●アカイモノガ、ノゾマシイ。 カツカツカツカツ。 アスファルトに響いていた硬質な足音。 近所に小学校がある住宅街にあるため、治安はいい。ほんの20メートル。さして長い訳ではない。 きちんと白熱灯もついている。落書きがある訳でもない。 コッコッコッコッコッ! それでも時間も遅いし気味が悪いので、彼女は小走りで通り過ぎる。半分くらいまで来た。後半分。と思ったとき。凍結した路面に脚を取られ、思い切りすべって転んだ。 「……」 痛さの余り、声も出ない。鼻の頭を打った。生ぬるいものが滴るのを感じる。反射的についた手とひざはべろりとすりむけている。病院に行かなくてはならないだろうか。もう大人なのに。情けなくて、涙がこみ上げてくる。 「キレイナ、アカイクツ!」 場違いに明るい声がして、足首を何かに掴まれた。ひちゃっとした感触。総毛だった。 「ホソイヒール、キレイナオト!」 本能的に危険を感じ、体が勝手に起き上がった。走ろうとしたが、すごい勢いで両足を絡めとられた。訳もわからないうちに、再び地面に叩きつけられる。 放り出されたバッグから、財布や携帯電話が転げ出た。 膝が痛い。ぐちゃっといやな音がした。今度こそストッキングが破れてしまった。今日は、お気に入りのスカートをはいているのに。 「ホシイナ、アカイクツ、ホシイナ!」 楽しそうな少女の声。背中にのしかかるようにして何かがしなだれかかってくる。 甘えているようだ。子供が母親におねだりをしているような声。 「あ、あげる! くつなら、あげるから…」 逃れようと、手の力だけで前に進もうとする。 目の前が潤んでいく。はっはっと切迫する自分の息遣いがトンネルの中に響く。 「ウレシイナ。モラウネ、アカイクツ、ウレシイナ!」 少女の声は弾んでいる。足首と靴が撫で回される感触が気持ち悪い。 必死で前に進もうとしているのに、もうコートの袖は砂まみれなのに、体はじりとも動かないのだ。 だからもう放してという叫びに、少女の声が被さる。 「アカイクツガニアウ、キレイナアシモホシイナ!」 黒い影から生える銀色の切っ先が視界の隅に入って、それからブンと音がして、ごっと硬いものに何かが当たる音がして。 ●硬い音が望ましい。 「放置すれば、この後、彼女は死ぬ。両膝からの失血死で。そんなのだめだよ」 数日後、現実になるかもしれない光景。そうなる前に先回りしてほしい。と、フォーチュナ・真白イヴは言う。 「分類は、エリューション・フォース。フェイズ1。まだ弱い存在だけど、確実にお願いするね」 イヴは、淡々と説明を始めた。 形状は、不定形な黒い影。 「戦闘時には、二本の腕の先に鉈状の刃物が生えて振り回すよ。一度に近くにいる一人を攻撃するのが精一杯だね。でも油断しないように。一撃で脚を切り飛ばすくらいだから、リベリスタでもただじゃすまない」 イヴは、珍しく、その後少し口ごもった。 「エリューションは、行動原理が欲望に直結するもの。このエリューションが好きなのは『きれいな脚がはいた、赤い靴』だよ。優先順位は靴が上。靴と脚なら、迷わず靴を追いかけるよ」 よくわかんないけど……。と、イヴは、小さく付け加え、ほんの少しだけ眉をしかめる。 「それもかかとが高くて、音がする……要するに、ハイヒール。現場のトンネルに赤いハイヒールを履いて入ると、真ん中くらいで姿を現す。欲張りみたいだから、数は多い方が喜ぶよ。はいてる人から最優先で狙われるだろうけど」 と、努めて事務的に説明した。 「それから。ハイヒールをはいたまま戦うのは、普段履き慣れてる人も今回だけはやめた方がいいよ。足元凍ってるから、踏ん張りが利かないの」 凍った所をハイヒールで転ぶと、予想外の怪我するよ。と、イヴは遠い目をした。 「トンネルだから、天井は三メートルくらい。幅はけっこうある。三人は並んで戦闘できそうだね。飛んでも、エリューションの攻撃は届くよ」 イヴは、天井を指差して、飛ぶ人は頭ぶつけないように気をつけて。と、付け加えた。 「これ、よかったら」 イヴは、よいしょよいしょと少し苦労しながら、さまざまなサイズの赤いハイヒールと履き替えのための白いバレエシューズつまるところ小学生の上履きを並べた。 「足元に気をつけてね」 ![]() |
