● 賢者の石。 それはアザーバイドでもありアーティファクトでもある存在。 その赤光。波動。何よりも神秘。全てが未知の存在である。しかし理論がわからずともそれが膨大な力を秘めた存在であることはわかっている。 『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)が得た話によると、バロックナイツのアシュレイの目的は大規模儀式を行い、穴を空けること。詳細は不明だが、そのためには大量の賢者の石が必要となるという。 「けっけっけ。つまりその石をもっていけば出世間違いなしってことだろう?」 「そうそう。うまくやればあのアシュレイの乳にむしゃぼりつけるかもしれねぇ、ってわけだ」 「バーカ。そこまで上手くいくかっての。だが、お礼はたんまりいただけそうだぜ」 山道を進むのは、総勢十五人のフィクサード。名のあるほど腕が立つわけではないし、士気もそれほど高くはなさそうだ。このチームの編成も、たまたま近くにいた者をかき集めただけに過ぎない。 「ま、行ってモノを取って帰ってくるだけだ。楽な任務だぜ」 ● 「マルキュウサンマル。ブリーフィングを開始します」 録音機にスイッチを入れて、資料を開く。 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は集まったリベリスタたちの顔を見ながらこれから起こるであろう神秘の説明を始めた。 「『賢者の石』というものをご存知でしょうか?」 和泉の言葉は問いかけではなく確認だった。先のシンヤとの配下の戦いで手に入れたそれは、その重要性も含めて周知の存在だ。 「皆さんには賢者の石を手に入れてもらいます」 「見つかったのか?」 「アークが手にいれた賢者の石の波長を計り『万華鏡』を使用してその波長を検索しました。場所は山中にある神社跡。祠の中に賢者の石はあります。 ただ、それを狙って後宮シンヤのフィクサードがすでに動いています」 「確かなのか?」 「恐山会からの情報です。おそらく間違いはないでしょう」 恐山会――千堂の所属する主流七派フィクサード組織の一つである。現状アークと協定を結んでいるため、偽情報を流すとは思えない。 「フィクサードの数は十五人。全員がクリミナルスタアです」 「……数が多いな。こちらが抑えられている間に賢者の石を奪って逃げられるかもしれないぞ」 「はい。ですが今回友軍としてフィクサード組織『剣林』が助けにきます」 複雑な顔をする和泉の言葉に、怪訝な態度を取るリベリスタ。 「フィクサードが友軍。……信用できるのか?」 「おっしゃりたい事はよくわかります。彼らはこちらの指揮に従わないでしょうし、友軍とはいえ裏でなにを考えているのか全くわかりません。あくまで後宮の敵としてこちらと一緒に戦う、というだけです。 アークは七派フィクサード組織と不可侵の協定を結んでいます。向こうがこちらに手を出すことはないでしょうが、同様にこちらも向こうに手を出すわけには行きません」 「敵の敵が味方とは限らない、か」 唸るリベリスタたち。単純な戦闘力では力になれないオペレーターは、呼吸を整えてリベリスタたちに進言する。 「彼らを信用する必要はありません。上手く利用して立ち回ってください。 名目上はシンヤの部下を倒すまでの友軍です。こちらが先に石を手に入れてしまえば、彼らはそれ以上は何もできなくなります」 「わかった。やってみよう。それで『剣林』からはどんなヤツがくるんだ?」 「槍使いのクロスイージスで、名前は十文字晶。称号は『達磨』……不倒のフィクサードです」 ● 「了解じゃ。『石』はワシ等の元に必ず」 通信機のスイッチを切る。顔に刻んだ皺は彼の人生の如く深い。ふらつくような足取りで立ち上がると、後ろにいる三人の男に向き直った。 「ここからは死地じゃ。キツネとタヌキの化かしあいにお前等まで付き合う必要はねぇ。