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積み重ねたダンボール箱から、ベルカは二冊の本を取り出した。 一週間後に控えた戦争のような何かのために徹夜に等しい勤務状況の印刷会社に無理を言って刷ってもらった本である。しろんほん、になっていることに気がついたのは入稿五時間後だったとかいうことはこの際おいておこうじゃないか。 寒さに一度身震いする。このガーターは正解だった。絶対領域具合もちょうど良い。ミニ丈づくしの中ですっごく暖かな存在だ。 「よぉし、同志イド! コードPX(※≒Xmas)、作戦開始!」 「Y、作戦開始」 応答したイドが、ラウンドガールの如く看板を持ち上げる。……これでトナカイスーツが全身スーツ状でなければ、全身電飾がなければ、首からの鎖がなければ、様になったと思うのだが。ひとつずつが醸し出す台無し感は、相互作用を起こしまくって何だか凄いことになっている。挙句の果てには鼻ちょうちんならぬ鼻ランプ。 野性味あふれる美女と無表情系クールビューティー。素材は良いのにどうしてこうなった。 「そこの町行くお兄さん、一冊どうですか!」 遠巻きに見る人の波に向けて、ベルカが満面の笑みを振りまき始める。 「獣耳、尻尾を付けた半裸の女性が、町中で少女を拘束し、通行人に無理矢理不審物を渡そうとしているようです、増援願います――」 ――あゝ無情。 |
街野・イド(BNE003880) ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829) |
担当VC:藤丸あお 担当ST:ももんが |