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『代打・恵梨香!』 |
世の中には不思議が溢れている。 世の中には凡そ世間の常識が信じられないような存在が『本当に実在』している事も少なくない。神秘世界に生きるリベリスタならばそれは殆ど常識と言える事実であるのだが…… (まさか、私がサンタの代打をする事になるなんてね……) 内心で一人ごちた窓枠に指を掛けて暖かな光の漏れ出す室内の様子を伺った高原 恵梨香(BNE000234)はやや自嘲気味に一人ごちた。『北欧の実在するとされているサンタ』は実際にプレゼントを配って回るものではない。彼女が今日何故かセレクトされたミニスカサンタ姿で『代打』を請け負ったのは御伽噺の中の『本当のサンタ』の方である。 「全く、ミスキャストにも程があるわね……」 小さく口の中で呟いて苦笑いを浮かべた恵梨香には家族が居ない。正しくは以前には居たがいなくなってしまった。眼前に広がる風景が自分が望みながらもう二度と手に入れる事が叶わないものである事を――それが正しいかどうかは別にして――自罰的な彼女は強く痛感していた。 「えーと、高さ大丈夫?」 「もう少しですね。言う必要は無いと思いますけど……」 「うん。上は見ないからね! 安心していいからね!」 世界の選択で微妙に色気過剰なコスが選択された恵梨香である。踏み台の新田・快(BNE000439)は言われるまでも無く視線を逸らし、努めて上を見ないようにしている辺りがこの男の生真面目さを証明していると言えるだろうか。 「……」 「……どう? 上手く配れそう?」 足元から届いた快の言葉に室内を見つめていた恵梨香は自分が無意識の内に笑っている事に気がついた。 『聖夜のミスキャスト』は案外勘が鋭い方なのかも知れない―― |
高原 恵梨香(BNE000234) 新田・快(BNE000439) |