●復活するアルゴ号 リベリスタたちによって内部を荒らされ、エンジンを破壊されたその客船は、まるで水上に浮かぶ置物と呼べるものだった。自身で動くこともなく、ただ波に流されるだけ。放っておけば、そのうち海の藻屑となるだろう。 「あーあ、派手にやられちゃったねぇ……」 その客船にやってきた男はそう言いながらも、まったく残念そうではない。 彼の名はジ・オルド。シンヤからこの客船を預かった欧州のヴァンパイアで、彼の部下がこの船でリベリスタと戦いを繰り広げていた。 「ふーん、なるほどね」 戦いの跡を見ながら、ジ・オルドは納得している。彼の部下が負けたことはまるで意に介していなかった。どうでもいいとすら思っているのだろう。 「賢者の石。面白そうな玩具だよねぇ。僕も欲しくなってきたよ」 ジ・オルドはけらけらと笑いながら、机の引き出しを漁る。ここに好みの菓子を隠してあったのだが……ジ・オルドがいくら探してもない。何かあるのでは、と心配したリベリスタたちに回収されてしまったからだ。 「……」 ふう、と心底残念そうにため息をついてから、ジ・オルドは持ってきた四つのアーティファクトを懐から取り出す。 それは、巨大なアーティファクトであり、船のパーツといえる代物であった。 「全部が壊されなくて安心したよ。これで、アルゴ号は復活する」 誰かに問いかけるように言ってから、三つのアーティファクトをジ・オルドは起動させる。すると、アーティファクトは船に吸い込まれていき、アーティファクトに取り込まれた船は形を変えていった。変形である。 変形の内容は、巨大化・砲台の設置。 そして、変形を終えたこの船は一個の生物のように動き始めた。 「さあて、航海の始まりだ。面白そうな玩具は、全部僕が貰うよ」 船頭に乗り、ジ・オルドはマスケットライフルを構える。帽子を被ったことからも、どうも中世の船長の気分でいるらしい。まるで遊びの気分だ。 ●星座合体 モニターに映るその姿を見て、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)とリベリスタたちは少し呆れる。こちらは 「アルゴ号。ギリシアの神話に登場する巨大な船で、星座にもなっていたね」 気を取り直して、真白イヴは星座図を広げながら解説を始める。 「だけど、星座としては巨大すぎて、帆座、船尾座、羅針盤座、竜骨座の四つに分けられた。……この四つが、今回船に使われているアーティファクトのモデル」 前回もそうだが、ジ・オルドはアーティファクトを惜しみもなく使う。手に入った情報によれば、どうやらジ・オルドは欧州でのアーティファクトコレクターであったらしい。 「それぞれが持つ能力も強力だけど、合わせるとアルゴ号として機能するこのアーティファクトを使って、ジ・オルドは海にある賢者の石を回収するつもりみたい」 遊び気分で、と真白イヴは付け足す。どうも真剣ではないらしいが、それでも強力な相手には変わりない。 「ジ・オルドは強力なマスケットライフルを使って攻撃してくる。それだけじゃなくて、アルゴ号に備え付けられた多くの砲台も厄介。……その上、アーティファクトの力で制限されることも多い」 ヴァンパイア・ナイツとの戦いで手に入れたそれぞれの資料を並べながら、真白イヴは一つずつ解説していった。曰く、回復ができず、バッドステータスが発生せず、エンチャント能力が発生せず、非戦スキルが封じられるようだ。 「だから、アーティファクトを攻撃して破壊することも大切。回収は二の次でもいい」 アークとしては是非回収したい代物ではあるけど、それはそれ。今は、賢者の石を回収させないことが大事だという。 「『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)がアシュレイから得た情報によれば、彼らの目的は恐らく……世界に穴を開ける大規模儀式を行うこと」 それをさせてしまえば、この世界に何が起こるのかは分からない。賢者の石は、その目的に役に立つ可能性があるという。 「だから、賢者の石が最優先。恐山会からの情報提供と、如月ユミと交戦したチームが持ち帰った賢者の石を使っての研究の結果――万華鏡システムを使ってこのエリアの賢者の石は特定できた。