●散った桜を見つめて その女性は、すっかり葉を茂らせてしまった桜の木を見上げながら、ため息と共に後悔の念を込めた、恨み言のような声をつぶやいた。 「散っちゃったな……私の恋も」 スカートを指の腹でつまみ、太ももに端を挟みながらしゃがむ。眼下にはまだ掃除されずに残っていた桜の花びら。土の上に溜まっているそれの中からひとつをスカートのようにつまんで、目の前まで持っていく。 汚れたピンク。 その色が、どうしてもボロのように捨てられた自分に重なってしまう。あんなに一緒に居たくて、あんなにも一緒に居ようって約束したのに。 「ふぅ。私ってば、ホントにネガティブ。そういうの、止めよ」 そう口に出しても、“もし違っていれば……”、“もしうまく事が運んでいたなら”、“もしあの人の考え方が違ったら……”。彼女はそんなifを考えずにはいられない。考えるたびに気が重くなる。空気も重い。体も重い。 「ん……あれ?」 実際に体が重い。重すぎて、体が動かせない。それどころか、体が土の中へと実際に沈み込んでいっているではないか! 南無三! 彼女自身に沈んだ気持ちがあったとはいえ、本当に地面の中へ沈んでいくとは夢にも思わなかっただろう。驚愕は表情に現れ、眼を見開いて抵抗しようともがこうとする。だが、体は動かせない。 「や、やだっ。やだっ!」 沈み方自体はゆっくりとした沈み方であったが、それは彼女の抵抗力を奪っていった。ずぶずぶと沈み込んでいく自分の上半身を見る頃には、抵抗を諦めてしまうほどに。 更に土が自分の体を飲み込んでいく。桜の花びらも同じように、土の中へと沈んでいく。その桜の花びらに、彼女は自分を重ねた。 「ああ、さようなら……なのね。私は人知れず消えちゃうんだ……」 破滅を悟る。なんという、なんという運命か。あまりにあっけなさすぎて、唐突すぎる。 じわじわと、彼女の命は沈んでいく。胸の辺りで少し引っかかったので、助かるかもと思ったが、そんなことはなかった。一層と絶望と諦めを彼女は見た。 その時だ、彼女の視界に奇妙な影が写った。 枯木? いや、それにしては人の形に似すぎている。それに、耳からその枯木のようなものの声が聞こえてくるような。 ――シクシク、シクシク。 泣いている。枯木のような人形は、くり抜かれて作ったような目から液体を流している。目玉も何もないところから出た液体は重力に従い、土に染みこんでいく。 「……あれは、私?」 なぜだか、そんな気がした。 ひょっとしたら、自分の最後を見届けに来てくれた死神なのかもしれない。なんて彼女は思ってしまう。 彼女は知らなかった。それはエリューション・フォースと呼ばれる心から生まれた化物であることを。 彼女は知らなかった。それの流した涙が、地面を底なしの沼に変えたことを。 顔まで沈み込み、彼女は抵抗する気力もすべて失う。そうなれば、ただ沈んでいくだ。 「……」 声も、思考も土の中へ……。 ●散った桜の向こう側 アーク本部のブリーフィングルーム。『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)によって操作されたモニターの内容を見たリベリスタたちは、沈んだ顔を浮かべていた。“起こるはずの悲劇”を知ってしまったからだ。それも生々しく。 「これが、今回の敵。彼女の精神状態……失恋の心が大きく影響している」 その中で、真白イヴの表情は沈んでいなかった。それどころか、どこか凛々しく緑と赤の目を意志の力で煌めかせている。 「だから、戦う前に彼女の心に干渉して、失恋のショックを小さくすれば、このエリューション・フォースの能力を抑えられる」 有利に戦うために必要なこと、と真白イヴは補足する。それも、今回の依頼に含まれるようだ。 「具体的には、さっき見た“地面を沼のように変える涙”を抑えられる。それなら、戦いがしやすいよ」 リベリスタたちは頷き、それは確かだと納得する。