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始まりの夜に

●不運というには余りにも
「よっしゃ、引越しかんりょー!」
 ワンルームの部屋を埋め尽くすダンボールに囲まれ、ガッツポーズで叫ぶ青年一名。
 昼過ぎから始まった荷物の搬入がようやく終わり、彼は大きく伸びをした。
 家賃4万、駅まで徒歩15分。築20年で外見はボロいが日当たりはまあまあだし、悪くない物件だよな。
「余り親に仕送りの負担をかける訳にもいかないし、バイト頑張んないとなー」
 これから始まる新生活の事を考え、何となく気が引き締まる。
 さてと、差し当たって必要な物だけでも出そうかな。――そう思ったタイミングで、ぐうう、と腹の虫が鳴った。
 そういえば外よりも部屋の方が明るい。もうそんな時間だっけ。箱開けるのは腹ごしらえを済ませてからでいいか。
「どっか食う店近くにあったかな。コンビニ行って弁当でも買って来るか」

 ダウンジャケットを引っ掛けて屋外に出る。夜空には、星の代わりにネオンが輝いていた。
 高架の側という事もあるのか、そこかしこにコインパーキングがある。土地だけは有り余っている様な自分の実家付近には無い光景だ。
 都会に来たんだなあ、と感慨深く白い息を吐きながら、彼は薄暗い道を進んだ。
「さみー。おでんとか食いてえなあ。あとホットコーヒーも」
 しかし歩けども歩けども、コンビニの存在を表すマークは見えてこなかった。
「ん?間違っちまったかな」
 道の突き当たりに見えるのは、マンションの建設予定が記された看板と広がる更地。それを迂回する様にゆるく左へ曲がる道だ。
 昼はこんな所通った覚えは無い。素直に引き返そうか。戻れなくなったらちょっとヤバイし。
 逡巡しつつ踵を返そうとした時、腕が何かにぶつかった。
「あっスミマセ……」
 反射的に詫びを言って顔を上げた彼は、目に入ったものを咄嗟に認識できず、固まった。

 腐敗してこそげ落ちた肉がところどころ陥没し、白く頭蓋の形を露わにしている。
 暗い穴の奥から見つめてくる2つの眼球は不気味に光るばかりで、とても意思の疎通が出来るとは思えない。
 ボロボロの服らしき物から突き出る足や手の一部は既に骨のみ。僅かにこびり付いているのは恐らく肉片だ。
 化け物。
「……ひっ」
 後ずさった彼の肩にまた、何かがぶつかる。
 絶望と共に振りむいたそこには果たしてまた、同じ人ならぬ物体が立っていた。
「あ、ああああ!」
 何だこれ何だこれ何だこれ誰か誰かだれか――
 走り出そうとしたその背中に、ナイフの様な爪が食い込んだ。