はよ帰るんじゃ」 「やめてくださいよ『達磨』さん。俺達かえりませんからね」 「アークを出し抜いて賢者の石を手に入れるんでしょう。上手く手に入れれば娘さんの治療費が払えるかもしれないじゃないですか」 「帰るなら、最初から帰ってますよ。いまさら何を言うんですか」 『達磨』と呼ばれたフィクサードは自らについてくる三人の頭を軽く小突いて、背中を見せる。ついてこい、と無言で伝えて。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年11月27日(日)22:35 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●石段を登りながら 七派フィクサード組織の中でも武闘派と呼ばれた『剣林』は、リベリスタの到着より早く石段の下で待っていた。 「待たせたか?」 「いえ。あっしらも今来たところでさぁ」 深い皺を刻んだ男がリベリスタに一礼する。こいつが『達磨』か。リベリスタの顔に緊張が走る。 フィクサードの共闘。不可侵協定を結んでいるとはいえ、彼らはフィクサード。完全に信用はできない。剣林のほうもそれを承知なのか、言葉少なく歩き出す。 (明確な志の無い烏合の衆のフィクサードはもちろん、何か強い想いがありそうな剣林にも賢者の石を渡すわけにはいかない) 『理想と現実の狭間』玖珂峰 観樂(BNE001583)は石段を登りながらマフラーを巻きなおす。フィクサードに賢者の石がわたれば他の人が不幸になる。大規模儀式を行う後宮はもちろん、剣林の方も油断ならない。 賢者の石はオレ達が入手し死守する。決意を胸に一歩一歩登っていく。 (俺は頭が悪ぃ) 機械化した拳を握り階段を駆け上がる『黒鋼』石黒 鋼児(BNE002630)。経験不足かあるいは知識不足か。鋼児は賢者の石の重要性をよく理解はしていない。 (それでもよ、後宮の連中に渡すわけにはいかねぇよ) 賢者の石が後宮のフィクサードにわたれば、世界に対してよくないことが起こることは理解できる。それは許せない。世界に愛された者として、この拳を叩きつけてやる。 (思う事は特に無いですね、いつも通りの危険な仕事です) 任務に対する責任感か、この状況でも凛とした表情で挑む『ガンランナー』リーゼロット・グランシール(BNE001266)。賢者の石を持ち帰り、アークに利益をもたらす。それを第一義に置く。友軍である剣林にはけして手を加えぬと銃に誓う。 友軍。聞こえはいいが共に賢者の石を狙うもの同士。そういう意味では彼らも敵なのだ。 (達磨君って、なんか九条君と同じ「匂い」がするんだよね。ヤってみたいよねぇ) 『人間失格』紅涙・りりす(BNE001018)はそんな友軍の中の最年長であるフィクサードををみながら、昂る精神を押さえ込んでいた。この場合の『ヤる』は戦って見たい、と言うことだ。 無論、それはできない。友軍である以上手出しは厳禁。その上で賢者の石の奪い合いなのだ。 (まるでお預け食らった狗だね。こんなの趣味じゃない) とにかくこの昂りは戦闘の時にぶつけよう。石段を登りながら幻想纏いを操作する。 「戦う前で悪いんだが、少しいいか?」 唯一、剣林に話かけたのは『てるてる坊主』焦燥院 フツ(BNE001054)だった。 「お前さん達も賢者の石はほしいのかもしれねえが、もしそう思ってたら、諦めてくれねえか。 この仕事の後、アークが金で良かったら払うからよ」 何かを言いかけた剣林のフィクサードを『達磨』が制した。 「あっしらの目的は後宮の始末。それ以外のことには興味はないわい」 名目上、剣林はアークに助太刀という立場である。思惑はどうあれ、それを口にするわけにはいかなかった。深く口を結んだその表情からは、何も読むことはできない。何かのスキルがあれば、読めたかもしれないが、詮無きことである。 そして石段を登りきる。