●よごれなおしごと アーク本部のとあるブリーフィングルームに数名のリベリスタが集められた。 ここに集められる理由はただ一つ。集められたリベリスタ達もそれを理解し、僅かに気を張りながら時を待つ。 それから数分程経った頃、ブリーフィングルームの扉が開き、一人の男――将門伸暁が入ってきた。 「待たせたな。早速だが今回の仕事について説明する」 そう言って伸暁はすぐさま万華鏡(カレイド・システム)の端末に接続する。 『万華鏡』――三高平地下ベースに存在する人智によって作られた人造の破界器(アーティファクト)。 運命をも演算する奇跡と繋がることによって伸暁――彼らフォーチュナは場所も時間すらも超越して望んだ『世界』を視ることが出来る。 数秒後、リベリスタ達の目前にホログラムウィンドウが浮かび上がり今回の事件の資料が表示される。 「まず初めに言っておく。今回の仕事は大量発生したエリューションの殲滅、及び――」 伸暁は一つ溜めを作り、告げる。 「発生した小規模バグホールの破壊。もしくは消滅の確認になる」 バグホール――虫食いやディメンションホールとも呼ばれる現象の名前。 それはこの世界と他に数多にある別世界を繋げてしまう『穴』であり。上位から下位――『あちら』から『こちら』に干渉してきて世界を歪める。 また副次的にあらゆる超常現象を発生させ、時には大災害をも引き起こす。 リベリスタ達の表情が引き締まったのを確認し、伸暁は話を進める。 「まずは事のあらましを説明する。事件発生は昨日の昼頃で――」 伸暁の説明によると、現場はとある町外れの廃工場。何でも数年前に倒産し、取り壊す費用もなく放置されているらしい。 廃工場は周りを高い塀で囲われており、その入り口も有刺鉄線でぐるぐる巻きにされたバリケードによって進入はほぼ不可能だった。 だがほぼ不可能では可能と同義。塀の崩れた一部から侵入した人物がいたのだ。 その侵入者とは年齢十歳に届くかどうかという子供が三人。理由は子供らしい好奇心による探検したかったということらしい。 それで廃工場の中をあちこち歩き回って遊んでいたらしいのだが。 その中で廃工場の深部へと続く扉を見つけ、そこを潜ると……。 「今映っているのが保護された直後の子供の写真になる」 「うげ、何だこりゃ?」 廃工場に侵入したという子供達三人の写真を見て、リベリスタの一人が眉を潜めて問う。 ウィンドウに浮かぶその何れもが黒だか緑だかよく分からないが、見ていて気持ちいいものじゃないドロドロとしたタール状の何かを全身に浴びていた。 一瞬この子供達がどろどろヘドロの人型エリューションなのかと思ってしまうくらいの有様だ。 どうもこのドロドロしたモノもエリューションの一種らしいが、調べによると人畜無害で子供達にも何の問題もないと分かっている。 だが、いくら無害でもこれは……と数名のリベリスタは苦虫を潰したような顔をしている。 伸暁はその様子を無視するが如く説明を続ける。 「それでこれが俺が『過去視』した映像になる」 リベリスタ達の目の前に浮かぶウィンドウで動画が再生される。 まず映し出されたのは薄暗い通路を歩く三人の子供。その視点は上――天井付近から見下げるような通常ではありえない不可思議の景観だった。 映像の中で恐る恐ると進む子供達が数メートル通路を歩いたところで、それは突然に起こった。 通路脇の影から突然飛び跳ねてきた緑色の球体が子供の一人にぶつかり――突然破裂してその体をヘドロ塗れにする。 もう一人の子供は恐怖からか立ち尽くしている所に突然に吹き荒れる突風を受け、すっ転んで通路横のヘドロ溜まりに沈む。 そして最後に、逃げようとしていた子供が扉に辿り着こうとした瞬間。突風に乗って飛んできたヘドロが後頭部に直撃したところで映像は終わった。 「今の映像にあったように、不自然に吹き抜ける突風は今回のバグホールが引き起こす現象と推測されている」 今回のバグホールは極小規模なので放っておいても自然消滅するだろうがと続けたところで、伸暁はふと視線をリベリスタ達に向ける。 リベリスタ達は一様に苦笑いを浮かべたり何かを訴えるような視線を向けていた。 それを受けた伸暁は少し思案した後――最後にと告げる。 「風呂の用意は申請しておく。存分に汚れてきてくれ」 ![]() |
