●ある女子高生の与太話 「ねぇ、知ってる?」 それはほんの与太話。どの町にもある嘘っぱちの一種。 「下水道があるじゃない? どこにでもあるやつ。そこには色んな生き物が棲んでるんだけど……」 そう、都市の地下を走る下水道。人々の生活を影から支える、そこには独自の生態系が完成しており、様々な生き物が棲んでいる。ムカデやゴキブリといった害虫。ネズミやコウモリといった小動物。 「――その中にね、ワニが居るらしいのよ。都会の下水道に、ワニ。」 当然こういった噂も現れる。そして、これらは事実なことも多々あるのだ。 ペットとして飼われ、手に負えなくなって捨てられる動物達。そういった生き物には野生に戻ることに成功し、都市と共存する生き物もいる。 それらの生き物の中にワニは、それなりの頻度で含まれている。だが…… 「それでね、凄いのがいるらしいのよ。白いワニ、そんなのが下水にいるらしいのね。この街の」 ――下水に棲む白いワニ。この手の噂が立つのは、最近始まった話ではない。それこそ下水道が完備され始めてから、ずっと付き纏う噂だ。 これに限らず街に根付いた噂話は多数あり、それらは総じて『都市伝説』と言われる括りで、オカルトマニアの嗜好を満たしてきた。 「なんでもそのワニは、ずっと暗い下水道にいるから肌が真っ白になってて。光を見ることがないから、目が退化しちゃって、無いんだって」 この噂、白いワニに纏わる話はどの地域でも大体同じ内容である。せいぜいそれに、人を喰うとか喰わないとかが付与されるぐらいだろう。 「……まあ、眉唾くさいよねー。自分で言っておいてなんだけどさ。さすがにないでしょ、こんなの」 そう、所詮は噂なのだ。ただの都市伝説。こんなものがあったら面白いのでは。こんなことがあれば怖いのでは。そういったイメージで生まれた妄想なのだ。 妄想はささやかな想像力を満たし、退屈を紛らわす。それでおしまい、なにもなし。 ――それが、神秘の存在しない世界の場合ならば……だが。 ●アーティストからの与太話 これもまた与太話。いや、正しくは任務の通達であり、業務なのだが。 「ああ、よく来たな。お前達が今回の任務を受けてくれるんだろう?」 アークのブリーフィングルーム。その一角にあるブースにて足を組み、リベリスタ達を待っていた男がいる。 レザーのジャケットに、全身に多数つけられたシルバーアクセサリ。整った顔に不敵な笑みを浮かべた彼こそが『駆ける黒猫』将門伸暁だ。インディーズロックバンド『ブラックキャット』のボーカルである彼は、一部の若者達に多大な影響を与え続けているカリスマである。 「今回頼みたいのはこいつなんだよね。これ、こいつ。ワクワクするだろ?」 伸暁はジーンズのポケットに無造作にねじ込まれていた書類束で、テーブルをぽんぽんと叩いている。おそらくそれが、今回の依頼の資料なのだろう。 「こいつは懐かしい話だぜ。誰でも聞いたことがある面白都市伝説ってやつだ。幸い万華鏡の奴が早めに予知してくれたおかげで、事件にはなってないな。」 くしゃくしゃになった資料を平らに伸ばしながら、伸暁は説明を続ける。 「お前らも一度は聞いたことあるんじゃないか? 下水道には白いワニが棲む……体長は四メートルを越え、目は退化しており、進化した嗅覚と聴覚で獲物を襲う、ってね。 野生から放り出されながらも、都会のアンダーグラウンドで一匹生き残り、進化し、牙を研いで生き続ける。動物ながらなかなかロックじゃねえの」 冗談なのかは知らないが、やたらとワニを持ち上げている。もしかしたら本気で地下に生き続けたワニにリスペクトしているのかもしれないが。 「まあ、エリューションになっちまったら見逃すわけにはいかないよな。E・ビーストだが、噂の影響を受けたのか、それとも噂通りの進化が正しい進化だったのかもしれないけどな。 まあ、お前らも俺の呼び出しに応じたロックの魂を抱えた奴らだ。相手がいくら凄い奴でも、最高のセッションを仕上げてくれるだろうよ。」 なんだかよくわからない表現をしているが、伸暁なりの信頼の表現なのだろう。 「最も、下水ってやつは暗くて狭い、さらに水が流れて足元が悪いときたもんだ。少々ステージとしては華やかさが足りないし不便かもしれないが……弘法筆を選ばず、とか言うだろ?」 一通り伝え終えたのか、伸暁は席を立ち、ブースから離れていく。が、最後に振り向くことなく、一言付け加え去って行った。 「油断すると、ガブリ! とやられるかもな。そうならないようにソツのない、クールなやつを頼むぜ」 ![]() |
