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無垢なる復讐

 其れはすでに役目を終えているはずだった。
 地面に身体を横たえ。
 欠けた我が身を探すことも許されず。
 そのまま朽ちていくはずだった。

 しかし其れは立ち上がった。
 自ら命の火を灯し。
 愛しき主人の身を重ね。
 道なき道を走り出す。

 其れに宿るはただ一つの感情。
 ――復讐スルハ我ニアリ。



「復讐――それがこのエリューションの行動原理ね」
 正面のモニタに敵の詳細なデータが映し出される。
 外見は一般的なアメリカンタイプのバイクである。ヘッドライトが割れ、ボディの塗装が剥がれ、マフラーがへこみ、スタンドがへし折れているなど、見るも無残な状態であった。
 だが集まったリスベスタたちが注目したのはバイクそのものではなかった。バイクの上に乗っている、人型に寄り集まった機械部品の数々に目を奪われていた。頭の部分にはご丁寧にヘルメットが被せられ、右手には重量級の鈍器が握られている。
「敵はエリューションゴーレム。フェーズ2の戦士級。知性は感じられないわね。行動原理に沿って行動する、まさに機械的な相手よ。行動するのは夜中だけど、壊れたヘッドライトが点きっぱなしになってるから見失う心配はまずないわ」
 そこまで説明して、ようやく真白イヴは集まった面々に向き直る。
「攻撃方法は単純。バイクによる突進と、人型による鈍器での殴打。特殊な攻撃は持ってないみたい。純粋にスピードとパワーで攻めてくるタイプよ。ただ一つだけ。停止状態からの急発進。力を溜めたこの一撃は一発で重傷になりかねない破壊力を秘めてるわ。この攻撃そのものは直線的だから、発動のタイミングを見定められれば回避するのはそれほど難しくないはず。攻撃の前に行われる、大きく二度アクセルを回す音。これを絶対に聞き逃さないで」
 一通りの説明を終えたイヴは気をつけてねとリスベスタたちを送り出す。一人、また一人とブリーフィングルームを出て行く中、残った数人がイヴに疑問を投げかけた。
「……任務に関係の無いことだから、あえて話さなかったんだけど」
 リスベスタたちから背を向け、操作端末の前で頬杖をつく。わずかに持ち上がった瞳は何処か遠くを見ているかのようだった。
「復讐の相手は事故を起こしたトラックの運転手。バイクの持ち主は夜の山道を走行中にトラックと接触して谷底に落ち、そこで命を失ったの。相手は警察に連絡もせずに逃げたまま。遺族は失踪届けを出して彼の行方を捜してるわ」
 イヴが予測したとおり、リスベスタたちの怒りの一部がエリューションではなく運転手に向いた。心情的には理解できなくも無いが、人の罪は人の法で裁くべきである。復讐などという行為を、エリューションによる殺害を肯定する理由にはなりえない。
「この件が片付いたら、彼の遺体のある場所を警察に知らせるわ。大丈夫。日本の警察は優秀だから、必ず犯人を捕まえてくれる。私たちは私たちのやるべきことをやろう?」
 言葉と共に振り返ったイヴの小さなほほ笑みに答え、今度こそリスベスタたちは事件解決のために動き出した。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:霧ヶ峰
■難易度:NORMAL ■シナリオタイプ:通常 ■シナリオ納品日:2011年2月8日
 初めまして。霧ヶ峰と申します。
 どうぞよろしくお願いいたします。

 目的はエリューションゴーレムの撃破。
 戦いの場所は真夜中の道路です。
片側一車線の直進道路で、バイクがUターンするくらいの広さはあります。
 真夜中なので人や車の通行はまずありません。

 エリューションゴーレムは復讐を行動原理としています。
 その邪魔をする者は排除しますが、一定の範囲内を離れると相手にしなくなります。
 一度見失うと追いつくことは不可能ですので、必ず一人は相手の攻撃範囲内に留まってください。