■シナリオの詳細■ | ||||||||||||||||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||||||||||||||||
■難易度:NORMAL | ■シナリオタイプ:通常 | ■シナリオ納品日:2011年2月8日 | ||||||||||||||||
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■参加人数8人 | ||||||||||||||||||
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■プレイング | ||||||||||||||||||
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■リプレイ | ||||||||||||||||||
●かくもささやかな望み 赤い靴。かかとの高い赤い靴。 こつこつこつこつと綺麗な音を響かせて。 思い描くアカイクツは、どこまでも気高く美しい。 だから、とても素敵な赤い靴に似合う脚が欲しいわ。 すらりとした足の甲、小さなくるぶし、ほっそりとしたふくらはぎ。ひざこぞうは出っ張っていて嫌いなの。 だから、膝から下がいい。そこから上は要らないわ。膝から下だけで、満足なの。 そのかわり、いっぱい並べたい。だって膝から下だけですもの。 いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい……。 ●凍てつく空気 季節のせいか、トンネルの中からもれる異様な気配のせいか。ちりちりと冷気が肌の上にとどまって、去ろうとはしない。 路上は真っ黒に凍りつき、移動にも気を使わねばならぬ状態だ。 囮役として赤い靴を履いている面々は涼しい顔だが、見ている方はハラハラする。 『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)は、沈思黙考している。 つややかな黒銀の脚部のハイヒール部分を、偽装の為に赤くペイントされていて、遠目に見る限り、黒タイツに赤いハイヒールを履いている様に見えなくもない。 (私もかつて、理不尽に両足を奪われた。代わりにこの黒銀の足を得たけど……この襲われる人はそうではない。到底見過ごせないわ) 『ワンコインの女帝』門真 螢衣(BNE001036)は、マニアックなエリューションに内心眉をひそめていた。 (赤はあまり履かないけどいつも愛用しているピンヒール。わたしが強く自己主張するための靴。それを狙うエリューションはわたしの敵) 囮役のお嬢さん方は、至極シリアス。 「ハイヒールは……二人、いや三人か」 援護すべき対象を確認する『練達の射手』藤堂・烈火(BNE000385)は、『闇の支配』ダッシュウッド・J・ラコルデール(BNE000999)と目が合った。 ウルフカットにあごひげ、ピアスにタトゥー、派手スーツなヤクザの足元だけが、ハイヒールである。シュールな眺めだ。 「エリューションが引っかかったら、すぐ脱ぐぜ。俺はカッコいいお兄さんなんでね、こういうのはネタ系の奴にやらせとけ」 前衛に布陣するなら、囮の後ろからのこのこ行っていたのでは間に合わない。 常用の革靴は、すぐ履けるように準備済みだ。 「ああ、よろしく頼む……。おかげで、俺は射撃に集中できる。前で戦う者の援護し、戦いやすいようにしてやるのが役目だ」 烈火はそう言って、挨拶をした。 挑発的な赤い編み上げブーツの『闇撫手』苑 そわか(BNE001386)は、小さく口元を笑ませていた。 (ふふ、このようなフェティシズム、此方は嫌いではないのじゃ。 