――少女の泣き声。 駅から降りて数分、ありがちな灰色のコンクリートマンションが建ち並ぶ住宅街。 残業の疲れを肩に背負い帰途を急ぐ男は、こんな深夜に似つかわしくない声に足を止めた。 止めてしまった。 「おじ、ちゃん……」 ひっく。 鼻の頭を真っ赤にし、かじかむ掌に息を吹きかける少女が街灯の下で肩を振るわせた。 足元の猫が慰めるように少女に毛皮をこすりつける様が、ますます憐れさを誘う。 「……」 目があった。 もう見過ごせない。 男は溜息をつき鞄を抱え直すと靴音をたてて近づいていく。 「どうしたんだい? こんな夜更けに……」 近づけば近づくほどに漂う血の香り。 真っ赤な鼻の頭は、血。 (……まさか、親に虐待でもされたのか?) 元来、人が良い男の足が速まる。 「お父さんとお母さんはどうしたんだい?」 しゃがみ込み目線をあわせ、壊れ物を扱うように恐る恐る切り出した質問にはこう返る。 「うん、食べちゃった」 しゅるり。 少女の髪が伸び。 ぎゅるり。 男の腕を胴を足を縛りあげる。 ぼぎゅり。 少女の小さな口が顔一杯に裂け上がり、男を丸呑み、した。 ●アーク本部ブリーフィングルーム 「少女の姿をしたエリューションが現われた」 翡翠と紅石に特段の感情を映さずに、真白イヴは淡々と告げた。 「その姿を巧みに利用して、深夜の住宅街で奴は人を食べ続けてる。お腹一杯になることなんて、ないのにね」 心も体も満たされない。 理を失ったエリューションであればそれはなおさら。 「だから、皆には処理して欲しい。これ以上被害が出る前に」 イヴはしばし唇を閉ざす。効率よくリベリスタが戦えるよう、敵の能力をどう言葉にすべきか思索しているのだ。 ――無事、帰ってきて欲しいから。彼女は彼女の最善を、尽くす。 「敵の種別は、ノーフェイスの少女。援護として黒猫のE・ビーストをつれている」 華奢な指が端末を叩けば、イヴと変わらぬ外見の幼い少女と黒猫が現われる。 更にキーを叩くと、彼らがエリューションとしての本性を現わした姿に切り替わった。 ……少女のおかっぱ髪はあばら屋に絡む蔦の如く繁り広がり、愛らしい顔は巨大な唇だけに。 ……全長2mほどに膨れた黒猫は、六本の足に炎を纏ったあり得ざる風体に。 「少女はフェーズは2で猫は1。行動原理、少女は餓え。猫は少女の護衛。つまり……」 双眸を瞼に隠し、イヴは告げる。 猫は少女を攻撃した者を優先的に焼き殺そうとする。複数居た場合は、自分が攻撃可能でかつ一番痛手を与えた者を狙う。 「少女の髪は遠方まで届く、正確には20m。ただ命中率は、低い」 猫の炎と少女の髪は前衛が阻む事を望めば後衛には届かない。もちろん、数で負ければそれも叶わぬが。 「最後に少女の噛みつき攻撃。少女の餓えを体現するように、噛みつきむしゃぶり喰らう……攻撃力は、高い。幸いなのは隣接に対してのみなところ」 肩から提げたウサギのポシェットを撫で、イヴは僅かに下を向く。 彼女なりに目の前の面々が心配なのだろうか? それとも――識ってしまった陰惨で残虐な光景のフラッシュバックに、胸を痛めているのだろうか? 「識れたのは幸い」 だが再び顔をあげたイヴは、いつもの無常で淡々とした空気を纏っていた。 「あなた達に告げる事が、できた。だからもう、少女は誰かを食べられない」 そう。 止めて欲しい。 どうかどうか。 このまま放置すれば命奪われる誰かのために。 あらゆる飢えに苦しむ少女のために。 ![]() |
■シナリオの詳細■ | ||||||||||||||||||
■ストーリーテラー:一縷野望 | ||||||||||||||||||
■難易度:NORMAL | ■シナリオタイプ:通常 | ■シナリオ納品日:2011年2月8日 | ||||||||||||||||
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■参加人数8人 | ||||||||||||||||||
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■プレイング | ||||||||||||||||||