そこにいるのは総勢十五名のフィクサード。後宮シンヤに賢者の石を届けるべく結成された即席のチーム。 「まぁまぁ よくもこんだけチンピラが集まったモンだねぇ……」 無精髭をなぞりながら『八咫烏』長谷川 又一(BNE001799)は境内にいるフィクサードの配置を見やる。大体の配置を頭の中に叩き込んで茂みに身を潜める。気配を絶って一人静かに移動を開始した。 (乱戦からのお宝奪還か! 燃えてきた!) リベリスタ。後宮。剣林。そろった三つの組織を意識しながら『素兎』天月・光(BNE000490)は持ってきた道具を確認する。地図と錠前破りの七つ道具、そして小さい箱。目的は後宮達の殲滅ではなく、賢者の石の奪還。それを意識して幻想纏いから武器をダウンロードする。 後宮派のフィクサードも新手の到着に武器を構える。剣林のフィクサードも遅れる言葉く臨戦態勢に入った。 (あレが、鯨銛カ……) 『夢に見る鳥』カイ・ル・リース(BNE002059)は『達磨』の持つ巨大な槍に興味を示す。初老の男が持つには大きすぎるのだが、しかし『達磨』がそれを持てば全く不自然に思えない。しっかり調べる余裕はないが、 (そノ威力ハ、戦闘で見させてもらオウ) 何せ数の上ではこちらが不利なのだ。剣林の働きぶりも戦局に大きく影響する。 しかし剣林が働きすぎると賢者の石を奪われかねない。 奇妙な三つ巴の幕が開いた。 ●攻勢 「うっしゃあ、いくぜぇ!」 大声を張り上げる鋼児。気合を入れると同時に後宮派のフィクサードの注目を引き、そのまま突貫する。気合を不可視の鎧にして防御を硬め、手に炎を宿しフィクサードに振り下ろす。相手の芯に当たった感覚が、拳を通じて伝わってくる。 同じく前に出てオーラで身を固めるカイ。大上段から盾を振り下ろしながら、しかし思考は敵を倒すことと別のことを考えていた。 (早ク、賢者の石ノ場所に行かナくてハ……) 祠に向かう道には後宮派のフィクサードが多数。これら全てを突破するのは容易ではない) 「難題だが全力でこなして見せる」 観樂はマフラーをなびかせながら移動して、炎の拳を振るう。倒れこむような前傾姿勢から一歩踏み出すように足を移動させてその勢いのまま拳を突き出す。自分が弱いことは自覚している。しかし想いだけは負けるわけにはいかない。思いを込めて拳を硬く握る。拳の硬さと炎の熱さが、フィクサードの体力を削る。 「皆、突出しすぎるなよ!」 フツは印をきり、リベリスタに防御の加護を与える。そうしながら剣林の動向を探った。注意せねばならないのはシンヤの部下ばかりではない。友軍である彼らも厄介なのだ。互いに攻撃できないがゆえに、力技が通用しない状況となっている。 無論それは剣林も同じなのだろう。『達磨』の名を持つフィクサードは巨大な槍を振り回して担ぎ、突撃する。突き刺す。引っ掛ける。叩き付ける。年月と共に培ってきた槍術。覚醒した肉体をさらに鍛え上げた武芸。それを前に後宮派のフィクサードが倒れていく。 その様を見てそして臭いをかぎ、りりすは思わず『達磨』に武器を向けそうになる。ヤってみたい。しかしそれはできない。その苛立ちを目の前のフィクサードたちに向けた。 「敵でも無いのを喰い殺す趣味は無いんだけどね。今は誰でも良い気分なんだよ」 たん、と地面を蹴る。手にした剣は気がつけば縦に横にと舞っていた。止まらない剣戟。高速で振るわれる剣の舞。その独特のリズムは誰にも読むことはできない。狙われたフィクサードのみが、リズムのままに斬り刻まれていく。 「おまえたち、邪魔だ!」 光は人参のような剣を手に後宮派のフィクサードに特攻する。できるだけ祠に近い位置に特攻し、あわよくば乱戦を突破して賢者の石を手にいれようとする。そのためには、数を減らさなくてはいけないのだ。緩急つけた足運びで相手を惑わすと、虚をついた一撃で刃を振るう。確かな手ごたえが柄を通じて伝わってきた。 