■シナリオの詳細■ | ||||||||||||||||||
■ストーリーテラー:都 | ||||||||||||||||||
■難易度:NORMAL | ■シナリオタイプ:通常 | ■シナリオ納品日:2011年2月8日 | ||||||||||||||||
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■参加人数8人 | ||||||||||||||||||
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■プレイング | ||||||||||||||||||
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■リプレイ | ||||||||||||||||||
●いざ水路へ 夜の街。都市は闇に包まれ、僅かな生活の光が当たりを照らす、そのような時間。そのわずかな光も届かぬ裏路地、ただでさえ人が寄らぬ場所には現在、『進入禁止』と書かれた表示板によって封鎖されていた。その奥には、人目を避けるようにして何かを囲む一団が集まっている。 「うん、大丈夫……です」 その一団が囲んでいるものはアスファルトの上、蓋を外されぽっかり口を開けたマンホール。その中から星川・天乃(BNE000016)の声が響く。 先に降りると主張する暗視の利くメンバーを制し、執拗に先に降りたがった天乃の報告を受けて、次々とリベリスタ達は地下へと降りていった。 これから向かう場所、都市の地下にはかなり大規模な下水網が展開されている。下水とは人が文明を謳歌するために生まれる生活排水を流す、都市のライフライン。人類の廃物の吹き溜まり。つまり。 「うわっ、きつい! ちょっとこれは洒落になってないな!」 そう、下水につきもの。そこには圧倒的異臭が待ち構えている。特に人並み外れた嗅覚を持つ『レムレース』アリス・ナハト・メルクール(BNE001595)のような者にとっては強い臭いは厄介などというものではなく、悶絶し苦しむことになるのも仕方ないことであった。 「うへぇ、ボクが鼻の利く動物のビーストハーフじゃなくてよかったよ……」 『未来への希望』アリア・M・ローダ(BNE001213)が他人事のように安堵の声を漏らすのもまた、仕方のないことと言えるだろう。 「しかしあれだね、明かりが懐中電灯ぐらいしか頼れないってのも不安な物だな。照明足りてるかい?」 「いや……案外足りてるみたいだぜ?」 照明の量を心配する焦燥院 フツ(BNE001054)に対し、『むしろぴよこが本体?』アウラール・オーバル(BNE001406)が返答を返す。――彼の視線が照明を反射するフツの見事に剃り上げられた禿頭に向いているのは、ご愛嬌というかやむを得ないというべきか。ともあれ想定以上の明かりは確保されていた。 「足りなくてもボクにとっては何の問題もないけどね。さて、ここからどうするのかな?」 一人、暗視が利く八文字・スケキヨ(BNE001515)が、仮面の奥の瞳で遠くを見回しつつ尋ねると、『負けフラグの具現者』ツヴァイフロント・V・シュリーフェン(BNE000883)が待ってました、とばかりに満面の笑みを浮かべ、答えた。 「任せておきたまえ。準備は万端だ」 ツヴァイは持ち込んだ多数の荷物の梱包を解くと手際よく組み立てていく。間もなくそこには縄で繋ぎ合わされた二艘の小型艇……カヤックが組みあがっていた。 「おお、準備がいいや。すごいね!」 関心したように『フラクタルサイクル』紅桐 杏子(BNE000840)が声を上げる。ツヴァイがこの時の為に用意した物資の量はかなりのものであり、最悪に備えて多数の機材を持ち込み運用しようとしていた。 最も、持ち込むのが困難で地上に置いてきたものもあるのだが。地上では今、マンホールの側で何故か大型の柱時計が淡々と時を刻んでいるはずだ。それはともかく、杏子の言葉にツヴァイは満足げに宣言した。 「我らの仕事が偉大にして幸いなる未来を創り出すように。――ふふ、ピーターパンに登場する船長にあやかり『フック作戦』とでも名付けようか?」 ●誘引作戦 ぼちゃん。ぼちゃん。 