■参加人数8人
老神・綾香(BNE000022) 早瀬 直樹(BNE000116)
英 正宗(BNE000423) 大道 仁義(BNE000616)
アルカナ・ネーティア(BNE001393) ランディ・益母(BNE001403)
風宮 悠月(BNE001450) 桔梗・エルム・十文字(BNE001542)
■プレイング
老神・綾香(BNE000022)
【心情】
漸くリベリスタとして戦う事が出来るようになる訳か。
先ずはバーチャルシミュレーションでの試金石と言う感じかな。
しかしこれをクリア出来なければ今後においても足を引っ張るだけだろう。
此処で好成績を収められるか否か、本気の出し所なのは間違いない。

【行動】
自分のポジションは前衛と後衛の間に位置する【中衛】として行動開始。
手始めに『コンセントレーション』を使用しておき戦闘準備を整える。
戦闘が始まったら前衛となる仲間達と歩調を合わせてエリューションゴーレムに接近。
十分に接敵したら『アデプトアクション』を複数回使用して相手の弱点を見抜けるか試みる。

上記のスキル攻撃を行った後や相手の挙動を注意深く伺っておき
相手の弱点らしき場所が判明したら『ピンポイント』による部位狙いを実行。
以降もEPが続く限りに『ピンポイント』を発動して確実にダメージを与えていく。
(EPが切れた後は神秘に依存した通常攻撃を実行)
前置きで説明されている【大きく二度アクセルを回す音】が聞こえたら回避に専念。
回避に成功する事が出来たなら再度『ピンポイント』の射程距離内に敵を捉えて攻撃を再開。

■ピンポイントが弱点に命中・致命傷を与えた時
『まるで闘牛だな』『終りにしよう』
早瀬 直樹(BNE000116)
仮想の話とはいえ、やるせない話だな……。
だけど、仮想だとしても現実だとしても、俺達がやるべき事はエリューションを倒す事。
俺は、普通の人間だったからエリューション事件の経験も実戦の経験も無いに等しいが……足を引っ張らないよう、精一杯やってみせる。
戦う事を選んだ以上、経験を糧として俺は変わっていかなきゃならない。普通の人間から、リベリスタへと。

後衛に位置取って戦う。状況に合えば障害を背に。山道ならば山側の歩道で戦うイメージ。
まず『シューティングスター』で自身の集中力を高め『1$シュート』による射撃攻撃を行う。
基本的には相手の機動力を奪う目論見で部位狙いでタイヤを攻撃。効果が見受けられないなら他の部位を。
もしくはタイヤにダメージを与える方向を変える。

停止からの急発進については、自らも敵の挙動に警戒して兆候を逃さないようにしたいですが、
より近い前衛や他、キャッチしやすい人が注意を促してくれるかと思いますので、そちらも頭に入れておきます。
実際に標的が停止からの急発進を行ってきたら、相手が武器を持っていない方向に回避します。
相手がこちらを一定の範囲内に捉えようとUターンして戻ろうとするロジックなら、
前衛が正面を抑える時間を稼ぐためにターンした瞬間を狙って射撃。勢いを殺します。
相手がそのまま突っ切って逃走しようとするなら、その背を狙って射撃して多少なりとも妨害を。

任務中は口調は堅め「です、ます」
英 正宗(BNE000423)
「やるせない話だが…同時に、教訓でもあるな」
自分自身、車を運転する身。
「よく気を付けないといけないな。うっかり事故ってエリューションまで生み出しちゃいました、なんて冗談にもならん」

前衛担当。
初手にハイディフェンサーを使用、囮役を兼ねて最前線へ。
立ち回りに気をつけ、道の側面寄りから剣の斬撃で攻撃する。
「そら、お前の相手はこっちだ」
EPに余裕があればヘビースマッシュを多用。
また、バイクのタイヤを狙える状況にあればタイヤ破壊を試みる。
バイクの機動力を奪うのが目的。攻撃が通用しない場合は諦める。
「…とと、バイクに目が行くが、本命はそっちだったな」
あくまで最終目標はジャンクライダーの撃破。
「ライトは狙わないようにしないと、居場所の良い目印だし」

「突進、来るぞ!」
急発進攻撃は前兆のエンジン音を確認次第、まず味方に通告。
同時にバイクの進行方向から横に避ける。
距離が開く場合はすぐさまライダーを追いかけ、接敵状態を確保へ。
回避が極めて厳しい状況の場合は、盾を使ってなんとか受け流そうと試みる。