この腕を失ったときの昂り、想い、感動、興奮、また味わえるかもと思うと胸の鼓動が止まらぬ……!) 現場のトンネルはさして長くない。向こう側の出口が見える程度だ。囮とは反対側に、他のメンバーに挨拶を済ませた『埋ル人』化野・風音(BNE000387)が待機していた。 いつもの仕事着の上着を脱ぐと、ブーツも含めて黒一色。 このほうが忍びやすいしなァ。と、一人ごちる。 (赤い靴、なァ。そないなお歌があったような気ぃもするけども。こないなのんがおったら、女の子ぉが綺麗な格好で歩けへんやないの。張り切っていかさしてもらおかァ) 灰色の頭に戦闘服姿の10歳くらいの子供、『身体は子供頭脳h』御厨・九兵衛(BNE001153)が、凍りついた地面に触れている。 「ところで、地面の凍結は業炎撃で融けんかの?」 囮のお姉ちゃんたちがいっぱい居るという超直感の囁きに従った結果、すばらしい美脚を拝めた亀の甲よりなんとやらな、80歳のお爺ちゃんである。 業炎拳を地面に向けて叩きつける。拳の分だけ氷は溶けたが、それだけだった。 幅はせいぜい50センチの円。溶けた水で足元が悪いには変わりない。 足場全体をフォローするなら、完全に戦闘から離脱して、溶氷要員とならなくてはなるまい。 「融けんかの」 さっさと見切りをつけ、トンネルに飛び込もうと入り口で構えた。 「お姉ちゃん…… ボクこわいよぉ……」 聞こえよがしの泣き言を口にしながら。 (うわあ脚フェチなエリューションとかドン引き! 女の子でもドン引き! 女の敵! というか世界の敵! とりあえず囮の人が足が?ぎ取られないように頑張るー) 『断罪の神翼』東雲・聖(BNE000826)は、白銀の翼を震わせ決意を固めていた。 スタイル抜群、何より美脚。ハイヒールを履けばいい囮になりそうなのに。 皆が一瞬そう思ったが、普通の靴を履いていても今にも転びそうな様子に、確かに囮は無理そうと一目で皆が納得した。 「さあさ、鬼さんこちら、靴の鳴る方へ。遊戯の開始じゃ」 そわかの声に、ミュゼーヌ、螢衣、ダッシュウッドはトンネルの中に踏み込んでいった。高らかにヒールの音を響かせて。 ●その靴、ちょうだい。 発現すると予報されたのはトンネルの真ん中辺り。 九兵衛、聖、烈火は、いつでも攻撃できるように身構えている。 「アカイ、クツ!キレイナ、アシ!」 華やいだ声。地面から湧き上がるようにして現れた、ぐちゃぐちゃした黒い塊から聞こえてくるとは、にわかに信じ難い。 「ステキステキステキ!」 ズルンっと音を立てて、二本の「腕」が生える。 指もひじも肩もない、先端がギラギラと鈍く光る鉈状の突き出た部分をそう呼んでよければ。 「チョウダイチョウダイ!」 プレゼントを前にした聞き分けのない子供のように、あるいは目の前に生肉をぶら下げられた肉食獣のように、黒い影は腕を振り上げる。 ハイヒールは、二人。 一人は男。ならば……。 狙いは、螢衣の膝だ。 「危ないよ! 螢衣、狙われてる!」 聖は声をかけ、牽制の1$シュートを、エリューションのとにかく一番大きな部位に放つ。 ぱっと、その部分が吹き飛び、穴がふさがる様子はない。 不定形の影は、ぶるぶると身を波打たせ、それでも鉈の切っ先が肉を捉えた。 ぱっと、コンクリートの壁に血しぶきが走る。 「傷付けさせはせぬ! 傷付けさせはせぬぞぉ~!」 身を躍らせて、切っ先の前に飛び出し螢衣をかばった九兵衛は、吼えた。 「可愛いお姉ちゃんのおみ足を傷付けて挙句命を奪うとは何事じゃ~っ! ゆるせ~ん! ゆるせんぞぉ~!!!」 戦闘服の背中の辺りが断ち切れている。 幸い、入りが浅く、行動を阻害するには遠い。 「イノチナンカ、イラナイノ! アカイクツトヒザカラシタダケデイイノヨ!」 キャッキャッとはしゃいだ声。 「時間を稼ぐ、下がって立て直せ!」 烈火も間に入って、螢衣の盾になる。 「おん・きりきり・ばさら・ばさり・ぶりつ・まんだまんだ・うんぱった……」 螢衣は、身を翻して後ろに下がると、真言を唱え、いくつも印が結んだ。 トンネル内の空気が明らかに変わる。