バロックナイツ第一位『黒い太陽』ウィルモフ・ペリーシュによる三高平市強襲。 まさにこの国の浮沈を決める悪逆と正義の戦いの様相を呈していたが…… 混乱の市内での迎撃戦は概ねアーク側優位に進んでいた。 「戦況は……いいようですね。全てはこれからなのでしょうが」 見知った仲間のリベリスタの姿を確認した『ホリゾン・ブルーの光』綿谷 光介(BNE003658)が人心地をつき、そんな風に声を掛けた。 「そちらこそ、ご無事なようで何より」 「うんうん、『素敵』な仲間に恵まれてすずきさんは嬉しいよ。あちらさんは『ステキ』な仲間が無茶苦茶やるし、いまいち頼りにならないみたいだけどねぇ」 たおやかな調子でそれに応じた椎橋 瑠璃(BNE005050)に、対照的に饒舌な『息抜きの合間に人生を』文珠四郎 寿々貴(BNE003936) 。言葉はそれぞれだが両者共に幾らか息が上がっているのは光介と同じくである。詰まる所、それは三人がそれぞれの場所で一先ず激戦を駆け抜けてきたからに他ならない。 「……すてき、ですか」 冗句めいた寿々貴の『すてき』はイントネーションによって賞賛と皮肉が分かれている。 どちらがどちらの意味を示しているかは言うまでも無い事だが――光介は一つ頷いた。 正直な所を言えば、ここで躓いている訳にはいかないのが事実である。 敵はあくまで天空の城に鎮座する魔王(ペリーシュ)なのだ。突入部隊の奮闘もさる事ながら、全てのリベリスタに求められるのは中核作戦の達成確率を上げる努力ばかりだ。 絶望(ナイトメア)に本気で挑もうというのだから、一つの無駄も失敗も許されまい。 「まったく……おちおちと休んでもいられないようですわね」 天空の敵を見上げ、その存在感に目を細めた瑠璃が仕切り直すようにそう言った。 彼女の鋭敏な感覚は、市街の路地に出現した次なる敵影を即座に察知していた。 猛然と迫りくる敵ソードミラージュを光介を押し退けるように前に出た瑠璃は手にした鉄扇で弾いていなす。幼い時分より嗜んだ舞踏の動きを流麗に戦闘技術にまで昇華させた彼女の鉄壁は堅牢であり、それ以上に美しい。 「『おいた』が過ぎますわ」 短く冷たい言葉に力が篭る。親しんだ街並みの中の敵はあくまで許し難い異物である。 「さて、次も頑張りますかー」 「まだまだ、これからですからね」 自身の街は自身の手で守る他無い。 持ち前のコネクションをフル稼働して戦場に貢献した寿々貴も、誰かを癒し守る事を自身の存在意義とする光介も同じ――当然の事ながら、その士気は極めて高かった。 負けて良い戦い等、リベリスタには無い。 だが、強いて『絶対に負けられない戦い』を挙げるならば、それは今日なのだろう。 |