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パーティーを、こんなに退屈だと思ったのは初めてかもしれない。 「ふぁ……」 アリステアは欠伸を噛み殺す。フルートグラスの中でぬるくなったりんごジュースが気怠い。 救いがあるとすれば、アーク主催のパーティーだから気を張る必要はないことくらいか。 壁を背にしてつま先を見ていたアリステアの頭上に、ふと影が差した。 「おや、こんなところに天使がいるな」 壁に手を付け、覆いかぶさるように彼女を見下ろしたのは、涼だった。 ピークドラペルのタキシードにバロックタイを合わせた服装で、悪戯っぽい笑みを浮かべている。 「あ――!」 見上げたアリステアの頬に朱が差し、喜びで言葉が詰まる。 「遅くなった。待たせたよな?」 「そんなことないよっ」 アリステアがそう答えても、涼は少し考えこんでしまう。 時間を思えば、もうこのパーティーは終わりに近づいているはずだ。 せっかく会えたのに――すぐに帰るのは、寂しいから。 「こっそり抜けだして、二人でパーティーの続きしようか」 「――うん!」 嬉しそうに頷くアリステアを連れてバルコニーに出ると、涼は小柄な体を抱き寄せ軽々と抱え上げた。 ふわりとした落下感を、世界で一番安心できる場所で味わいながらアリステアは思う。 この大切な時間が、どうかずっと続いていきますように、と。 ――Merry Christmas. |
アリステア・ショーゼット(BNE000313) 神城・涼(BNE001343) |
担当VC:ハツキリゥ 担当ST:ももんが |