守護結界が張られたことをリベリスタ全員が感じた。 急いで靴を履き替え、螢衣は五芒星を主とした大型呪符を取り出し、戦闘の態勢を整えた。 「麻痺狙いやねェ」 反対側から飛び込んできた風音が時間稼ぎに鉈を封じようと、気の糸を繰り出す。 続いて、そわか、愛用の革靴に履き替えたダッシュウッドも加わり、三種の糸が影に絡みついた。 ぎりぎりぎりと絞り上げられる影に、後は袋叩きで済みそうだと、一瞬空気が緩んだとき、ぶんと大鉈が振り回された。 「ジャマシナイデッ!」 引き絞られた糸で傷ついた影は千切れて、ざきざきにほころびている。 子供がむずがるように振り回される「腕」が、ぶちぶちと糸を引きちぎる。 その腕を狙って、ミュゼーヌの1$シュートが叩き込まれた。 カチーンと硬い音がして、鉈が欠けた。 「ユルサナイ! ソノアカイクツヲチョウダイ!」 ぶうんと、腕が振り回される。ミュゼーヌに向かって這いよる影。 トレードマークのナポレオンコートの裾を翻して、その攻撃を回避する。 「悪いわね、もうハイヒールまで含めて私の『足』なの。欲しかったら……力づくで奪ってみせなさい!」 訓練によって類まれなバランス感覚を保持しているミュゼーヌは、踵の隙間を埋める増加パーツも追加した。足回りの不安はない。 「アカイクツ」を履いているものがいなくなってしまったエリューションは憤怒の声を上げる。 「ドウシテ、ミンナ、アカイクツヲハクノヲヤメチャウノ!? トッテモトッテモステキナノニ!」 ●どこかに堕ちていっちゃった。 リベリスタたちは、速やかに体制を整えた。 つたない動きで振り回される「腕」は威力だけは桁違いで、当たりぞこないでも傷が入る。 螢衣が維持し続けている守護結界の効果はあるものの、近接しているものはみな無傷ではなく、体のあちこちに裂傷を受けている。 回復する手段がない状況で、戦闘を長引かせるわけにはいかなかった。 頭も目も胴も足もない、ぐにゃぐにゃとした黒い塊。 聖は、天井すれすれまで高度を上げ、正確に攻撃を当て、エリューションを牽制し続ける。 ミュゼーヌは、腕を精密に射撃することで攻撃手段の削ぎ落としにかかる。 前衛の消耗にも気を配り、時には自分が前に出て態勢を立て直した。 烈火は、他の二人に連携し、弾幕を途切れさせることはなく、エリューションに息つく暇を与えない。 「目標確認……外すと思うなッ!」 三様の1$シュートが、前衛の背中を押していた。 「かわいそうじゃがの、天誅じゃ~!」 小さな拳に赤い炎をまとわせて、九兵衛は不定形の影に拳を叩き込む。 大きく開いた穴の縁から、めらめらと炎が立ち上った。 「おいたはほどほどにしときィ。撫で回すぐらいがセーフやわァ」 風音が、微妙に問題のあることを言いながら、影を縛り上げようとする。 かろうじて麻痺から逃れた腕が、ぐにゃりとありえない方向へ曲がった。 「アカイクツをハカセテアゲル! ダカラ、ヒザカラシタヲ、チョウダイチョウダイチョウダイナッ!!」 そわかの膝に向かって、振り回される。 「モォラッタ!」 そわかの脚に、妄執のなせる業か切っ先がめり込む。 その衝撃で、そわかはバランスを崩した。 (滑って転ぶなぞ淑女にはありえぬ) 「女の子ぉや小さい子ぉは手ぇ貸そか。」 風音はそう呟いて、すかさず、脇から手が出してその体を支えた。何事もなかったように着地させる。 淑女の面目を守ったそわかは、すぐに調子を取り戻し、挑発的に脚を指し示し、ゆるりと影に笑みを浮かべて見せる。 「さあさ、此方の脚は此処にあるぞ。たあぷりと血も肉も詰まっておるぞ」 首から提げた「鉄の処女」を揺らしながら、軽やかな脚の動きで影を翻弄した。 「影からはどんな血が噴き出すのか見てやろう」 言うなり、暗器が影の表面をなぞったとたん、影がぱっくり割れた。 ダンシングリッパー。 一拍おいて、黒い飛沫が天井まで汚す勢いでほとばしる。 不定形の影がじたばたと腕を振り回すことも出来なくなっているのを見て取ると、ダッシュウッドが近寄っていく。 