 からん。
 中身の無い缶の虚ろな音が地に伏した体の側を通り過ぎ、硬いアスファルトを転がっていく。
 温度を失った青年の口が言葉を紡ぐ事は、もう無かった。

●依頼
「お願いしたい事がある」
 アーク本部、ブリーフィングルーム。
 やや緊張気味のリベリスタ達を迎えたのは、銀色の髪の少女。
 彼らが端末機の前に揃ったのを確認し、真白イヴは普段と変わりない調子で説明を始めた。
「学生がひとり、犠牲になる事件が起きる。放っておくと被害が拡大するのは間違いない。未然に防いで欲しい」
 真剣な面持ちで次の言葉を待つ面々を見回し、続ける。
「襲われるのは男の人。年齢は18才。春から大学生になる予定で、田舎から出てきて一人暮らしを始める所だった。
 被害に合ったのは引越しの終わった夜」
 途切れる言葉と軽いため息。
「買い出しか何かに出かけて、道を間違えてしまったのね。夜になってたし、土地勘の無い場所だったから仕方無いんだけど……
 不運だったとしか言い様が無い。そこで、敵と遭遇してしまったの」
 その後は――。各々の脳裏に浮かんだ映像は恐らく、起こった出来事と然程の差は無かっただろう。
 続きを促す者はいなかった。少しの間沈黙が流れる。
「で、倒す相手ってのは?」
 重くなった雰囲気を変えるべく、リベリスタの一人が訊ねた。
「エリューションアンデッド。3体出てくるよ。能力的にはメイン1体、サブ2体と思っていい。
 知性は無いけど、生きてる人間を見ると襲ってくる」
 ディスプレイに、予知された敵の姿が映し出された。その醜悪な姿に眉をしかめる者が数人、げっと唸る者が数人。
 エリューションアンデッドとは即ち、革醒して超常の力を得て動く死体である。今回のそれは、人間と言う事だった。
「メインのフェーズは2。近づいた人をナイフの様な鋭い爪で引っかいてくる。十分注意して」
「他の攻撃方法は無いのか?」
「そう、これだけ。単純と言えば単純。でも回数が重なると体力が危なくなる。回復は大事」
 続けていい?と言う様に首を少し傾げる。
「サブのフェーズはどちらも1。メイン程強い力はないけど、軽く見てたらやられる。
 現れるのはメインと同時で、位置的にはメインのやつの後ろに控えている感じ。2体ともね。
 近づいたら殴ってくるけど、基本的に前には出てこなくて、石を投げてくる。
 後ろで戦う人も気をつけて。当たり所が悪いとかなり痛い」
 なるほど、と納得の声。
「他に気をつける事は?」
「そうね、現場が少し暗いかも。街灯程度の明かりはあるけど、光源を用意しておいたら良さそう」
 説明の終わりを意味するが如く、細い指が端末を操作し、画面のスイッチを切った。
「アンデッド達の生前は、10代後半の男性だった。死んだ経緯やお互いの関係は良く分からないけど、
 少なくとも、連携を取って攻撃してくる事は無いよ」
 その点はあなた達の方がきっと有利。
 フォーチュナの少女は、確認を取る様にひとりひとりの目を見つめる。
「理不尽に命が失われる事が分かってて、見逃す訳にはいかない」
 勿論だ。任せろ、と頷くリベリスタ達。
「あなた達なら大丈夫と思うけど。……油断はしないでね」
 青と赤の眼差しが明滅する様に瞬き、イヴは言葉を切った。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:有働
■難易度:NORMAL ■シナリオタイプ:通常 ■シナリオ納品日:2011年2月8日
有働と申します。

●成功条件
 全ての敵の殲滅

●敵
・メインアンデッド1体
 鋭い爪でのひっかき。近接1体に大ダメージ。

・サブアンデッド2体
 投石。遠距離1体に小ダメージ。

●戦場
 人気の無い高架下近くの空き地です。
 整地されており、障害物は特にありません。
 時間帯は夜。街灯程度の明かりはありますが、視界は余り良くありません。
 何らかの光源があると良いと思います(プレイングにその旨を書いて頂ければOKです)。

●その他
 敵はこちらの人数に関係なく現れます。
 イヴの提示したしかるべき時間に現地に到着する事になりますので、現場への移動等は気にしなくも大丈夫です。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。

■参加人数8人
藍坂 久遠(BNE000269) 上代・梓月(BNE000296)
セシル・カーシュ(BNE000431) 柏葉 ヒユウ(BNE000561)
新城・拓真(BNE000644) 喜多村 茅(BNE000706)
金原・文(BNE000833) 枕部・悠里(BNE001293)
■プレイング
藍坂 久遠(BNE000269)
【心情】
いきなり目の前にアンデットって…会っちゃう人も災難だよな(苦笑)
まあ、そんな不幸をなくすためにも、ボク達の力でお還り願おうね

【準備】
暗いようなので懐中電灯を
腰にくくりつけて取れないようにしておく
現場に近くなったら結界を使用して他の人がなるべく来ないようにもしておこう

【戦闘】
現場付近では警戒していつ来ても良いよう心構えしておく
現れたら他の人にも分かるよう「来たね…」と指し示し
はじめましてだけど、もうお別れしてもらうから…この世と

