとするその仕組み、スポーツにも通じるものがありますね」
 それがスポーツだというのならば、エクストリームシンヤとでも言うのだろうか。どちらにしても厄介な相手となるだろうことは確かである。
「百人の相手というよりは、複数の集団で一体の相手、といった感じで考えたほうがいいかもしれませんね。それほど相手の連携は取れています。
 そんな彼らを出し抜き……賢者の石を、見事に手に入れてください」
 目的の山中、突如現れる賢者の石。それを得る為に、先に相手を叩き潰す。まとめれば至極シンプルな話である。
「我々アークの利益となるように、見事な結果を残すことを期待してますよ? お土産は賢者の石でいいです、といった感じで」
 四郎の軽口を後ろにリベリスタ達は向かう。精鋭VS物量。それがこの戦いの仕組みである。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年11月27日(日)22:47
●馳辺の資料
■勝利条件:賢者の石の入手

■環境
 山中にある開けた空間。
 十分な広さがあり、不自由なく戦うことができます。お互いに。

■エネミーデータ
・シンヤーズ×100
 ・フィクサードのチームです。彼らは革醒して間もなく、個々の能力も低いです。
 ・フォーメーションを利用してくるので、一発で一網打尽とするのは難しいかもしれません。
 ・ただし彼らはコンビネーションに優れており、多彩な連携を行ってきます。下記は一例。
  ・ローリングコンビネーション
   同じような姿であることを利用しぐるぐると回り相手を幻惑します。
  ・人間砲弾
   他の人間を投げ飛ばすことで遠距離を攻撃します。
  ・スクラム
   一丸となり相手の攻撃を受け止めます。
  ・その他色々
   他、データとして極端な影響の出ない範囲で様々な挙動を行います。
 ・彼らは全員シンヤに対する忠誠心に満ちています。目的達成することなく撤退はないでしょう。


●マスターコメント
 正直すまんかった。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
スターサジタリー
エナーシア・ガトリング(BNE000422)
マグメイガス
雲野 杏(BNE000582)
スターサジタリー
ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)
インヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
ソードミラージュ
鳩山・恵(BNE001451)
ソードミラージュ
レイライン・エレアニック(BNE002137)
インヤンマスター
土森 美峰(BNE002404)
覇界闘士
白鈴 藍(BNE003075)

●全てはシンヤになる
 後宮シンヤ。
 ホストから始まり革醒、裏社会のスターダムを駆け上る男である。
 彼の活躍は間違いなく出世街道というべきだろう。人の道を踏み外しているという点を除外して考えればだが。
 例え悪鬼外道の所業であれど、活躍には結果と栄光が伴うものである。それが裏社会であるならば、当然それに惹かれる者も現れるのだ。その黒いカリスマに。
 それに憧れ、自らもその頂に上ろうとする者がいる。それらを誘発するのがトップシーンにある者の宿命なのだ。