「てめェの血の色を見せてみな!」 適当に掴み上げ、がぶりと影に喰らいつき、ごくごくとのどを鳴らしてエリューションの体液ともつかぬものを飲み込んでいく。口元から黒いしずくが垂れた。 無造作にどさりと落とされた影が、まだびくびくと痙攣し、糸から逃れようとのた打ち回る。 「アカイクツ、アカイクツ、アカイクツ、アカイクツゥ!!!」 (俺はあくまで射手だ。戦場の華となるつもりはない) 後方からの烈火の最後の一撃が。 (もっとも……好機があれば、止めをささせてもらう) まさしく、好機だった。 「アカイクツ、アカイクツガホシ……イノ……」 ソレダケナノニ……。 消え入るような声を残して。 すでに穴だらけで、干からび、輪郭だけが残っていた黒い影は、パリンと砕けて消えた。 後には、何も残らなかった。 ●後に残るは…… 「やったぁ~! やっつけたよぉ! お姉ちゃんたちの足が無事でよかったぁ!」 涙目で、勝利と仲間の無事の喜びを表現する、おねえちゃんたちをかばいまくって傷だらけの、かわいらしい灰色猫耳猫尻尾少年(10歳) (……よし! これじゃ!!) 齢八十の九兵衛は、自分のいたいけなかわいらしさを見事に「おねえちゃんたち」にアピールできたと、内心ほくそ笑んだ。 「おねえちゃ……」 笑顔で振り向く。 誰もいない。 みな、トンネルから外に出ていた。 高くない天井、幅もけして広くはない。寒々しい照明。 戦闘の熱気で空気がこもっているし、そもそも長居したい場所ではない。 どうせなら、外の冷たい空気で深呼吸したい。 それに気づくのが遅れた不覚。 「待って~~」 九兵衛はあわてて、先を歩くそわかや烈火、螢衣の後を追った。 「おお、倒せたね! みんなお疲れさ…んぎゃあああっ!?」 聖は喜びながら、翼をたたんで地面に着地した。 普通なら、絶対に滑らないタイプの靴。 もういい大人であるにも拘らず。 キレイなお姉さんにあるまじき素っ頓狂な絶叫と共に、どってーんとしりもちをついた。 手を貸すのが親切か、いっそ見なかったことにしてあげるのが親切か迷うほどの見事な転び方である。血を見なかったのが幸いだ。 うん。ハイヒールはいて囮とか、無理。 「そう……これが戦いなのね」 騒々しいメンバーから少し離れて、ミュゼーヌは、両手をぎゅっと握り締めた。 (戦闘の実感が掴めて、これからの実戦に手応えを感じるかしら。) 体を駆け巡る熱い血潮と身を切る夜風が、これからの戦いの日々を暗示していた。 「『赤いハイヒール』ねェ…」 ダッシュウッドは、口元をぬぐいながら小さく呟く。 (ガキの思いつく理想の大人の女性、ってか。くだらねェ妄執もあったもんだ。) 「嬢ちゃん、似合いのあんよはどこに置いてきた?」 答えなど、あるはずもない。 あいまいな表情の風音がふかす煙管の紫煙が、ゆらゆらと闇夜に上るばかりであった。 |
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■シナリオの結果 | ||||||||||||||||||
結果:成功 重傷:なし 死亡:なし |
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■あとがき | ||||||||||||||||||
純戦闘依頼です。 プレイングに影響されて、事前に考えていたよりまじめになりました。 カッコイイを目指しました。 次回は、本番。 より練り上げたエリューションを用意して、お待ちしております。 |
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■プレイング評価 | ||||||||||||||||||
今回は、「台詞がカッコイイ!」ダッシュウッド・J・ラコルデール(BNE000999)さんに。 エリューションの発生原理を汲んでくれたこと、戦闘時の他キャラとの連携など明確な行動指針、言動などキャラをイメージしやすかったことも受賞理由です。 |