立ち位置は前衛で、まず始めにギャロップレイを使って攻撃
麻痺させてからダメージを重ねていくつもり
攻撃する相手は集中させて一体ずつ確実に、ね
倒せそうならブラックジャックでトドメ!
体力が厳しくなったら後ろに下がらせてもらう
他の人から回復が来たのなら短く「サンキュ」とお礼
「ほらほら、よそ見してんなよ?(クリティカル出たら」
「くっ…やるじゃん(ダメージ受けて」

【戦闘後】
ふー…これで一仕事終わったな(肩コキコキ鳴らし)
さて、結界があるとはいえここからは早く離れた方がいいだろうね
ボクも早く帰ってお風呂入りたいしなぁ
上代・梓月(BNE000296)
解決されてる事件だけど、
失敗したら後で夢見が悪そうだし頑張りましょう。
お化けは苦手だけどエリューションって分かっていれば大丈夫!

■準備
アウトドア用でベルトに引っかけられるライトがあったので
それを持っていきます。
邪魔にならないように腰のベルトに付けますね。
明かりのせいで標的になっていそうと思ったら外しますね。

それと緊張している人がいたら飴を渡してみます。
何か食べると緊張が少し和らぐと聞いた事があるので、
何もないよりはマシになるかなと思って。

■戦闘
後衛で回復メインで動きますね。
仲間を倒れさせるわけにはいきませんし、
体力の6割を切った人を優先して天使の息で回復。
「大丈夫ですか?」
回復対象がいない時はマジックアローで
メインアンデッドを優先して攻撃していきます。

サブアンデッドの投石には注意して
超反射神経を活用しつつ出来るだけ動いて避けるようにします。
避ける時に仲間の行動の邪魔にならないようには気を付けますね。

パニックというか慌ててそうな人がいた時には、
声かけられる距離なら落ち着くように声を掛けますね。
戦闘中に慌てるのは色々危ないですし。
「みんなもいるし大丈夫ですよ、頑張りましょうね」
声を掛けながら周りに注意して回復は忘れないようにします。

■備考
戦闘時以外は獣化部分の猫耳を触られないように
帽子を常時かぶってますけど、
戦闘中は帽子が飛ばされたりしても被り直しはしません。
セシル・カーシュ(BNE000431)
…田舎から出て来て早々命を奪われるというのでは余りにも不運だな。
救える命があるのなら救えるのに越した事は無い。俺達の力はその為にあるのだからな。
…今回に関してはあくまで過去の追体験でしかないが、実戦だと思って臨むべきだろう。
でなければ、実際の戦闘となった時に碌に動けんだろうしな。

相手は三体だが、連携を取ってこない分やり易いと言えるか。
それに俺達の方が数が多いのも有利な点だな。
とはいえ、舐めて掛からんようにしないとな。失敗してしまっては元も子もない。


無事、訓練を終えてティータイムにしたい所だ。
普段よりもずっと格別の味になるだろう。

【準備】
事前に光源としてマグライトを用意。使用する時はストラップで手首に固定。
光源が充分足りている時には仕舞っておく
念の為、基本スキルの結界を使用。

【戦闘】
立ち位置は前衛。
攻撃の優先順位はメイン>サブ。
メインアンデッドに対してはギャロッププレイを使用して麻痺を狙っていく。麻痺をさせたら通常の攻撃に切り替えて攻撃する。
サブアンデッドとの距離が三メートル以内の時はブラックジャックを使用して一度攻撃をしていく。それ以外の時はメインアンデッドに攻撃を集中。
HPが半分近くに減ってきた時は吸血を使用して回復を試みる。
メイン撃破後、サブが生き残っている場合はサブへの攻撃へ回る。
その際にEPが、残っている時はギャロッププレイを使って攻撃。残っていない時は通常の攻撃を仕掛ける。
柏葉 ヒユウ(BNE000561)
折角引っ越してきたばっかで、やりたい事も沢山あるだろーに…
こんな理不尽な死に方、させる訳にはいかねーよな!
アンデッドになった奴らにも訳があったんだろけど…そういう奴らにも、悲劇を起こさせる訳にはいかねー!