戦闘終了後、ふと気になったので誰にともなく訪ねてみる。
「…バイクの供養って、やってる寺あったっけ」
多分供養が必要なのはバイクじゃなくて持ち主なんだろうけど。
大道 仁義(BNE000616)
【心情】
ヒャッハァー! まさしく彷徨える魂ってヤツだ、仏サマの教えの下に、成仏しやがれェ!
っつっても、無理矢理ブッ倒されたンじゃー救われねェだろうからよォ、俺がお経あげてやるぜェ!

【行動】
タフさを生かしてよォ、やや前衛寄りの後衛として動くわ。
行動優先順位:仲間への回復・補助>自身の回復>攻撃
最優先すンのは、痛手を受けた仲間に対しするサポートだなァ。【天使の息】を用いた回復、間に合わなければ「かばう」ぜェ。
「ヒャッハー、仏サマの力は偉大だぜェ!」とか叫びながら回復だァ!
回復の基準は、体力が半分になったら、だなァ。
相手の攻撃がイヴの注意した「力を込めた一撃」だったらよォ、事前合図のアクセル音で判断、回避行動だ。コイツも、間に合いそうにない仲間・行動不可能な仲間等が居れば「かばう」を行うぜェ。

余裕があれば攻撃行動だなァ。
仲間が大した被害も無く、かつ遠距離攻撃を行う仲間が居ンなら、ソイツに便乗する形で【ジャスティスキャノン】をブッ放してやンぜェ!
「ヒャッハァー、御仏の光だァー! 悪霊は成仏だァー!」

【戦闘後】
不慮の死を遂げてしまったライダー達に対してお経をあげてやらァ。
遺体の場所が分かればそこでやるし、分からなければ戦闘をした場所でやンぜェ。

【その他】
動くたびにモヒカンが揺れるンだぜェ! モヒカン・イズ・ソウル! あァん、世紀末チック? 聞こえねェなァ!
アルカナ・ネーティア(BNE001393)
今回は報われぬ魂じゃが、エリューション化してしまっているのならば同情の余地も無いのじゃ。
厳しいようじゃが、同情していては倒れるのはこちらじゃろうしな。
それに、倒して魂を沈めてやるのが、今のわらわ達に出来る最大限の手向けじゃろう。

……なんて、定番でつまらぬ台詞を言っていたら甘いものが食べたくなるのう~。
今日のお菓子はポッキーなのじゃ!んまんま。


持ち前の身軽さを活かしておとり役になるのじゃ。
エンジンを2回ふかす音が聞こえたら飛びのいたりして即座に回避行動を取るのじゃ。一撃が重そうじゃし、相手から目を離さないようにしておかないとじゃな。翼で上空に一時的にジャンプして回避する事も出来るし、大丈夫じゃろ。

現場は真夜中で薄暗そうじゃし、不意に転んだりしないように足元に注意しておくのじゃ。何も光源が無い時のために懐中電灯を持参しておこうかの。

相手がバイクならば弱点は転倒で間違いなさそうじゃし、ブラックコードで車体か車輪を絡めとるようにして、ギャロッププレイで拘束したりできればよいのう。

一度横転してしまえば立て直すのに時間が掛かるし隙が出来そうじゃし、他の味方に「今がチャンスじゃぞ!」と声を掛けたりして総攻撃を出来るようにするか、自らブラックジャックを放って攻撃に参加したりしたいのじゃ。