「自分も前にでます」 本来後衛のリーゼロットは数の多い敵に対しての対抗策として壁になるために前に出た。歩きながら銃を抜き、矢継ぎ撃ちはなった。後宮派のフィクサードたちに放たれる黒鉄の群れ。一斉に叩き付けられる弾丸の雨に傷つけられていくフィクサードたち。 「悪いね。まずは足を削らせてもらうよ」 茂みの中に隠れて不意を討つ機会を狙っていた又一が、機を狙って刃を振るう。霊障を帯びた大振りの太刀は切り裂いたフィクサードのふとももを裂き、激しい稲妻が傷口を焼いていく。 「とはいえ、こいつは拙いかねぇ」 不意打ちの為相手の背後に回ったため、又一は味方から離れた位置に立つ事になる。味方からの援護を受けることができず、複数のフィクサードの中で孤立していた。シノギきれるか難しいところである。 フィクサードも案山子ではない。拳を構えてリベリスタたちに迫り、遠くから銃撃戦を仕掛けてくるものもいる。 一進一退の戦い。そんな中、後宮派の中から三人が祠のほうに行くのをリベリスタ全員が見ていた。 ●剣林 「剣林の人! スマン、そっちを頼む!」 フツはあえて祠から遠いところを手薄にして、剣林の動きを誘導する。指示を仰ぐように剣林の部下は『達磨』を見る。首肯して顎でその方向へ行くように促す達磨。剣林の部下が不承不承にフツの指示されたほうへと向かう。 「いくぞぉ!」 観樂は我武者羅に前に出て炎の拳を振るう。暴走しているように見せかけて、その実剣林の進路の前に立ち、その動きを制限していた。範囲攻撃で一気に道を開こうとしている剣林の部下は、協定の為に已む無く単体攻撃に切り替えた。 賢者の石に近づけさせないよう、こちらの動きを牽制されている。『達磨』も剣林の部下もそれをわかっていながら、しかし協定の為に手を出すわけにも行かない。 「天網恢恢疎にして漏らさず、じゃのぅ」 「ん? 老子か?」 呟く『達磨』の言葉を聞き取り、フツが返す。 「誰の言葉なんて忘れたわぃ」 悪いことはできない。天の目がそれを見逃すことはない。『万華鏡』のリサーチ能力の高さを侮ったわけではないが、ここまでとはと舌を巻いていた。 否、真に舌を巻くべきはリベリスタの作戦か。どうあれ、突破は困難だ。『達磨』はそれを察する。 しかし、困難というだけで不可能ではない。とにかく今はその時を待つ。 ●奪還 「お宝争奪ちきちきレース!」 後宮派のフィクサードの数が減れば、乱戦から脱出して賢者の石に向かうものもいる。 光とリリスとカイは、乱戦の隙をついて祠に向かって走り出す。 すでに後宮派のフィクサードが祠で開錠作業を行なっていた。錠は単純なものだったが、鍵開けのプロでもなければ開けるのには時間がかかる。扉を開けようと四苦八苦しているところで、三人のリベリスタは祠にたどり着いた。 「名乗りとか有効かね? 惨たらしく死んでくれると後がヤりやすいけど」 「てめぇら……『素兎』に『人間失格』!?」 りりすがタバコを咥えて無造作に破界器をだらりと垂らす。嵐の前の静けさ。0になった速度が一気に跳ね上がる。振るわれる刃は止まることなく連続で振るわれる。りりすの知名度に驚いていたフィクサードは、噂にたがわぬその実力にさらに驚くことになった。 「さァ、賢者の石を渡スのダ」 カイはオーラの鎧で身をまとうと、武器を構えて一気に振り下ろした。弓のように引き絞った筋肉を解放するように真下に叩き付ける。上からの衝撃に耐え切れないとばかりに地に伏すフィクサード。 「こういう細かい作業は得意だぞ!」 カイとりりすがフィクサードを相手している隙に、光は七つ道具を使って祠の鍵を調べる。しばらくいじくった後で、 「ちぇいやー!」 剣を使って扉をこじ開けた。テコの原理を利用して、バキッと物理的に破壊する。 「細かい作業はどうしたのさ?」 「この方が早いと思ったんだ!」 そんなやり取りがあったかなかったか。扉を開ければ赤く光る異世界の神秘。賢者の石があった。 「お宝ゲットだぜ!」 