|
『天守孤児院のイブ』 |
善意の寄付や援助は多少あれ、孤児院の運営というものはなかなか厳しい。生活に最低限必要なものを手に入れるのがやっとで、とてもではないがクリスマスを祝う余裕などない、というのが一般的だ。 エリエリ・L・裁谷(BNE003177)が自宅を解放して運営している天守孤児院も、ほかとくらべて恵まれているとはいえそう変わりがない。 壁が飴色に染まる夕刻、レイライン・エレアニック(BNE002137)、楠神 L☆S 風斗(BNE001434)は、幼稚園の教室で行われるクリスマスパーティーの準備を手伝うため、手に子供たちへのプレゼントを持って天守孤児院にやってきた。その中には25日が誕生日のエリエリへ送る特別なプレゼントも入っている。 引き戸をからりとあけて玄関に入ると、手に赤いモールを腕に抱えた朝町 美伊奈(BNE003548)がふたりを出迎えた。 「よう。手伝いに来たぜ。エリエリは?」 「風斗お兄さん、レイラインお姉さん、いつもありがとうございます。エリ姉さんならいま台所でケーキのスポンジを焼いています」 脱いだブーツを下駄箱へ入れていたレイラインが、すんすんと小さく鼻を動かした。 「うむ。おいしそうな匂いがするのじゃ。サンタ服に着替える前にちょっとつまみ食……いや、わらわもエリエリを手伝ってやるとするかの」 そこへひょっこりと、柱の影からエリエリが顔を出した。 「あ、お兄ぃ! おばあちゃん! お帰りなさい。早速だけど手伝っていただけます?」 「もちろん。レイラインがエリエリを手伝うなら、オレは美伊奈と一緒に教室の飾りつけをするかな」 美伊奈はかまちをあがる風斗の腕を取って自分の腕に絡ませると、やわらかく笑って 「高いところは私がやりますね。お兄さんは下でモールが絡まないように持っていてください」 白い翼をふわりとはためかせた。 金銀の星にボール、鐘にガラスの人形や折り紙のサンタクロース。星をまだ頂かないツリーの後ろで、風斗と美伊奈は壁を飾りつけていた。もうすぐ子供たちが帰ってくる。それまでに全部を終わらせておきたい。 「もう少し上かな?」 「このぐらいですか?」 「……うん、もうちょっと」 そこへ真っ赤なサンタクロース(ミニスカ)の衣装に身を包んだレイラインが、巨乳を揺らしながら教室に入ってきた。 仲良のよいふたりを微笑ましく思いながら、ツリーの頂点にとりつける星をテーブルの上に置く。 「おお、いい感じではないか」、とにやり。 「おばあちゃん、ちょっと星を横へどかせてくれません? ケーキが置けませんわ」 邪悪を封印して本日ばかりは天使の顔で微笑むエリエリ。 右手に巨大なクリスマスケーキを、左手にまるまると太ったチキンを軽々と持ったまま、滑るような足取りでテーブルへ運んだ。 「さあ、これで準備は整いました。ささ、みんな並んで」 遠くから子供たちの歓声が、クリスマスソングとともに風に乗って流れてきた。 ダダダ、と廊下を走る、いくつもの小さな足の音。 ドアの影からひよこりと一番乗りの笑顔が覗いたら、四人で一緒に―― Merry Christmas ! |
エリエリ・L・裁谷(BNE003177) 朝町 美伊奈(BNE003548) レイライン・エレアニック(BNE002137) 楠神 L☆S 風斗(BNE001434) |
担当VC:那紀 担当ST:そうすけ |