ベルトに括りつけるアタッチメントのついたライトを持っていくよ


攻撃優先順位は他のメンバーに合わせる
「俺も行くよ、協力できる事があったら遠慮なく指示してくれ!」
集中攻撃で行くか、担当割で行くかの決定がされていた場合も従うよ

担当割方式なら、人数の少ない班に加わる

もし1体ずつ確実に撃破する方針なら、集中攻撃班に加勢
ただ、もし他2体を放置することになりそうだったら、他の誰かが集中攻撃を受けないように足止めになろうと思う
「お前の相手は俺だよ!」って感じで
できれば集中攻撃を受けていない方のサブの足止めをしたい所だけれど…そうも言ってられない場合はメインの足止めに走るよ

攻撃はオーララッシュ中心
止めを刺せそうならメガクラッシュを使用
HPが200を切るなら森羅行で回復を図る
EPが足りなくなったら一旦下がって他の仲間に助けを求めるよ

敵の攻撃はよく見て避けたい所
但しそれによって後衛のメンバーに攻撃が行きそうなら、武器で捌くか受け止めるかしたい


万一仲間の半数が倒れて、かつ敵が2体以上残ってたなら、撤退も考えておく

他、参加メンバーの方針でより有力そうな戦闘方法があるなら、それに従ってうまく敵を撃破できるように動くよ
新城・拓真(BNE000644)
未然に不幸を防ぐ事が出来ると言うのなら、
新しい悲劇を生まない為にも、俺はこの力を全力で振るおう。
例えそれが、俺の自己満足であったとしても、だ。

敵が現れるとされるポイントにて待機。
多少暴れても大丈夫なように、
落としても大丈夫な頑丈なタンランを事前に準備。腰に準備しておく。
敵を確認次第結界を張り、一般人を巻き込まぬ為の配慮を。
俺の幻想纏い、正義のタロットを取り出し、明かりは着火。
即座に戦闘体勢へ。
俺は前衛へ。敵を後ろへ通さない事を配慮。
メインへオーララッシュを使用、敵の力を確実に削っていく。
メインを倒し次第、サブの残り2体への攻撃を開始。
EPが既に心許無ければ物攻での通常攻撃。
余裕があるなら、オーララッシュを活用して早めの殲滅を心掛ける。

敵の攻撃で味方が危なくなった時に、こちらの余力があれば庇う行動を取る。
誰一人として、欠けさせる心算は無い。

事が終わった後は、彼等に黙祷しよう。
以前どんな者であったかは解らないが……死後の安寧を望むくらいは許されるだろう。

戦闘後に敵の遺体処理などが必要なら行う。

台詞集
「……残念だが、此処は通行止めだ。通す事は出来ない」

「一撃では無理か、それならば……っ!」

「存外に早い……!だがっ……!」

「そろそろ楽にしてやる──動くなよ……っ!」

「っ、大丈夫か?今の内に体勢を立て直せ!」

「……終わったな、皆、無事か?」
喜多村 茅(BNE000706)
■心情
アンデッド、ビジュアル的には嫌いじゃねぇんだ、けど
……イリューションはちょっと、な
んで、不運な奴もいることだし、ちゃんと倒すかー
夜に外出んの、って面倒なのにな。被害者の奴、はすげーな

■準備
多分おれは、そんなに動き回らないだろーし、ってことで光源用意
腕に懐中電灯結わえて、地面に置くタイプのランプも足元に

……ランプに骸骨がいる? ってそういうデザイン、おれの趣味、だから

一般人避けの結界も、念のため張っておく

■戦闘
後衛
前方に懐中電灯の光を向けて、皆が攻撃しやすいようにする
まずはシューティングスターで自己強化
んで、スターライトシュートで全体に射撃して、仲間を援護だ
気持ち的にはサブの奴らを牽制して、前の仲間ばっか狙われねーように
おれもそこまで脆いわけじゃねえかんな

スターライトシュート4回使ってEPが55切るか、敵の数が一体になったら
攻撃が集中してる奴にアーリースナイプで、一気に決めに行ってみる
……長引くの、も面倒だしな
まだ残ってたら1$シュート、それでも終わんなきゃ普通の射撃攻撃で援護