回避時「ふふ、このわらわに攻撃が当てられるかの?」
決め台詞「うう、甘いものが食べたいのじゃー!」
ランディ・益母(BNE001403)
●心情
たかが過去の再現と笑っていたがバイクに対してこんなヤツもいたのだなと感心する。
主人のために戦うバイクに、バイク好きとしても強い興味や敬意有。
●行動
待ち伏せ策がPT内に多い場合囮を買って出る。
他に適性の高い適任者が居れば共に囮となって援護に回る。
出来るだけ壁や遮蔽物を背に出来るように位置取りに心がける。
●戦闘
敵を逃がさない様に常に接敵し近接戦を行う。
急発進に対しては予兆を感じたら全体に注意を呼びかける。
スキルは爆砕で自付→メガクラッシュを中心に。自付が解除されたら余裕があれば爆砕。余裕が無ければメガクラを続行。
何らかの理由で急発進を避けれない後衛が発生した場合「かばう」を敢行する。
前衛系の他の味方と出来るだけ連携するように心がける。
○出来ればやりたい事
弱った相手の最後の攻撃に対して正面から受けてたって最大攻撃で殴り返す。
その場合自分の危険度は度外視で構わない、但し他プレイヤーの危険がある場合その危険の排除優先。
タイヤ部位破壊を無理の無い範囲で狙ってみる。
●台詞的なさんぷる
「ほぉ?中々粋な奴も居たんだねぇ…」
「来たか。油断するんじゃねーぞ」
「テメェの執念を魅せてみな!」
「合わせてやる。行くぜ!」
「突進!来るぞ!ぼさぼさすんな!」
「…最後の執念かよ、来い!」
「ウゥオォォォォォォッ!」
「お前の存在も覚えとくぜ」
「…そーいやあのバイクと主人の墓、みてーなトコはあんのか?」
風宮 悠月(BNE001450)
■心情
人が大切にするものには魂が宿るといいますが…なんとも後味の悪い事件があったものです。
とはいえ、そうした事例にも今後遭遇する事は多々あるでしょうし、まずはこの一戦に心してかからなければ。

■準備
準備としては…道の左右どちらかの端、ガードレール等壁になるものがあるならそれを背にする形で布陣します。
後は、常に味方からの合図は聞き逃さないよう念頭に置いておく事と、敵E・ゴーレムの挙動にも出来る限り注意を払うようにする。
…くらいでしょうか。

■戦闘
他のメンバーから突進の合図があれば、優先して攻撃回避を試みます。
その上で、突進範囲と思われるE・ゴーレムの正面方向には可能な限り立たないように位置を変えながら、まずはマジックミサイルで敵の前輪部を部位攻撃し、破壊を試みます。
それで相手の移動能力を奪えれば良しとして本体への攻撃に移行。奪えなければ、続いて後輪の破壊を試みてみます。

■台詞
「バイク状のE・ゴーレム。折角の機会です、色々と試してみましょうか」
「…確かに、直撃を受けたらただでは済みませんね」(突進を回避できた時
「その足、止められるかどうか――いきます!」(車輪を攻撃時
「終わりですか。…仮想なのにこの再現率。VTS、大したものですね」
桔梗・エルム・十文字(BNE001542)
・はじめに
わたしは壁、わたしはキカイ、わたしは頑健、誰もわたしを砕けない。
たとえ鋼の化け物でもそれは同じ。わたしは唯一無二の壁となって
わたしの関わる人を世界の不条理から守りきる。


・戦闘
ポジションは前衛。引かぬ恐れぬ顧みぬ。自信のあるタフネスを
武器にダメージを無視して前衛に留まる。ぜったいに後衛に手は出させない。

(キャラ的にはそんな心情ですがダメージが危険地に達したら素直に
ポジション交代して味方に回復してもらいます)

急発進の合図がきたらみんなに知らせる「突進…来る!!」
戦術は『グレートソードでとにかく殴れ』無限期間を利用してメガクラッシュ連打。
「わたしの義腕は砕けない。そしてキミの装甲はクシャクシャになるのが摂理」


位置どりはなるべく壁を背にこちらに突撃しにくいような陣形を心がける。
わたしは細かい部位狙いはこう…性格的に向かないのでタイヤ狙いは仲間にお任せ。

逃走させるわけにはいかないので、自分が積極的に攻撃範囲に留まる。
「大丈夫。わたしが留まっているから逃がさない」
急発進のときは流石に横か背後に回るよ?