■シナリオの詳細■ | ||||||||||||||||||
■ストーリーテラー:たくと | ||||||||||||||||||
■難易度:EASY | ■シナリオタイプ:通常 | ■シナリオ納品日:2011年2月8日 | ||||||||||||||||
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■参加人数8人 | ||||||||||||||||||
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■プレイング | ||||||||||||||||||
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■リプレイ | ||||||||||||||||||
●廃工場 輸送車両が小さな揺れと共にその動きを止めた。派遣されたリベリスタ達が一人、また一人と車両から降りる。 目の前には十数年は放置されていたであろう廃墟の工場。その手前に崩れかけの塀が廃工場を囲っている。 「廃工場か。雰囲気出てるな」 目の前にある門を見上げながら『臥薪嘗胆』霧雨 彰人(BNE001687)は寂れたその空気に言葉を零す。 「うわはー。いっちばーん!」 と、『ひーろー』風芽丘・六花(BNE000027)は突然空へと飛び上がった。 そのフライエンジェの証――純白の翼を広げて舞い上がり、そのまま塀を越えてその姿を消す。 「さて、僕達が入れそうな場所は……」 七布施・三千(BNE000346)は辺りを見渡す。と、少し迂回した場所に人が通れそうな穴を見つけた。 六花一人を先行させるわけにも行かないので、他のリベリスタ達も足早に敷地内へと足を踏み入れた。 廃工場の建物を前にし、三千が事前に申請した廃工場の見取り図を広げそれを皆で確認した。探索すれば広くもないが簡単に済むほど狭くもない。 幸いなのは間取りは複雑でもなく、件のヘドロエリューションとバグホールのある場所まで迷うことはなさそうだということだろうか。 大まかな役割も決めて、リベリスタ達は意識合わせを済ませると一同廃工場へと視線を向けた。 「初めての活動だし頑張らないと」 「その初めてでいきなりヘドロまみれは御免ですけどね」 気合を入れる『寝る寝る寝るね』内薙・智夫(BNE001581)の言葉に、『バトルマニアクス』松永 凪(BNE000260)がポツリと本音を漏らした。 それは恐らく、一同の心を代弁した一言でもあった。 扉も窓も壊れ放題の廃工場の内部へと入るのは比較的簡単であった。 しかし、外はまだ日中だと言うのに内部は酷く薄暗く物陰などは完全に光が届かぬ闇となっている。 幸いにも数名のリベリスタ達がライトやカンテラなどを用意し光源には困らなかった。 そしてついに子供達が最後に訪れた部屋。その扉の前へと辿り着く。 「開けるよ」 智夫がその言葉と共に鉄製の扉を開き――超常の世界が現れた ●粘体と突風 扉が開かれた瞬間、広がる視界。 一般的な学校の体育館ほどの広さの部屋。その中央に通っている通路。その両脇にある少し深めのプール。 それだけならば普通。しかし、ここは幻想を住まわす異界だった。 「……あたし無性に帰りたくなってきた。何だこの精神的ブラクラは」 『紫煙漂う戦場』風峰 刀子(BNE001106)は咥えている煙草のフィルターを軽く噛み、眉を潜めて嫌悪感を示す。 そこに居たのはヘドロヘドロヘドロのおまけにもう一つヘドロ。視界の何割かを埋めているのではないかというヘドロエリューションの大群だった。 事前に映像で見せられていたにしても、実際に見ると生理的嫌悪を抑えることができないほどの景観だった。 「ふふっ、いいですねこの空気。私、楽しくなってきました」 が、その中でも『紅蓮の魔女』仙崎 伊織(BNE001612)は焔色の羽を纏うその翼を口元にあてくすくすと笑う。 