……だけど、アルゴ号はそこに向かっている」 だから、先にアルゴ号の情報があったようだ。このエリアの賢者の石は海中。船であるアルゴ号とはどうしてもかち合う。 「賢者の石……奇跡の石が大量発生した理由は分からない。世界が不安定になっているからかもしれないけど、今は調査中」 その辺りは分からないが、賢者の石に大きなパワーはある。うまく獲得できればアーク全体のパワーアップに繋がるかも……、と真白イヴは言う。 「つまり、奪われれば……」 リベリスタの言葉に、真白イヴは小さく頷いた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:nozoki | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年11月27日(日)22:40 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●鋼鉄の船は行く 洋上をアークが用意した船が進んでいた。波を打たれながらも、それをまるで気にしないように進むその巨大船の目的はアルゴ号。かつての時代に作られたという伝説の船であり、今はアーティファクトによって復活した巨大な船。 パイロット、沢谷沙緒里を加えたリベリスタたちはアークの船を母船として、アルゴ号に……伝説に挑もうとしていた。 「船に揺られてドンブラこと」 いつも着ているスーツの下に防寒を兼ねたダイバースーツ、という重装備で甲板に立っているのは『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)だ。肩にかけている巨大なショットガンの重量と、メタルフレームである喜平自身の重量も合わさり、重厚な印象を見た人に与える。 「面白半分で世界引掻き回す奴には痛い目を見てもらわないと」 ジ・オルドは特に理由もなく面白半分で動いている。少なくとも、今までの行動や万華鏡システムで見た感じではそう取れるのだ。 「ご自慢の英雄船共々、盛大に破砕してやるよ。……出きればだけど、其れでも志は高くだ」 だから、特に理由もないけれど喜平はそれを止められるかもしれないから止めに行く。そうすることで、救えるものもあるはずだから。 「ジ・オルドというお方、確か、アーティファクトのコレクターと聞いています」 懐中時計の日時を見て、まだまだ日が高いことを確認しつつ『無何有』ジョン・ドー(BNE002836)は芯の通った声で呟く。 「かの古代ギリシャの詩人ホメロスのオデュッセイアに登場せし、アルゴ号を現代に蘇らせるアーティファクトはまさに驚嘆に値するものといえます」 講義をするように、自分に言い聞かせるように言葉を続けていったのは、自身への鼓舞。アーティファクトの影響よって厳しい戦場となるはずの場所に向かう自分の覚悟の表れ。 「黄金の羊の皮を手に入れた英雄オデュッセウスの如く、賢者の石を得ようというのでしょうか。ならば、私どもの手でその企みを阻止せねばなりますまい」 パチン。懐中時計を閉じてから、ジョンは海の向こう側を見つめる。眼帯越しに見えるその光景に向けて、ジョンは静かに今回の依頼を成功させようと決意していた。 「ジ・オルド、貴方のこと大嫌いだけど……アーティファクトの趣味だけ認めてあげる」 同じく海の向こうを眺める『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)いつもの凛とした顔でありながらも、時々険しい顔を覗かせていた。 「そのマスケット、私のコレクションにしたい位よ」 マスケットライフルを愛用するミュゼーヌにとって、今回ジ・オルドが使うテレスコピウム・ライフルというアーティファクトは魅力的でもあった。だから、奪えるならば奪う気だ。 「制限を受けながらの戦い。厳しいものになりそうですが退くわけにはいきません」 船の上であってもいつものような和装に身を包んだ『蛇巫の血統』三輪 大和(BNE002273)は、己の胸に手を当てて決意を固めていた。戦場に作用するアーティファクトがいくつも配置された戦い。