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●遊色のディストーション・ジョーカー●

●CONTINUE――?

 いつかとどこかの夢の中。
 曖昧で不確かなものだけれど、フォーチュナにとってそこは現実世界の写し鏡。
 ボトムチャンネルと絡み合う、夢見に与えられた世界。―――mondo dei sogni.

 今、視覚出来るのは広がる緑豊かな庭園と大きな樹木。
「あれ! 開いてる! ハローハローお嬢さん。ボク此処出身のアザーバイド!」
 突然降ってきた声は幼女のもので。
 運命の系譜を自ら飛び出した『ディストーション・ジョーカー』が其処に居た。
 相変わらずのはっぴーすまいるとオペラモーヴのふわふわした髪。
 ディメンションホールから虹色のパラソルを開いてくるりと舞い降りる。
 夢に干渉されたフォーチュナは驚いて海色の瞳を見開いた。
 それが意味するのは、此処が現実世界になったのではないかという危険性。
 まだ見る力の弱いフォーチュナにとって夢での相互干渉は初めてだったから。
「あ、まって! 敵じゃないから待って!」
 思わず身構え、逃げ腰になった夢見を引き止めたアザーバイド。
 お茶でも飲んでゆっくりしようよ。とジョーカーはアリスのティーカップを取り出した。
「こっちおいで!」
 ディストーション・ジョーカーは此処が夢である事を知らない。
 けれど、彼女にとっては些細な事。どちらでも構わない。そんな事は気にしない。
 運命の系譜(ボトムチャンネル)で踊っていた時も彼女は不確かで曖昧。騙し絵でミステリー。
「わわっ!」
 フォーチュナを抱えて大きな木の上にミラクル・パラソル振り回して飛んでいく。
 オペラモーヴとイングリッシュフローライトの髪が風に揺れた。
 眼下に広がるのは、色取り取りの花の絨毯が広がる庭園。
「お茶はこっちでしよう!」
「あ、えっと、……はい!」
 太い木の枝に腰掛けて、華奢な足をぶらぶらさせて。
 一般人じゃないってのはわかってるもんね。とスマイルジョーカー。
「ねぇねぇ、此処日本であってるよね。ゾンビ軍団との戦いってどう? 優勢?」
 厳しい戦いの中、運命の系譜から外れた彼女はもう此方の世界に踏み込めない。
 当然、大局の結果等知ることすら出来ないのだ。
「楽団との戦いは終わりました。多くの犠牲を払ってしまいましたが……」
 海色の瞳は戦場に散ったリベリスタの事、楽団に切り裂かれた自分の家族の事を想っていた。
「聞くまでもないけど、ボクの愛した彼らは元気? 絶望していじけてる子はいる?」
 黒の蝶も、境界線の篭手も、宵闇の氷も、殲滅の砲台も、獅子の羽音も、小さな踊り子も。
 みんな元気である。
「皆さんは、絶望しても絶対立ち上がりますから、安心してください」
 フォーチュナは彼女の赤緑の瞳をしっかりと見つめた。

「それにしても、もう勝っちゃったんだねぇ。正直もうちょっと長引くかと思ったよ」
 白磁のティーカップに入った琥珀色の紅茶を飲みながらディストーション・ジョーカーは言葉を紡ぐ。
 彼女は碧の少女がフォーチュナだと言う事に気づいたのだろうか。
 一時の邂逅は本当に一瞬だったのかもしれない。数時間の様な気もする。
 木の下には揺らめくディメンション・ホールのダーク・ヴァイオレットの境界。
 それが、一つひとつ解ける様に『色』を無くして行く。
「げ、ゲートもう閉じるの。早くない!? ちょ、ちょっと待ってね!」
 七色のパラソルを広げ、大木の上から夢見を連れて『穴』の前へ。
 赤緑の瞳が細められる。

「あの子達はきっとこれからも刺激的な物語を造ってくはずだから君も一緒に楽しんでってね!」

 ディストーション・ジョーカーにとっては全ての事象がフェアリーテイル。
 不確かで曖昧。騙し絵でミステリー。
 今度も違う世界で宝石を集めるファントムになるのだろうか。
 きっとこれで、本当のさよなら。
 けれど、繋がった想いは消えない。
 いつかとどこかの別の世界で相見えるまで。
 ふわりとダーク・ヴァイオレットの境界線が消失した。

 ―――GAME OVER.
 そして、運命の系譜の外へ。宝箱を求めて。