投石には常に注意して、できるだけ避けられるようにする
他の仲間に行きそうなときは、声かけて注意を促したり

■その後
……久しぶり、に射撃したら、疲れた眠い
なんつーか、リアルだった
けど、ま、これでめでたし、なら良かったな

■補足
なんかだるだるした口調
金原・文(BNE000833)
おばけこわい、アンデッドとか超恐い、な子ですが、真面目さゆえにガタガタ震えの超テンパり状態で突撃していきます。「訓練だもん、本物じゃないもん…ふえーん、でもこわいよぉー…」
テンパっているので、光源確保とか他のリベリスタとの連携とか問題の被害者学生の保護とかまで頭が回りません。ひたすら、敵アンデッドを攻撃します。
まずいきなりメインアンデッドに接近し、半べそで「やだやだやだっ、アンデッドこわいーっ!」と叫びながらブラックジャックを連続で使って攻撃します。た だし、サブアンデッドにも接近され複数を相手にする状況になった場合は、ダンシングリッパーを用いて複数への同時攻撃に切り替えます。また攻撃をしすぎて ヘバってきたとき(=EPが50を切ったとき)は、ギャロッププレイもしくは通常物理攻撃に切り替えます。
無事に敵アンデッドを全滅させることができたら、えんえんと大声で泣き出します。「こわかったよぉこわかったよぉー…!」誰かにたしなめられるなり慰められるなりしたら、素直に泣き声を小さくして、でもしゃくり上げ続けながら帰還の途につきます。
枕部・悠里(BNE001293)
【心境】
死体は見たことありますけど、動く死体は初めてですね。
どうやって動いているのか興味深いのですよ
生前のこととかは一切気にしませんよ。…興味も意味もありませんし。

【事前準備】
光源を用意
置いて使えるランタン型のものを邪魔にならない位置に置いておきます

【立ち位置】
可能であれば全員が回復の範囲に入るようない立ち位置にいます。
全員が無理ならなるべく多くの人が範囲に入るようにします。

【戦闘】
回復スキルでアンデッドに大ダメージ!…は、ゲームの中だけの話ですよね。
…大人しく後衛で回復してます。
それに私はナースですからね。人を癒すのが役割なのですよ…なんちゃってナースですけど。

HPが6割以下になった人から順に天使の息を使って回復です
条件に当てはまる人が複数いるときは、前衛に立っている人を優先して回復していきます
前衛の人に倒れられると後衛の私がピンチになりますからね。

6割以下になった人が4人以上いるときは天使の歌を使用しますよ
消費が大きいので何度も使えないのですが、そうも言ってられないですね

回復が必要な人が一人もいなく、近接攻撃が可能な範囲に敵がいたときのみ、
武器を使った通常攻撃を行いますよ。
近接攻撃可能な範囲に敵がいなければ、回復が必要な人が出るまで全力防御してますね。

EPがなくなったら、後衛で防御しつつやる気のない声援でも送っておきますよ。
がんばれー
■リプレイ

 冬の終わりは見えていても、早春と言うにはまだ違和感がある季節。
 時間を考えればはっきりとその形が見えておかしくない月が霞んで見えるのは、薄く雲がかかっている為とも、彩度の高い人口の光による為とも思われた。
 先刻まで肌を冷やしていた風が凪いで、幾分か体感の寒さは和らいでいる。
 ひとつ、ふたつとともる明かりも、場の温度を僅かながら上げているかの様だ。
 各々が持ち込んだ光源によって照らし出される仲間の顔を確認すれば、感じるのは心強さと、これから起こる事への緊張。
 話題に上がるのは自然、今回の任務の事である。