水路に何かを投げ込む音が響く。ツヴァイの鋭敏な聴覚は網目のように広がる下水道の各所から聞こえるその音を、的確に捉えていた。 「皆は確実に作業を進めているようだな」 現在、ターゲットをおびき寄せるための撒き餌を手分けして撒いている。用意した餌をばら撒いて誘導し、戦いやすい環境に引き込んでからの勝負に持ち込む。ツヴァイはその優れた耳を使い状況を把握するため、ポイントに残っているのだ。 「問題なく進んでるみたいじゃないか。楽しみだね、エリューションとはいえ有名な都市伝説に出会えるのだから」 暢気なことを共に残っているアリスが言う。汚れた水とはいえ、サメの因子を持つ彼女は少なからずテンションが上がっているようだ。これで臭いがもう少しマシならば、もっと元気だったと思うが。 彼女達が残っている場所は下水道の貯水エリア。広い空間があり、やや深い水場もあるが比較的自由に動ける場所だ。そこにカヤックを浮かべ足場とし、決戦を挑もうと拠点にしているのである。 「今のところはな。果たして餌に食いついてくれるか……ん?」 耳をそばだてつつ相槌を打っていたツヴァイが、ふいに真剣な面持ちになる。一拍の後、用意してあった通信機を掴み、声を張り上げた。 「全員に通達! ターゲットは餌に食いついた、至急集合せよ!」 「おや、かかったみたいだね?」 捜索にあたる皆に連絡を行った後、二人は臨戦態勢に入る。周囲に神経を張り巡らせていると、じきに遠くから何かを挑発する明るい声が響いてきた。 「ほらほら、こっちだよ! 追いついてごらんよ!」 同時に、弾丸のようなスピードでやや小柄な人影……アリアが水路の側道を走りぬけ、飛び込んでくる。 ――次の瞬間、後を追うように水路から爆発するような勢いで水飛沫が立ち上った! 「やあ、来たようだね! それでは始めようか!」 アリスが叫び、水飛沫の中を睨む。そこには巨大な影が存在していた。閉じられた空間にその巨体があるだけで圧迫感を持ち、照明を反射しぬらりと光る表皮は不気味に白い。目はほとんど塞がっており、しきりに鼻を動かし獲物を探す。そこにいるのは間違いなく、都市伝説に眉唾として語られる存在……下水の白い巨大ワニだった。 「はい合流! さぁ楽しい戦いを始めるよ。最も、キミにとっては最後になるかもだけど!」 誘導する役目を終えたアリアはブレーキを掛け、即座にワニ目掛け猛烈なダッシュを掛けた。その勢いを保持したまま、手にした剣で貫こうとする。だが。 「うわぁ、結構硬いねこいつ!」 突き立てた剣は滑る表皮を裂くが、その傷は浅く決定的な一撃にはほど遠かった。浅いとはいえ傷をつけたアリアに頭を向け、怒りを露にするワニに対しアリスからの式が間髪入れずに飛ぶ。 「ほら、こっちだよ!」 意識を引きつけ貯水エリアの中央に誘い込み、包囲しつつ戦うための誘導の一撃。その挑発に対し、ワニは狙い通りかかった。 ――ただし、行動は想像より遥かに迅速であった。一瞬ぐっと身を縮み込ませ、全身のバネを使い跳躍。狭い空間を目一杯立体的に使い、白い砲弾と化して船に向かい飛びついてくる! 「うわっ、やばい!」 予想以上の勢いにアリスが叫び、水上の二人は咄嗟に現在乗っているカヤックから飛び退く。直後、鋭く細かい牙が生え揃った顎が開き、先ほどまで足場にしていたカヤックの一艘を噛み砕いた。そのまま水柱と共に船と巨獣は水中へと沈み込んでいく。 先ほどまでの騒ぎが嘘のような静寂が場を包んだ。残ったもう一艘のカヤックを足場にしたツヴァイが耳を澄ませ、周囲の様子を伺う。 「……来るぞ!」 鋭い警告。激しく飛沫を上げ、水中より現れた巨大な顎が船ごと二人を呑み込もうと襲いかかり――目前で止まる。 「動かない、で」 二人を捉えようとした口は、黒い鋼線に上顎を絡め取られ、吊し上げられていた。その線の先には、いつの間にやら戦場に辿り着いた天乃が重力を無視したかのように逆さに天井に立ち、その顎を拘束し、動きを止めていた。 「おいおい、どうせ来るなら俺のほうにくればいいのによ!」 「さすがに都合よく狙ってはくれないみたいだね?」 遠くからアウラールやスケキヨの声が近づいてくる。他にも多数の足跡が聞こえるあたり、全員集合は目前のようだ。 さらに近づく外敵の気配にワニは警戒を増したのか、力任せに鋼線を振り解きにかかる。そのまま圧倒的な剛力によって水に引き込まれないように、天乃は咄嗟に線を解いた。