今までのようにはいかないかもしれないが、それでもやる気である。 「不退転です」 ポニーテールが海風に揺れて、柔和な笑みを大和は浮かべる。まだ戦いの時ではない。だから、今は大人しく。 「また面倒くさい状況だね」 風に煽られる灰色の寝ぐせをちょんちょんと触れつつ、眠そうな顔を浮かべている『偽りの天使』兎登 都斗(BNE001673)は、面倒そうな状況にだるさを感じていた。 「賢者の石を渡すわけにはいかないし撃退しないと」 とはいえ、放っておけばもっと面倒なことになる。ぼーっとした眠そうな顔はそのままに、ドライに戦闘への心構えを固めていく。 「ジ・オルド……お前の好きにはさせない。儀式なんてさせるものか。お前を倒すことで、その可能性を少しでも削げるのであれば、全力で叩き潰すまでだ」 対して、いつもはクールのように振舞っている『まめつぶヴァンプ』レン・カークランド(BNE002194)はジ・オルドとの再戦ということもあり、少年らしい対抗心を剥き出しにしていた。 「世界も、賢者の石も、お前には渡さない。俺たちが守る! 絶対!」 左腕を振り上げて、戦いへの覚悟を決める。 「賢者の石……その強大な力を危険な外道者の手に渡らせるわけにはいきません」 同じく再戦となる『ミス・パーフェクト』立花・英美(BNE002207)は弓道着に身を包みながら、弓をゆっくりと整える。スレンダーな体を反り返らせながら、体勢の確認にも余念がない。完璧というのは、そういう調整の末に生まれる。 「アルゴ号、父の弓にて止めて見せます!」 キリッとした表情を海に向けて、歯を食いしばる。激しい感情の動きにポニーテールは揺られて、形のよい胸も釣られて揺られていく。 「船は沈めとけば良かったわね、しくったわ」 もう一人、再戦の『薄明』東雲 未明(BNE000340)は、前回船すべてを破壊しなかったことを後悔していた。とはいえ、既に過去のことであるし、あれだけの情報から気付ける方が稀なので未明は今に集中する。ここから倒せばいいのだ。 「世界征服。それなりに力を持つ方にとって陳腐な言葉では無いのかもしれませんね。結構な事かと思います」 AFのダイヤルを手に、どこかに向かって通話するように語る『A-coupler』讀鳴・凛麗(BNE002155)のゴスロリもまた、風に揺られていた。 ジ・オルドは子供じみている。世界征服という目標を掲げた時も、子供っぽい言い方だったと凛麗は記憶していた。 「ただ……征服をして、その後は? と問う時。返して下さる方は希、とも聞きますが」 柔和な表情のまま、ジ・オルドはどう答えるのかと、凛麗は考えていた。その後のビジョン、それが一体何なのか、それとも世界征服をして終わりなのか。それが分かれば大きな収穫だろう。 「すこしずつ、始めましょう」 ゆっくりと、凛麗は胸のダイヤルを回す。 「そろそろ作戦開始時間か。目標の距離は……近いな」 心の中でジ・オルドを作戦上見逃さなければいけないことに憤りながらも、妥当な作戦ゆえに納得している『紅蓮の意思』焔 優希(BNE002561)は、静かに怒りの炎を燃やしていた。 「頼りにしている。仲間として、この度は宜しく頼む」 それでも優希は真面目な性分だ。AFを通じて沙緒里に声をかけながら、一度深呼吸して呼吸を整えた。勝つために。 ●船上の、つらい戦い やがて、アルゴ号は見えてきた。実際に目で見てみれば、その大きさと威圧感は圧巻とも言えるものである。 それに向けて母船がある程度近づいた時に、ジ・オルドの芝居がかったような声は聞こえてきた。 「これはこれは……ようこそって言えばいいのかな? 驚いたよ、ここなら邪魔が入らないと思ったんだけどなぁ」 手を叩きながら、ここまで来たということを称賛するジ・オルド。しかし、アルゴ号の武装である砲台は既にリベリスタたちへ向けて標準を定め始めており、戦闘する準備は万全という感じだった。 「素敵なクルーザーですね。よければ、この船が目指す目的地の場所でも教えてくれませんか」 不敵な笑みを浮かべつつ、大和は言葉を返す。 母船に残らないリベリスタたちはアルゴ号との戦いの為にモーターボートに乗り込み、既に発進をしていた。 (御前の方がデカクてツヨイ! こういうのは数じゃないんだよ) その中の一人、喜平はショットガンに向けて意気込みを語り、強く集中していた。 「そうだねぇ。目的地は――地獄かな?」 ジ・オルドの大和への返答を皮切りに、砲台が一斉に攻撃を開始。ジ・オルド自身も芝居を止めてマスケットライフルを手にする。 「なら……踏まれて地獄に落ちなさい。フィクサード」 それと同時に、ミュゼーヌがマスケットライフルを構えてシューティングスターを……しようとしたところで竜骨と船尾の存在に気付いて気を取り直して攻撃を始める。こうして、戦闘は始まった。 戦闘は始まり、砲台とジ・オルドの遠距離攻撃がリベリスタたちを襲う。8つの砲台による連続攻撃とアーティファクトのマスケットライフルの威力は高く、リベリスタたちの体力と母船の耐久力を全体的に削っていった。その上、船尾の力で回復することもできないという、厄介な始まりである。 「戦場とあらば船上であろうと父の弓は外しません! 全て破壊します!」 それに対する反撃として、母船に残って障害物に隠れていた英美が弓を構えてハニーコムガトリングを放つ。目標は厄介な船尾だ。 勢いよく、凛として放たれた矢であるが……船尾を破壊するに至らない。 「征服して、その後は?」 母船の前に出て、大きな目をジ・オルドに向けることで自分の存在をアピールしつつ、凛麗はピンポイントを使って船尾を攻撃する。放たれた糸は船尾に勢いよく刺さり、それを動かすことで船尾の破壊に成功した。その衝撃で、ぐらりとアルゴ号が揺れる。 「そういえば、征服したあと何も考えてなかったな。……ハーレムでも作ろうか?」 揺られながらも気味悪く笑うジ・オルドはマスケットライフルを母船に向けて発射した。それによるダメージを受けると、リベリスタたちの母船も大きく揺れてぐらつく。 「この場で回復役はボクだけ。ボクが倒れるわけにはいかないじゃないか」 それによってバランスを崩しながらも、母船の上に立つ都斗は天使の歌を使って母船に残ったリベリスタたちを回復させていく。 その回復に反応したのか、四つの砲台が再び動いて都斗を集中的に攻撃した。 「……仕方ないわね」 それを、未明が庇う。庇った未明はその衝撃を一身に受けて倒れるが、フェイトの力を借りて再び立ち上がった。 しかし、もう四つの砲台は母船を狙って攻撃をし、母船に大きな損傷を残す。 「嫌な予感もしますが。まずは目くらましを」 大きくぐらつく母船に不安を感じながらも、ジョンは神気閃光を使って砲台を攻撃する。放たれた光は、眩しい光となる……が、その光は帆の力によって打ち消される。並んでいた二体の砲台にダメージを与えたものの、これでは目くらましにはならない。 (俺は俺の命を護ってくれた相棒を信じるよ) さて、戦闘から少し遅れてアルゴ号に到着したモーターボートから喜平は飛び出して、甲板に飛び乗った。目標はジ・オルドだ。 「おやおや、招待客は――」 ジ・オルドは何かを言おうとしていたが、喜平はそれを気にせずソードエアリアルをマスケットライフルの持ち手に向けて発射した。 「……エレガントじゃないねぇ」 「ふん!」 集中した甲斐もあってソードエリアルは持ち手にダメージを与えることに成功したが、ジ・オルドは表情を崩さず、手に持ったそれも落とさなかった。さすがに、一撃では落ちないということだろう。 「気分はどうですか」 同じく甲板に上がった大和が、ジ・オルドの射線上に入って母船や味方への攻撃を防ごうとする。できればジ・オルドから情報を聞き出そうと、抜け目なくAFの通信機能も入れていた。 「オルドの押さえは負担が大きい。一刻も早く砲台を全滅させる。一気呵成に撃ち貫く!」 「賢者の石……渡しはしない!」 ダメージを受けている砲台に向けて優希が足を振り上げてから斬風脚を放ち、それに合わせてレンが二刀を振り下ろしてライアークラウンを使い、ひとつ目の砲台を破壊する。 それに続いて母船に残った英美・ジョン・未明・ミュゼーヌが攻撃をして、更に砲台を一つ片づけていった。 「ふぅん。そう来たの。それじゃあ、これはどうかな」 そうしたリベリスタたちの行動を見て、ジ・オルドは指を鳴らす。すると、砲台は一斉に動いて母船を狙う。 「沢谷様……!」 