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■リプレイ | ||||||||||||||||||
問い:籠の鳥に餌をあげないと、どうなるでしょう? 答え:おなかをすかせて弱り、やがては死んでしまいます。 ――あのひとたちはそんなこともわからなかった。 ●彷徨いの主演女優 澄み切った冬天には、綺羅星。 こんなところまでリアルなのだなと『ブルーアイ』織田 あらた(BNE001712)は空を振り仰ぐ。 ……冬は好きだが今は心が痛い。 「相手が同じ小さい女子と猫じゃからの……なんだかやり辛いのじゃ」 その気持ちは『緋月の幻影』瀬伊庭 玲(BNE000094)がほぼ代弁してくれた。 桜色のレースリボンで束ねたツインテールを揺らし、少女は息を手に吹きかけ掌を温める。そして物憂げに黒と赤の瞳を瞼に隠した。 結界をはり巡らしているので、餌食となる一般人も現われない――仮想現実とて、そこを怠るつもりは、ない。 「せめて安らかな終わりを与えてやりたいな」 「ああ、そうじゃな」 頷く少女も、空見あげる少年も、いや、この場にいる8人全員、抱く空気は重く苦い。 「あの子は何故おなかをすかせてるのでしょうか?」 寂しかったから? それとも別の理由? 私にはわかりませんと『襲歩を翼に変えて』森野 朱音(BNE000264)は、誰ともなしに囁く。 「……」 「舞姫、ちゃん?」 ここに来てからずっと黙りっぱなしの『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)に、朱音は気遣うように声をかけた。 「……そんな子たちを守るために、救うために、わたしの力があるんだって信じてた」 隻眼片腕の少女は包帯で封じられた右腕をぎゅっと握りしめ、唇を噛んだ。 未熟さ故に永遠になくなってしまった右腕。だが、あの日救った命は少女の誇りでもある。 「だけど……」 「このままだと、誰か悲しむ人が生まれる……」 穏やかだが確固たる意志を秘めた朱音の声に、舞姫は首を縦に揺らす。 「いい子だから出ておいでー……なんつって出てくるわけないよね」 『通りすがりの女子大生』レナーテ・イーゲル・廻間(BNE001523)は、肩までの黒髪をくしゃりとかきあげた。 「もしかしたら、出てくるかもしれませんよ?」 頬緩め頷くのは『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)。 ゆるゆる気怠げ……そう見せかけてレナーテがずっと他者を気遣っていたのに気がついているから、受ける表情は穏やかで。 「彼女は食物のみに飢えていたのでなく、人の温もりにも飢えていたのかも……そう、思います」 「そしてエリューション化……運が悪い、としか言いようがないんだろうねえ」 やりきれない。 でもだからといって、運命(フェイト)に愛された自分達が運が良かったかというと、疑問ではあるが。 「なんて哀しい、悲しい、食事」 黒と藍のドレスの乙女は、一言一言噛みしめるように口にした。 幻視で大人びた自身の姿を纏う『糸切り鋏』一 花菱(BNE000274)は、深淵に眠る昔の自分へと指先を伸ばす。 ……こころが重たいのは何故かしら。 ……貴女が少し、わたしに似ているから。かしら。 「飢えと乾き、そこへ至る経緯がどのようなものであったのか、今となっては知ることかなわず」 寝静まり返った住宅街を横目に『銀の月』アーデルハイト・フォン・シュピーゲル(BNE000497)が唇を開く。 どこか芝居がかった言葉選びだが、前時代のヨーロッパ貴族の出で立ちに銀の糸揺らす彼女には非常に相応しく。 まるで誂えたような白薔薇と黒薔薇の乙女――舞台に上がれば、さぞかし映える事だろう。 舞台。 「いました、ね」 街灯というスポットライトの下に黒猫をつれた少女がひとり。 小さな肩を振るわせて、唇から零すは庇護心誘う、嗚咽。 その頬はほお紅を塗ったように赤くて赤くて赤くて……そう目を惹くことを計算した舞台化粧。