ぬかるんだ、沈んでいく場所での戦いなど、苦手な者はいても得意な者はそうそう居ない。 そうした不利な戦いを防ぐためにも、戦いの前に彼女と会い、説得などの手段を持って彼女の傷心をケアしなければならないという。 これはこれで難しい任務でもあるな、とリベリスタたちは思う。戦いの前に、もうひとつの戦いがあるような印象だ。 「私はまだ幼いから、そういうのは分からない。けど、あの人が沈んでいくのは見たくない。だから、お願い」 真白イヴはその小さな頭を下げ、可愛らしいデザインのリボンが揺れる。よく見れば、肩がわずかな震えをリベリスタたちに見せていた。無理もない、悲劇の未来をこの幼い体で見続けているのだ。 女性と少女のため、リベリスタたちは返事をする。 ――俺たちに任せろ、と。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:nozoki | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月02日(月)22:44 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●涙は流れるか否か 葉桜が緑を演出する、街の公園。そこに普通の人の姿はない。しかし、普通でない者の姿はある。その名をリベリスタという。 そのリベリスタたちがそこで何をしているかというと、仲間のひとりである『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)から受け取った赤いコーンを設置し、出入り口を遮るようにロープを張ろうとしているのである。もちろん、一般人を巻き込まないためだ。 「巨乳と聞いて! ……って違ぁうッ! 女のコ泣かせるなんて最低な男だ! 彼女は死なせないし、敵は片付けないとな! 巨乳! 巨乳! やる気出てきた!」 そんなリベリスタたちは、これから起こるであろう“悲劇”からひとりの女性を救おうとしていた。その女性が巨乳のお姉さんであると聞いてテンション高いのが『Gimmick Knife』霧島 俊介(BNE000082)だ。彼は小さく小躍りしながら、同時にそんな巨乳のお姉さんを振った男に対して憤りも感じながら、コーンをリズミカルに設置している。彼は巨乳が大好きなのだ。 「しかしまあ、最近は浮気なんてしやがる男が多いっすね……。今回の事件も、元はと言えば浮気なんざしやがった野郎のせいじゃないっすか……。ま、人助けとあらば、そんなこた関係ないんスけどね」 俊介が設置したコーンにロープを結びながら、結界を展開するのは『悪人』風原 玲(BNE002211)だ。この結界の力によって一般人が積極的に入ってくることはないだろう。 結界を張り終えると、玲はコーンの置かれた出入り口に立って公園に子供が入ってこないか確認する。まだそれらしい影は見えないが、子供や一般人を追い出すための文句は幾つも考えてきた。 「僕から言えることは、あまりありませんから。僕が今できる最良の事は、エリューションの被害を0にするべく動く事……ですね」 別の出入り口にコーンを置き、ロープを結んでいるのは『マジメちゃん』赤羽 光(BNE000430)だ。生真面目な彼は、先程から何度も結び目を見ている。 「彼女のことは他の皆さんにお任せしましょう」 光はここに一般人が来ないよう結界を張り、別に動いている仲間たちを思う。ここにいない女性陣はエリューション・フォースを産み出してしまう女性の説得に向かっている。 「失恋の痛みは分からないわけでもない。報われないことも多いからね……」 とはいえ、女性が皆向かっているというわけでもなく、今回の依頼に参加した女性陣のひとり、『傷顔』真咲・菫(BNE002278)は光たちと同じく公園にて神秘の秘匿に当たっている。その目的は結界と……エリューション・フォースが出現した時に素早く対応するためだ。 