「「「おやおや、これは……さすが特務機関アーク、早い対応ですね」」」
 その結果がこれである。
 リベリスタ達は現在、山中にて待ち構えている所だった。
 目的は賢者の石。アーティファクトにしてアザーバイドであるその物体は、得た者に力を与えるだの莫大なエネルギーを生み出すだの言われる、伝説上の存在である。
 しかし、その賢者の石が大量に発生した。それをシンヤの部下達より先に手に入れる為、また出現を待つ為に予測地点で待ち構えていたのだ。
 ――そこに現れたのは白く赤い波。
 白いスーツに赤いシャツ、髪を特徴的に逆立て同じデザインの伊達眼鏡。その数およそ百人。
 シンヤを敬愛し、シンヤを尊敬し、シンヤの真似をする。現れた刺客はそういった集団であった。
「って……数多いわー!?」
 その光景に思わず『エア肉食系』レイライン・エレアニック(BNE002137)が叫んだ。
 それも無理はない。この人気がないはずの山中に、とにかく人、人、人。どこまでも大量の赤と白の人影に埋め尽くされているのだ。
 仕事柄リベリスタ達は多数を相手にすることもあるだろう。だがこれほどまでの人海戦術に襲われることはそうそうあることではない。ましてやフィクサードならば余計に。
「うわぁ……こうやって見ると気持ち悪い……」
「全く、これだけ似たような格好がいるといっそ不気味ね」
 うんざりした顔で『白面の金狐』白鈴 藍(BNE003075)が呟く。『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)もなんとも言えぬ表情だ。
 身長に誤差はあれど、同じ服装をした集団である。ダンスや行進等ではたまにあることだが、大自然の中この統一感は正直気持ち悪いと言われても仕方ないだろう。
「「「フフ……わからないようですね、この素晴らしさが」」」
「我々のシンヤさんに対する」
「圧倒的リスペクトと」
「それにより満ちる力が」
 時に同時に、時に交互に。男達はリベリスタ達へと語りかける。一糸乱れぬその連携。それは流れるように紡がれ、正直キモい。
「本当、馬鹿馬鹿しくて地獄だな」
 一番馬鹿馬鹿しいのは、この茶番に対処している自分か、と。『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)はどこか呆れたように呟く。
「憧れは理解から最も遠い感情だそうだけれど。貴方達の中のシンヤさんは余程綺麗に輝いているのね」
『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)の言葉には棘がある。
 リベリスタならば誰もが知っている。シンヤがどのような男なのか。どのような凶行を繰り広げてきたかを。
 そしてそれを知るからこそ、彼の持つ『狂気』を理解もせず憧れる彼らフィクサード達には思うところがあるのだろう。
「「「その通り!」」」
 彼らはその憧れを誇る。狂気があろうがそのようなことはどうでも良い。常に彼らの世界で最前線を駆け抜けたシンヤ。その栄光はどのような背景があろうとも、彼らにとっての輝きなのだ。
「ヤだわー、ホストがこんなに群がっちゃって。お客になって欲しいの?」
 だがそんなお金はないと、『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)は嘯く。
 彼女にとってここに来たことはただの仕事。この後に待ち受ける給料とビールの為以外の何者でもない。彼らにさほどの興味があるわけでもなく……
「で、シンヤって誰よ?」
 彼らが敬愛し、アークにとって宿敵とも言える存在となった男に関しても、この程度である。
「クソ野郎さ。それに似たような格好の奴が大量かよ」
 杏の疑問に答えつつ『捻くれ巫女』土森 美峰(BNE002404)は悪態をついた。
「……まあ、それ全部ぶっ飛ばせると思えばストレス発散になるかもしれないな」
 美峰凶暴な笑みを浮かべる。これから始まる戦いに鬱憤を叩きつけられるかと思うと、自然とこぼれる笑みであった。
「「「ご期待のようですね」」」
「「「ならば始めましょうか」」」
「「「楽しい楽しい戦いの一時を!」」」
 声を重ね、繋げ、笑みを浮かべ。フィクサード達はそれぞれがポケットからナイフを取り出し構える。
 それはシンヤの愛用する刃物、リッパーズエッジに対するオマージュであり、シンヤへのリスペクト。
「――貴殿らは誤っているのである」
 そこに至り、ついに口を開いたのは『トリ頭』鳩山・恵(BNE001451)。見事な鶏頭が悪目立ちするナイスガイ。
「後宮シンヤなどという悪党ではなく、ダンディな正義の味方であるこの私、鳩山恵をリスペクトすべきなのである!」
 そう宣言する彼の瞳は爛々と輝き、自らの主張を疑いもしない。鳥の目は感情がさっぱりわからないが。
「今の流行は瀟洒な縞スーツに真っ赤な鶏冠なのである! 見るのである、このクールな佇まい!」
 自信に溢れポーズを取り、自らをアピールする恵。それに対しての返答は――
「「「「「いや、それはない」」」」」
「コケェッ!?」
 敵味方合わせて百七人全員、揃っての否定であった。