光は賢者の石を手に退路を確認する。退路を断つように今だ健在の後宮派のフィクサードが展開した。赤い石を持つ光に向けて殺気を放つ。 「このビー玉で誤魔化すことは……無理かな?」 光は持っていたビー玉で誤魔化そうと思ったが、賢者の石が異世界の物質特有の波動を発しているのに気付き、諦める。 賢者の石を狙うため、後宮派のフィクサードが包囲網を狭めてくる。 ●友軍 「まずいですね」 賢者の石に殺到する後宮派のフィクサードを見ながら、リーゼロットは度重なるダメージに膝をつく。運命を削って立ち上がるも、状況は変わらない。彼女の射撃は少しずつ後宮派を追い詰めてはいるが、それでも奪還チームを救うには火力が足りない。援護射撃を仕掛けるには相手の数が多すぎる。 「……参ったね、これは」 一人孤立した形となった又一もフィクサードの攻撃を受けて地に伏した。二人は倒したが、それが限界だ。降伏の意を示し、幻想纏い内に武器を収める。 『達磨』こと十文字晶は、賢者の石に群がる後宮派の動きを見て愛槍を強く握り締める。 彼ら剣林の目的は賢者の石の奪取である。しかしアークのリベリスタと協定を結んでいるがゆえに、アークに先に奪われてしまえば手出しはできない。 だがしかしアークが奪った石を後宮派のフィクサードが奪い、それを剣林が奪い返したのなら仕方のないことだ。 瞳を閉じ、槍を強く握る。すまない、とは言わない。これから行なう裏切りのような行為に対し、謝らないことがリベリスタへの礼儀だと心に強く戒める。 「あんたら主流七派の中じゃ武闘派らしいじゃねぇか」 そんな心中を知ってカ知らずか、鋼児が『達磨』に向かって問いかける。 「だったらよ、俺みてぇなガキのリベリスタよりよっぽどマシな闘い方見せてくれるよなぁ!」 それは鋼児自身の興味もあったが、『達磨』をこの場にとどめて祠のほうに向かわせない意図もあった。 だが、その物言いに『達磨』の心に刺さっていた棘が抜ける。 それは協定を結んでいる相手からの願いだから仕方ない、という表の理由と。 「強さに子供もリベリスタもないわぃ。じゃが闘い方を見せろと言われれば見せちゃるわ」 騙まし討ちは自分らしくない、という真の理由と。 鯨森と呼ばれる槍を構える。自らの生命を槍に注ぎ、裂帛と共に投擲した。槍は後宮派の中に叩き込まれ、その衝撃で周りのフィクサードを傷つけた。 「すげぇ……」 「驚いとる暇があったら、自分も行かんかぃ。仲間ぁ、たすけるんじゃろうが?」 「はっ! 言われるまでもねぇ!」 走っていく鋼児。その背中を『達磨』がどういう瞳で見ていたか、乱戦の中それを確認したものはいなかった。 ●賢者の石 「に、逃げるぞ!」 後宮派のフィクサードは不利を悟り逃亡に走る。元々戦意は低い。失敗の報告をするのは気が重いが、命あってのものだねだ。 賢者の石を目的にしていたリベリスタたちは彼らを追うことはなく、名目上は後宮派を倒す理由で参戦した剣林は彼らを追撃することになる。 「ワシ等はこれで」 一礼して『達磨』はリベリスタに背を向けた。 「こんなヤり方、僕の趣味じゃない。機会があれば借りを返すよ」 不満げな顔をしながらりりすは『達磨』の背中に言葉をかける。賢者の石を取り合うなら、協定や因縁など無視して真正面からヤリあいたい。相手の弱みに付け込むような形で勝ったのだ。それが気に入らなかった。 『達磨』は言葉に一瞬足を止め、しかし返事をすることなく石段を下っていく。 怪我人を癒し、改めてリベリスタたちは手に入れた賢者の石を見る。赤く光る鉱物。世界に穴を空ける厄。希望と絶望をもつ未知の神秘。 赤く光る石を見つめ、改めてリベリスタたちは勝利を噛み締めた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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