「んー、あんまり攻撃したいエリューションじゃないな」 とは言うが、菫は戦いの準備を進めている。エリューション・フォースに巻き込まれる人間が出る以上、一般人への危険性を抑えるのがアークのリベリスタだからだ。 「エリューション・フォースを生み出すほどの哀しみ、ね……。其処まで恋愛にのめり込めるのは、羨ましいっつーか何つーか。……ま、純粋なのも良し悪しだよな」 今回のエリューション・フォースへの感想を口にしながら、結界を仲間と共に張っているのは『復讐者』雪白 凍夜(BNE000889)である。その鋭い眼光をぶっきらぼうに向けて、威嚇するかのように公園の外を眺めている。もちろん、戦いが起こる予定の公園に人を寄せ付けないためである。 リベリスタたちはそれぞれ、自分たちにできることをしようと戦いの準備を進めている。 そうやって、リベリスタたちがそれぞれの想いを浮かべていると、公園の葉桜が揺れた。揺れた葉桜に合わせるよう、ゆっくりと敵は姿を表す。 「っと、出たんだね」 欠伸を噛み殺し、菫は枯れた樹のような風貌を持つそのエリューション・フォースを見据える。仲間たちはまだ到着していない。 「シエルさんたちが、うまく説得できていればよいのですが……」 身を隠しながら光は覗く。エリューション・フォースの目に涙は浮かんでいるのだろうか? ●涙を癒す 公園から近い道端にて。胸の大きいひとりの女性が傷心を引き摺りながら歩いていた。彼女こそ、今回の依頼でキーとなる女性、長谷部桐子だ。 「そこの御方……どうされましたか? 急に話しかけてごめんなさい。私、占いをたしなむのですが、貴方様から悲しみの波動を感じたので……つい」 これは占い師に扮しているシエルの言だ。水晶玉を手に、数珠に和装といった神秘的な説得力を持つ恰好をしている。シエルたち三人は悲劇を産み出してしまう桐子の涙を抑え、エリューション・フォースの特殊能力を抑えるためにやって来ているのだ。もちろん、そこに理不尽に振られ、命を奪われる桐子を救いたいという気持ちもある。 「……胡散臭く見えると思うけど。意外と当たるから騙された……と、思って」 眼鏡を小さく上げて『消えない火』鳳 朱子(BNE000136)が隣でフォローする。 「なにか悩みがあるなら、私で良かったらお話を聞かせてくれない?」 ふたりと共に行動していたシスター服の少女……もとい、少女のように見える女性、『鉄心の救済者』不動峰 杏樹(BNE000062)は手を差し出し、そう述べる。 そんな三人の気持ちが通じたのか、桐子はすぐ返答をした。 「あ、あの。話、聞いてもらえますか?」 三人が頷くと、桐子は静かに自らの身に降りかかった不幸を説明した。愛したのに浮気されて、そして振られたという、理不尽な展開。 (男が移り気なのはしょうがない面もある。けど、彼女を捨てた相手には女性を思いやる誠意も優しさも見えない。心の傷は癒えないことだってあるのに。彼女がそうならないようしっかりフォローして、心の傷を少しでも癒してあげないと) 杏樹は胸の中の十字架を小さく握り、桐子を救いたいと心から思う。シスターだから、その悩みや話を聞くのは仕事でもあるし、苦しむ人がいれば手を差し出すのは当然だ。 「ここではなんですから、落ち着ける場所にでも」 話を聞いてもらえたことに感謝している桐子は、シエルの提案を簡単に受け入れた。 場所を移し、公園からも近い場所にある静かな喫茶店。ここまで彼女を連れてきた三人は、それぞれ女性の表情を伺う。不安げな顔。 「どうしました……?」 胸の大きい桐子が、身をテーブルに乗り出してくる。 (平時なら敵……) テーブルの上にどっぷりと乗った乳を眺めながら、朱子はなんでもないと誤魔化した。一瞬だけギラつかせた眼鏡の奥は内気な瞳に戻る。 「その人の事はよく知らない、けど。聞く限りあなたに落ち度は感じられない……し、あなたが悲しむ必要性は……尚更ない」 水を飲んで一息をつく。