●一致団結
 戦いの幕が開き、リベリスタ達は人の波を迎え打つこととなる。
「「「さあ、この動きが見切れますか」」」
「「「百人が一心同体」」」
「「「シンヤさんであるというこの動きを!」」」
 大量の敵を相手にする時は、攻撃のパターンを制限するのが、危機を減らす常套手段である。
 その例に漏れず、リベリスタ達は円陣を組むことで個別に撃破されることを防ごうとしていた。
 それは確かに効果を発揮する。
「見切れなくとも手当たり次第に打ち倒せばいいのよね?」
 エナーシアの手にした散弾銃がいきなり火を噴く。暴徒鎮圧に有効であるその銃は、当然ながら集団であるフィクサード達にも効果を発揮し……
「「「ぐあっ!?」」」
 いきなり複数人が散弾を受け、盛大に倒れ込む。
「ほら、蜂達の大進撃よ。命を散らしたいものから掛かってきなさい!」
「こんなにうじゃうじゃといるなら格好の的だわ」
 ミュゼーヌの弾装を増設された特異な『リボルバーマスケット』が連続で火薬のはぜる音を立て、杏がギターを掻きならすと大気が呼応するように電撃が戦場を駆け巡る。
「ええい、怯むな!」
「俺達はシンヤさんに期待されてんだ!」
 フィクサード達はいきなり放たれた広範囲への攻撃に対し、浮き足立つことはない。
 彼らを支えるのはシンヤへの憧れ。ああなるためにはこのようなことで怯んではいられない。
 ホストだけをしていた時代とは違う。腹をくくった今、シンヤと同じ姿をした今、躊躇うことなどありはしないのだ。
「「「いくぞ!」」」
「「「フフ……お任せを」」」
 フィクサード達は負傷者を下げ、リベリスタ達を包囲する――同じく円陣に。
 囲んだまま、横へ横へと回りだすフィクサード。ぐるぐると周囲を旋回するその姿は白と赤の壁。その色彩と同じ姿はリベリスタ達を惑わし、正直おめでたい。配色が。
「「「さあ、覚悟しなさい」」」
 一斉に切りかかるフィクサード。
 手にしたナイフが一矢乱れぬ連携から繰り出され、リベリスタ達へと傷を作り出していく。
 切りつけた後、彼らは即座に離脱していく。
 白と赤の流れが一体の生き物のように流動し、形を変え、時に分散する。
 列となったフィクサード達は全身をぐるぐると回転させ、ウェーブのようにうんり、リベリスタ達を惑わしていく。
「「「どれが本物のシンヤさんかわかるまい!」」」
「いねえよバカ!」
 勝ち誇ったようなフィクサード達の言葉に思わず美峰がツッコむ。尤も味方への援護、守護結界の構築等の手を止めることはなかったが。
 一方、エナーシアはこの状況にやや驚きを隠せなかった。
 概ねこういった動きには指令塔となる存在が必要である。
 集団の元が個である以上、それをまとめるものがいなければ得てして連携は崩壊するのだ。
 だが彼らにはそれがない。誰かが思いついたように指示を出し、当然のように他の者が合わせていく。あたかも彼らが一つの生き物であるかのように。
「――だが、弱兵ばかりでは話にならないな?」
 ユーヌが鼻で笑った。
 彼女の言う事もまた事実である。
 凄まじい手数ではあるが、一撃一撃の重さはそこはかとなく低い。このまま数を減らしていけばなんとかなるだろう。だが。
「これだけの数、一筋縄ではいかなそうです……」
 藍の呟き。これもまた、事実なのだ。

●石が来たりて
「くらえ、私の超格好イイ――」
「残影剣じゃ!」
 恵の、レイラインの優雅な剣が、猫のような爪が人壁を切り倒す。
「連携なんて全部まとめてぶっとばしゃ関係ないぜ!」
「リスペクトするのは勝手だが、アホなことをしてはシンヤの評判を落とすぞ?」
 印を切り、美峰が、ユーヌが放つ氷の雨が戦場を切り裂き白と赤の影を叩き伏せる。
 リベリスタ達は一つだけ忘れていたことがある。
 彼らは確かに弱兵である。――だが、彼らもまた運命に祝福された者達なのだ。例えどれほどトンチキな存在で、見るだけで失笑せざるを得ない存在でも。
「「「どうしました? リベリスタ」」」
「「「息があがってきていますよ?」」」
 運命(フェイト)の導きは彼らを立ち上がらせる。迷惑なことに。
 倒しても立ち上がり再度向かってくる百人。例え一度や二度の生還劇であろうとも、百人いれば二百回。圧倒まではされなくとも消耗は免れない。
「コ、コケー! タッチなのである!」
「うん、任せて!」
 前衛を入れ替え、癒し、また入れ替え。数を質と補給で補いつつ戦闘を継続するリベリスタは焦れつつあった。
「「「飛ばしますよ!」」」
「フフ……お任せあれ!」
 他の者達に投げ飛ばされるようにしてフィクサードの一人がリベリスタ達へと飛ぶ。
「悪いけれど、いい的だわ――って!?」
「アシストしますよ!」
 ガキンと散弾銃のアクションが引っかかり、決定的な迎撃のチャンスをエナーシアが逃し、そのこぼた相手を藍が真空の刃で叩き落とす。そういった一幕もあったり。
 不毛な潰し合いの果て。その時がついに訪れた。