ダメージを受けたら顔には出さず平気な顔で「効いてないね。この程度なんだ?」

・交流
同じ依頼に参加してるソフィアは友達。英も顔見知り。
ソフィアにだけはつい微笑みが浮かんでしまう「ソフィア、後衛はよろしくね」
きっと、彼女が傷付くことがあったらわたしは自分を攻めるだろう。

みんなで…必ず勝とうね。
■リプレイ
●無垢なる進撃
 草木も眠る午前二時。人里離れた深夜の公道を一台のバイクが驀進していた。
 ボディ全体が痛々しく傷ついたアメリカンタイプのバイクは割れたヘッドライトを煌々と照らし、背中に乗せた主人を目的地へと運んでいる。ガラクタの寄り集まったジャンクライダーは右手と一体化した金槌を地面に触れさせ、周囲に火花を飛び散らせた。それは祭りを盛り上げる花火のようだった。
 ヘッドライトに照らされて道路の中心に人の姿が浮かび上がる。エリューションとなったバイクは自らの意思で急ブレーキをかけ、騒音と共に停止した。
 ジャンクライダーが右手の金槌を横に払う。道を空けろとのジェスチャーに人影は微動だにしない。
 痺れを切らしたエリューションはヘッドライトをハイビームに切り替える。立ちはだかる障害物に対し、大きくエンジンを吹かして威嚇を行った。
「ずいぶんと威勢がいいのぅ。だが、このわらわを捕らえられるかの」
 二度目のエンジン音が鳴り響く。『有翼の暗殺者』アルカナ・ネーティア(BNE001393)は咥えていたポッキーを一かじりして飛び上がる。エリューションが急発進したのはその直後だった。
 それが合図となって他のリスベスタたちが左右に散開する。最後列の二人を追い越したところで大きくターンし、最も間近にいる『星の銀輪』風宮 悠月(BNE001450)に狙いを定めた。
 前衛と中衛が即座に走り出すが、間に合わない。悠月が回避行動を取る中、冷静に弓を引いたのは早瀬 直樹(BNE000116)だった。
 小さなコインをも正確に貫く一撃が前輪に突き刺さる。わずかにタイヤの向きが逸れたことで攻撃の軌道が変わり、ジャンクライダーの金槌は空を切った。
「よし。実践でも、やれる」
 気が付くと止まっていた呼吸を整え、悠月に目配せする。
「確かに。直撃を受けたらただでは済みませんね」
 悠月も視線を返し、膝を払って立ち上がった。
 ガードレール際で方向転換したエリューションは時間を空けずにタイヤを走らせる。『悪夢の忘れ物』ランディ・益母(BNE001403)と『インフィ二ティビート』桔梗・エルム・十文字(BNE001542)がその前に立ちはだかった。
「わたしの義手が、キミを砕く」
「合わせてやる。行くぜ!」
 左からランディ。右から桔梗。全身の力を乗せた二本のグレートソードが左右のミラーを目印にして叩き込まれた。
 耳を劈くようなゴムの音を響かせながら車体が背後に押しやられる。ジャンクライダーが金槌をアスファルトに押し付けることで勢いを殺し、ガードレールへの衝突を回避した。
「その足、止められるかどうか――いきます!」
 悠月を中心にいくつもの魔方陣が浮かび上がる。ゴルフボールほどの魔力弾が飛び出し、体勢を持ち直す前の前輪に命中した。しかしエリューションはわずかに身をよろけさせただけで、すぐにジャンクライダーの後押しを受けて走り出した。
「そら、お前の相手はこっちだ」
 悠月の攻撃に紛れて近づいていた『IT系人類ネコ科ライオン属』英 正宗(BNE000423)が側面からジャンクライダーを斬り付ける。ブロードソードに引っ張られて胴体部分から錆びた鎖が抜け出し、バイクのボディに垂れ下がった。
「思ったほど手ごたえはないな。本体はあくまでバイクのほうか」
 鎖を体内に戻したジャンクライダーはヘルメットの前面を正宗に向ける。防御の構えを取る正宗をあざ笑うようにその周囲を一回りし、背面に金槌を振り下ろした。