飲み終えると、朱子の言葉は続いた。 「だけどそんな人のために本気で悲しめるあなたは……きっといい人。そんなあなたと付き合っているのに浮気なんてするその人は……きっとだめな人。……つまり元より釣り合わない相手。……我ながら見事な三段論法」 自分の言葉に納得の表情を浮かべる朱子。調子が出てきたのか、喋るペースも徐々に上がっていく。 「だから今回の事は……新しい出会いを見つけられる切っ掛けと思えばいい。……そう思えばこれからの事を少し楽しみにできる。……と思う」 朱子は口早くそう言い終えると、最後に微笑みを向けて締めとする。彼女なりの、真摯な答えだ。 「私からもひとつ、よろしいでしょうか」 シエルは桐子の痛みを感じるように、片手を薄い胸の上に添えながら続ける。 「貴方様の恋愛は桜に重なるようです。桜の花は散る運命……されど意味があります……。それが導くは新緑……生命の謳歌……。これからが貴方様の本当の恋の始まりと占いに出ています」 水晶玉を脇に置いて、シエルも微笑んでみせる。ふたりの説得に共通することは、その恋は散ってしまったものだということ、新たな道を探れということ。 「それでも、私は……。あっ、うっ……」 桐子はその言葉と笑顔を前にして、痛んだ胸を押さえて嗚咽する。それは確かに、そう思うし、そう思うからこそ、早く何とかしたい気持ちもある。だけど、想い出が邪魔をする。涙も出た。 「泣いてもいいんだよ。それを抱きとめるのも、シスターの仕事だ」 そんな桐子の体を杏樹はあやすように抱き寄せる。声が出せずに泣きじゃくる桐子の体は固く、その溢れ出た不安の、溜め込めてきたものを感じさせた。きっと、誰にも言えず、今まで内に抱えるだけだったのだろう。 「よしよし」 できるだけの説得はした。あとは、桐子の心次第だ。 ●涙の沼 エリューション・フォースから涙は出た。……ただ、少量であるし、時間が経つにつれてその涙は少なくなっている。時間がかかっているとはいえ、説得は進んでいると見ていいだろう。 しかし、流した涙は公園の地面に滲み込むと、土の沼を作ってしまう。できてしまったものは仕方ない。問題は、エリューション・フォースが身を隠していたリベリスタたちを見つけてしまったことだ。 槍のように長く尖った枝を構え、沼のようになってしまった土の上を跳び回るエリューション・フォース。この沼を生み出したエリューション・フォースにとって、この涙の沼は障害にならないということだろう。これに対して、リベリスタたちは耐えることで、合流までの時間を稼ごうとした。 「何とか耐えしのぎ、時間を稼ぎますっ!」 「巨乳のお姉さんに会うまで、負けられないんだぜ!」 「出やがったな。悪いが此処からは行かせねえよ」 光はハイスピードから、公園の遊具や樹に飛び移り攻撃を回避しようと動き回り、俊介は天使の息を使って回復を味方に飛ばす。 凍夜のソードエアリアル、玲の斬風脚、菫のピアッシングシュート。他のメンバーはそれぞれの持つ遠距離攻撃アビリティを使って、けん制しつつダメージを与えて行った。 「ぐっ……! まだまだ! 僕はあの日、闘うと誓ったんだ!」 しかし、長い戦いの間、石を投げ込めばずぶずぶと沈むような沼は、リベリスタたちに悪い影響を与えた。攻撃は当たり辛く、敵の行動に回復や回避、防御などの行動が追いつかない。その影響で、足を取られた光が槍の直撃を連続で受けてしまい、深い傷を刻まれた。 苦戦である。 ●そして涙は乾く シエルたちが公園に辿り着いた時には、既に涙は流れておらず、土も元に戻り始めていた。ぬかるんだ泥のような土は徐々に硬さを取り戻し、リベリスタたちの動きも俊敏な者へと戻って行く。 説得は成功したのだ。 あの時。人の体温で安心した桐子は、杏樹の実はすごい体からゆっくりと体を離し、何度も礼を言った。時間はかかってしまったが、泣き疲れた顔は笑顔へと変わっていったのである。 