 びきり、と空間に亀裂が走る。
 戦場の最中、突如現れた乱入者はひとつの石だった。
 ――賢者の石。
 今ここで行われている戦いの全ての原因で、この場にいる全ての者の目的物。
 それが、現れた。別の次元より、空間を裂いて今ここに。ほんの一瞬だけ開いたその穴よりこぼれ落ちてきたのだ。
「でた! あれじゃ!」
 誰より早く動いたのはレイラインだった。持ち前の早さと曲芸の如きその技、それらを駆使して宙を舞い、一目散に石へと飛んだのだ。
「「「あれは!」」」
「「「させませんよ!」」」
 フィクサード達の反応もまた早かった。
 舞うレイラインに対し、即座に壁を作り出したのだ。
 背中に乗り、肩に乗り、肩を組み。一丸となり、白と赤の壁を生み出したのだ。自らの肉体を利用して。
「「「これぞ必殺の!」」」
「「「リッパーズディフェンス!」」」
「五月蠅えよ!」
「「「ぐわぁー!」」」
 壁は半ギレで放たれた美峰の氷雨によってあえなく打ち砕かれた。
 だが妨害はそれだけではない。百の白と赤が石へと駆け寄るリベリスタを妨害し、また奪取へと向かうのだ。
「「「フフ……ここは通しませんよ!」」」
「纏まったら格好の的だわ!」
「「「ひぎゃあー!」」」
 杏の電撃が妨害をするフィクサードをなぎ倒し。
「「「残念ですが貴方達はここでお終いなのですよ!」」」
「意地でも道は切り開く!」
「コケェー!」
「「「馬鹿なぁー!」」」
 波状となり惑わしながら襲いかかるフィクサードは藍と恵が叩き伏せ。
「「「一斉にかかるのです!」」」
「だから一斉に来たら的だって言ってるじゃない」
「学習しないわね」
「「「し、しまったぁー!」」」
 押し寄せる多くの敵をまた、ミュゼーヌやエナーシアの銃弾が撃ち抜いた。
 だが、やはり競争の場合は本質的に数に勝る側が有利なものである。
「フフ……ハハハ! 手にしましたよ! この私が! 賢者の石を!」
 石を手にしたのはフィクサードの一人であった。
 大量の味方の犠牲を元に、彼らはその石を手に入れることに成功したのだ。
「見てくださいシンヤさん! 俺達はやりました!」
 数は競争である場合、質を上回る。彼らはそれを証明してみせ――
「うおおー! そいつを寄越さんかーい!」
「うわぁー!?」
 そこに襲いかかったのはレイラインであった。
 味方が開いた血路を駆け抜け、木を足場にし、敵を踏み台にし、宙を舞い突破し、ここに辿り着いたのだ。
 一対一になってしまえば最早フィクサードに勝機はなかった。
「とったどー!」
 かくして賢者の石はレイラインの手に。
 前言撤回。最終的には根性が全てを凌駕するということが証明されたのであった。
「「「石を取り返せ!」」」
「「「囲め! フクロにしてしまえ!」」」
「にゃぎゃー!?」
 結果的に敵陣のド真ん中に放り出されることになったレイライン。ましてや目標である賢者の石を確保しているのである。
 刺され、蹴られ、フルボッコ。だが彼女は決して離さない。奪い取られぬよう、石を抱えて耐えに耐える。護身開眼。
「よくやった、レイライン。後は任せたまえ」
 そこにかけられた声。それはユーヌの物だった。
 この時点で勝負は決したと言っても過言ではない。彼女が持つ飛行能力はこの争奪において決定的なリソースであった。
 レイラインからユーヌへと渡った石は、遙か天空の彼方へ。空を飛ぶこと叶わぬフィクサード達にとって、この高みは遠すぎて。
「「「ま、まだだ!」」」
「「「例えこの身砕けようとも!」」」
「「「一人はシンヤさんの為に! 皆はシンヤさんの為に!」」」
 即座にスクラムを組み、天空のユーヌを撃墜しようと動くフィクサード達。だが。
「皆整列したわね」
 そこにいるのは雲野 杏。沢山の敵を蹴散らすことに悦びを感じる女。
「じゃあいくわよー」

 ――山中に電光が吹き荒れた。
 勝負あり。

●船頭多くして
 数は力である。
 団結もまた力である。
 皆が一丸となって動けばすごいパワーが出ると、教育の場では言われる。
 単独の力を複数の力で圧倒する。至極正しい結論だろう。

 ならば質のある者が団結した場合は?
 総合力の高い方が強い。ただそれだけである。
 結局シンヤを敬愛する彼らにはリベリスタに比べ、実戦経験がなかったのだ。

 かくして石は一つ、アークへと渡る。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
●後書き
 皆もっとボケていいのよ。

 さて、百人いましたがいかがだったでしょうか。
 シンヤーズの幻惑にも惑わされず、石を手に入れるという初期目的を忘れなかったことが成功の理由でしょう。

 全体シナリオにおいてギャグシナリオを投入するという暴挙を許してくださった運営に感謝を。
 勝手にシンヤネタつかってこんなアホやってすいませんでした弓月可染ST。
 そしてこの出オチシナリオで笑ってくれたプレイヤーのみなさんへ。
 私の勝ちです。

 ではまたいずれ。

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レアドロップ:『伊達眼鏡(シンヤモデル)』
カテゴリ:アクセサリー
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