コンパクトに満ちたチークは、血か肉か。 「……」 8人の表情から愁いが消える、代わり現われたのはリベリスタとしての覚悟。 倒さねばならない。 この少女を。 倒さねば、ならないのだ。 ●開演のベルが鳴る 朱音は他に視線で合図を送ると、街灯の下へ足を進めた。 「こんな寒い夜にどうしたのですか?」 「……ッ?」 しゃがみ込み視線を合わせ、少女を安心させるように続ける。 「一人では危ないです。良かったら家まで送りますよ」 いつ攻撃されてもいいように、警戒の糸はぴんと張りながら。 「おう、ち??」 「こんな寒い夜に、その子と二人きりで寂しくはないのかな」 あどけない声に後方のあらたが重ねれば、少女は足元の黒猫を抱き上げ頬ずりする。 ――何処にでもいる少女の、何処にでもあるような無垢の微笑みがここにある。 「……」 舞姫は俯き視線を外すと、柄を握り締めながら前へ。 「何処か貴方様と私は似ていると感じました……」 シエルは懐中電灯を腰に結わえ、今一度少女を見据える。 「お、ねぇちゃんも……ごはん、もらえないの?」 痩せた少女は、よくよく見ると額や手の甲に痣がある。どこか怯えたように震える様は、恐らくは演技ではなく彼女が生きてきた人生の軌跡。 知らずため息が、零れた。 「ああ、いっぱい、だね……ね? クロ」 「なぁん……」 すり。 黒猫は今一度少女の頬に髭をこすりつけると、地面へ降り立った。 「これだけたべたら、おなかいっぱいになれるかなぁ」 ぞわっ。 肌を切り裂くように高まる緊張感に、花菱は少し長めの瞬きを。 「わたし達、もう一度貴女を止めに来た、のよ」 開いた瞳から愁いはかき消え、ただ鮮やかに。 その声はあどけなくも淡々と。 「終わりのない空腹に……さよなら、しましょう?」 携えた身の丈はあろうかという剣は、盾ともなる矜持。 「やぁだ」 少女が間近の朱音に髪を伸ばす、前に……身にある獣の驚異的な反射神経が、ほぼ自動的に彼女を動かした。 「あなたを倒させていただきます!」 逆手に持ったレイピアを翳し、反応速度、加速。体内調整、完了。 「ふぎゃっ!」 体を膨らまし炎で覆われた猫が、肩口に受けた矢に悲鳴をあげる。射手はクロスボウを構えた、あらた。 「ゴメン。わたしには、あなたを助けられない」 舞姫は紫のマスコットがついた柄を握り締め、すらり、と刃を夜闇に晒す。 蒼の瞳は、ようやく前に。 「エリューションは、助けちゃ……ダメなんだ」 真っ直ぐ目を逸らさずに、周りの動きが落ちた感覚へ――ハイスピードへと舞姫は身を委ねたのだ。 花菱は後ろへは通さぬ気迫と共に黒猫へ連撃を。 (「熱いのは、苦手」) 来るであろう炎に恐怖がないわけではないけれど……負けない。 髪を揺らし疾風のように駆け込んできたのは玲。即座に気で編んだ糸を少女に放つが、少女の動きを止めるには至らない。 だが痛みは与えたようで、顔をしかめる彼女に玲は静かに告げる。 「おぬしは腹を満たすのに『食べる事』が必要だと思っているようじゃが……別になくても満たせる」 「うそだ!」 その激しい反駁は、深夜の舞台に極大の音でもって響き渡った。 「ぜんぜん、ぜんっぜん……たりなかったっ……クロとあたし、いつだってお腹空かせてたっ!」 応えるように黒猫は背で燃える炎を玲へと叩きつける。肌を焼く痛みに玲は歯を食いしばり堪えんとす。 「おなかへったのに、おなかへったのに……クロとわけて食べたらメロンパン1個なんてすぐなくなるよおっ」 ――でも1日、それだけで我慢しなくっちゃいけなかった。ママはそれしかくれなかった。 「……」 衣擦れの音をたてて、シエルは胸に手をあてる。 体を巡る魔力が集約していくのが、わかる。 ……少しでもはやく終らせる為に。 「そうですか……そう、だったのですか」 夜闇色の乙女アーデルハイトは、天へとスタッフを掲げた――彼女を覆う魔力が、攻撃へと特化されていく。 理由を知ったところですべき事は何一つ変わらぬと、アーデルハイトは深慮に満ちた眼差しを少女へ向ける。 「今宵、最後の晩餐と致しましょう」 葬送の夜会、それだけが少女への慰めだと、乙女は知っているから。 