 咄嗟にシールドを突き出して受け止める。衝撃を殺し切ることができずにシールドが弾き飛ばされた。追撃はランディと桔梗が阻止に入ったことで免れた。
 再び吹き飛ばされたエリューションの真上にアルカナが位置取る。暗闇を利用してブラックコードを伸ばし、バイクの後輪を縛り付けた。
「ぬしら、今がチャンス――のわっ!」
 絡めたコードごと身体を引っ張られ、慌てて手を離す。細いコードではバイクを拘束するまでには至らず、タイヤの回転によって外れてしまった。
「こいつが執念の力か。だがまだだ。もっと魅せてみな。未練も後悔もなにもかもブッ飛んじまうくらいになぁ!」
 ランディが渾身の一撃をタイヤに叩き込む。直前に前輪を浮かせたエリューションは後輪を軸に一回転し、前足を高々と上げた馬のような格好で元の向きに戻った。
 その体勢からジャンクライダーの金槌が繰り出される。標的となった桔梗は義手を胸に当てて攻撃を受け止めた。
 直撃の瞬間は表情を歪めたものの、顔を上げた時には何事もなかったかのように無表情を保っていた。
「効いてないね。この程度なんだ?」
 伸びたままになっているジャンクライダーの腕に正宗がブロードソードを突き刺す。いくつかのガラクタが散らばると、エリューションはタイヤを地に着けて後退した。
「ヒャッハァー! 仏サマの偉大な力を見せてやるぜェ!」
 クロスを構えた『癒し系?で僧職系なモヒカン』大道 仁義(BNE000616)の祈りに答えるようにして桔梗を目掛けて風が吹き抜ける。髪が揺れたかと思うと、金槌による傷が瞬時に癒えた。
「仏サマの加護があるとはいえよォ、あんま無茶すんじゃねぇぜェ」
「心配には及ばない。わたしは唯一無二の壁。だれもわたしを砕けない」
「粋な奴も居たもんだねぇ。だがヤベェと思ったらすぐに下がれよ。怪我人を庇いながら戦えるほど余裕にある奴はいねぇんだからよ」
 四人が同調してエリューションに詰め寄って行く。アルカナが攻撃を引き付け、ランディと桔梗がバイクを狙う中、正宗が相手にしたのはあくまでジャンクライダーだった。
 正宗の刃が頭部に命中する。自身へのダメージには鈍感なエリューションも、背に乗せた主人の人形には敏感で、身を翻してリスベスタたちから距離を置いた。
「こいつが傷つけばバイクは庇う動きを見せる。俺の狙いはやっぱりこっちだ」
 戦線離脱を許さず四人でバイクを取り囲む。徐々に激しくなる攻防を冷静に見つめる視線があった。
「直樹で一、悠月で二、それにランディで三か。あれだけ攻撃を重ねてもほぼ無傷。さすがにタイヤというわかりやすい弱点は対応済みか」
『ウィクトーリア』老神・綾香(BNE000022)の目が敵の分析を進める。タイヤ以外の弱点を探るため、戦いの合間を縫ってアルカナに近づいた。
「確か明かりを持っていたな。あいつの車体を照らせるか」
「どうかのぅ。試してはみるが、あまり期待は出来んぞ」
 仲間たちに声をかけて懐中電灯を点ける。ヘッドライトの部分以外は輪郭しか見えないバイクの全体像があらわになった。
 照らされた時間は一瞬だったが、その中で綾香は傷ついたボディに着目した。
「もう一つ頼む。私が接近する隙をつくってくれ」
「そういうことならお安い御用じゃ。いくら素早くとも逃げに回ったわらわは捕らえられん」
 フライエンジェの羽を羽ばたかせてエリューションの背後に浮かび上がる。振り上げた金槌ごとジャンクライダーを絡め取り、コードを引っ張った。拘束するまでには至らなかったが、アルカナに注意を引き付けるには充分だった。
 隙を見せたエリューションに綾香が急接近し、目をつけた箇所をパワースタッフで殴り付ける。ボディの一部が欠けたかと思うと、車体が大きく傾いた。
 ジャンクライダーが自らの右足を犠牲にして体勢を持ち直す。確かな手ごたえを感じた綾香は小さく笑いながら直樹と悠月の居る後衛まで下がった。
「奴のボディ、見えるか」
「大体の位置は把握出来ます。そこが弱点なのですか」