拘束を逃れたワニは再び水中に潜り込む。 思いの他長引きそうな状況に、ツヴァイは一つ気づいた、自分の些細な失敗を言葉にした。 「参ったね。どうやらワニ相手にフック船長は縁起が悪かったみたいだ」 ●白の終焉 リベリスタ達は無事合流し、ワニに対して万全の体制で挑むことが可能になった。しかし、やはりというべきか、長期戦は否めない状況に持ち込まれていた。 不利な水場といえど対策は組んである。されども足場は悪く、逆にワニは自らのテリトリーである下水の地形を駆使し、野生の本能か予想以上にクレバーな攻めを行ってくるのである。 「おいおい、厄介な仕掛けをしてくれるねえ」 フツがぼやきながらも、守りの結界を使い、ぎりぎりの所で致命の一撃を防いでいく。 「ふーれ!ふーれ!杏子さんの応援だよ!」 杏子の癒しの術が皆の傷を塞ぎ、和らげる。だがその間にも鋭い牙が肉を食いちぎろうと襲いかかる。壁に追い込むように尻尾を振るい、叩きつける。それらワニの攻めを時に受け止め、術で逸らし、なんとか凌いでいく。 「ほら、どんどん行くよ!」 「やらせない」 一方、アリスの呪縛と天乃の拘束がワニの自由を奪い、攻防一体の状況を作り出していく。その隙を他の者が突いて、攻め手を作り上げていく。 「さあこっちだ! かかってこい!」 アウラールが相手の注意を引きつけるように攻撃を叩き込み、積極的に壁になる。それにより相手の認識からフリーになった皆が確実に攻撃を当てていき、ワニの体力を削り、奪う。 「身体でかいもん、いい的だよ?」 「まだ倒れないのか」 「だったら倒れるまでやるまでだね!」 スケキヨが合間合間の動きが止まった所に、遠距離から振り回される尾を狙い攻撃を加える。ツヴァイとアリアが速度を生かした攻めで、肉を削ぎ取る。長引く戦いに白いワニも、リベリスタ達もお互いに消耗を増していた。 ――両者共に限界が近づいた頃。苛立ちが限界に達したのか、ワニが大きく動きを見せた。まとわりつくリベリスタ達に、大きく尻尾を振るう。 「おっと危ないねえ!」 咄嗟にフツが張る守りの結界により、前衛の致命的な負傷は避けられた。最もワニも打撃が狙いではなかった。それによって作り出した一瞬の間を利用し、水中へ飛び込み、潜行する。 リベリスタ達もその動きに対応し、通路をカバーする配置を取る。退路を封鎖するため、ワニを逃がさないために。 水路に静寂が再び訪れる。わずかなようで長い時間―― 「うーん、どこにいるのかな……!?」 耐えきれず呟く杏子の言葉が終わるか終わらないかといったその時、猛烈な水柱があがる。少女の声を聞き取り、目標と定め。飛沫を目晦ましとし、ワニが野生の暴威を体現するかのように、獰猛に食らい付く! 「まずっ――!」 目前まで牙が迫り、少女があわや食い千切られる……と思った刹那。両者の間に一人の影が割り込み、立ち塞がった。だがその人物――アウラールは突進と止めること叶わず、暴力の塊のような巨大な顎に捕らわれる。 「ぐああっ!」 鋭い牙の群れに貫かれ、凄まじい量の血液を撒き散らし、無残な肉塊となる―― 「……なんてな」 ――などということはなく。アウラールはその両腕でがっちりと上顎を掴み、全身を持ってその口を押さえ込みワニの突進を止めていた。彼は自身持つ特別な力、物体の熱を見ることが出来るその目で水中から襲い来るワニの動きを確実に捕捉しており、襲いかかってくる瞬間に動きを止めることを狙っていたのだ。 そう、捕らえられたのは彼ではなく。知恵比べにおいて数段上を行かれた、白い下水の王だった。 「へえ、アンタなかなか思い切ったことやるじゃないか」 アウラールの身体を張った所業に、フツが関心したような声を上げる。 「このまま一気に……かたを、つける」 もはやその隙を逃すことはリベリスタ達にはなく。即座に天乃が押さえ込まれた上顎に鋼線を巻き付け……ワニの背に飛び乗り、その勢いを持って全体重と速度を乗せ上顎を切り飛ばす! これにより趨勢は完全に決まった。最大の武器である顎を失い断末魔を上げるワニは、リベリスタ達に決定的な攻撃を加えることができず自由を奪われ、血を失い―― 「これでお終いだ、じゃあな!」 アウラールの渾身の一撃が上顎を失ったワニの腔内に叩き込まれ――下水に適応し生きてきた白い主は下水の底へと沈み、消えていった。 ●駆除終わって がこん。 マンホールの蓋を持ち上げ、地下より一団が現れる。