この廃墟には全くと言っていいほど釣り合わぬ真紅のドレス。そのスカートを揺らし一歩前にでた彼女は、まるで愛しいモノを見るかのような眼差しをしていた。 その時、ひゅおっと小さく風が吹いた。 頬を撫でた風に『鉄血』ヴァルテッラ・ドニ・ヴォルテール(BNE001139)は部屋の奥へとライトの明かりを向ける。 「むっ! おお、アレがディメンションホールか!」 小さめの、大きさで表すなら野球ボールくらいの黒球がまるで浮いているようにその空間に固定されている。 その外枠がギチリ、ギチリとまるで罅割れるように揺らぐ度に強弱を持った風が室内に吹き抜けた。 リベリスタ達がこの部屋の状態を認識した。まるでそれを待っていたかのようにヘドロエリューション達の動きが変わる。 「っと、呆けてる場合じゃないな。手筈通りに――」 全身を活性化させ、ギアを一つ上げた彰人が飛び掛ってきたヘドロを軽く避けて行動に移そうとした瞬間。 その脇をするりと金糸が流れて抜ける。 「アタイけんざん! うぉりゃー!!」 そんな掛け声と共に飛び出していったのは自称ヒーローの六花だった。 彼女は事前の話し合いのことなどすっかり忘れ吶喊したのだ。その行動は誰もが予想外だった。 が、さらに予想外だったのは。 「うっ、わわぁ、だわー!?」 彼女が足元に居たヘドロを踏んづけて滑り、上手い具合に正面から飛び掛ってきた別のヘドロの体当たりを顔に受けて。 そしてそのまま転がってUターンして戻ってきたことだった。 一瞬訪れる静寂。 「……とりあえずバグホールの破壊が優先ってことで」 一同は今のことをなかったことにして。改めてこの依頼をこなすために行動を開始した。 リベリスタ達の数名が通路の中央よりバグホールへ向けて走る。 勿論それに反応してヘドロ達がプールから這い出てくる。 「はいはい、邪魔邪魔」 刀子はヘドロがその身に届くより前に脚刀を振るう。 その動作だけで、爪先も届かぬ位置にいるヘドロの一体が揺れ、その上体がずるりと斜めに崩れ落ちる。 だがわらわらとまるで湧くかの如く増えるエリューションは通路一杯に溢れその道を閉ざした。 そのまま踏み越えるか? もしくは飛び越えるか? はたまた迎撃か? 一瞬の逡巡。 「私の為に集まってくれたの? なら一緒に踊りましょう」 その答えを出す前に哂うような声と共に躍り出た伊織は、まるで誘うかのように腕を振るって手を広げる。 ――包囲。 彼女が舞うように体を捻り、ソレに伴い差し出される腕がヘドロへと向く。 ――絡め取り。 右足を軸にくるりと半回転して、リベリスタ達に振り返って小さくお辞儀をする。 ――切断。 「さっ、参りましょう?」 背後で弾け飛んだ大量のヘドロの飛沫を気にも留めず、柔らかく微笑んだ彼女の周囲で黒い糸が揺れ動いた。 「本当に数だけは多いですね」 「全く持ってその通りだ」 バグホールへと直走る前衛組の後方では、三千と凪が並んで左右のプールから這い上がろうとしてくるヘドロを撃退する。 放たれる二種の矢は軽々とヘドロを打ち抜いていった。 互いにエリューションを相手取るのはほぼ初めて。慎重に、冷静に、確かめるように念入りに一体一体を磨り潰していく。 そのあっけない程の弱さに少し拍子抜けしそうなくらいだったが、その考えはすぐに打ち消した。 辟易する程の数の多さ。一体を倒してもその次にはもう二体が湧くようなその工程に数の脅威を感じずにはいられない。 「来るぞ」 突然、二人の背後よりぬぅっと顔を近づけたヴァルテッラが小さく呟いた。 何が? と、二人が問う間も無く。 ガギンッ、そんな音が聞こえたような気がした。 「伏せろ。それか何かに――!」 ヴァルテッラの声が掻き消された。 世界を司る音が轟々という唸りに統一され、正面から全身へとかかる重圧が波のように強弱をもって叩きつける。 バグホールから吹き起こる突風。それは既に風の暴力と言っても等しい。 ふっと、突然に体が軽くなる。いや、それは正常に戻っただけ。吹き荒れた暴風が止んだのだ。 「事前に聞いていた通りだな。だが、流石に少し驚いた」 彰人は吹き出た冷や汗を拭いながら一つ息を吐く。