それに気付いた凛麗は船を庇うように立ち塞がり、都斗もそんなに天使の息を使う。しかし、六つの砲台から放たれた神秘の砲弾は凛麗を倒れさせて、フェイトを使って復活させる。 しかも、フェイトによる復活中に放たれ、庇い切れなかった砲弾は母船に直撃。母船は火を吹いて海の中へ沈み始めた。 「……まずいですね」 ジョンの言葉に焦りが見える。これでは、脱出のために隙ができる上に、いつまでも母船に残っているわけにはいかない。 戦いは、リベリスタたちの不利に変えて続いた。 ●沈みゆく船 戦況は変わり、海上に放り出された母船組は砲台によって狙い撃ちされてしまっていた。だというのに、海上からでは反撃もうまくはいかない。 一方アルゴ号ではジ・オルドの抑えはできているものの、抑えていた二人はマスケットライフルのダメージをまともに受けてしまい大きなダメージを負っていた。 「これほどとは!」 特に、庇うようにして動いていた大和はフェイトを使って復活せざるを得ない場面にまで追い込まれていた。回復も間に合っていはいない。 「くっ……間に合え!」 それをカバーするように入った優希。それを嘲笑うかのように、ジ・オルドは連続するように動き出してマスケットライフルを突きつける。ダブルアクションだ! 「どう。僕もなかなかやるでしょ」 放たれる銃弾は優希に膝を付かせ、喜平にフェイトを使った復活を強いる。 「モリモリ滾らせちゃうよ!」 立ち上がった喜平はショットガンを振り回してソニックエッジの殴打を仕掛けていくものの、その一撃はジ・オルドに大きなダメージを与えるに至らなかった。 そうした戦いの間も、海上のリベリスタたちは残った砲台の攻撃によって徐々に生命を削られていく。この状況は明らかなピンチであり、リベリスタたちにも焦りの表情が浮かんでいた。撤退しようにも、この洋上で母船を破壊されてしまったのだから難しいだろう。 「キミたちの負けだね。まぁ……がんばった方だよ。おめでとう。あはははは」 そんな状況に対して、ジ・オルドはマスケットライフルを向けながら愉快そうに笑う。乾いたような、人をばかにするような笑い方だ。 ひとしきり笑ってから、ジ・オルドはリベリスタたちに提案をした。 「僕は、これでもキミたちを評価しているんだよ。利用価値があるってね。……ここで逃げるというのなら、僕は追わない。賢者の石は貰うけどね」 リベリスタたちには攻撃を受け続けて重傷を負っている者も少なくない。それを見越して、ジ・オルドは甘言を呈してきたのである。 「……っ!!」 心の底から湧きあがる、声にもならないような慟哭を優希は押さえつけて震える。倒すべき相手、憎むべきフィクサードの言葉は到底許すことができないもの。 「確かに……私たちの、負けですね。残念ですが」 だけど、理知的なジョンも今の状況に対して判断せざるを得なかった。 「逃げるー!」 そんな中で、回復の手が回っていなかった都斗はもうその言葉に従おうとしている。生命の危険さえある状況なのだ、それを咎める者はいないだろう。 「……」 だるそうに、喜平はうなだれる。まだやれると手に力を入れようにも、思ったように力を込めることはできない。ダメージは深刻だ。 「……」 同じように、凛麗もただ黙っていた。これ以上戦いを続ければ、いたずらに消耗していくだけだとわかるから、黙るしかない。 「それじゃあ、お帰り用に僕のボートを貸してあげよう。チャオ」 ジ・オルドの言葉に、英美もミュゼーヌもただただ手を握って震えるだけだった。 リベリスタたちの胸中には、悔しさと後悔がぐるぐると回っている。この海のように。 「また、どこかの戦場でお会いしましょう」 「次に会った時が、お前の最後の日だ!」 大和とレンの言葉が、広い海に響いた。 「ハハハ。キミたちが強くなるのを、楽しみしているよ」 対して、ジ・オルドは余裕面で笑うだけである。勝者の余裕、というやつなのだろう。 リベリスタたちは、こうして敗北した。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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