●ちょっとした難事件でした アーク本部。 今日も今日とてリベリスタには依頼の山が襲っている訳だ。 「今日もおっしごっとおっしごっと……おわ!」 『白雪姫』ロッテ・バックハウス(BNE002454)は御伽話のお姫様の様に可愛らしい服を揺らしながら、上機嫌で下へ行くエレベーターに乗った。 「どうも……」 そこに居たのは『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)が一人。条件反射に二人ともお辞儀を一回。顔をあげてからロッテはにっこり笑顔を作って。 「杏里様! お久しぶりなのですぅ!」 「はい! かなり前ですが、鬼ごっこは楽しかったですね。所で……何処の階に行かれるのですか?」 「あ! 地下18階お願いしますぅ! えへへ」 18と書いてあるボタンを押した杏里に、ロッテはありがとうございますぅ!と元気な声で言った。 それからは沈黙が数秒。 杏里は静かに依頼の資料をペラペラ捲っている横で、ロッテは閉鎖的空間での会話方法を思い出しながら、話題の引き出しを開けたり閉めたり。 「今日もいい天気ですよねえ!」 「そうですね……しばらくこんな天気が続けばいいのですが」 会話終了。性格上、杏里も杏里で『大好きなリベリスタ様と二人きり』という状況に緊張していたのだ。それを知らないからこそ、ちょっと話題の方向性が違ったか!?と、まずそこでロッテは焦った。 笑顔で返してくれた杏里だが、すぐにぷいっと資料を見てしまったので、更に話題が駄目だったかと自分を追い詰めるロッテ。本当、そんなことないけど!! そして彼女は次の一手を考える。見ている資料……それだ、それの話題を! 「もしかして、それって依頼の資料ですか!」 「はい。えっと……裏野部の幹部が病院で事件を起こすのを予知したので、それの……」 と、会話の途中ですが此処で臨時の事件です。 ガタン!! 「ギャッ!」 「ひぃ!?」 突然だ。悲劇……と言うまででは無いが、トラブルは突然にやってくる。 「あ……あれ!? 動いてないですぅ……?」 そう、エレベーターが地下12階付近で急停止。中に居る二人は文字通り、閉鎖的空間に取り残されたと言えよう。 「ですね、あ、あのーエレベーター止まってしまったのですがー」 杏里は若干焦りながらも、非常時は此処を押してね!というあのボタンを押しながら外部との連絡を試みるが……反応が無い! すると、ブツッと言いながら今度は明かりが完全に消えた。 「ヒィ、ていでん! 真っ暗ですぅ!! ギャアアアアアン!! こわああああああい!!」 「きゃ!? ロッテさん、落ち着いて!! 深呼吸ですよ!!」 「し、しんこきゅう! ひ、っひっひふー!」 「それはちょっと違います!」 「うああああ! ロッテ上野ー!!」 「懐かしいネタをもってきてごめんなさい!!」 とりあえず落ち着こう。 こんな時は冷静になる事が一番なはず! それから外部から連絡が来たのはしばらくしてだった。 「どうやら手違いがあったみたいです……ロッテさん大丈夫ですか……?」 杏里はロッテの方向を見た。 暗視の無い2人。だがそろそろ目も暗闇に慣れてきたという頃。 「は、はい、大丈夫なのですぅ。杏里様は冷静なのですぅ」 「い、いえ、こんなときこそリベリスタ様を護るのは杏里の仕事……だと思いたい、です」 ロッテは小さくだが笑って見せた。それに釣られて杏里も笑顔を見せる。やっと、二人に笑顔が戻ってきた様だ。 しかし冷静になってみると怖い状況である。このままエレベーターが開かない……なんて事があったら。 「死ぬ前に、アップルパイをお腹いっぱい食べたかったですぅ」 「だっ、大丈夫ですよっ、まだ死ぬと決定した訳でないはずですっ」 「無事に帰れたら、おようふくをみにいくですぅ」 「依頼はもう、ぼいこっとしていいですよね」 閉鎖的暗所。 これほど人をネガティブにさせる場所は無いと思える。杏里は何かロッテを元気にさせる方法が無いか思考した。 が、まあ何も上手い打開策は思い浮かばないので質問攻め決行。 「林檎、お好きなのですか?」 「好きですぅ!」 「千堂さんもお好きだとか」 「はい! 先日、しぇんどぅの血を吸おうとして惜しくも逃げられたのですぅ」 「きっと恥ずかしがり屋さんなんですよ。次は噛みつけると良いですねっ」 そんな話がわきあいあい続いた頃だった。今まで座って話をしていた二人だが、すくっとロッテは立ち上がる。 「……トイレ、行きたくなってきたのです」 「えっ」 「我慢ならんのです!! ダメ! ダム決壊しちゃう!」 「非常に言いにくいのですが、もうちょっと、もうちょっと忍耐です!!」 なんてことだ、それはまずい。生理現象を抑えろというのは非常に酷なのは誰だって解っている事だ。 「わたし、早く出たい! エレベーター動かすのですぅ!」 「ロッテさん!? 気持ちは解ります! ですが無茶は控えま「任せて杏里様! わたし直せますぅ! プリンセスだから!」 プリンセス、なんて万能なんだろうか!だが落ち着こう、辛いのは解りますが!! 「プリンセスピンポイント!!」 ロッテは天井にピンポイントをし、小さな穴を円状に作る。その円を止めでぶち抜けば穴のできあがり。杏里はそれに感心しながらも、よじ上っていくロッテを見守ることしかできず。 『杏里、ロッテ。動くって言ってるわよ』 「え」 聞き覚えのある、金髪赤目フライエンジェの声。何故お前の声がするのかとか細かいこたぁいいのとって事でひとつ。 ――その杏里が間抜けな声を出した瞬間だった。 ガタン。 「ホッ、ホギャアアアアアアア!! うう動き出しうわあああ!!」 「ロッテさん降りてきてー!!! もうそこは危険地帯やもですううう!!! あわよくばフェイト使用ですうう!!」 「い、今すぐ降りるのですううう!!」 「はい! トイレはもういいのですか!?」 「トイレの話するとダム決壊しそうなるので駄目なのですぅうう!」 「す、すいませえええん!!」 救出された頃には二人とも体力を使い果たしたようにぐったりしていた。 周囲には大丈夫かと見知った顔の精鋭リベリスタや、フォーチュナ達が集まってきていたり。 涙が、止まらないプリンセス。そりゃそうだよ、もう色々あったもの。こんな時に杏里がプリンスや千堂で無いのが非常に申し訳無いが……。 「ロッテさん、大丈夫ですよ。大丈夫」 杏里はロッテの両手を握って、にっこり笑って見せた。 「そ、それと……あの、宜しければ杏里と友達になってくださいませんか……?」 控え気味に。さり気無くそんな事を言った杏里。その答えはいつか聞かせてくれると嬉しいと願って。 そんな、ちょっとした大事件があった日であった。 **** SS当選おめでとうござ……遅くなってすいませーーーーん!!!! 変なテーマですいませんね『杏里とエレベーターに閉じ込められる』というものでした プリンセス!いつも元気で、可愛らしく描写したいと夕影、思っております そんな彼女が見せた、涙な一面。そんな彼女もとっても素敵だと思いました SSの内容は上記の通りになりましたが如何でしたでしょうか? また、何処かの依頼でお会いできる事を楽しみにしております 改めて、ご当選おめでとうございました! |