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鳩目・ラプラース・あばたの自室には一般人の理解が及ばない専門的な技術書がぎっしりと詰まった本棚が高く聳えていた。 モニターの画面から照射されるバックライトにアッシュグレイの色彩を返す。 彼女の部屋にはまるで生活感等無く、身体から生える機械と同じように無機質なものだ。 けれど、今日は少しだけスイートな色合いが加わっていた。 広い机の上に並べられたベルギーのゴールドチョコは馬に乗った心優しい貴婦人、王室御用達のチョコレート、パリのショコラティエ等の豪華なものが揃っている。 それをプログラムを組みながら、手が汚れない様に箸で摘んで食べていた。 ここは彼女の自室である、たとえチョコの欠片が口元に付いていようとも、美味しいビールの缶が転がっていようとも全く気にしない。 黒くて暖かな着る毛布は金色の金具で留めて、肩口には大きく「筧」とこれもまた金色の刺繍が成されていた。 「……」 カタカタ。カサカサ。もぐもぐ。ごくごく。 パソコンのファンの音とチョコの包み紙を開ける音と咀嚼と嚥下。 他人にくれてやるつもりもなくチョコを買って食って寂しいとも思わぬハッカーの独り暮らしが正に此処にはあった。 |
鳩目・ラプラース・あばた(BNE004018) |
担当VC:Bee 担当ST:もみじ |