唯一、腰を低くしただけで耐えたその胆力と平衡感覚は素晴しいの一言に尽きる。 と、彰人は少し呆ける。つい先ほどまで前に居たはずの刀子がいないのだ。どこに行ったかと振り――。 「大丈夫……じゃあないみたいだな」 ――返るのを止めて正面のバグホールを視界に捉える。 「やってくれるじゃないか」 頬を僅かに引きつらせながら刀子は屈めていた体を立ち上がり、火の消えた煙草を潰れたヘドロに向け吐き出す。 その体、正確には上着には薄緑色のなにやらどろどろとした物体、ヘドロがべっちょりと張り付いていた。 恐らく先程の突風で飛んできたヘドロエリューションが運悪く直撃したのだろう。 その刀子のもう一つ後ろでは智夫が伊織を庇う様にして正面に立っている。その身も肩とその手にした盾にヘドロを貼り付いていた。 「あらあら、庇ってくれたのかしら?」 「あっ、はい。その気づいたら……つい」 朗らかに笑う伊織は小さく礼を言い、それに智夫はやや恥ずかしげ頬を掻いた。 っと、また不快な気配と共に風が吹く。身構えるリベリスタ達だが今回は髪を揺らす程度の風が数秒吹くだけだった。 「タイミングも強さも吹いてみるまで分からない。流石はバグホール、小さいながらも厄介なものだ」 ヴァルテッラはそう言いながらもその口元を愉快気に綻ばせる。 先程から常にバグホールに気を配り、機械化したレンズ状の左眼は今も薄闇の向こうに浮かぶ黒球を捉え、鈍く光った。 「あたい、復活!」 と、それまで静か……単に先程目を回して扉の向こうに移されていただけとも言うが。 そのお騒がせっ子の六花が再び舞台に立つ。 「えっと、今度は気をつけましょうね?」 先程のこともあり少し心配げに声をかける三千は実にお人よしとも言えるが、 当の六花はおうっと返事を返しつつも、またしてもその手の杖を振り回しながらヘドロエリューションへと飛び掛って行く。 その様子にガクッと肩を落とす三千はせめて先程のようにならないように援護をと、魔力を編成しそれを幾重に撃ち放つ。 「汚いので、近寄らないでもらえますか?」 それに合わせるように凪は矢を番えずにその弦を引く。 すると弓を向ける正面に浮かび上がる光球、そして弦を引くそこにもまた光る矢羽が現れる。 凪の体から立ち上るように噴出す力がその二点に収束され一瞬強く光ったと同時に――解き放つ。 放たれた矢羽が光球に当ると同時に、弾けるように極小の光弾へと分かれヘドロの球体のど真ん中を尽く撃ち抜き破裂させる。 「しゃあー! あたいさいきょー!!」 その援護もあって飛び散ったヘドロを若干被る程度で済んでいる六花は目の前にいるヘドロを杖でぶん殴り、 そのインパクトの瞬間に魔法を発動してバラバラに四散させるという器用ながら無意味な技術を存分に振るい続けた。 「後ろも頑張ってることだし俺達もそろそろ気合入れていこうか」 バグホール破壊を担う四人のリベリスタ達はライトで照らすバグホールの姿をもう一度捉え、駆けた。 ぶわっとまたバグホールから風が巻き起こる。まるで外敵から身を守るように、何者も近づけぬと言うように。 「もう、往生際が悪いですよ?」 伊織はその風にまるで子供をあやすような声をかける。 風に乗り飛び込んでくるヘドロを正面から吹く風を切るかのように翼の腕を振るい、奔る鋼糸がエリューションを細切れにする。 「さあ、もっとおいでなさい。紅蓮の魔女が全て受け止めて差し上げます」 分割されたヘドロの飛沫がびちゃりとそのドレスを赤から黒へと染めるが、彼女はそれすらも楽しむかの如くとてもとても綺麗に笑った。 「ヘドロの相手は任せてお二人はバグホールをお願いします」 智夫はヘドロを豪撃の下に切り伏せ、さらに放たれた式神を周囲に舞わせ飛び込んでくるヘドロへと吶喊させる。 ヘドロもいつの間にか大分数も減ってきた。ならば今こそが好機。 「オーケー、坊や。終わったら後でタバコ吸わせてやる」 その言葉に智夫は僕はまだ未成年ですよと困った顔をして告げ、刀子は冗談だとニヒルな笑みを浮かべる。 その様子を背中で聞き、釣られて小さく笑った彰人はぐちゃりと足元のヘドロを踏み潰し、体に力を巡らせ始める。 「先に行くぜ」 その言葉をも残して彰人の体がぶれ、消える。