● その日、『フェアリーライト』レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)は一人繁華街に繰り出していた。 ありふれた世界を歩き、当たり前の日常が彼女を世界の裏側から引き離していく。 (「今のは……」) 眠っていた直感をざわつかせたのは、一つの人影だ。 緩いウェーブの掛かった薄茶の髪、丸い青い瞳、陶器の様に白い肌、シンプルなワンピース姿の少女は幽霊の様に人々の隙間を抜け、ゆっくりと歩く。 レイチェルの視線が重なると、少女はうっすらと微笑んで裏道へと消えていった。 不自然さを感じる少女を追い、レイチェルは裏道へと踏み込む。 「何してるの?」 彼女の問いかけに少女は振り返る。 柔らかな微笑みからは悪意を感じないが、何故か体の緊張が解けない。 「人を待ってたの、私に声をかけてくれる人を……ずっと、ずっと」 過去形となった言葉、待ち人は少女の目の前にいる。 少女はゆっくりと歩み寄り、小さな手を伸ばす。 「貴方みたいな可愛い人を」 人形の様に可愛らしい少女の仕草に、レイチェルの気が緩まると共に濡れた音が小さく響いた。 「きゃっ!?」 不意に足元に何かが絡まり、膝が崩れると共に少女のワンピースから飛び出した何かが杖を払いのける。 「な、何それ……っ」 「ふふっ、私の体だよ?」 触手状の足がスカートから飛び出しており、よく見れば無数のそれが足元でうねっている。 西洋の怪物で言う、スキュラといったところか。 レイチェルの足が触手に引っ張られ、膝をつくと触手から吐き出された粘液が動きを封じ込める。 凝固した粘液は、氷付けにされたかの様に足を動けなくしてしまう。 驚こうとも少女は止まらない、両手にも同じ粘液をぶちまけ、四つん這いに固定してしまったのだ。 「な、何を……」 屈んで視線を合わせた少女は、レイチェルの喉を指先でなぞり上げ、顎に爪先を引っ掛ける。 「楽しい事するの」 ● キャミソールの裾から、襟元からも飛び込む触手達がその下に隠された淡いピンクのブラをずらしていく。 服の下で蠢く触手の動きに胸元が不自然に波を打ち、強引に流し込まれた刺激にレイチェルは喉を仰け反らした。 「ねぇ、どんな感じ……?」 クスクスと微笑みながら少女は触手を止めない。 服の下では触手の先端が軟質の牙を並べた口を開き、柔肌に食い込ませる様に貪りつく。 「嫌に決まって……っ、んんっ、何を……っ? ぁんっ!? ぁ、ぅあっ……ぁぁっ」 まるで何かを探る様に至るところへ甘噛みを繰り返す触手に、レイチェルの唇から小さな囀りが零れる。 「っはぁ……っ!?」 弱点となろう場所を探り当てた触手は、獲物を見つけたハイエナの様に一斉に群がり、鋭く甘い刺激を味わわせていく。 レイチェルの視野が一瞬白く焼きつき、今までとは比べ物にならない電気ショックの嵐が背筋を駆け上り、脳へ叩きつけられる。 吐き出される息は荒く短い、抵抗力を奪う甘い世界に抗おうと魔力の矢を生成し少女へと放つ。 「素直じゃないのね」 しかし、苦し紛れの攻撃など意味が無い。 着弾と共にぐしゃりと潰れて崩壊する矢の様が示していた。 「何が素直……んぐっ!?」 唇の中に強引に押し込まれた触手は、意識を混濁させる毒液を甘く分泌しながら口内を蹂躙する。 それに紛れ、今度は細い太股を触手が這い上がる。 内股をぬるりと這い蹲る感触がこそばゆく、震えた吐息と共にぎゅっと目を閉じる。 そこだけではない、足の甲も、踝も、膝の窪みも、何かをねらったっような場所ばかり触手が這いずるのだ。 「んんっ! んんぅ、ぷはっ!? 何で……うぐっ!?」 「くすぐったいでしょ、でも……それだけかな?」 全て血管が皮膚に近かったり、皮と皮膚の間が狭かったりと、神経が集中しやすい場所である。 故に少々の刺激は大きな刺激へと変わっていた。 答えを聞く前に少女は触手で口を塞いでしまう。 苦し紛れにレイチェルは矢を放つが無駄。すいっと避けられてしまい、矢は遠くに消えていく。 「そろそろ、ここに掛かろうかな……」 触手はとうとう臀部まで到達し、ミニスカートの中へと忍び込んだ。 ブラと同じく、薄いピンク色のショーツが触手がうねる度に見え隠れし、肌から伝わる感触は触手が動き、スカートの裾が捲れては降りて肌を叩くもの。 羞恥に頬に朱が差し、瞳を閉ざして耐えようとする。 だが、逆に感じさせてしまう。視覚がない分、肌は情報を求めて敏感になり、白い肌がねっとりと濡れ、ずるりと触手が薄い布地の下に入り込んだ。 「ふぁ……っ!?」 一番敏感な場所に潜り込んだそれは、太股の付け根や臍の下等、再び神経が集中する場所を擽る。 ゆっくりと動き、時に早く激しく。 緩急の波が思考と体力を奪い、徐々に甘露な痺れに飲まれていた。 堕ちたと確信した少女は、もぐりこませた触手を一気に突き立てる。 「んんんっ!?」 今までに感じたことが無かったモノ、それを理解する事無くレイチェルの思考が砕かれた。 痙攣する彼女を他所に、楽しそうに触手を暴れさせる少女は完成した餌を存分に貪る。 「んんっ、んぐぁっ、や、やだぁっ!! んぶっ、んぐぅぅぅっ、うぅっ!?」 ● 何時間経っただろうか。 分からないほどの時間を経て、レイチェルは変わり果てていた。 「ぁっ、んっ、はぁっ、ぁ、ぁぁっ、いいよぉ、これぇ……」 強引な少女の責めに、レイチェルの理性は崩れ落ち、触手から与えられる気持ちよい世界にのめり込んでいた。 服は乱れ、少しでもずれれば大切なものが見えてしまいそうな、そんな状態。 彼女が解放されるのは、きっと少女が飽きた頃だろう。 |