「さいご? ちがうよ、まだまだたべるんだからぁっ」 伸びてきた髪を盾でいなし、レナーテは肩を竦めた。 「あんまり体張るのは好きじゃないけど……」 まるで日常で力仕事をするのを嫌がるかのような、普通の物言い。だが手にした盾は非日常。命を庇いながらレナーテはアスファルトを踏みならし前へ。 「大丈夫?」 気遣わしげな視線は、先程炎をくらった玲へ。 「ああ……わらわが被っている負の遺産に比べれば、このような炎なぞ造作もない火遊びじゃ。にゃんこじゃー」 「大丈夫そうね」 邪気眼絶好調な玲に小さく舌を出すと、レナーテは盾を思い切り後ろに、引く。 翼あるなら生える場所に力を篭めて、 「やれるだけやってみようか」 ――ガンッ! 気の抜けた口調とは相反するように、少女に叩きつけられた盾は余りに威烈。小柄な体ははじけ飛び、背後の電柱へ嫌と言うほど打ち付けた。 「ガッ……かっは……ぁ」 「ふうぅぅっ」 咳き込む少女を見て、琥珀眼の獣は威嚇するように唸る。巨大で煉獄焼く炎を背に――ただ声は仔猫のままで。 ●終劇へ向けて 「! 猫がくる!」 力をのせず射出した矢は黒猫に弾かれたものの、あらたの怒号に似た声は仲間の窮地を救った。 「ッ……」 その声のお陰か根元に当たるのを辛うじてレナーテは避ける事が出来た。それでも幾度も炎を受けた体はじわじわと蝕まれてはいるが。 「けほっ……けほっ」 自分の肉が焦げる匂いが気持ちの良いものであるはずもなく。 「幾度でも癒します……」 背の翼を広げ、シエルは癒しの風をレナーテへと傾ける。負わされた傷を全て塞げない力のなさが悔しいけれど。 「おなかがすいたら、人を食べる?」 朱音はより前に踏み込むと黒猫だったモノを翻弄する。琥珀が追い損ねた刹那、切り裂かれる毛皮。体を縫い止めるように、尖剣は容赦なく刺さる。 「あなたに……」 少女を見舞った運命はそれはそれは過酷なモノで。 されど。 「その人の未来を食べつくす権利はありません!」 朱音の叱責に少女はしゃくり上げ瞳を見開いた。 ぽろぽろと止めどない涙と共にイヤイヤをするように頭を振る。 「痛いよぉ……パパぁ、ママを殴らないでぇ……ママをぉ…………」 混濁する記憶のままに泣きじゃくる少女の脳裏に去来するのは、盾で叩き付せられた痛み。 「これ以上、誰も傷つけさせはしない! わたしたちが、絶対に止めてみせる!」 いち早く察した舞姫は、レナーテとの間に庇い入った。 肩口に歯を立てられ隻眼を眇め堪える隣、黒猫が鞠のように、跳ねる。支柱にして立つ花菱の大剣は、血に塗れ黒毛がまみれている。 「無茶はしないで」 ひとりで戦っている訳ではない、皆がいる。 花菱は少しだけ唇をあげると、身の丈の剣を華奢な腕で易々取りまわし2撃目を、入れた。 「ふぎゃっ」 「クロ?!」 悲痛な少女の叫びに応えんと、黒猫は上半身を起こしたが……それまでだった。 びくりっ。 大きく一度だけ痙攣した後、崩れ落ちもう二度と動かなくなる。 「あ……あぁ、あ……クロぉ…………」 「…………」 片眼をあけて、アーデルハイトは顔を覆う少女を確実に正確に、捉える。 「魔力は満ちて」 ワンドの四方に展開する小さな魔方陣が徐々に大円を描きゆく。 キキキキ……ンッ! 四色の魔方陣が編まれ、アーデルハイトの眼前で1本の魔矢を形作った。 「暴威を成す」 恐怖に滲む少女の額に刺さり爆ぜ、痛々しげな声が夜闇を切り裂いた。 「おぬしの両親は……ひどいものじゃったのだな」 俯いた玲は両の髪を解きおろす。まるで『演技』をやめるように。 邪気眼は寂しさの裏返し――亡くしたくなかった両親、思い出したくない忌まわしの記憶。 「じゃがの、父君と母君を殺した罪は……高くつくぞ?」 黒影が少女の頭部を横殴りに、打った。 「ふぁっ?!」 錐もみで地面に叩きつけられた少女は、涙と血で顔をボロボロに壊しながら地面を掻きむしる。 「ごめ……なぐらないで……ママぁ、パパぁ、おねがい……パパ、やめてぇ、ごはん、ママがくれなくなるのぉ…………」 おねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがい。 