「私、……変わっていけたら、男の子に負けないように自分を出していけたら、って思います。ありがとうございましたっ!」 その時の桐子が言った礼だ。少しずつではあるが、前向きになり、下に涙も零さなくなったのだろう。 だから、エリューション・フォースも涙を流さなくなった。 「もう思い残すこともないだろう。私がしっかりと送り届けてやる」 杏樹はそんな桐子の顔を思い出しながらシューティングスターを使用し、ヘビーボウガンで狙いを付ける。倒し、救うためのアーリースナイプだ。 「ひたすら……癒して……。癒して……みせましょう」 マナサイクルからの天使の歌を不利な戦いで傷付いた味方たちに使用したのはシエルである。ほぼ全滅手前まで追い込まれていたリベリスタたちであったが、合流によって体勢を立て直した。 「私の在る理由は……、癒す……。怪我を治させて頂くことです……」 決意を静かに口にして、シエルはゆっくりと羽を広げる。戦いはまだここからだ。 そんなシエルが奏でる天使の歌をバックにして、眼鏡を外してから愚直に突撃してメガクラッシュを仕掛ける朱子。 同じく、ぬかるんだ沼がなくなったことで気軽に接近できるようになった玲も、攻撃を気にせず突っ込んで殴り掛かりに行く。その怒りを込めた手には炎。業炎撃だ。 「浮気した男じゃなくて、どうして浮気された女の子の方に被害が行ったんスかねぇ……。 ……ったく、腹が立ってしょうがないっすよホント」 玲の言葉に頷く朱子。振った男に一発殴ってやる、と桐子に言ったが、彼女はそれを笑って流した。だから、今はこのエリューション・フォースをふたりで殴り、みんなで倒す。それが彼女のためにできること! 槍のような枝が腕に刺さるが、気にしない! ふたりの攻撃によって吹き飛ばされ、体を燃やすエリューション・フォース。そこを、リベリスタたちは囲む。確実に流れはリベリスタたちの方に傾いていた。 「僕のことも忘れないでくれますか!」 そこに、自分に注意を向けさせるために放った光のツインストライクが入り、エリューション・フォースの注意が散漫になる。 「大人しく当たれよ!」 「これが、チャンス……だよね!」 俊介のマジックアローに追随するように、菫のスターライトシュートも同時にエリューション・フォースへと吸い込まれる。枯れ木のような体が、徐々に禿げ落ち、崩れていく。 「他人を涙の底に引きずり込んでも、自分が幸せになれる訳じゃねえ。てめえの主は這い上がったぜ、残滓は此処で終わっとけ!」 そして、凍夜によって包囲網からのラッシュは終わりを迎える。樹から樹へと何度も跳ね周り、ハイスピードをつけたソニックエッジが、致命的なダメージを与えたのである。 「ソードミラージュの歩法は変幻自在、そう簡単に捉えられるかよっ!」 沼さえなければ、彼らを止めることはできない。 ●涙は枯れて こうして、致命的な一撃を与えられ、あと少しで決着が付きそうな戦いであったが、結末は意外なものであった。 「……失恋の痛み、分からないでもないんだよね」 後衛から前に出た菫が、エリューション・フォースを抱きしめ、背中を撫でたのだ。最後に残った力で、槍の枝が何度も何度も菫の体を貫く。しかし、菫はフェイトの力で立ち上がり、抱きしめることを止めない。その行動は……奇しくも、桐子を説得した時の杏樹と同じ。 それはただの自己満足であったかもしれない。だが、偶然かもしれないが……エリューション・フォースは力を使い果たし、消えた。最後に小さな泣き声のようなものを残して。 「泣くなよな。桜は散ってもまたいつか咲くんだから」 俊介が、そんな不思議な光景を見ながら公園の天を仰いだ。 桜の葉が、揺れている。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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