 懐中電灯を腰にくくりつけ、苦笑しながら『為虎添翼』藍坂 久遠(BNE000269)が言う。
「いきなり目の前にアンデットって…会っちゃう人も災難だよな」
「…確かに。田舎から出て来て早々命を奪われるというのでは余りにも不運だな」
 マグライトを取り出し、ストラップで手首に固定するセシル・カーシュ(BNE000431)も嘆息する。
 命を落とす、と明示された結果を、ついてなかったという言葉で片付けるには少々軽い気もして、会話は自ずと言葉を選びながらになった。
「折角引っ越してきたばっかで、やりたい事も沢山あるだろーに…」
 アタッチメントとライトをてきぱきと取り付けながら、被害者に思いをはせるのは『考える前に突っ走る!』柏葉 ヒユウ(BNE000561)。
「夜に外出んの、って面倒なのにな。被害者の奴、はすげーな」
 同じく被害者の青年の事を考えてはいるが、妙な所に感心する『パンク系眠りネズミ』喜多村 茅(BNE000706)。懐中電灯を腕に結わえ、足元にもランプをおいた。
 仲間達が戦闘の準備を整えていく一方、『臆病ワンコ』金原・文(ID:BNE000833)は我が身を抱いて何も手に付かない様子だ。
 もともと人ならざるものが苦手というのもあるが、それを相手に戦う事を考えれば至極当然の反応であったろう。
 傍目にもそうと見て取れる程震えている彼女の隣に、そっと『夢籠』上代・梓月(BNE000296)が近づいた。
「何か食べると緊張が少し和らぐって聞いた事があるから。どうぞ」
 微笑んで開いた手の中には、可愛い包装紙に包まれた飴。
 有難う、と小さい声で答えて受け取り、文は手の平の先にある笑顔に気づく。
「私もお化けは苦手だけど、エリューションって分かっていれば大丈夫だし」
「……うん、そうだね……!」
 頑張ろうね、と頷き合う二人を見やって、『誰が為の力』新城・拓真(BNE000644)も静かに同意する。
「新しい悲劇を生まない為にもな」
 それが自己満足であったとしても、全力で。続く言葉は音の無い呟きになった。
 ――空気が動く気配にその場の全員が顔を上げる。
「来たね……」
 言葉を交わしながらも油断無く暗闇を見回していた久遠が、目を凝らし、おもむろに一点を指し示した。
 視線が導かれた先には、人の形に動く闇。
 照明が過不足無く辺りを照らし出す中、それはゆっくりとこちらに向かってくる。
 明かりの集中する領域に入り、人であったものの歪んだ末路の姿が露わになった。
 ぼろぼろの布と黒ずんだ肉をまばらに纏った骨。保護するべき内臓を失った部分から空気が抜けていく音が虚しく響く。
 現場に入った時点で数人が張っていた結界は、敵を認めてさらにその範囲を広める。
「首尾よく倒してティータイム、と行きたい所だな」
 セシルの言葉が開戦の合図になった。


 口火を切ったのは文だ。
「やだやだやだっ、アンデッドこわいーっ!」
 先程取り戻したかの様に見えた多少の余裕もいざ敵を目の前にすると吹き飛んでしまったのか、間合いを詰めるやいなや、頭蓋目掛けて手にした鋼糸を叩きつける。
「はじめましてだけど、もうお別れしてもらうから…この世と」
 それに続くべく久遠の体から気魄の糸が伸び、服の形を保っている部分をひきちぎった。
「……残念だが、此処は通行止めだ。通す事は出来ない」
 前衛の一翼を担う拓真の大剣が光を帯び、腐敗した肉を削りにかかる。
 飛来した石のつぶてを余裕の動作でいなしたセシルも黒い糸を発生させ身構えた。
「集中して倒すとしようか」
「了解、俺も行くよ!」
 肩を並べて立つヒユウの体が眩いオーラに包まれる。

 全体を視野に入れる位置に移動しながら『ブラックナース』枕部・悠里(BNE001293)は動く死体を興味深そうに観察する。
「死体は見た事ありますけど、あれは、どうやって動いているのでしょうね」
 力の源がエリューションであるのは明らかだが、その行動はどの様な意思が支配しているのだろう。
 憎しみか、恨みか、生きているものへの執着か。眼球の抜け落ちた黒い穴からは何も伺い知る事はできない。
(まだ回復は必要無さそうですね)
 同じく後ろから仲間を見渡し、梓月が魔方陣を描く。生みだされる超常の力は矢の形。
「アンデッド、ビジュアル的には嫌いじゃねぇんだ、けど」
 遠距離攻撃を活かすべく前線から距離をとって陣取った茅も弓を構え、高まった力を充填させる。
 エリューションはちょっと、な、と付け加え、星に似た光の弾を一斉に放った。 
 