コンマ数秒もかけずに零からのトップスピードへの到達。 周囲のヘドロには目もくれず邪魔になるモノだけ盾で弾き、蹴り飛ばす。 ガチリ――またあの音の気配を感じ、肌が泡立つようにゾクゾクと寒気を齎す。 だがそれを無視、まだ間に合う。十分に、ソレはもう射程内に収めているのだ。 「おおおぉぉぉっ!!」 猛るように雄叫びを上げ、飛び上がった彰人はバグホールに最速の一突きを見舞う。 揺らぐバグホールの動きが止まり、先程まで感じていた嫌な気配もなりを潜める。 やったか? バグホールの真下に着地した彰人はすぐさま顔を上げ黒球へと目をやる。 ――……ガギギギギギギッ! 「うおっ!?」 静寂から一変。嵐の前の静けさだったかの如く危険察知の直感がレッドアラートを鳴らし、 間髪置かずに圧し掛かる重圧に彰人は思わず膝を突く。 最後の足掻きとでも言うのか、これまで以上の爆風となって荒れる風はリベリスタもエリューションも問わずに吹き飛ばす。 「しゃ、洒落になってませんよこれ!」 「うきゃわぁー!?」 「危なっ――って、うわっ!」 「あら、ごめんなさい」 「これがバグホールの力。実に興味深い!」 「……最悪です」 飛び交うプールへと落ちドボーンとか、べちゃりと何かが弾ける音とか、色々と混沌とした想定をなしている。 その中で一人、バグホールの正面へと辿り着いたのは刀子だった。 「テメェ、いい加減にしとけよっ」 犬歯を剥き出しにし啖呵を切ると同時にガントレット越しに印を組む。 作法もへったくれもなく乗せるのはただクソッタレなバグホールを破壊するという意志のみ。 「ぶっ壊れな!」 咆えるように人差し指と中指を立てた『印』を、唸りを上げる黒球へと突き出した。 ――ギギギギ、ギ……ビシリ………… 渦巻いていた風はピタリと止まり、バグホールはその気配を徐々に小さくさせて行き――今、完全に消えた。 ●任務完了 「おそろしいてきだった……だけどさいごは正義がかーつ!」 帰りの輸送車両の中、だーっと両手を上げて身振り手振りで報告を行う六花に、画面の向こうの将門伸暁は慣れた手付きでコンソールを叩く。 「疲れました。主に精神的に」 「同じく、結局全員ヘドロ塗れだしな」 凪の言葉に彰人が頷く。だがその顔には僅かな疲労を感じつつも依頼を終えた充足感からか小さくだが笑みが浮かぶ。 「ご苦労様。風呂の用意はしてあるからアークに戻ったら汗と一緒に流してくれ」 全員の報告を受け、労いの言葉を残して伸暁を映すウィンドウが閉じた。 アークに帰るまで小一時間。各々に体を解したり、僅かな休息のために眼を閉じる。 そんな中で刀子はおもむろに窓を開け、その口に煙草を咥える。 「次は煙草を吸ってられる場所だといいんだがな」 肺に満ちた紫煙をゆっくりと吐き出しながら、次の戦場へと思いを馳せた。 |
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■シナリオの結果 | ||||||||||||||||||
結果:成功 重傷:なし 死亡:なし |
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■あとがき | ||||||||||||||||||
なし |
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■プレイング評価 | ||||||||||||||||||
風峰 刀子(BNE001106) | ||||||||||||||||||
全体的な流れを確認しやすかったです。 依頼への意気込みや、依頼における目標。戦場に対する事前準備など細かなところにも気が回っているのも丸でした。 個人的に一番良かったのは自身の行動への『演出』です。 「ブレイクゲート」時の印を組む動作などはプレイング上では遊びにしかなりませんが。 何か拘りを持ったキャラクターを、STとして表現・お返しするのも使命かと思っています。 このシナリオを楽しみ尽くすという理由でも、やりたい事を盛り込むのは良いことだと思います。 |