|
『幸せな朝に』 |
ん―― 軽やかな電子音を止めた指先が、白く輝くカーテンに触れた。 セットを解くのを忘れていたわけじゃない。 眠りの中で失われていく時を惜しみ、この腕に抱く温もりを1秒でも長く体に刻みつけておきたかった。 宇賀神・遥紀(BNE003750)は、そっと目をあけて頬に朝日をうけた神薙・綾兎(BNE000964)の寝顔を見た。 顔を寄せてそのやわらくつややかな黒髪に触れれば、愛おしさが胸にこみ上げてくる。 綾兎。守り、守ると誓い合った大切な人―― 「あ……、朝? 起きなきゃ」 「うん。きようは……まだいいんだ。もう少しゆっくりしよう」 遥紀がまどろみの天使と争う綾兎の細い腰を抱き寄せると、薄く開いた柔らかな唇からやわらかい吐息が漏れた。 暖房が程よく効いた室内。 窓からは新しい朝の、冷たい空気がじわりとにじみ出ている。 (ずっとこうだといいな。いや、ずっとこうでなくては。俺はこんな朝を、これからも守り続けていくんだ) 腕の中で小さな寝息をたてている君のためにも。 子供たちのためにも。 そして、毎日を懸命に生きる人たちのためにも。 誰にも壊されたくない。失いたくない。 「――だね」 ぱちりと目をあけて、綾兎が微笑んだ。 「メリークリスマス、遥紀。俺もいっしょにがんばるよ」 メリークリスマス。 ああ、なんて幸せな朝。 |
宇賀神・遥紀(BNE003750) 神薙・綾兎(BNE000964) |
担当VC:白夜ゆう 担当ST:そうすけ |