「あっ危ない!」
 魔法の矢を撃ちながら梓月が叫ぶ。アンデッドが前触れも無く向きを変え 不意を付かれた拓真を襲ったのだ。
「新城さん!」
 大事に至る傷では無い。大丈夫だといらえを返し、防具に残った爪あとを手で確かめる。
「存外に早い……!」
 力は本物だ。油断すると――やられる。
 死人の腕が振り上げられ、勢いの付いた鋭利な爪が文の腕に傷をつける。
「きゃっ!」
 攻撃の隙をついてヒユウが肉薄、がら空きのわき腹に一撃を与えると、屍の体がぐらりと揺らいだ。
 しかしそれも一瞬、意に介さぬ様子で元の姿勢に戻り、首に巻きついた久遠の糸をもどかしい動作で振りほどく。
 入れ替わりにセシルの放った糸がその腕や足の自由を奪おうとするも、アンデッドの動きが止まる事は無い。
 ヒユウが呟く。
「やっば手ごわいな……!」
「石、来るぞ」
 視界に何かが入った、そう思った梓月の耳に茅の呼びかけが飛び込む。
 常人を超える反射神経の賜物か、幸いにもそれはが後ろに反れた。帽子が落ちてふわりとなびく髪の間で、猫耳がぴんと立つ。
 有難う、の声が届いたかどうかも怪しい勢いで戦いの場に再び発せられる警戒。
「あ、喜多村さん」
 石が、と続けたのは悠里か。忠告した側から狙われた茅はギリギリで飛来物を避ける。弾みで足が側のランプに当たり、装飾にあしらわれた骸骨と目が合う。
「あぶねー」
 怯む事を知らないアンデッドがセシルの腕を掴んだ。皮膚に爪先が食い込み、流れた血が地面に赤い点を描いていく。
「つっ……!」
 鋭い糸を操り動きを封じる機会を狙うが、あと少しのところで引き剥がされてしまうのが口惜しい。
「どうだ!」
 破滅に導く久遠の思念が、アンデッドの頭部目掛けて闇の手を伸ばす。
 命中したショックで傾いだ屍は、それでも足を踏ん張る形で持ち堪え、引く事無くこちらに一歩踏み出した。
 見た目以上に屈強なのはエリューションの力が宿っているからか。攻撃が中央のアンデッド中心になっているのは間違いない。
 斬り込むべきか、と視線を後ろにやったヒユウの目に、岩と言ってもいい大きさの石を取る屍が映った。
「お前の相手は俺だよ!」
 叫んだ瞬間に刃先の方向は定まり、間髪いれず地を蹴って踏み込む。
「えっ、なにっ!?」
 テンパっちゃうんです、と自覚している文がその声ではっと我に返った時、屍の顔がまともに目に入ってしまった。
 その口が嗤いの形に開いた気がして、文字通り耳と尻尾が総毛立つ。
「こここ、こっち来ないでーっ!」
 咄嗟に後ずさる足でステップを踏み半ば無闇に跳ばした鋼の糸は、ニ体の敵を撃ちつけて骨を露わにさせた。
 アンデッドが石を落とすのを逃さず斬りつける拓真。
「一撃では無理か、それならば……っ!」
 剣を引くと共に屍の二本の指が奪われる。
 音と光が乱舞する中梓月と悠里は仲間の状態を正しく見極め、癒しを施していく。
 戦線を支えている確かな力を感じながら茅の指が弓を引けば、光弾が空を翔けあがった。
「これで終わりだ」
 体から切り離さんばかりに絡ませた糸をセシルがきつく引き寄せる。最後まで残っていた右腕が鈍い音を立てて砕け、後方のアンデッドが沈んだ。
 上がる歓声。残るはニ体。
 数が減った事を気にかける風も無く、鉤を思わせる爪を立て、屍は獲物を狩る為に移動する。
「くっ」
 久遠が目の端に光を捕らえた時には爪痕が腕に刻まれていた後。
「……やるじゃん」
 みるみる内に赤く盛り上がる傷を一瞥して数歩下がると、一呼吸の内に体の痛みが和いで驚く。
「私はナースですからね。人を癒すのが役割なのですよ」
 なんちゃってナースですけどね、と涼やかに笑う悠里に短く礼を返して、彼は前線に舞い戻る。
 癒しの天使の息吹は常に誰かの傷を癒し、仲間の体力が危険領域に入る事を許さなかったが、そろそろケリをつけたい所でもあった。
「……長引くの、も面倒だしな」
 単体の狙撃に切り替えた茅が魔弾を撃つ。
「動き、見切った」
 それは闇の向こうに吸い込まれ、屍の顔面を穿って闇と同じ深さの穴をあけた。
 投石の姿勢をとった格好のまま、アンデッドが崩れ折れる音が聞こえる。
 ――あと一体。

