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『二人のステージ』
 三高平学園のホールに少年と少女は居た。
 流れる音楽に合わせてゆっくりとステップ。その足取りはぎこちなく、少女の手を取る少年のリードは『おっかなびっくり』の風で。とても場慣れたお洒落な風情には遠かったけれど、それでも。
(……嬉しい、のよね。嬉しいんだわ)
 不器用な石黒 鋼児(BNE002630)がとんでもない真剣な真顔で自分と踊っている事。とても似合わない――そう言っては失礼なのかも知れないが実はそれが好ましいポイントなのだ――彼が必死に『それ』を頑張っている事自体が黒須 櫂(BNE003252)の胸を何とも言えず温めている。
「えーと、スロースロークイックだっけ? 分からねぇ……」
 思わず無意識に呟いた鋼児に櫂はくすりと微笑んだ。
 こんな時をそつなくこなすカップルも居るのかも知れない。
 でも、二人は違う。鋼児だけではなく櫂も。初々しい少女の顔を見せ、流れる時間に可憐な頬を染めている。
 スロー・スロー・クイック・クイック。
 踏めないステップが空回る。想いの歯車がくるりと回る。
 下手なダンスも、雑音も二人にとっては関係ない。
 二人のステージには、関係ない。
 
黒須 櫂(BNE003252)
石黒 鋼児(BNE002630)