おねがい。 あたしを、 あいして。 おなかがすいたの。 こころがほしいって、ねだるの。 「……」 リベリスタ達が両手を差し伸べ乞う少女に与えられるのは――死のみ。 「この邂逅も縁……悲劇の連鎖、断ち切らせてくださいまし……」 何かを堪え断ち切るように、彼らは寄り強く苛烈にけれど欠片の愛を携えて、ほぼ同時に少女を――終らせた。 ●斯くして幕は落ちる ――これは過去の残滓。 されど現実に命を亡くした者は存在、した。 せめて祈りだけでも、届け。 「……」 アーデルハイトが無言で十字を切り、朱音と玲が手をあわせる足元に、舞姫はビスケットとチョコを供えた。 菓子如きで少女の餓えはおさまらないだろう。 死が救いだと? それはただの――。 「欺瞞だ……」 「こんなことが二度とないように」 それでも祈り願いたいと、あらたは冬の空におわすかもしれない「かみさま」に想いを捧ぐ。 「お休みなさいまし……」 忘れませんと、小さくシエル。 「こういう普通の気持ちはこれからも持っておきたいよね」 レナーテはこれより続くであろう血塗られた自分の路を思い描きながら、もう一度神妙に手をあわせる。 無くしてはいけない、この気持ちは絶対に。 祈り終え現実へと帰還する前に、花菱は足を止める。 電信柱の下、泣いていた少女と痩せた毛皮をこすりつけていた黒猫、それは今は亡き、残像。 「おやすみなさい」 どうか。 次に命が芽吹いた時には、温かいご飯が、食べられますように。 |
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■シナリオの結果 | ||||||||||||||||||
結果:成功 重傷:なし 死亡:なし |
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■あとがき | ||||||||||||||||||
「おなかがすいたの」にご参加いただきありがとうございました。 一縷野・望(いちるの・のぞみ)です。 初めて描いたBNE世界にてお預かりした皆さんのキャラクターをきちんと描けたのか、未だにビクビク状態です。 もし感想があれば、何なりと。どうぞお聞かせください。今後の糧とさせていただきます。 今回はβシナリオということで、エントリーいただいたプレイングから選抜しての執筆でした。 それについてちょっとだけ補足です。 選ばなかったプレイングが、決してダメだったわけではないのです。 例えば……今回は少女に対する心情の方向性をある程度揃えています。なので「仕事だと完全に割り切る」というスタンスの方が選抜されていません。 じゃあ、毎回「参加者全員で心情面の方向を揃えた方がいいのか?」かというと、答えはNOです。 1つのOPに対して、PCさんで様々な想いがあって当たり前です。 むしろどのように感じていただけるのかを楽しみに、一縷野はOPを出しています。 なのでもし、今後普通のシナリオでご縁がありましたならば、どうかその辺り自由にのびのびとプレイングをかけていただければと思います。 実際、クール系も書かせていただくのは大好きですよ。 それでは長々と書きましたがこの辺で。 またBNEの世界でお会い出来ることを祈って――。 |
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■プレイング評価 | ||||||||||||||||||
選ばせていただいた8名の方は、特に甲乙つけがたいのです。 なので……「純戦依頼でなければここまで厳密には見ない」というところまで見ての選定となりました。 (今回は心情依頼でしたので、実際はここまで求めていませんよ) 【理由】 心情をつめていただけた上に、戦闘時の行動部分が非常に具体的で、STが誤解する要素が著しく少なかったです。 例) 自分の立ち位置(前衛の影になるように) 戦闘時「HPやEPが、具体的にいくつまで減ったら、何々をする」と記載 接近された際の行動も、やりたいことが書かれていた 以上です。 |