 爪がヒユウの二の腕を抉り、痛みと衝撃に膝を付きそうになる。呼吸を整えて持ち堪えるが、睨み返すので精一杯だ。
「ふうっ、しぶといな……!」
 必死の攻撃を続ける文も流石に疲労の色が濃い。
 誰一人として欠けさせてなるものかと気炎をあげて拓真が激しく打ち込む。
「今の内に体勢を!」
 緑と蒼の瞳をすっと細め、セシルがアンデッドを見据える。 
「余り美味しくはなさそうだが仕方あるまい」
 獲物に襲い掛かるヴァンパイアを思わせる仕草で優雅に吸血の牙を剥く、それは体力を回復する彼の種族の手段だ。
「使う時が来たでしょうか」
 ここが頃合と流麗な言葉を唇にのせ、歌の形に紡いだ悠里は、その場の仲間全てに治癒の施しを授けた。
 負傷の度合いが大きい前衛が一旦下がった間も攻撃の手を休めまいと茅が動く。
「もう少し、だな」
 マイペースな口調とは対照的に、精密正確な射撃が味方の頭上を越えて弾ける。

 文と久遠の黒いオーラが屍の頭部を捉え、セシルの気糸が屍の胴体に巻きつく。
 悠里の詠唱に呼応して戦場に流れる福音。
 傷が癒え、武器を持つ手に力が戻るのを感じ、拓真の剣が再び光を纏った。
「そろそろ楽にしてやる──!」
 軌跡を同じくして梓月の魔力の矢が飛び、茅の弾道が重なる。
 渾身の力を込めたヒユウの剣が、致命の一打を与えんと振り下ろされる。

 姿を形成する骨を破壊し、腐肉を奪いつくす轟音。
 動かなくなるまでは――リベリスタ達が固唾を呑んで見守る中、亡者はついに力を失い、真の死人となった。


 熱気の残る空間に静寂が戻ってきた。
 ヒユウが残骸を見つめる横で、拓真は静かに黙祷を捧げる。
「……死後の安寧を望むくらいは許されるだろう」
「アンデッドになった奴らにも訳があったんだろけどなあ…」
 再び立つことはない躯の上を風が通り、骨の欠片を塵に還していく。彼らが何者で、なぜこの様な姿になったのかは、想像する事しか適わない。
「皆さん大丈夫ですか?」
 軽やかな悠里の声に緊張の糸が切れたのか、堰を切ったように文が泣き出した。
「こ、こわかったよぉー…!」
「無事に倒せましたね」
 拾い上げた帽子を被りなおし梓月が微笑めば、端正な顔を上げてセシルも息をつく。
「お疲れ様だな」
 茅は両手を上げて体を伸ばし、一つ欠伸をした。
「……久しぶり、に射撃したら、疲れた眠い」
 同感する久遠も肩を回して強張った部分をほぐす。
「早く帰ってお風呂入りたいや」
 
 風が戻り、夜空の影が緩やかに流されていく。
 電飾の灯のさらに高いところから、月の光が柔らかく広がった。

■シナリオの結果
結果:成功
重傷:なし
死亡:なし
■あとがき
なし

■プレイング評価
喜多村 茅(BNE000706)
個性を活かした自分の戦い方を良く理解しており、立ち位置と全体の戦闘に対する注意も考えられていた点が良かったと思います。