「事故の時に損傷したのかもしれませんね。なるほど。あの機動力も夜の闇も弱点を隠す為のロジックか」
 目を凝らしてヘッドライトの光を追う。確実に当てられる位置で弓を引き、脆くなったボディを打ち抜いた。
 タイヤが取られたかのように重量級の車体が左右に揺れる。ジャンクライダーの操縦によって転倒は防がれたものの、他のリスベスタたちに弱点を知らしめることには成功した。
「当たりですね。このまま狙い撃ちます」
「手数よりも箇所が重要のようですね。どれだけ当てられるかはわかりませんが」
 二人が構えると同時にエリューションは爆音を響かせ、一気に後衛との距離を詰める。スピードを乗せた突撃に唯一対応出来た仁義は加速するバイクの前に身を滑り込ませた。
 モヒカン頭がバイクの直撃を受けて宙を舞う。ヒャッハァーと叫びながら血を吐く仁義は衝突した場所から二メートルほど離れた地点に落下し、アスファルトの人型のへこみをつくった。
「ク、ククッ……この長く伸ばしたモヒカンがクッションになって助かったぜェ」
 普通の人間と比べて明らかに面積の少ない頭を撫でながら仁義がぼやく。自分で怪我の治療はしたものの、戦闘に復帰することまでは望めなかった。
 仁義によって勢いを殺されたエリューションに直樹の弓と悠月の魔力弾が放たれる。後衛からの攻撃を避けることが出来ず、ボディの片面が剥がれ落ちた。
「絶好のチャンス。絶対に逃がさない」
 メタルフレーム特有の無限機関によってまで余力を残している桔梗がむき出しになった内部に斬り掛かる。寸前でジャンクライダーによるカットが入るが、弾かれた金槌がそのままボディを強打した。
 接続部が砕け、プラグコードが本体から外れる。エリューションは悲鳴にも似たクラクションを鳴らしながらUターンし、その場から逃れた。
 不規則な振動を起こしたバイクはリスベスタたちと真正面から向き合う。ジャンクライダーが金槌でアスファルトを打つのに合わせ、アクセルを二度回した。ランディがそれに答えるように対峙する。
「最後の執念か――来い!」
 エリューションが失踪する。ランディが武器を振り上げる。二つの点が一つに交わり、反発するように離れ離れになった。
 ガードレールまで吹き飛ばされたランディは座り込んだまま自分の胸を押さえる。もはや身体を動かすこともできない。生きているのが不思議なほどの痛みが全身を駆け巡っていた。
「つぅ……効いたぜテメェ。だがテメェも効いたはずだ」
 視線の向こうではアメリカンバイクが横転していた。エリューションが力を失ったことで身体の維持が難しくなったジャンクライダーは、自らの身を削られながらも必死にバイクを起こそうと奮闘していた。
「悪いが、それはさせられんのぅ」
 舞い降りたアルカナが両輪にコードを通してバイクを縛り付ける。
 無防備な身体に振り上げられた金槌を、正宗が腕の付け根から切り落とした。
「お前の無念は俺たちが晴らす。だから、これで眠ってくれ!」
 ブロードソードを両手で握り締め、ジャンクライダーの頭部から叩き付ける。重なり合ったガラクタが四散し、人としての姿を失った。
 同時にバイクのエンジン音が止まる。ヘッドライトが消えたことが戦いの終焉を物語っていた。
「ヒャッ、ハァー。迷わず成仏するんだぜェ。仏説摩訶般若波羅蜜多心経、行くぜェ」
 仰向けに倒れながら唱えられるお経を聞きながら、リスベスタたちはそれぞれにバイクとライダーの冥福を祈った。

■シナリオの結果
結果:成功
重傷:なし
死亡:なし
■あとがき
なし

■プレイング評価
老神・綾香(BNE000022)
今回のエリューションが事故によって損傷したバイクであるという点を上手く突いたプレイングでした。『アデプトアクション』による弱点看破と『ピンポイント』による狙い撃ちでエリューションの撃破に大きく貢献しています。全体的に隙のないプレイングに仕上がっている思います。