封鎖が効いていたのか、その路地に人気は相変わらず存在しなかった。 「こうして白いワニの都市伝説は守られたのであった。めでたしめでたし、と。」 一仕事終えたとばかりに杏子が大きく伸びをした。 「とはいえこいつの命は失われたわけだ。成仏してくれ、南無阿弥陀仏、と」 フツが聖職の者としての流儀なのか、形ばかりの念仏を唱え、アリアは疲労を隠すことなく言葉を吐く。 「早い所帰ろう? 長々と戦いすぎて疲れたよ」 「正直臭いがきつかったからね、早く帰ってリフレッシュしたいもんだね」 アリスが肩をすくめつつ異論はないとばかりに答える。一方スケキヨは何かを探すようにきょろきょろとしていた。その様子にツヴァイが怪訝そうに声をかける。 「どうした? 何か気になることでもあるのか?」 その言葉にスケキヨが仮面の奥にある目を向け――いまいち目線は定かではないが――言った。 「いや、天乃くんの姿が見えなくてさ。どこに行ったのかと思って?」 彼の言うとおり、天乃の姿はすでにその場にはなかった。下水の中か、外に出てからか。誰に告げることなく、彼女はすでに消えていた。 「まあ、先に帰ったんだろう。俺達も早いところ帰るとしようぜ」 残してあった荷物を纏め、撤収の用意をするアウラールの言葉に対し、誰も異論があるわけもなく。リベリスタ達はその場を後にした。 残されるのは裏通り。偽りの封鎖は解かれ、いつも通りの通り道。かくしてこの町の平和は人知れず守られ、白いワニの都市伝説はいつも通りに語られていく。とてもとても有名な、それ故にありふれた与田話として。 ――だがこれが最後のワニとは思えない。それほど白いワニとはありふれた都市伝説であり。いつか第二第三のワニが現れるかもしれないのだ。 もっともそれが人類に対する自然の警鐘かどうか、等は関係のないことなのだが。 |
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■シナリオの結果 | ||||||||||||||||||
結果:成功 重傷:なし 死亡:なし |
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■あとがき | ||||||||||||||||||
参加した皆様はお疲れ様です。採用されなかった方には申し訳ありません。 今回提出された総プレイング数は二十二件。結構な数がみっちり尻尾まであんこの詰まったプレイングでした。その大体が素晴らしいプレイングだったため、採用基準は特に際立ったもの及び、職やスキルのバランスが取れたものとさせて頂きました。 特に、オンリーワンで役に立つスキルを持っている方はプレイング外の採用基準としては優先させて頂きました。素敵ですよね、非戦スキル。 今回残念なことになってしまった皆様もプレイング的に劣っているといった方はあまりいませんでしたので、些細なプレイング上のズレや能力バランスの関係といったものもあると思います。ちょっと運が悪かった、と思っていただければ。 本稼動の際には参加形式がまた違った感じになるとは思いますが、私の文は大体こんな感じです。まったく参考になる文章もない状態で参加して頂いた皆様には感謝の極みです。お疲れさまでした。 |
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■プレイング評価 | ||||||||||||||||||
今回私が評価させて頂くのはこの方のプレイングでした。可能な限り調達できる物資を投入して対応できることを増やすプレイングをされており、その姿勢は好感が持てます。本来は購買で調達したアイテムがあることが望ましいのですが、今回はβということで調達が可能であるものならば出来るようになっていたので、手に入りそうな範囲のものであれば調達して構いません。それ故に有効なプレイングと判断させて頂きました。 また、他にない特別な非戦等も持っておられたため、必然的に活躍や演出の機会が増えることとなりました。他の方でも独特なスキルを持たれている方はそれを汲み取らせて頂いております。 作戦に関する台詞に関しても自分の特徴をはっきりと押し出しておられ、感心致しました。逆に自分が読み取れなかった場合恥ずかしい思いしたなぁ、と緊張しましたが。 以上を持って評価とさせて頂きます。 |