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片思いだと、わかっていた。 以前に、思いを打ち明けた夜があったから。 それでも――その大切な『恋』を、心から消し去ってしまうことなんて、できる筈もなくて。 凍るような2月の空の下。 朝町 美伊奈(BNE003548)は、丁寧にラッピングした手作りチョコを、そっと抱えた。 コートに包まれた線の細い肩が小さく震えるのは、寒さの所為ではなく、息も詰まるほどの緊張と不安のため。 少しの恐怖と、期待と。そしてそれ以上に、相手に聞こえてしまうのではないかと心配になるくらい、さっきから胸の高鳴りが収まらない。 溢れそうな思いを映して、青い瞳は濡れたように潤む。自分より背の高い相手を見上げ、まっすぐに見つめれば、たちまち薔薇色に上気する頬。 まるで、つぼみが花開くように――ひたむきな恋心が、大人の女性へと成長途中の幼い少女に、香り立つような色香を与えていた。 意を決し、ただまっすぐな思いのままに、言葉を紡ぐ。 受け取って、貰えますか。 あの夜からも潰えずに胸の中に在り続けている、想いの丈を篭めて。 美伊奈は恋い慕うその人に、チョコを差し出した。 |
朝町 美伊奈(BNE003548)
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担当VC:Bee 担当ST:鳥栖 京子 |